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【報告】第8回海底ケーブルの科学利用と関連技術に関する将来展望ワークショップ開催(開催日:2025/12/5)

 12月5日(金)、第8回海底ケーブルの科学利用と関連技術に関する将来展望ワークショップ(https://seasat.iis.u-tokyo.ac.jp/CableWS/WS20251205/index.html)が、本所An棟コンベンションホールにて開催された。本ワークショップは、本所 海中観測実装工学研究センター主催にて、2018年から毎年1回開催されている。今回は基調講演1件、一般講演7件、そして特別講演1件、合計9件の発表が行われ、140名が参加した。

 基調講演では、総務省の総合通信基盤局電気通信事業部データ通信課の宮本 知典 課長より「ワット・ビット連携とデジタルインフラの地方分散」に関する発表がなされた。デジタルインフラは、社会生活に必要不可欠となる一方で、データセンターや海底ケーブルの陸揚局は特定の地域に集中している。この課題への対応として総務省が取り組む、電力インフラと通信インフラを効果的に整備する「ワット(電力)・ビット(通信)連携」について紹介がなされた。冒頭、「ワット・ビット」をご存じの方はいらっしゃるか、との問いには、参加者の2割程度が挙手したが、講演後は、おおいに浸透したであろう。

 一般講演では、海域観測データの地震・津波・火山活動の予測など社会生活への利活用、トカラ列島近海の2025年群発地震活動時の緊急海底地震観測速報、グローバル光ファイバセンシングの提案、ケーブル敷設工法の改善についてなど、多岐にわたる話題が提供された。また、昨年度の本ワークショップでの講演「令和6年能登半島地震と海底ケーブル故障」におけるインフラ整備の重要性の問題提起を受けて、今回は、海洋研究開発機構の野 徹雄 准研究副主任より、その地球科学的な側面を取り上げる意欲的な講演「『能登半島地震と海底ケーブル故障』に関する地球科学的な問題の検討」が行われた。

 特別講演では、本学 浦 環 名誉教授による「沖縄丸・小笠原丸から始まる海底ケーブル敷設船の歴史」に関する発表がなされた。明治29年、英国で建造されたケーブル敷設船「沖縄丸」が日本に導入され、その10年後には小笠原丸が日本で建造された。「通信」技術の重要性が、当時から認識されていたことになる。本講演では、「大学は、過去に学びながら現在を考える場でなければならない。過去を知ることで現在を相対化し、未来を切り開くことが歴史を学ぶことの意義」と、大学の存在意義が示された。

 ワークショップの締めくくりとして、協賛学会であるIEEE Oceanic Engineering Society(OES)Japan ChapterによるIEEE OES Japan Chapter Young Researcher Award 2025の受賞式を行った。本賞は、OESが開催する国際学会において、優秀な論文発表を行った若手研究者を表彰し、エールを送ることである。受賞した本所 NEETTIYATH Umesh 特任研究員のさらなる活躍を期待したい。

 末尾になりますが、本ワークショップの幹事の一人である海洋研究開発機構 荒木 英一郎 グループリーダーが、2025年12月1日付けで、本所 海中観測実装工学研究センター 客員教授に就任されました。本ワークショップのさらなる発展が期待されます。

 (海中観測実装工学研究センター 特任研究員 杉松 治美)

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左から、本ワークショップ 川口 勝義 実行委員長・本所リサーチフェローによる開会挨拶、宮本課長による基調講演、荒木幹事によるグローバル光ファイバセンシングについての講演

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左から、浦名誉教授による特別講演、IEEE OES Japan Chapter Young Researcher Award 2025受賞式(左から)OES Japan Chapter篠原 雅尚Chair・本学 地震研究所 教授と受賞者NEETTIYATH 特任研究員

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