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岡田 恒男 名誉教授、喜連川 優 教授に日本学士院賞の授賞が決定

下記の通り本所の2名の教員に日本学士院賞の授賞が決定しました。

氏名現職研究題目
岡田 恒男東京大学 名誉教授、(一財)日本建築防災協会 顧問既存建築物の耐震性能評価と性能改善技術の開発に関する一連の研究
喜連川 優国立情報学研究所長、東京大学 生産技術研究所 教授大規模高性能データベースシステムの理論と応用に関する先駆的研究

授賞が決定した2名の業績内容は以下の通りです。


岡田 恒男 名誉教授
既存建築物の耐震性能評価と性能改善技術の開発に関する一連の研究

○授賞理由:
 岡田 恒男 氏は、耐震診断・耐震改修の研究分野の発展を先導し、既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断法を開発しました。一連の研究成果の中で特筆すべきは、既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震性能を「Is値(注1)」と呼ばれる指標値で表す耐震診断法を1970年代に開発したことです。この診断法は、現在全国的に普及し、各種建築物の耐震診断・耐震補強の学問分野としての進展も促し、新築建築物だけでなく、既存建築物の健全化も含めた地震被害の軽減に貢献しています。
 1995年の阪神・淡路大震災の際に大破・倒壊などの深刻な被害を生じた建築物の多くは耐震設計基準が改正になった1981年以前に建設されたものであったことから、1995年に、「建築物の耐震改修の促進に関する法律(注2)」が制定され、岡田氏らが開発した耐震診断法の骨子は法律の定める指針として採用されました。また、2011年の東日本大震災でも、耐震診断・耐震改修の重要性とその効果が再確認されたことから、岡田氏の研究成果は日本を始め各国で活用されています。

喜連川 優 教授
大規模高性能データベースシステムの理論と応用に関する先駆的研究

○授賞理由:
 喜連川 優 氏は、非順序型データベース演算実行方式(注3)を創案し、ビッグデータ時代に必須となる大量のデータ処理を飛躍的に高速化することに成功しました。従来は同期入出力(注4)が用いられていたのに対し、本方式では、非決定性を伴う非同期入出力(注4)を活用した新たな手法により、従来方式に比べ約1,000倍の性能向上を達成しました。本手法は約2,000億レコードから成る6年分のレセプトデータベースの高速解析に活用され、新たな医学的知見の導出や自治体における医療施策立案に利用される等、活用が進んでいます。喜連川氏は先進的データベース技術を用いた社会課題の解決への取組みも進め、DIAS(Data Integration and Analysis System)と呼ぶ世界的に極めてユニークな地球環境超巨大データプラットフォームの開発を37年に亘り進めて来ています。その容量は35PB(注5)を越え、衛星画像、河川のテレメトリ(注6)、レーダ等の多様なデータがリアルタイムに集積され、登録利用者は6千人を越え、その半数は海外です。激甚化する環境変化に対し、洪水、浸水災害の軽減・防災や医療分野に利用されつつあります。

非順序型データベースエンジンと従来型の相違
DIASシステムの概要

喜連川研究室ウェブサイト


用語解説

(注1)Is値
建築物の基本的な耐震性能を、その強度だけでなく靭性(粘り強さ)も加えて表す数値。このIs値により、建築物の耐震性を数値で比較できるようになった。
(注2)建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)
阪神・淡路大震災を受け、建築物の地震に対する安全性を確保するため、建築物の耐震改修を促進することを目的として1995(平成7)年12月25日に施行。この法律により、多くの人が集まる、学校、事務所、病院、百貨店など、一定の建築物(特定既存耐震不適格建築物)のうち、現行の耐震規定に適合しないものの所有者は、耐震診断を行い、必要に応じて耐震改修を行うよう努めることが義務付けられ、耐震診断や耐震改修を促進するため、建築基準法の特例等が規定された。
(注3)非順序型データベース演算実行方式
従来、同期入出力を多用していたのに対し、非順序型データベース演算実行方式は、全ての入出力を非同期入出力とする。一般に外部記憶からの読出しには時間がかかる為、当該方式では読出しデータの到着を待たずに次々と非同期読出し命令を発行する。読出し命令発行順と読出したデータの到着順は異なるため処理が複雑になるという問題が生じるが、これを技術的に解決した。当該方式では外部記憶装置の入出力性能をフルに活用可能となり、従来に比べ大幅に高い性能を発揮する。
(注4)同期入出力/非同期入出力
ある入出力命令を発行した後、その命令の完了を待って次の入出力命令を発行する方式を同期入出力と呼び、完了を待たずに次の入出力命令を発行する方式を非同期入出力と呼ぶ。
(注5)PB(ペタバイト)
10の15乗(1,000兆)バイト。
(注6)テレメトリ
テレメーター(遠隔計測装置)を使って、遠隔地の測定結果をコントロールセンターに送信すること。

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