国立大学法人東京大学(以下 東京大学)と阪急阪神ホールディングス株式会社は、東京大学モビリティ・イノベーション連携研究機構に、社会連携研究部門「データインフォームド都市・交通学」※(以下 当部門)を2024年に設置しました。
このたび、当部門における、これまでの研究・実践・成果発信の一環として、当部門が目指す都市・交通のあり方やこれまでの活動成果を一冊の書籍に取りまとめ、10月5日(月)に出版しました。
※当部門の設置目的および概要については、別紙①「東京大学 モビリティ・イノベーション連携研究機構 社会連携研究部門 データインフォームド都市・交通学の組織概要・これまでの成果および今後の展望」をご参照ください。
○出版情報:
題名:データインフォームドな都市と交通
―データを起点とした対話と共創の新たなまちづくりの挑戦―
著者名:東京大学 モビリティ・イノベーション連携研究機構
社会連携研究部門 データインフォームド都市・交通学
出版社名:LIGARE
販売形態:紙書籍 / 電子書籍
販売 URL: https://www.amazon.co.jp/dp/4908280355
価格:2,700円+税
ISBN:978-4-908280-35-1
発売日:2026年10月5日(月)
判型・ページ数:A5判・162ページ
目次・編著者情報:別紙②をご参照ください。
○本書籍の概要:
本書は、人口減少が加速し、社会の不確実性が高まる中でも、持続可能かつ人々のウェルビーイングを高める都市と交通のあり方を探ることを目的としています。そのために、都市や交通に関わるデータを効率化や正解を導くための道具としてだけではなく、人間の想像力や価値観を尊重しながら、多様なステークホルダーが都市と交通の将来像を共に構想するための共通言語として捉える「データインフォームド」という視座を提示しています。
従来の都市・交通計画では、施策立案や運営の観点から、移動時間、費用、利用量などの集計値を用いて、効率性や経済合理性を評価する分析が中心でした。しかし実際の都市では、効率性だけでは捉えきれない多様な行動が日常的に生じています。
本書では、こうした行動を例外的あるいは非効率的なものとして扱うのではなく、都市活動を構成する重要な要素として捉えます。そして、平均値や総量だけでは見えにくい人々の行動のばらつき、多様性、その背後にある生活文脈や周辺環境との関係に着目し、都市と交通において何を重視し、何を指標として評価すべきかを再検討しています。当部門では、交通、人流、購買、空間構造等に関する大規模データを、プライバシーに配慮しながら横断的に統合・分析する手法を用いたことで、一人ひとりの行動のばらつきや多様性を把握するとともに、その背景にある属性、生活文脈、周辺環境との関係性を分析できるようになりました。
○当部門 部門長コメント:大口 敬 教授の「もしかする未来」
私は長年、高速道路のサグ部(下り坂から上り坂に切り替わるポイント)における渋滞メカニズムの科学的解明や、路車連携による解決策の開発に取り組んできました。その中で強く感じたのは、データは集めるだけでは価値を生まないということです。大切なのは、人間の価値観や現場の知恵と重ね合わせ、問いを深め、人々が対話を始めるための起点として活かすことです。本書で掲げる「データインフォームド」は、まさにそのための考え方です。
本書では、移動を需要量や数値として単に処理するのではなく、一人ひとりの暮らしや選択、そしてその背景にある「人間の物語」として捉え直すことを試みました。これからの交通システムは、単に人を運ぶ手段を超えて、人々のウェルビーイングを支える社会基盤として、より大きな役割を担っていくと考えられます。データと人間の対話を通じて、私たちが本当に幸せになれる都市と交通のあり方を、これからも探究していきたいと考えています。
○添付資料:
別紙①
東京大学 モビリティ・イノベーション連携研究機構 社会連携研究部門 データインフォームド都市・交通学の組織概要・これまでの成果および今後の展望
別紙②
書籍『データインフォームドな都市と交通―データを起点とした対話と共創の新たなまちづくりの挑戦―』の目次・編著者情報
○本件に関するお問い合せ先:
東京大学モビリティ・イノベーション連携研究機構
