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【記者発表】「電子のふるまい」を手がかりにAIが新物質を設計―狙った性質をもつ結晶の生成成功率を最大約4倍に―

○発表のポイント:
◆狙った性質をもつ新材料をAIで設計する「逆設計」において、AIが結晶構造と原子まわりの電子状態(電荷と状態密度)を同時に生成する新手法を開発しました。性質を指定すると生成される構造の安定性や多様性が低下する従来の課題を改善し、検証した条件の中で最も厳しい条件では、目的の性質を持つ新物質が得られる割合を従来の約4倍に向上させました。
◆各原子がどれだけ電子を保有しているかを示す「Bader電荷」と、そのエネルギー分布を示す「原子分解電子状態密度」を、結晶構造と同時に生成する枠組みを開発しました。検証した条件の中で最も厳しいバンドギャップと生成エネルギーを同時に条件として課す設定で、成功率は既存モデルの0.9%から3.5%へ向上し、新規性・熱力学的安定性・化学的妥当性も同時に改善しました。電子状態の情報をわざと壊した対照実験では性能が向上せず、性能の向上をもたらしているのは変数の数ではなく電子状態の物理的な中身であることを実証しました。
◆生成された結晶構造には電子状態の情報が最初から付随するため、第一原理計算を行う前の段階で有望な候補を絞り込めます。半導体、触媒、蓄電池など電子の状態が性能を左右する材料の探索を加速するほか、「物理的に意味のある量を生成過程に組み込む」という設計思想は、半導体や電池、触媒など様々な材料へも展開できます。

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本研究で開発されたMatterGen-e⁻の概要。結晶構造と局所電子情報を同時に生成することで、目標物性を満たす安定・新規な構造の生成率が向上する。

○概要:
 東京大学 大学院工学系研究科マテリアル工学専攻の奥田 伊武来 大学院生、同高原 泉 大学院生、同大学 生産技術研究所の溝口 照康 教授の研究グループは、結晶構造と「局所電子情報」を同時に生成する拡散モデル(注1)MatterGen-e⁻を開発し、狙った性質をもつ新物質を設計する「逆設計(インバースデザイン)」(注2)の成功率を大きく向上させることに成功しました。
 近年、結晶構造を自動で生成するAIが急速に発展しています。とりわけ2025年1月に米Microsoft Researchが発表した「MatterGen」(注3)は、無機結晶の生成に特化した拡散モデルであり、安定で多様な新規物質を高い確率で生成できることを示して大きな注目を集めました。一方で、こうしたモデルに「バンドギャップ(注4)が3 eVの材料」のように性質を指定して生成させると、条件は満たすものの、不安定だったり化学的にありえなかったりする構造が増えてしまうという問題が残されていました。本研究グループは、この問題の根本には「AIが原子の種類と並び方しか見ていない」ことがあると考えました。材料の性質を決めているのは、原子の周囲でどのように電子が配分され、どのようなエネルギー分布をもっているかという電子の状態だからです。
 そこで本研究では、このMatterGenを基盤として、原子の位置や種類といった構造情報に加えて、各原子がもつ電荷(Bader電荷)(注5)や、各原子まわりの電子のエネルギー分布(原子分解電子状態密度(原子分解DOS))(注6)を、構造と「同時に」生成するようAIを拡張しました。その結果、MatterGenと同じ枠組みのまま、生成される構造の新規性・安定性・妥当性がいずれも向上し、検討した中で最も条件の厳しい設定では狙いどおりの物質が得られる割合が約4倍になりました。さらに、生成された電子情報自体も第一原理計算(注7)の結果とよく一致しており、追加の計算なしに電子状態の情報が同時に手に入るという副次的な利点も得られました。
 本成果は、生成AIに「何を学ばせ、何を出力させるか」という設計思想そのものに一つの指針を与えるものであり、新材料探索の加速に貢献することが期待されます。本研究成果は、2026年10月15日付でnpj Computational Materialsにオンライン掲載されました。

