本学名誉教授の榊 裕之 先生が、長年にわたる半導体ナノエレクトロニクス分野の研究で、2022年度の文化勲章を受章されました。
榊先生は、1968年3月に本学工学部電気工学科をご卒業、1973年3月に本学 大学院工学系研究科電子工学専門課程博士課程を修了され、直ちに生産技術研究所 助教授に着任されました。1987年には同所教授に就任されています。また1988年から1996年まで、先端科学技術研究センターの教授としても活動されました。2007年に東大定年退職後も、豊田工業大学の学長、現在は奈良国立大学機構の理事長という要職をお務めになられています。
榊先生は、トランジスタや半導体レーザなどエレクトロニクスの基幹的な素子の中核部分において、ナノメートル(10億分の1メートル)オーダーの超微細構造の中で発現する電子の量子力学的な効果が新しい機能を生み出すことを早くから予見され、このような超微細構造内に閉じ込められた電子の物理と素子応用に関する独創的な研究を展開されました。さらに、構造の微細化を発展させた量子細線構造や量子ドット構造により、電子を高次に制御する斬新な考えを創出し、エレクトロニクスと物理学の新分野開拓で先駆的な貢献をなさりました。
榊先生がIBMワトソン研究所の江崎玲於奈グループから気鋭の研究者として生産技術研究所にお戻りになり、半導体超薄膜構造の研究を開始された1970年代後半当時、ホームメイドの結晶成長装置で作製した半導体超薄膜中の電子の振る舞いは非常に特異で、得られたデータが何を意味しているのかを毎日榊先生と研究室メンバーで夜遅くまで議論するという熱気と興奮を体感させて頂いたことは、先生の薫陶を受けた研究室のメンバーにとって非常に大きな財産となりました。
榊先生は、78歳の今でも、若手研究者、学生の育成に情熱を燃やされ、大学の教育や運営に新しい風をもたらす取り組みを続けておられます。心からの尊敬の念を込めて、榊先生の文化勲章の受章をお喜び申し上げます。
(情報・エレクトロニクス系部門 教授 平川 一彦)
榊 裕之 名誉教授