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第11回 ESIシンポジウム「エネルギーシステムインテグレーション-ESIの取り組み-」/第12回 ESIシンポジウム「2050年のエネルギーと社会:何が難しいのか」

 今回報告する2回のシンポジウムでは、2021年4月より第II期3年間を開始したエネルギーシステムインテグレーション産学連携研究部門(ESI)の第I期の成果報告と、同部門の岩船 由美子 特任教授、荻本 和彦 特任教授が参加するエネルギー資源学会「2050年に向けた日本のエネルギー需給」研究委員会とESIの共同主催の2050年の環境・エネルギーに関する議論が行われた。先に生研ニュースで紹介した2020年度の第7回~第10回と同様、今回の2回のシンポジウムもオンライン形式で行われ、各回約200~300名の参加があった。

 5月12日(水)の第11回では、鹿園 直樹 教授の活動概要に続き、岩船特任教授と荻本特任教授がそれぞれ需要の視点とシステムの視点によるESIの活動を報告した。これに続くパネルディスカッションでは、第I期の参加各社の参加を得て、パネルディスカッション1「モデル活用の意義と効果」では、ESIの特色である大学が提供するツールとデータを用いた各社の検討状況の紹介とそれに基づくツール解析の意義・効果に関する議論が行われた。パネルディスカッション2「ESIの提言と今後のエネルギーシステム」では、ESIが3月に公開した今後の環境・エネルギー問題へのエネルギーシステムインテグレーションの視点からの提言(http://www.esisyab.iis.u-tokyo.ac.jp/html/activity-status.html)の紹介と、それを背景にした今後の各企業による取り組みに関する議論が行われた。

 具体的には、新技術の導入における新たなビジネスモデルの必要性、多様な主体の社会受容性、複数の技術の組み合わせによる価値向上、供給に加えて需要という両サイドでの取り組みの重要性などが指摘された。また、立場や視点の異なる複数の企業・団体による共創、最終的にはそれぞれの主体の役割分担・費用負担が重要という指摘があった。またESIのII期の取り組みの方向性とそれに関する参加各社からの期待や抱負も述べられた。

 5月27日(木)の第12回「2050年のエネルギーと社会:何が難しいのか」では、ESIの岩船特任教授を含む6人の講演者により、再生可能エネルギーの大量導入と調整力の供給、セメント産業・民生部門の脱炭素、水素ステーションインフラの社会導入における制度整備、LNG輸入などにおける安定供給の確保など、エネルギー環境問題の解決における多面的な難しさに関する講演が行われた。パネルディスカッションでは、6人の講演者にESIの大岡 龍三 教授、そして先に行われた2回の「2050のエネルギーと社会」のシンポジウムの登壇者が加わり、それぞれの分野の解決の可能性の議論を通して、今後の取り組みに関する分野共通の視点・考え方・実施への課題と解決の可能性についての複数の視点が見出された。

 パネルディスカッションの議論の中では、対策技術のコスト低減については、セメントのコストが上がってもそれが建物全体に占める割合は少ないように、日本の場合は当該技術に加え周辺のコストも下げる必要があることが指摘された。他方、コスト問題は,国際競争力維持の問題であり、海外との競争にコストで負けることを防ぎ世界的な温暖化対策を促進するために、国際ルールを決めて公平な条件による競争を確保することが必要であるとの指摘があった。

 今回の2回のシンポジウムでは、ESIの活動が軸となり、産学連携とアカデミアの連携という2つの切り口で、国内外で進むカーボンニュートラルなど地球温暖化二体する取り組みの議論が深められたと言える。
http://www.esisyab.iis.u-tokyo.ac.jp/html/symposium.html

(エネルギーシステムインテグレーション産学連携研究部門 特任教授 荻本 和彦)
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