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【報告】令和6年度 退職記念講演会(開催日:2025/2/28、3/5、3/7、3/14)

 2025年3月をもって本所を退職される4名の先生方の退職教員記念講演会が開催されました。各回とも多くの参加者が集まり、盛大な会となりました。

 2月28日(金)には、物質・環境系部門 の井上 博之 教授が「無容器浮遊法によるガラスの原子配列」という演題で、講演を行われました。一般の方には理解が難しいほど学術的に高度な内容も含まれていましたが、一流の学者らしい素晴らしい最終講演でした。
 井上教授は、ガラス・非晶質材料の学術分野において顕著な業績を上げられとともに、国内・国外を問わず、学会を積極的に先導されてきました。最近は、第一原理計算や第一原理分子動力学法によりガラス中の電子状態を解明すること、ガス浮遊法を用いて作製した新奇性の高いガラスについて、構造解析、ガラス形成のメカニズムの解明、さらには実用化に向けた研究を推進してこられました。また、海外と多くの有効な協力関係を築き、人的交流によって、ガラス分野の主要な国際学会開催を日本へ招致するなど、この分野での研究進展に多大なるご尽力をされてきました。
 学者以外の井上教授の特徴的な側面をご紹介させていただきますと、「ダンディ」、「紳士」、「カッコイイ」という言葉がもっとも似合うユニークな存在でした。本所の物質・環境系部門内での貴重なご意見番として永年にわたり貢献され、皆からもっとも信頼されてきました。
 これからも、ご健康にお気をつけいただき、益々のご活躍をお祈り申し上げます。

 3月5日(水)には、「ナノ領域の物理はおもしろい!―古典力学と量子力学のはざまで―」と題して情報・エレクトロニクス系部門の平川 一彦 教授による講演が行われました。平川先生は、長年に渡り半導体ナノ構造における電子の量子力学的な輸送現象とテラヘルツ科学を組み合わせた融合的な研究分野のパイオニア的存在として、数々の先駆的な研究を続けてこられました。講演会では、平川先生が研究者を志すに至った経緯や、先駆的な研究のアイデアをどのように着想したのか、そして、それを実現するまでの道のりを分かりやすく丁寧に語ってくださいました。また、講演の最後には、若手研究者へ向けた熱いメッセージも語られました。研究では如何に普遍的なメッセージとして「芯」を残せるかが大切であり、それを実現するためには、どのような研究に芯があるかを見極めるセンスの良さや、優れた研究者と接すること、そして、自身の研究を磨き上げる努力を惜しまないことが大切であると述べられました。後進の育成にもご尽力されてきた平川先生らしいお言葉をいただき、大変貴重なご講演でした。

 3月7日(金)には、「生産技術研究所での43年 ― 銅蒸気レーザー、フォトリフラクティブ効果、ホログラフィックメモリー、メタサーフェス ―」と題して基礎系部門の志村 努 教授による講演が行われました。先生は、本学 大学院工学系研究科物理工学専門課程の博士課程を修了後、助手として本所に着任され、その後、講師、助教授、教授と昇進され、まさに生研一筋の研究人生を歩まれてきました。講演では、学生時代に取り組まれた銅蒸気レーザーを皮切りに、助手時代以降の研究について順を追ってご紹介いただきました。特に、当時の研究者仲間や共同研究者、学生たちのことを鮮明に覚えておられる姿勢には、深い感銘を受けました。また、志村先生は共同研究や産学連携にも熱心に取り組まれており、その影響もあって当日の会場には学術界のみならず、産業界からも多くの聴講者が集まりました。講演の最後には、ともに研究を進めてこられたスタッフや学生への感謝の言葉を何度も繰り返され、志村先生の温かいお人柄が強く伝わる、大変印象的な記念講演となりました。

 須田 義大 教授の退職記念講演会「モビリティ研究35年」が、3月14日(金)に本所 コンベンションホールにて開催されました。
 須田先生は、1987年に本学 大学院工学系研究科産業機械工学専攻博士課程を修了後、1990年に本所の助教授として着任し、2000年に教授に昇任されました。本所の教員として、35年にわたり制御動力学分野において、主に鉄道車両や自動車などのモビリティを対象とした研究を推進されてきました。
 講演会では、力学・制御分野における基礎研究から、前後非対称方式自己操舵台車のように実用化につながった応用研究まで、幅広くご紹介いただきました。また、大型トラックの自動運転隊列走行事業といった政府系事業の代表を務められたご経験や、ベンチャー企業の起業、さらに本所附属千葉実験所長、先進モビリティ研究センターと次世代モビリティ研究センターのセンター長、本学 モビリティ・イノベーション連携研究機構長などを歴任されたことについてもお話しいただきました。
 入りきらないほど多くの来場者があり、隣接するホワイエで中継が行われるほどの盛況となりました。また、上海の同済大学の呉 光強 教授からの祝辞、日本自動車研究所 鎌田 実 所長による花束贈呈に加え、Texas A&M Transportation InstituteのGregory D. Winfree教授からはビデオメッセージが寄せられ、国内外での須田先生のご活躍を改めて実感する機会となりました。
 これまでの本所への多大なるご貢献に深く感謝申し上げるとともに、4月以降の新たなご活躍を心よりお祈り申し上げます。

(物質・環境系部門 教授 岡部 徹、
情報・エレクトロニクス系部門 准教授 黒山 和幸、
基礎系部門 教授 芦原 聡、
次世代モビリティ研究センター 教授 中野 公彦)

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左から、井上教授、平川教授、志村教授、須田教授

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