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【記者会見】がれきから土木/建築材料へ、植物がコンクリートを蘇らせる ~セメント不要、副産物なしの循環利用を実現~

○発表者:
酒井 雄也(東京大学 生産技術研究所 講師)
中村 弘一(株式会社バイオアパタイト 代表取締役社長)
大野 治雄(大野建設株式会社 代表取締役社長)

○発表のポイント:
◆コンクリートがれきと廃木材を粉砕して混合して、加熱しつつ圧縮成形することで、それぞれが融合した新たな土木/建築材料を開発しました。
◆廃木材以外にも、野菜や落ち葉などさまざまな植物性資源でコンクリートがれきを接着できました。再生過程で新たなセメントは不要な上、副産物も発生しません。
◆大量に発生するコンクリートがれきおよび廃木材の有効活用と循環利用が期待できます。さらに、生産の際にCOを発生するセメントを使用しないため、温室効果ガスの排出抑制効果も期待されます。

○発表の概要:
 東京大学 生産技術研究所の酒井 雄也 講師、株式会社バイオアパタイト 中村 弘一代表取締役社長、大野建設株式会社 大野 治雄 代表取締役社長らは、コンクリートがれきと廃木材を粉砕して混合し、ホットプレス(加熱しつつ圧縮成形)することで、コンクリートと木材が融合した新たな土木/建築材料として、コンクリートがれきをリサイクルすることに成功しました。リサイクルコンクリートは、既存のコンクリートよりも数倍高い十分な曲げ強度を示しました。
 コンクリートがれきの再生過程で必要な材料は、コンクリートがれきと廃木材と水だけで、新たなセメントは不要です。また、副産物も発生しません。
 リサイクルコンクリート内では、木材の成分の1つであるリグニンがコンクリートがれきを接着しています。リグニンは多くの植物に含まれるため、廃木材の代わりに、野菜や落ち葉、製紙工程で発生する副産物としてのリグニンなどを試したところ、これらでもコンクリートがれきを接着できることが確認されました。リグニンは難分解性ですが、特定の木材腐朽菌によって生分解されることが知られており、リサイクルコンクリートを使うことで処分が容易になり、環境負荷が低下すると期待されます。
 本技術により、コンクリートがれきのリサイクル用途の拡大や、高付加価値化、さまざまな植物性資源の活用が期待でき、循環型社会の実現へ貢献すると考えられます。また、生産の際に大量のCOを発生するセメントを使用しないため、温室効果ガスの排出抑制効果も期待されます。
 本成果は、東京大学生産技術研究所研究速報誌「生産研究」で2020年3月1日(日)に公開され、また福岡で開催される国際学会ConMat'20(The Sixth International Conference on Construction Materials)で2020年8月27日(木)に発表されます。

○発表内容:
<研究の背景>
 一般的なコンクリートはセメント、砂、砂利に水を加えて製造されます(図1)。新たなコンクリートを作るには新しいセメントが必要ですが、セメントの製造では多くのCOが発生し、その量は全産業の5%に達しています。
 一方で、毎年約3500万トンと大量に発生するコンクリートがれきの使い方が問題になっており、リサイクル技術の開発が進められてきました。現状でも、コンクリートがれきのリサイクル率は98%と高いですが、そのうちの約9割は路盤材料として、道路建設の際に舗装の下に埋められているだけであり、循環を理想とするリサイクルを達成できてはいません。加えて、近年の建設需要の低迷により、コンクリートがれきを今後も路盤材料として吸収し続けることは困難と見られています。残りの1割のコンクリートがれきからは、砂や砂利が取り出され新しいコンクリートの製造に再利用されています。しかし、取り出した砂や砂利の表面に付着物があると、これを用いて製造したコンクリートの性能が低下するため、付着物の除去が必要となりますが、その工程には多くのエネルギーと手間がかかっています。
 以上のような背景から、コンクリートがれきの用途の拡大と、新たにセメントを用いることなく、多くのエネルギーや手間もかけずに質の高いコンクリートを再生できる技術開発が強く求められていました。
 一方で廃木材についても、年間で約800万トンを超える量が発生していますが、その多くは最終的に焼却や埋め立て処分され、リサイクルを達成できていません。今後、昭和40年代に作られた建築物の更新や国内の木材資源の活用に伴い、より多くの廃木材が発生すると予想されています。

<研究の内容>
 本研究グループは、コンクリートがれきと廃木材を粉砕し、これらを混合した粉体をホットプレスすることで、新たな土木/建築材料としてコンクリートがれきを再生可能なことを発見しました(図2)。さらに、木材のみでなく、接着の主成分と考えられるリグニンを含む各種野菜や、製紙工程で発生する副産物としてのリグニンを用いても、十分な曲げ強度を示すコンクリートを製造可能であることを確認しました。製造条件によっては、一般的なコンクリートの10倍に達する曲げ強度を示す硬化体を製造することにも成功しています。

<研究の意義と展望>
 この技術を活用して、内装材や外壁材、合板の代替など、さまざまな土木/建築材料としてのコンクリートがれきの再生利用を考えています。生分解性を示すと予想できるため、処分も容易であり、環境負荷も低減されると期待されます。
 この技術により、コンクリートがれきと廃木材を始めとする植物性資源の有効活用、循環利用が期待できます。さらに、生産の際に大量のCOを発生するセメントを使用しないため、温室効果ガスの排出抑制効果も期待されます。また本技術の応用として、セメントの代わりに植物で砂や砂利を接着した新たなコンクリートの製造も可能と考えられます。

○問い合わせ先:
東京大学 生産技術研究所 
講師 酒井 雄也(さかい ゆうや)
研究室URL:https://r.goope.jp/ysakai

○添付資料:

図1 一般的なコンクリートの例(右)と材料(左:セメント、砂と砂利)


図2 本技術で製造したリサイクルコンクリート(下段:右に行くほどコンクリートがれきの割合が多い)と材料(上段:廃木材とコンクリートがれき)

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