本学 名誉教授 増沢 隆久 先生が令和7年春叙勲 瑞宝中綬章を受章されました。先生は工学系研究科 精密機械工学専攻を修了後、同年本所に講師として着任されました。それから半世紀に渡り、加工、特に放電加工の研究に従事され、高精度微細加工、難加工材の加工に多くの業績を残されました。ご業績は枚挙に暇がありませんが、微細加工を可能としたマイクロ放電加工、高精度の連続加工を可能としたワイヤー放電研削が挙げられます。これらの成果に対して、文部科学大臣賞をはじめ、多くの学会賞を受賞されています。今日、我々が、ここ一番、というときに放電加工を頼ることができるのは先生のお蔭だと改めて気づかされます。増沢先生は電気加工学会会長をはじめ、多くの学会活動に携わられ、分野の発展と人材育成に多大な貢献をされました。先生の文献リストを拝見するに、私どもに馴染みの深い、当時は若手の多くの先生が共著者としてお名前を連ねて居られます。
幸い、先生と分野が近いこともあり、修士号、博士号の審査会に同席させていただく機会を多く頂きました。審査会でのお言葉は、厳しくも、努力と可能性を称えるものでした。今でも先生のお言葉が思い出されます。"これは修士論文ではありません"、"何故試さないのですか"、"これは素晴らしい、何故ならば、欠点を洗い出して更に発展させている"。近年、これほど清々しい審査会は稀となりました。
先生は本所をご退職後もご研究や装置の実用化を続けておられます。ご作品に、例えば、放電加工機"タートル1号"、最近では、医師と患者の会話を助ける"増沢式糸電話" があります。 論文や学会発表リストも更新が続いています。増沢先生には、様々な可能性を認めるお心の広さと、学問に対峙する姿勢を教えていただきました。この度のご受章、本所のメンバーの一人として大変誇りに思っております。ここに深謝し、こころよりお祝い申し上げます。
(機械・生体系部門 教授 川勝 英樹)
増沢 隆久 名誉教授のコメント
