令和5年12月12日 (火) 、本学 岡田 恒男 名誉教授が日本学士院会員に選定されました。
○主要な学術上の業績:
人工物は人類に大きな恩恵を与えてきました。建築はその代表のひとつです。一方人工物は自然災害、事故、などにより、被害を人類に与えます。建築の地震による被害は、その代表的なものです。岡田恒男氏は、基礎的な構造力学の適用によっては解けない多様なコンクリート建築における地震被害について多くの調査、実験に基づく独自の理論をつくり上げ、各建築物に対する耐震性をIs値(1)という指標で表す耐震診断基準を作り、国内だけでなく世界の既存建物の補強によって、地震被害を激減することに成功しました。岡田氏の研究は、建築物の地震被害の軽減だけでなく、現代社会を覆う人工物が地球環境問題を引き起こす状況において、人工物を作り出す技術の研究は、目的を実現するための学問だけでなく、その背後に眠っている負の効果についての学問が不可欠であるというメッセージを科学研究者に提示しています。
○用語解説:
(1)Is値
建築物の基本的な耐震性能を、その強度だけでなく靭性(粘り強さ)も加えて表す数値。このIs値により、建築物の耐震性を数値で比較できるようになった。
岡田 恒男 名誉教授のコメント
この度、はからずも日本学士院の会員に選出され光栄であると同時に身の引き締まる思いであります。これもひとえに29年3ケ月在籍した生産技術研究所の素晴らしい研究環境のお陰であったと深く感謝している次第です。多くの恩師、研究仲間に出会えたこと、西千葉にあった千葉実験所を思うがままに利用させていただいたこと、試作工場、写真室、電算機室、事務部などから多大の支援を頂いたことなど、言葉には尽くことはできません。会員選出状授与式とガイダンスを終え、正式の会合を控えてやや緊張気味ではありますが、幸い、生産技術研究所 情報・エレクトロニクス系部門に在籍されていた榊 裕之 先生が先任の会員として活躍されていますので心強い限りです。専門の建築学・耐震工学を通じて我が国の科学技術の進展に少しでもお役に立てることができればと考えております。