2020年5月31日(日)に本所は設立71周年を迎えました。
本所は、東京大学 第二工学部の有形無形の資産を引き継いで、1949年に西千葉で生まれました。その後、1962年に六本木に移転し、39年間にわたって都心で研究と教育に取り組みました。そして、駒場リサーチキャンパスへの再移転(2001年)、さらには西千葉に残した附属千葉実験所(2020年4月に大規模実験高度解析推進基盤に改組)の柏キャンパスへの機能移転(2017年)を経て、2019年に設立70周年を迎えました。
2018年12月に六本木の国立新美術館で開催した、価値創造デザイン推進基盤による展覧会「もしかする未来 工学×デザイン」を皮切りに、2009~2018年度の10年間の活動をまとめた『生産研究 70周年記念特別号』の発行、設立記念日を含む2日間の駒場リサーチキャンパス公開2019における70周年記念講演会の実施と70周年記念展示「もしかする未来 in 駒場」の開催、設立70周年記念事業の柱と位置付けた本所元教授の糸川英夫博士らが始められた日本におけるロケット開発黎明期の歴史をご縁とする「科学自然都市協創連合~宇宙開発発祥の地から繋ぐコンソーシアム~」の設立と関連事業の実施を経て、昨年11月26日に設立70周年記念講演会・記念式典および祝賀会を挙行するなど、この一年半の間に様々な設立70周年記念行事を実施してまいりました。また、設立70周年記念式典に合わせて、本所の将来構想を策定するための一過程と位置付けて、本所の特徴と魅力を多面的に描き出した冊子『生研プロファイル:エディ(IIS Profiles : Eddy)』を発行しました。
折しも、本年は、本所としてほぼ6年毎に実施している外部評価の年に当たり、2020年1月に開催した評価委員会の席上および諮問に対する答申として、外部評価委員の皆様から沢山の示唆に富むご助言と叱咤激励をいただきました。本所では、千葉実験所の西千葉地区から柏キャンパスへの機能移転を契機として、現在に続く将来構想に関する検討を開始しましたが、未完のままとなっており、組織として将来構想を掲げることの重要性を特にご指摘いただきました。ウィズコロナ、ポストコロナの時代、そして、さらにその先を見据えた将来構想を掲げるべく、引き続き所内で検討を重ね、2021年1月末に本学安田講堂で討論会を開催する予定としております。
現在、直面している新型コロナウイルス感染症の拡大と自粛による影響は、これまでに我々が経験したことのない種類と規模の災禍です。昨今の状況を受けて、多くの学校が休校になった3月上旬には、新型コロナウイルス感染症対策のため自宅に閉ざされてしまった親子を応援する活動として、本所の最新の研究成果をクイズ形式で楽しめる特別企画「#休校中親子でクイズ」を広報室が立ち上げ、毎日のようにFacebookで配信し多くの反響をいただきました。3月下旬には企画運営室が所内向けの生研サロン「生研課題解決ミッション:新型コロナウイルスに対して」を企画し、4月下旬には本部に倣い所内に「生研・新型コロナウイルス対策タスクフォース」を立ち上げました。タスクフォースでは、全構成員を対象にアンケートを実施して課題を把握した上で、ウェブサイトを立ち上げ、アンケート集計結果・FAQ・学生向け支援情報の掲載など、随時、構成員に向けた情報発信を日本語と英語で行い、直面している諸問題や活動再開に向けた懸念事項の相談窓口にもなっています。また、所内学生用Slackを立ち上げ、学生同士のコミュニケーションの活性化を図っています。次世代育成オフィス(ONG)では、ゴールデンウィークに自宅にいる子どもに向けて、「最先端の科学技術」をテーマにした動画を集めたオンライン教材「ONG STEAM STREAM」の公開を開始しました。さらに、所内から提案があった19件の新型コロナウイルス感染症対策のための研究活動に対し、緊急措置として所内予算を配分しました。全学の活動制限指針の方針を踏まえつつ、6月から精力的に活動を開始します。今後は、新型コロナウイルス感染症の蔓延によって発生した社会課題と、今後発生する未然課題に対処すべく、これまで以上に所内外の連携を強めて、ともに難局を乗り越えてまいりたいと考えております。
本所が中心となって設立した科学自然都市協創連合では、コンソーシアム設立記念事業として、国連が提唱するSDGs(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))の実現に向けて、地域が輝きを増すための願いや希望を描いた各地域の旗を制作し、日本沿岸を航行する船に託して各地を繋いだ後、2021年1月に本学安田講堂に集結させる「大漁旗プロジェクト」を実施しています。つながりは、人々に安心感をもたらし、幸福感を高め、創造性や気力を湧き立たせるといいます。昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大により、つながりが危機にさらされている今だからこそ、人々が笑顔を取り戻して各地が元気になるための取組みとして、残りおよそ半年の本プロジェクトを着実に進めてまいりますので、関係各位のご理解とご協力をお願い申し上げます。
設立71周年を迎えた本所の今後にご期待いただければ幸いです。
第25代所長 岸 利治