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DLXデザインラボ:未来の材料「メタマテリアル」につながる光ナノ加工技術の紹介動画を公開

○発表のポイント:
◆光を自在に曲げられるようになると期待される未来の材料「メタマテリアル」を実現に近づける、光ナノ加工技術を紹介した約5分間のショートフィルム(動画)を制作しました。
◆本動画では、光ナノ加工実験の様子、光を曲げる原理のごく簡単な説明、実現への道のり、地下室からでも外の景色を眺められる「未来の窓」など、将来の応用例を紹介しています。
◆このような動画は、ナノ材料や分子、原子など、目に見えないものに関する研究や、応用・実現への道のりが遠い研究を、広く社会に伝え、理解を得るために有効だと考えられます。

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将来実現するかもしれない、地下室からでも外の景色を眺められる「未来の窓」(イメージ)。特殊なナノ粒子が、それを実現に導くと期待される。

○発表概要:
 東京大学 生産技術研究所 DLXデザインラボ(以下DLXデザインラボ)の高山 直人 特任研究員、内倉 悠 特任研究員、マイルス ペニントン 教授は、同研究所の立間 徹 教授、石田 拓也 助教、イ スンヒョク 特任助教と協力して、光を用いる革新的なアプローチでナノ粒子を生み出す技術と、それがもたらす未来の可能性をまとめた約5分間の動画を制作しました。この動画では、これらの微小な粒子が将来的には光を自在に操り、物質を透明に見せるなど、驚くべき能力を発揮する「メタマテリアル」という新材料に結びつく可能性があることを、わかりやすく紹介しています。なお、この動画は、同研究所における科学的研究の価値と将来の可能性を、広く社会に伝えることを目的とした、DLXデザインラボ・トレジャーハンティングプロジェクトの一環として制作されました。

○背景:
 東京大学 生産技術研究所では、物理、化学、生物をはじめ、幅広い研究が行われています。その中でDLXデザインラボは、科学技術とデザインの融合を目指した活動を行っています。その活動の一つに、同研究所における科学的研究の価値と将来の可能性を、広く社会に伝えることを目的とした「トレジャーハンティングプロジェクト」があります。その一環として2022~2023年に、同研究所の立間研究室と協力して、未来の材料「メタマテリアル」を紹介する動画を制作しました。

○内容:
 動画冒頭では、地下室からでも外の景色を眺められる「未来の窓」が、いつか実現するかも知れないこと、そのためには、ナノスケールの特殊な粒子が必要であることを紹介します。

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左:未来の窓(イメージ)。中:光を伝えるメタマテリアルのコネクタ(イメージ)。右:メタマテリアルを構成するナノ粒子の模型。(いずれも動画より)

 次に、そうした特殊な粒子を光で簡単に作る技術を、立間研究室で開発している様子と合わせて紹介します。従来の手法とは異なり、化学的手法によって、光で粒子を自発的に成長させるところがポイントです。

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左:光をあてる実験。中:光で粒子が成長する様子(模式図)。右:粒子の形を観察する実験。(いずれも動画より)

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立間研究室で作製した、光と相互作用するナノ粒子。

 特殊なナノ粒子を作り、うまく並べれば、光を自在に曲げられるようになり得ることを、模型を使って説明します。

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左:粒子一つが、光の波を受け、放出する様子(模式図)。右:粒子の集団が光を曲げる様子(模式図)。(いずれも動画より)

 また、DLXデザインラボと立間研究室は協力して、「未来の窓」実現へのロードマップをデザインしました。まず粒子を作り、次にそれを面状に並べ、さらには立体的に配置することが必要です。

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DLXデザインラボと立間研究室メンバーが協力してロードマップをデザイン。(動画より)

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「未来の窓」実現へのロードマップ。

 「未来の窓」が完成するまでの過程では、光を反射しない太陽光パネル、ある色の光だけ透過させられる半透明な壁や柱などが生まれると予測されます。そしていつか、フルカラーで、熱さえも伝える「未来の窓」が誕生するかもしれません。「未来の窓」は、液晶などのディスプレイのように映像が表示されるのではなく、窓の外にあるものを直接見るのと同じ効果があります。のぞき込むこともできますし、太陽光が差し込み、影もできます。日なたぼっこもできるのです。

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左:無反射太陽光パネル(イメージ)。中:赤色光だけ通す半透明な柱(イメージ)。右:「未来の窓」の完成(イメージ)。(いずれも動画より)

○意義と将来展望:
 未来の窓は、今はまだSFの世界の話です。研究者は、そうした未来像をぼんやりと頭に描きつつも、日頃は直近の課題に目を奪われがちです。この動画のように、SFではあっても、未来像を具体的に描くことによって、その未来に近づくために何をするべきか、研究者がより明確に意識できるということが、今回の取り組みで明らかになりました。
 DLXデザインラボのトレジャーハンティングプロジェクトでは、これまで、生産技術研究所で生み出される様々な研究成果に形を与えることで、展示やワークショップを通して、科学の面白さや可能性を一般の人々に伝えてきました。しかし、ナノ材料や分子、原子など、目に見えないものを相手にした研究や、応用・実現への道のりが遠い研究に形を与えるのは、必ずしも容易なことではありません。今回のプロジェクトのように、動画を使って未来像を可視化し、多角的かつわかりやすく表現することは、すぐには形を与えにくい研究の意義を広く社会に伝えるためにも、とても有効だと考えられます。
 DLXデザインラボでは、今後も、こうした動画も含め、様々な形や手段を用いて、研究成果という人類の「宝」を、社会に伝えていくことに貢献したいと考えています。

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地下室でも外の景色をのぞき込むことができ、日なたぼっこもできる「未来の窓」。

○東京大学 生産技術研究所 DLXデザインラボとは?:
DLXデザインラボは「デザインによる価値創造」をミッションに掲げ、2016年に東京大学 生産技術研究所内に設立された国際的なデザインチームです。デザイナー・研究者・エンジニアなどの密接したコラボレーションにより、革新的な製品やサービスのプロトタイプを作ることを目指しています。また、産学官民で連携し、レクチャーやフォーラム、展示会、ワークショップなどの活動を通じてデザイン駆動のイノベーション創出手法に関する知見を広め、次世代の育成を行っています。

○発表者:
東京大学 生産技術研究所
  高山 直人(特任研究員、DLXデザインラボ)
  内倉 悠(特任研究員、DLXデザインラボ)
  マイルス ペニントン(教授、DLXデザインラボ)
  立間 徹(教授、立間研究室)
  石田 拓也(助教、立間研究室)
  イ スンヒョク(特任助教、立間研究室)

○動画情報:

https://vimeo.com/845226045

○問い合わせ先:
〈動画に関する問い合わせ〉
東京大学 生産技術研究所 価値創造デザイン推進基盤事務局
Tel:03-5452-6768
E-mail:office(末尾に"@designledx.iis.u-tokyo.ac.jp"をつけてください)

〈研究に関する問い合わせ〉
東京大学 生産技術研究所
教授 立間 徹(たつま てつ)
E-mail:tatsuma(末尾に"@iis.u-tokyo.ac.jp"をつけてください)

〈報道に関する問い合わせ〉
東京大学 生産技術研究所 広報室
Tel:03-5452-6738
E-mail:pro(末尾に"@iis.u-tokyo.ac.jp"をつけてください)

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