東京大学生産技術研究所附属災害対策トレーニングセンター(DMTC)は、マンションの管理組合、防災組織の担当者、行政担当者を対象に、マンションにおける防災力の向上を目的とした新たな専門プログラム「Theマンションレジリエンス」を9月20日(土)に開講します。今年度全3回を予定しており9月20日はモニタートレーニングとして実施します。
○概要:
近年、マンション居住者の増加とともに、集合住宅(マンションを含む)特有の災害対策の体制を構築していくことが強く求められています。
東京大学 生産技術研究所附属災害対策トレーニングセンター(DMTC)が提供する専門プログラム「The マンションレジリエンス」は、マンションにおける災害対策の実践的な知識を学ぶことで、その管理組合が主体となり、マンションのレジリエンス能力(しなやかに回復する力)を高めることを目的としています。本プログラムでは、オンデマンド形式の動画講義と、東京大学 生産技術研究所で行われる実地研修を通じて、災害時に即応できる「防災リーダー」の育成を図ります。防災の基本からマンション特有の課題まで、体系的かつ実践的に学べる構成になっており、管理組合などのマンションの運営に関わる方々が災害対策を円滑に進めるための知識とスキルを提供します。
「いざというときに動ける」力を平時から育み、「自分たちの住まいを守る力」を高め、個人の災害対策に加え、地域や住民間の連携、そして建物全体としての災害対策力を強化することを目指します。これにより、災害時の被害軽減と生活の早期復旧につなげていきます。
○発表者コメント:沼田 宗純 准教授の「もしかする未来」
本プログラム「The マンションレジリエンス」では、まずマンションの基本的な構造的・制度的特徴を理解したうえで、防災を「8分野・47種類の災害対策業務」という共通の"型"として体系化し、マンション防災がこの枠組みの中でどの分野・どの業務に該当するのかを学びます。
マンションは単なる「住まい」ではなく、災害時には"最小の組織"として機能し、自律的かつ協調的に対応すべき地域の重要な拠点です。そのため、管理組合や住民一人ひとりが的確な判断と行動をとれるようになることは、マンションの安全確保にとどまらず、地域全体の災害対策力の底上げにも直結します。
マンション防災という実践的な課題に取り組むにあたり、確かな知識と俯瞰的な視座を獲得する第一歩として、本プログラムを位置づけています。
○講座内容:
本プログラム「The マンションレジリエンス」では、マンションの災害対応に求められる知識と行動力を体系的に習得します。事前に講義動画をEラーニングで学び、当日は演習と修了試験を通じて、実践力と判断力を養成します。
本プログラムの概要
・講座名:The マンションレジリエンス
・講座内容:①講義動画(事前学習)+②演習(※①と②の両者を学習)
・対象者:マンションの管理組合、防災組織の担当者、行政職員など
・定員:20名程度(※モニタートレーニングにつき先着順)
・参加費:無料(※本格実施時は有料予定)
・修了証:講義動画を視聴し演習後に実施する修了試験に合格された方には、修了証を発行いたします。
・申し込み:https://tdmtc.tokyo/apartment_resilience/
・申し込み締め切り:演習実施日の2週間前。
① 講義動画(事前学習)
・所要時間:約6時間40分
・配信形式:Eラーニングシステム「DMTC CAMPUS」にてオンデマンド配信
・受講期限:演習実施日前までに全動画を視聴してください
本プログラムの受講者は、以下のオンデマンド講義を視聴します。災害対策の体系のなかでのマンション防災の位置づけから、法制度、実務、マニュアル、課題解決まで、多角的に学ぶ構成となっています。各分野の専門家による講義を通じて、基礎知識を体系的に習得し、後続の実技演習に備えます。
講義名 | 講師名 | 講義概要 |
---|---|---|
1. 災害対策の8分野・47種類の災害対策におけるマンション防災の位置づけ | 東京大学生産技術研究所・准教授・沼田 宗純 | 災害対策全体の体系をふまえ、マンション防災がどの分野に位置づけられ、どのような役割を果たすべきかを概観します。 |
2. マンション管理の基本と関連する法や制度 | 横浜市立大学・教授・齊藤 広子 | マンション管理の基本的な仕組みや役割、関連する法律・制度について解説します。 |
3. マンション防災の重要対策〜過去の災害に学ぶ〜 | 跡見学園女子大学・教授・鍵屋 一 | 過去の災害事例をもとに、マンションにおける実践的な災害対策の要点を学びます。 |
4. マンションにおける消防法で定められた防火対策と防災対策 | 株式会社WAVE1・代表取締役・吉村 拓也 | 消防法に基づく法的枠組みと、マンション特有の防火・防災対策について具体的に解説します。 |
5. マンション管理組合が考えておくべきリスク管理―被災後の判断に必要な準備とは | 一般社団法人マンション管理業協会・調査部次長・田中 昌樹 | 災害発生後に冷静かつ迅速な判断を行うために、平時から管理組合が備えるべきリスク管理のポイントを学びます。 |
6. マンション防災マニュアル・災害対策本部と情報について | 株式会社テンフィートライト・法人営業チーム長代行・城戸 学 | 防災マニュアルの構築方法や災害対策本部の機能、情報伝達体制の整備など、実務に直結する内容を扱います。 |