○発表者コメント:奥田 伊武来 大学院生の「もしかする未来」
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限られた数の訓練データからモデルが結晶構造と物性の間の複雑な物理的構造を学習することには限界があります。そこで両者の中間を担う局所電子構造のデータを用い、モデルにとって構造と物性の相関を学習しやすい問題設定を用意することが生成性能の向上の鍵でした。近年安定な新規構造を出すことを目的とした生成モデルのアーキテクチャ開発が急進する中で、その構造生成手法を「逆設計」に応用するうえで1つの有用な指針を示した点が本研究の中心的な意義であると考えます。これらの知見をもとに今後も物質の逆設計のためのAI開発に挑んでいきたいと思います。

○発表者コメント:高原 泉 大学院生の「もしかする未来」
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本研究は、材料の性質を決めているのは原子スケールの電子構造であるという点に立ち戻り、物性と局所的な電子構造の関係を生成モデルの枠組みの中で学習できないかと考えたことから始まりました。対照実験を含めた検証により、材料科学の知見をモデルに組み込むことが生成性能の向上に結びつくことを確認できました。データやモデルの規模を拡大するだけでなく、どのような情報をどのような形でモデルに与えるかを設計することも、今後の材料科学におけるAI開発において重要な要素の一つになると考えています。

○発表者コメント:溝口 照康 教授の「もしかする未来」
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物質の逆設計は材料科学の長年の目標ですが、結晶構造と物性を直接結びつけようとする限り、データ量の拡大だけでは越えられない壁があります。本研究は、その間に電子構造という物理的な足場を置くことで、この壁を越える道筋を示しました。どの情報をどのような形で与えれば学習が進むのか、学生たちが対照実験を一つずつ積み重ねて確かめた成果です。生成モデルの開発が世界的に加速するなかで、我々が計算と計測の両面から積み上げてきた原子・電子レベルの解析と知見の蓄積が、モデルに与えるべき情報を見極める手がかりになりました。AIの進化にこれまでの知見を重ねていくことで、物質開発はさらに加速できるはずです。今後もそうした手法の開発に取り組んでいきます。
溝口 照康 教授 研究者プロフィール

○発表内容:
〈研究の背景〉
 新しい材料を見つける従来のやり方は、候補となる物質を大量に並べ、一つひとつ計算して性質を確かめる「しらみつぶし」の探索でした。しかし、考えうる結晶構造や組成の組み合わせは天文学的な数にのぼり、第一原理計算は一件ごとに大きな計算コストがかかります。そこで近年注目されているのが、目的の性質から出発して、それを示す物質そのものを提案する「逆設計(インバースデザイン)」です。なかでも有力な担い手と目されているのが、既知の結晶構造の分布そのものを学習し、新しい構造を直接出力する生成AIです。実際に、画像生成AIで広く使われる拡散モデルを結晶に応用した手法が次々に提案され、2025年1月にはMicrosoft ResearchのMatterGenが、安定で多様な新規物質を高い確率で生成できることを示して大きな注目を集めました。
 ただし、材料探索で本当に必要なのは、やみくもに新しい構造を作ることではなく、「バンドギャップが3 eV」「生成エネルギー(注8)が−4 eV/atom」といった目的の性質を満たす構造を作ること、すなわち逆設計です。そしてここに難しさがあります。条件を課すと、AIは条件を満たそうとするあまり、熱力学的に不安定な構造や、化学的にありえない組成の構造を多く出してしまう傾向があるのです。狙った性質に近づけることと、物理的にもっともらしい構造を保つことの間に、トレードオフが生じてしまいます。
 本研究グループは、この問題の背景に「AIが扱っている情報の種類」があると考えました。従来の結晶生成AIが学習しているのは、格子・原子の位置・原子の種類という、いわば材料の「骨格」の情報だけです。しかし材料の性質を実際に決めているのは、その骨格の上で電子がどう配置され、どのようなエネルギー分布をもつかという電子の状態です。骨格が決まれば電子の状態も原理的には決まりますが、AIがそれを骨格の情報だけから読み取るのは容易ではありません。そこで、電子の状態をAIに明示的に与え、構造と一緒に生成させればよいのではないか、これが本研究の出発点です。