社会連携研究部門 データインフォームド都市・交通学 事務局
E-mail:dtum(末尾に"@iis.u-tokyo.ac.jp"をつけてください)
※書籍・研究に関する内容は上記のメールアドレスまでお問い合わせください
阪急阪神ホールディングス株式会社 広報室 広報部
Tel:06-6373-5092
別紙①
東京大学 モビリティ・イノベーション連携研究機構 社会連携研究部門 データインフォームド都市・交通学の組織概要・これまでの成果および今後の展望
○組織概要:
| 名称 | (和文)データインフォームド都市・交通学 (英文)Data-informed Transit and Urban Management |
|---|---|
| 設置期間 | 2024年4月1日~2029年3月31日(5年間) |
| 設置機関 | 国立大学法人東京大学 モビリティ・イノベーション連携研究機構 |
| 連携機関 | 阪急阪神ホールディングス株式会社 |
| 担当教員 | 特任教授(兼務)大口 敬 特任教授(兼務)関本 義秀 特任准教授(兼務)本間 健太郎 |
■東京大学 モビリティ・イノベーション連携研究機構の概要
東京大学 モビリティ・イノベーション連携研究機構は、自動運転を中心とした革新的なモビリティ研究の最先端かつ総合的な研究組織を目指して、東京大学内の8部局(研究科、研究所、センター)が連携した機構です。学内の連携・融合により、モビリティ・イノベーションに資する基礎研究や知の体系化を推進するとともに、単なる社会還元を超えて学術研究と実社会が真に連携するモデルを創出し、地域社会への実装を推進します。
■阪急阪神ホールディングス株式会社の概要
阪急阪神ホールディングスグループは、都市交通、不動産、エンタテインメント、情報・通信、旅行、国際輸送の6つのコア事業を中心に、沿線をはじめとした良質な「まちづくり」に貢献し、豊かなライフスタイルを提案する企業グループです。 同社が推し進める「阪急阪神DXプロジェクト」では、グループ共通IDでグループ横断的に顧客データを統合し、CRM(Customer Relationship Management)の向上や事業の改善・創出に役立てています。
○これまでの成果および今後の展望:
当部門では、部門の設置期間(2024年4月1日~2029年3月31日)である5か年計画のうち、第2年度にあたる2025年度までに、「データインフォームド都市・交通学」の思想的基盤の整理、実践事例の検討、学術研究に基づく分析手法の構築を進めてきました。研究の成果は以下に示すとおりです。
1.思想的基盤の整理
都市や交通の課題を、インフラやサービスを維持するという「手段の存続」だけでなく、人々の生活価値をどのように実現するかという観点から捉え直しました。また、データを唯一の判断根拠とするのではなく、人間の価値観や倫理観、社会的文脈を踏まえた合意形成を重視する「データインフォームド」の考え方を体系的に整理しました。
2.実践事例を通じた社会実装モデルの提示
阪急電鉄の創業者・小林一三の沿線開発思想を現代的に捉え直した「バックキャスティング型需要創造」、豊島区における住民主体のまちづくり、会津若松市におけるオプトイン型のデータ連携基盤の運用、国内外の都市事例などを取り上げました。これらを通じて「データインフォームドな都市・交通」の社会における意義を再検討しました。
3.学術研究による人間行動の可視化
商業施設における購買行動と空間構造の統合分析、駅・商業一体施設における移動と購買データの統合、阪神甲子園球場で行われたイベント後の帰宅・滞在行動の類型化、コロナ禍前後における移動の多様性の評価などを実施しました。これらにより、交通系ICカードに基づく移動データ、ポイントカード等に基づく購買データ、施設の空間構造データなどを組み合わせ、人々の行動や都市経験を多面的に把握する方法を示しました。 なお、本書で紹介するデータ分析は、個人が特定されないよう加工されたデータを対象とし、関係法令や各データの利用条件に基づき、プライバシーに配慮して実施しています。
4.データ基盤と対話の仕組みの整理
データインフォームドな都市・交通を実現するためには、単にデータを集めるだけでなく、多主体がその意味を共有し、対話に活用できる仕組みが必要です。データインフォームドをテーマにした対談や、企業と都市の比較を通して、その前提として必要な条件を整理しました。