7. マンション防災実施状況の見える化と課題解決について | 株式会社防災ネットワーク研究所・代表取締役・本瀬 正和 | 防災活動の実施状況を可視化し、組織的に改善していくための手法と事例を紹介します。 |
② 演習(+修了試験)
演習では、地震発生時を想定し、マンション内における災害対策本部の設置から初動対応の意思決定までを実践的に体験します。災害時のシナリオに沿って、管理組合や防災担当者が直面する状況を再現し、ロールプレイング形式で演習を進行します。参加者は、チームで協力しながら様々な状況付与をまとめ、演習中に与えられる複数の「Mission(課題)」をクリアしていきます。本演習を通じて、実際の災害対応に必要な判断力・対応力・連携力を養うことを目的としています。
・日時:2025年9月20日(土)13:00〜17:00
・場所:東京大学生産技術研究所 駒場リサーチキャンパス As棟3階 311・312
・内容:グループ演習、ケーススタディ、修了試験(約4時間)
○DMTCの設置趣旨:
本所附属災害対策トレーニングセンター(DMTC, Disaster Management Training Center)は、2016年に一般財団法人生産技術研究奨励会の調査研究助成により準備を開始し、2021年4月から本所附属のセンターとして活動を行っております。
首都直下地震や南海トラフ地震など、未曽有の危機を前に、日本に住む私たちは「総力戦」で臨むほかありません。これまでの日本の防災は、公助・共助・自助をそれぞれのセクターや組織が担う「水平的な災害対策」が主流でした。しかし、このような巨大災害に対しては、公助・共助・自助が分断された対応では、もはや十分に機能しないことは明らかです。
私たちDMTCは、こうした国難ともいえる事態に対し、日本で暮らすすべての人々が、公助・共助・自助の枠組みや組織の垣根を超えて、相互に補完し合う災害対策を構築していく必要があると考えております。
そのためDMTCでは、人材養成における新たな教育サービス事業として、災害対策に関する多様な枠組みや組織の役割、災害対策の在り方、業務知識やノウハウを横断的かつ体系的に学び合うトレーニングを提供し、あらゆるセクターで活躍できる実践的な人材の育成を目指しております。
○DMTCの教育理念とトレーニング体系:
災害対策においては、個々の技術や知識の習得はもちろん重要ですが、それだけでは実践にはつながりません。重要なのは、災害対策の全体像を理解し、各対策がどのように連関しているのかを把握することです。
そこでDMTCでは、これまでの災害対策に関する研究成果を踏まえ、災害対策を「8分野・47種類の災害対策業務」というフレームワークに体系化し、この枠組みをもとに「基礎プログラム」と「専門プログラム」というトレーニングプログラムの研究開発を進めております。
このフレームワークを意識しながら学ぶことで、自らの役割を「災害対策全体の中でどのように位置づけるか」を的確に理解し、他の関係者と連携しながら行動できる力----すなわち、真に現場で機能する災害対策力を育成することが可能になります。
○DMTCのトレーニング体系:基礎プログラム × 専門プログラム:
DMTCでは、段階的かつ実践的な人材育成を実現するために、以下の2層構造のトレーニング体系を構築しています。
【1】基礎プログラム
災害対策に関わるすべての人が共通して身につけるべき知識や思考の枠組みを学びます。特に、「8分野・47種類の災害対策業務」の基礎的な構造と、それらの相互関係について理解を深めます。
【2】専門プログラム
8分野・47種類の災害対策業務に対して、特定のテーマに特化し、より実務的かつ実践的なスキルと判断力を養成するのが専門プログラムです。実技を重視した内容となっており、現場で即応できる力を育てることを目的としています。参加者は、自身の関心や職務に応じて、複数の専門プログラムを選択・受講することも可能です。
この中でも「災害対策本部演習(The EOC)」は、専門プログラムの中核となる講座であり、行政職員から民間企業の担当者まで多様な分野の受講者が、付与された状況に応じて情報トリアージを行う演習を通じて実践的な判断力を養います。
本プログラム「The マンションレジリエンス」も、この専門プログラムの一つとして位置付けられており、マンションという地域社会の最小単位における災害対応力の強化を目的とした実践的な内容となっております。
【お申し込みについて】
本プログラムのご参加には事前予約が必要です。なお、動画講義のみの視聴、演習のみの参加は受け付けておりません。必ず動画講義と演習の両者を学んで頂きます。
お申し込み方法の詳細や最新情報は、下記ウェブサイトよりご確認ください。
https://tdmtc.tokyo/apartment_resilience/
【2025年度のThe マンションレジリエンスの講座の予定】
2025年度は、以下を予定しています。
・2025年12月6日(土) 第1回 The マンションレジリエンス(受講料19,800円税込み)
・2026年2月7日(土) 第2回 The マンションレジリエンス(受講料19,800円税込み)
○問い合わせ先:
東京大学 生産技術研究所 准教授
生産技術研究所附属災害対策トレーニングセンター 副センター長
沼田 宗純(ぬまだ むねよし)
E-mail:numa(末尾に"@iis.u-tokyo.ac.jp"をつけてください)