〈研究の内容〉
 本研究では、MatterGenを基盤として、結晶構造と局所電子状態を同一のグラフニューラルネットワーク(注9)で同時に生成する枠組みMatterGen-e⁻を開発しました(図1)。局所電子状態としては、性格の異なる2種類の量を取り上げました。一つは、結晶中の電子を原子ごとの領域に分けたとき、各原子に何個分の電子が割り当てられるかを表すBader電荷です。もう一つは、各原子まわりで電子がとりうる状態がどのエネルギーにどれだけあるかを表す原子分解電子状態密度です。前者は原子あたり1個の数値というきわめてコンパクトな量、後者はスペクトルの形をもつ情報量の豊かな量であり、「どの程度の電子情報が有効なのか」を比較できる設計にしています。状態密度については、512点のスペクトルを自己符号化器(オートエンコーダー)(注10)で30次元まで圧縮したうえでAIに扱わせました。学習には、Materials Project(注11)から構築されたMP-20データセットのうち、電子密度と状態密度の両方が利用可能な構造を用いました。

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図1:本研究の考え方。拡散モデルは、ランダムなノイズから少しずつノイズを取り除いていくことで一つの結晶を生成する。従来のモデル(上段)はこの過程で原子の種類と並び方だけを扱うため、性質を指定すると生成構造の質が落ちやすい。本研究(下段)では、各原子の電荷や、各原子まわりの電子状態のエネルギー分布を構造と同時に生成させる。電子状態の情報が生成の道しるべとなり、狙った性質の実現と構造の質を両立できるようになった。

 拡散モデルがノイズを取り除いていく過程で、構造と局所電子状態が同時に復元されます。そのため、「いまこの原子はこのくらいの電荷を帯びているはずだ」という電子の情報が、各ステップで構造の作り方に反映されていきます。いわば、骨格を描きながら同時にその上の電子の顔つきを描き、両者が互いを整合させながら一つの結晶が立ち上がっていくイメージです。
 各条件について1024個の構造を生成し、第一原理計算で構造を緩和したうえで、(1) 狙った性質を実現できているか、(2) 既知物質と重複しない新規な構造か、(3) 熱力学的に安定になりうるか、(4) 電荷中性などの化学的な妥当性を満たすか、という観点から評価しました。その結果、電子状態を同時生成するモデルは、ほぼすべての条件で従来の構造のみのモデルを上回りました。とりわけ効果が大きかったのは、学習データにほとんど例のない厳しい条件です。バンドギャップ3 eVかつ生成エネルギー−4 eV/atomという、訓練データ中にわずか0.5%しか存在しない条件では、従来モデルのMatterGenでも成功率0.9%に対し、状態密度を同時生成するMatterGen-e⁻は3.5%と約4倍を達成しました(図2)。同時に、新規性を満たす構造の割合も62.3%から80.8%へと大きく向上しています。

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図2:性質を指定して1024個の結晶を生成したとき、狙いどおりの性質をもつ物質が得られた割合。灰色が従来の構造のみを生成するモデル、青色が各原子の電荷を、橙色が電子状態のエネルギー分布を同時生成する本手法。バンドギャップと生成エネルギーを同時に指定した最も厳しい条件(右)では、従来の0.9%に対して本手法は3.5%と約4倍に達した。

 さらに本研究では、「なぜ性能が上がったのか」を切り分けるために、二つの対照実験を行いました。結果を図3に示します。まずBader電荷にわざとノイズを加えて物理的な正しさだけを壊したモデルと、各原子にまったく意味のない乱数を割り当てたモデルです。どちらも「原子ごとに何らかの変数を一緒に生成する」という形式は同じですが、中身の物理だけが失われています。その結果、これらのモデルでも構造の多様性はわずかに増えるものの、安定性や妥当性、そして狙った性質への一致度はむしろ悪化し、一部は従来モデルを下回りました。つまり性能向上は、変数を増やしたことによる副作用ではなく、与えた電子情報が本物の物理を反映していたことによってもたらされたものだと言えます。生成AIに与える変数は、次元の大きさではなく物理的な意味こそが効くことが明らかになりました。

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図3:対照実験の結果。左は狙いどおりの物質が得られた割合、右は化学的な妥当性まで満たした構造の割合(バンドギャップ3 eVを指定した場合)。物理的に正しい電子情報を与えたとき(青・橙)は従来モデル(灰、破線)を上回るが、同じ形式のまま中身をノイズで壊したり意味のない乱数に置き換えたりすると(斜線)、いずれも従来モデルを下回った。性能向上は変数を増やしたことによるものではなく、与えた電子情報が本物の物理を反映していたことによる。

