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実建物の配置を再現した天井、設備機器等の大規模振動台実験を台湾で実施

 国立研究開発法人防災科学技術研究所は、西日本旅客鉄道株式会社、三建設備工業株式会社、新日本空調株式会社および国立大学法人東京大学と共同研究に関する契約を締結し、地震災害時の建物の機能維持や経済損失、人的被害に大きな影響を及ぼす、内外装材や設備機器等の地震被害や耐震性能評価を目的として、実際の建物内の天井、空調機器、配管等の配置を再現した大規模振動台実験を、台湾の国家地震工程研究中心の台南実験所で実施しました。

1 実験目的
 過去の地震被害調査では、地震によって建物が大きな損傷や倒壊を免れた場合でも、内外装材や設備機器(非構造部材)に深刻な損傷が生じて、建物を使い続けられなくなる事例が報告されています。また、これらの非構造部材の破損、落下、転倒が、大きな経済的損失や人的被害を引き起こし得ることが、数多くの研究で指摘されています。過去の地震被害を踏まえて、特定天井の技術基準が整備される等、個々の部材の耐震性能評価や地震対策技術に関する研究が行われています。実際の設置状況を考えると、天井と間仕切り壁、空調機器、天井裏の配管類等は、互いに近接または接触して設置されているため、地震によって振動した際には衝突等の相互作用が生じると考えられます。しかし、これらの相互作用を含めて実際の施工状況で非構造部材に生じる応答と地震被害は十分に研究されていないのが現状です。
 そこで本共同研究では、非構造部材間の実際の施工状況を考慮した地震損傷メカニズムの解明と複合的な地震被害評価手法の開発を目指して、実際の建物内での非構造部材の設置状況を模擬した大規模振動台実験を、台湾の国家地震工程研究中心(NCREE)の台南実験所で、2025年8月31日、9月1、6、7日に実施しました。
 また、本共同研究実験は、防災科学技術研究所と台湾のNCREE、韓国の釜山大学地震防災研究センター(SESTEC)の共同研究「International Seismic Testing Platform of Suspended Non-structural Components and Systems」の一環として実施されました。2025年6月と7月に、NCREEとSESTECが、それぞれ振動台実験を実施しました。3カ国の実験を通じて、各国の非構造部材の地震防災についての問題意識や、対策技術と評価技術の現状と将来展望を共有することにより、お互いの技術向上につなげることも、本共同研究の狙いの一つです。

2 実験計画
2.1 実験施設
 実験は、NCREE台南実験所の振動台で実施しました。振動台の寸法は8m×8m、最大搭載重量は250トン、X、Y、Z軸方向の最大加速度(最大搭載時)はそれぞれ0.75g、0.75g、0.5g、X、Y、Z軸方向の最大ストロークは±1000mm、±1000mm、±400mmです。

2.2 試験体
 振動台上にNCREEの保有する鋼製の枠を設置しました(図1)。鋼製枠の内部は、天井面レベルの平面寸法が11m×11m、高さは4mです(図2)。鋼製枠の内部を間仕切り壁でRoom A、B、Cの3部屋に区切り、各部屋に天井と空調機器、スプリンクラーを設置しました(図3、4)。2フェーズの実験を行い、フェーズ1ではRoom AとRoom Bで試験体仕様を変えた比較実験を行い、フェーズ2ではRoom AとBの間の間仕切り壁を撤去して両室を一体化しました。部材の仕様は、日本国内で実際に建設された事務所建物の仕様を参照して決定しました。

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 Room AとBに天井を設置しました。天井のふところ高さは約1.6mです(図2)。仕様と吊りボルトの間隔は、公共工事標準仕様に準拠しました。フェーズ1ではRoom Bの天井下地に振れ止めを設置して、フェーズ2では両室の天井を一体化しました(図3、4、5)。

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 Room AとBに天井カセット型の空調室内機(重量約25kg)とファンコイルユニット(重量約70kg)を各1台ずつ、Room Cに全熱交換器(重量約50kg)を設置しました(図4、6、7、8)。空調室内機とファンコイルユニットは、施工基準に従って振れ止めを設けて、施工マニュアルに従って天井との隙間を設定しました。全熱交換器の吊り長さは振れ止めが要求されない設定としました。フェーズ2では、Room Aの空調室内機とファンコイルユニット、全熱交換器の吊りボルトに防振ゴムを設置しました(図9)。そして、配管も含めた実際の設置状況を模擬するため、空調室内機に冷媒管を、ファンコイルユニットに冷温水管とドレン管を接続しました。
 Room Cにスプリンクラーの主管を設置して、主管から分岐した枝管をRoom AとBそれぞれに通して、各室4個のスプリンクラーヘッドを設置しました(図10)。主管および枝管は、施工基準を満足するよう支持しました。スプリンクラーヘッドは、天井の野縁受けに固定したバーに取り付ける従来通りの施工方法と、野縁に固定したバーに取り付ける施工方法の2種類を比較、検討しました。

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2.3 入力地震動
 日本で観測された地震動および設計用の地震動とともに、各部材が建物内に設置された状況を想定して、過去の実大振動台実験で観測された建物の揺れを、試験体に入力する実験を行いました。実験では、多種の入力地震動の強さを漸増させながら、試験体に生じる揺れや損傷を計測、観察しました。

3 実験結果
3.1 天井
 間仕切り壁や外周壁と接する部分では、衝突による天井パネルの損傷がみられました(図11)。加振によって、天井の野縁受けと野縁を接続しているクリップが外れ(図12)、加振を繰り返すことでクリップが外れた範囲が拡大して、天井面のたわみが増大していく様子が確認されました(図13)。フェーズ2では、最終的に中央部分が落下しました(図14)。

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3.2 空調機器
 Room AとBに設置した空調室内機とファンコイルユニットでは、天井との衝突が多数回みられ、衝突により天井パネルが損傷しました(図15)。加振によって、振れ止めの座屈(図16)、吊りボルトを受ける金物の損傷がみられ(図17)、フェーズ2では、全熱交換器の吊りボルトが破断に至りました(図18)。防振ゴムを設置したケースでは、防振ゴムが大きく変形した様子が確認されました(図19)。また、冷温水管のフレキシブルパイプが損傷して、気密性確認のために封入していた圧縮空気がリークしました(図20)。

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4 まとめ
 本共同研究では、実際の建物内の天井、空調機器等の配置を再現した大規模振動台実験を、台湾NCREEの台南実験所で実施しました。実験の結果、多種の非構造部材の動き、揺れの違いに起因する衝突や損傷がみられ、地震によって実際の建物内の非構造部材に生じ得る地震被害に関する貴重なデータを得ることができました。今後、実験結果の分析を通じて、被害メカニズム解明や耐震性評価手法の開発を目指します。

○問い合わせ先:
国立研究開発法人防災科学技術研究所
都市空間耐災工学研究領域 兵庫耐震工学研究センター
Tel:0794-85-8211
E-mail:e-def(末尾に"@bosai.go.jp"をつけてください)

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