なお、このたび出版した『データインフォームドな都市と交通―データを起点とした対話と共創の新たなまちづくりの挑戦―』では、これらの成果を通じて、データを起点に人々の生活や価値観を読み解き、多様な主体による対話と共創を促す都市・交通のあり方を提示しています。
当部門は今後も、データを人々の生活や価値観を理解するための手がかりとして活用し、研究、実践、社会実装を結びつけながら、より良い都市と交通の実現に向けた取組を進めてまいります。
別紙②
書籍『データインフォームドな都市と交通―データを起点とした対話と共創の新たなまちづくりの挑戦―』の目次・編著者情報
○書籍目次:
はじめに
巻頭言 データインフォームド都市・交通学への期待
第1章:データインフォームドな都市と交通とは
1.都市と交通をめぐる構造的理解:歴史・課題・これからの時代に必要な思考
2.「データインフォームド」とは何か
第2章:データインフォームドな都市と交通の探求① 実務からの洞察
1.鉄道・沿線開発・ウェルビーイングの統合戦略 ―小林一三モデルの進化と阪急型TOD―
2.都市再生の魂 ―化学変化を起こす豊島区のまちづくり―
3.データインフォームドな社会に向けた現在地と未来
4.スマートシティ5.0 ―会津若松の挑戦―
第3章:データインフォームドな都市と交通の探求② 研究の最前線
1.行動と空間のデータが拓く商業施設デザインの可能性
2.文脈の中に位置づけられる「人間らしい」多様な移動
3.沿線開発が人々の経験やアーバンレジリエンスに与える影響
第4章:データインフォームドな都市と交通の探求③ データと基盤
1.都市・交通分野に必要なデータ基盤の要件
2.「n=1のビッグデータ」が変えるまちづくり
3.データで切り拓く都市・交通の価値創造
本書を読まれた皆さまへ
○編著者情報:
責任編集・はじめに
東京大学 モビリティ・イノベーション連携研究機構
長谷川 悠 特任研究員
巻頭言
東京工科大学 教授
東京大学 名誉教授
須田 義大
第1章
東京大学
モビリティ・イノベーション連携研究機構
社会連携研究部門 データインフォームド都市・交通学 特任教授・部門長
本務:生産技術研究所
大口 敬 教授
モビリティ・イノベーション連携研究機構
長谷川 悠 特任研究員
株式会社AMANE 取締役
一級建築士
齊藤 せつな
第2章
北大阪急行電鉄株式会社 取締役会長、前 阪急電鉄株式会社 専務取締役
上村 正美
AiCTコンソーシアム代表理事
兼務:アクセンチュア株式会社 執行役員
兼務:アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター共同統括
海老原 城一
株式会社ビーアイシーピー・データ 取締役 COO
佐伯 諭
鎌倉市 政策企画監
馬場 晋一
第3章
東京大学
モビリティ・イノベーション連携研究機構
社会連携研究部門 データインフォームド都市・交通学 特任教授・部門長
本務:生産技術研究所
大口 敬 教授
モビリティ・イノベーション連携研究機構
社会連携研究部門 データインフォームド都市・交通学 特任教授
本務:空間情報科学研究センター センター長
兼務:生産技術研究所
関本 義秀 教授
モビリティ・イノベーション連携研究機構
社会連携研究部門 データインフォームド都市・交通学 特任准教授
本務:生産技術研究所
本間 健太郎 准教授
大学院 情報学環
澁谷 遊野 准教授
大学院 人文社会系研究科
瀧川 裕貴 准教授
生産技術研究所
田端 祥太 助教
空間情報科学研究センター
Zhao Chenbo 特任助教
モビリティ・イノベーション連携研究機構
長谷川 悠 特任研究員
大学院 情報学環
山口 侑平 特任研究員
第4章
阪急阪神ホールディングス株式会社 グループ開発室 DXプロジェクト推進部
日下部 貴彦 データアナリシスディレクター
モビリティ・イノベーション連携研究機構
社会連携研究部門 データインフォームド都市・交通学 事務局
本書を読まれた皆さまへ
阪急阪神ホールディングス株式会社 代表取締役社長 グループCEO /
公益社団法人関西経済連合会 副会長
嶋田 泰夫