 生成された電子情報そのものの正確さも検証しました(図4)。AIが構造と同時に出力したBader電荷は、第一原理計算で求めた値と平均絶対誤差は電子0.054個分という高い精度で一致していました。状態密度についても、細かなピーク位置の完全な再現には限界があるものの、スペクトルのおおまかな形は捉えられています。これは、生成された候補材料について追加の計算をすることなく、その場で電子状態の目安が得られることを意味しており、膨大な候補から有望なものを素早く絞り込む用途への応用が期待されます。

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図4:AIが結晶構造と同時に生成した「各原子まわりの電子状態のエネルギー分布」と、第一原理計算による正解との比較(論文の図5より抜粋)。灰色が正解の原子分解DOS、橙色がAIの生成結果。精度が高かった例(左)ではほぼ完全に一致し、最も典型的な例(右)でも、細かなピークの位置や高さには違いが残るものの、全体の形はよく再現されている。

 また、どの元素の電子状態が「学習しやすい」かを調べたところ、鉄やタングステンなどの遷移金属は状態密度の再現精度が高く、一方でホウ素・炭素・窒素といった軽元素では精度が低くなる傾向が見られました。第一原理計算では逆に、遷移金属酸化物こそが電子相関の強さゆえに難物とされ、軽元素は比較的扱いやすい対象です。AIにとっての難しさと、物理計算にとっての難しさが逆転しているこの結果は、機械学習が材料の何を手がかりにしているのかを考えるうえで示唆的です。遷移金属のd軌道に由来するバンドは環境が変わっても形が似通っているのに対し、軽元素のsp混成状態は周囲の結合環境に敏感で多彩な形をとるためだと考えられます。

〈今後の展望〉
 本研究グループは今後、どのような電子情報を、どのような形でAIに与えるのが最も効果的なのかを体系的に探っていく予定です。本研究ではBader電荷と状態密度という2種類を扱いましたが、これらは局所的な電子状態を表す量のごく一部にすぎません。結合の性質を表す量や、スペクトルをより情報の欠落なく圧縮する表現を検討することで、さらなる性能向上が見込まれます。
 また、本研究で示された「物理的に意味のある変数を生成過程に組み込む」という考え方は、結晶構造の生成に限らず、分子や界面、アモルファス材料など幅広い対象に適用できる可能性があります。生成AIの性能を上げるために、モデルを大きくしたりデータを増やしたりするだけでなく、そこに流し込む情報の物理的な中身を吟味するという方向性を、今後さらに推し進めていきます。
 本研究で開発したコードは公開予定であり、他の研究グループが自身の材料探索に取り入れられるようにすることで、分野全体の材料開発の加速に貢献することを目指します。

○発表者・研究者等情報:
東京大学
 大学院工学系研究科
  奥田 伊武来 大学院生(修士課程)
  高原 泉 大学院生(博士後期課程)
 生産技術研究所
  溝口 照康 教授

○論文情報:
〈雑誌名〉npj Computational Materials(シュプリンガー・ネイチャー)
〈題名〉Inverse Materials Design via Joint Generation of Crystal Structures and Local Electronic Descriptors
〈著者名〉Ibuki Okuda,Izumi Takahara,Teruyasu Mizoguchi*
〈DOI〉10.1038/s41524-026-02322-4

○研究助成:
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 ACT-X(課題番号:JPMJAX24DB)および同 国家戦略分野の若手研究者及び博士後期課程学生の育成事業(BOOST) 次世代AI人材育成プログラム(博士後期課程学生支援)(課題番号:JPMJBS2418)、文部科学省「AIで1000の発見に挑むパイオニア研究支援プログラム(SPReAD)」(課題番号:JPMXP1781046134)、文部科学省科学研究費助成事業(課題番号:JP25K24645、JP26K01205、JP26K22608)の支援により実施されました。また、計算の一部は九州大学情報基盤研究開発センターの計算機資源を利用して行われました。

○用語解説:
(注1)拡散モデル
 ガウス分布に従うランダムなノイズから出発し、学習した手順に従って少しずつノイズを取り除いていくことで意味のあるデータを生成する機械学習手法。画像生成AIで広く使われており、近年は結晶構造の生成にも応用されている。学習時にはデータへ段階的にノイズを加える過程を学び、生成時にはその逆をたどる。

