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科学技術を用いて国際貢献ができる人材の育成を支援~Continental UTokyo-IIS Global Engineering Fellowship~[UTokyo-IIS Bulletin Vol.9]

2021年秋、本所とコンチネンタル・ジャパンは「第1回Continental UTokyo-IIS Global Engineering Fellowship」の受賞者を発表しました。同奨学金は、コンチネンタル・ジャパンから研究結果を通じて国際貢献を目指す本所大学院生に贈られます。同奨学金の創設を記念し2021年10月28日、受賞者が参加する鼎談を開催し、それぞれの研究内容や今後の国際貢献に対する意気込みを語ってもらいました。

○受賞者
関森 祐樹さん:巻研究室(修士課程2年)
坂内 匠さん:山崎研究室(修士課程1年)
富士 輝さん:今井研究室(修士課程1年)
王 洪宜さん:川添研究室(修士課程2年)※
※鼎談には参加されなかったため、別途頂いたコメントを文末に掲載しました。

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○鼎談概要
司会:まず、ご自身の研究内容について紹介をお願いします。

関森:複数台で運用する海洋ロボットの情報システムの研究をしています。具体的には、音波を使い、「測位と通信」で研究テーマを組んでいます。資源探査や洋上風車の管理など幅広い分野に応用が期待されています。

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AUV(自律型無人潜水機)

坂内:気象衛星のリモートセンシングデータを基に、機械学習を用いて全球の降水量を推定するアルゴリズムの開発をしています。レーダーが十分に整備されていない国々の洪水対策や温暖化対策に研究を役立てたいと考えています。

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レーダー・アメダスが観測した九州地方の降水量(mm/h)

富士:現在1年間休学して、オランダ・ロッテルダムの建築事務所でインターンを始めたところです。奨学金の申請は、「建築におけるサステナビリティ」を考察した内容で提出しましたが、修士の研究内容は今後考えていきたいと思います。

司会:この奨学金に応募したきっかけは何だったのでしょうか。

関森:日本は海を介して世界とつながっていますので、海の開発には国際協力が必要です。海中ロボットによる海洋観測の観点から今後、国際的な貢献をしたいと思い、応募しました。

坂内:研究室の先生から「応募してみたら」と後押しされました。カナダやシンガポールでのこれまでの国際経験や研究室の国際的な広がりを考え直すきっかけになると思いました。

富士:海外のインターンに向けて準備をしているころ、この奨学金のことを知りました。私の研究プランに向けて改めて考える機会になると思ったので応募しました。

司会:応募してよかったと思う点は何ですか。

富士:最終面接の時に、他分野の教授からフィードバックをいただけたのはよかったと思います。深い内容で聞いてくださる方が多く、私もそこまで深く考えていなかったところを、いろいろと追究してくださいました。研究テーマについて、もっと深く考えなければならないと考えさせられました。

坂内:受賞をきっかけに、積極的な国際貢献につながる研究をしようと改めて意識しています。研究をしていると、アルゴリズムの精度など細かいところばかりに目が行き、研究の世界的な繋がりを忘れがちになっていました。

関森:これから国際的に貢献ができるように、日本が世界に誇れるような技術、例えば、環境保全や自然・環境に調和する技術などを研究していきたいと強く思います。

司会:この奨学金は、コロナ禍で学生を海外に派遣できない状況を鑑み、学生を奨励する目的で創設されました。コロナ禍で苦労した点はありますか。

富士:とても大変でした。パンデミックの最中の2021年3月からインターンの準備を始めていましたが、最初はどこから手を付けてよいか分かりませんでした。海外のインターンを経験した東大OBにアドバイスをいただきながら、また、同じく海外でインターン先を探していた友人と励ましあいながら、自力で現在の建築事務所を見つけ出しました。

関森:新型コロナウィルス感染症のパンデミックで多くの学生が留学を諦めざるを得ない状況になりましたが、すぐさまこの奨学金を創設し、対応してくれた生研とコンチネンタル・ジャパンに感謝いたします。また、東大は制限を設けながらも、生研や平塚の海洋施設で研究を行う機会を与えてださいました。

坂内:今回初めて、この奨学金のことを知りましたが、東大ならではの面白い取り組みだと思います。コロナ前から、プロジェクトメンバーが京都や韓国など点々と別の場所にいたので、オンライン会議を行っていました。研究室のサーバーにリモートで入れるので、家から入って作業をするなど、影響はありませんでした。

司会:今後の抱負をお聞かせください。

坂内:現在取り組んでいる研究は、修士課程では終わらないと考えていますので、何らかの形で修了以降も関わっていきたいと思います。各国の専門家と協力しながら、アルゴリズムを使えるものにして、環境問題の解決に貢献していきたいと思います。

富士:私は、具体的なテーマを探すためにオランダに来たので、答えるのは難しく感じます。ただ、意匠を専門にしているので、ヨーロッパの街並みや建築物の改修についても勉強していきたいと考えています。

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インターンシップ中のオランダの建築事務所

関森:現在ヒトが行っている、危険が伴う単調な作業をフィールドロボットに任せられるようにして行きたいと考えています。博士課程に進み、その後は日本を拠点に日本の技術レベルを上げ、産業振興に寄与したく、起業も視野に入れています。

(記事執筆:(株)J-Proze 森 由美子)

○王 洪宜さんからのコメント
2021年9月より、世界交換留学制度を利用して、チューリッヒ工科大学建築学修士課程に来ました。私の授業は、建築と景観に焦点を当てたものです。「セレンディピティ: 水資源の確保」のコースでは、チューリッヒで飲まれている水道水について調査し、ビデオ作品を通して発表しました。また、洞窟に潜り、興味を持ったものをすべて撮影し、記録しました。都市インフラと自然とのつながりを学ぶには、とても楽しくて良い方法だと思います。

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水資源から音を記録する

○コンチネンタル・オートモーティブ株式会社 人事本部長 川波千草氏からの祝辞
この度、Continental UTokyo-IIS Global Engineering Fellowshipに多くのご応募をいただき、誠にありがとうございました。2021年受賞の4名の方、おめでとうございます!コロナの大流行が私たちの生活を変えようとしていますが、これは日常生活を形成し、イノベーションを推進し、技術によって社会課題を解決するチャンスだと考えています。あなたのアイデアで未来を切り開こう!

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