(注2)逆設計(インバースデザイン)
 「この構造の性質はどうなるか」を調べる従来の順方向の解析に対し、「この性質を実現する構造は何か」を直接求める設計手法。材料探索の理想形とされる一方、条件を満たしつつ物理的に実現可能な構造を得ることは難しい。

(注3)MatterGen
 Microsoft Research AI for Scienceをはじめとするチームが開発し、2025年1月に発表した、無機結晶構造の生成に特化した拡散モデル。安定・多様・新規な材料を高い確率で生成できることを示し、材料探索における生成AIの実用性を大きく前進させた。プログラムが公開されており、本研究はこのMatterGenを基盤として、局所電子情報の同時生成へと拡張したものである。

(注4)バンドギャップ
 電子が占有している状態と、占有されていない状態のあいだのエネルギーの隔たり。この値が0なら金属、適度な大きさなら半導体、大きければ絶縁体となる。太陽電池や発光素子など、材料の用途を決める最も重要な物性の一つ。

(注5)Bader電荷
 結晶中の電子密度を、原子ごとの領域(原子基底)に分割して数え上げることで、各原子がどれだけ電子を得ている・失っているかを表した量。原子の種類だけでなく、周囲の結合環境も反映するため、局所的な電子状態を表すコンパクトな指標として広く用いられる。

(注6)原子分解電子状態密度(原子分解DOS)
 各原子のまわりで、電子が入りうる状態がどのエネルギーにどれだけあるかを表した量。電子に占められている状態と空の状態の両方を含む。材料が金属か絶縁体か、どのような結合をしているかといった情報を含み、バンドギャップなど多くの物性の起源を理解するうえで基本となる量。

(注7)第一原理計算
 実験データを用いず、量子力学の基本法則から材料の電子状態やエネルギーを計算する手法。高い信頼性をもつ一方で計算コストが大きく、膨大な数の候補材料をすべて評価することは現実的でない。

(注8)生成エネルギー
 ある材料が構成元素から生成するときのエネルギー変化を表す量で、材料の熱力学的な安定性を評価する基本的な指標の一つ。値が低いほど、その材料は構成元素に分解するよりも安定であることを意味し、同じ組成の材料どうしでは値が低いものほど安定に存在しやすい。

(注9)グラフニューラルネットワーク
 AIの基本的な仕組みであるニューラルネットワークの一種で、点とそれらを結ぶ線からなる「グラフ」の形をしたデータを扱う。結晶では原子を点、原子どうしのつながりを線として表し、つながった原子の間で情報をやり取りしながら、原子の並び方と性質の関係を学習する。原子の配置という結晶の本質を自然に扱えるため、材料分野のAIで広く用いられている。本研究では、結晶構造と電子状態を一つのグラフニューラルネットワークで扱い、両者の関係をあわせて学習させている。

(注10)自己符号化器(オートエンコーダー)
 データをいったん少数の数値に圧縮し、そこから元のデータを復元するように学習するニューラルネットワーク。正しく復元できるように学習することで、元のデータの本質的な特徴を少ない数値で表せるようになる。本研究では、512点からなる状態密度のスペクトルを30個の数値に圧縮し、AIが扱いやすい形にしている。

(注11)Materials Project
 第一原理計算によって得られた材料データを公開している、世界最大級の材料データベースの一つ。本研究では、そこから構築されたMP-20データセットのうち、電子密度と状態密度の両方が利用可能な構造を用いてAIの学習を行った。

○問い合わせ先:
〈研究内容について〉
東京大学 生産技術研究所
教授 溝口 照康(みぞぐち てるやす)
Tel:03-5452-6382
E-mail:teru(末尾に"@iis.u-tokyo.ac.jp"をつけてください)
溝口 照康 研究室

〈報道に関する問い合わせ〉
国立大学法人 東京大学 生産技術研究所 広報室
Tel:03-5452-6738
E-mail:pro(末尾に"@iis.u-tokyo.ac.jp"をつけてください)

〈機関窓口〉
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科学技術振興機構 広報課
Tel:03-5214-8404 
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〈JST事業について〉
科学技術振興機構 戦略研究推進部 先進融合研究グループ
白石 淳子(しらいし じゅんこ)
Tel:03-6380-9130 
E-mail:act-x(末尾に"@jst.go.jp"をつけてください)

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