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【共同記者発表】医療・介護・健診に関するビッグデータの統合解析によるエビデンスに基づく地域包括ケアシステムの実現に向けた取組みを始動 (医療経済研究機構)

○発表のポイント
◆医療・介護・健診に関するビッグデータの統合解析ならびに医療・介護施策の立案を推進。
◆エビデンスに基づき住民の安心・安全の確保に資する効率的な地域包括ケアシステムの確立に向けた我が国初の取組みを開始。

○発表概要
一般財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構(所長:西村周三、以下、医療経済研究機構)研究部の満武巨裕の研究グループと国立大学法人東京大学 生産技術研究所(所長:藤井輝夫、以下、東大生研)の喜連川優の研究グループは、三重県名張市(市長:亀井利克、以下、名張市)と協力し、地域における医療・介護・健診に関するビッグデータを活用し、エビデンスに基づく効率的な地域包括ケアシステムを実現するための研究の取組みを開始しました。
地域における医療・介護・健診に関する個々の施策は、国民健康保険、後期高齢者医療広域連合、介護保険広域連合、県庁をはじめとする複数の異なる制度や組織がそれぞれ担っていることから、従来、自治体において医療・介護・健診を一体的に捉えて分析し、施策の立案に活かす試みは十分には行われておりませんでした。医療経済研究機構と東大生研は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム」(プログラム・マネージャー:原田博司、以下、ImPACT)の支援の下、地域における医療・介護・健診のビッグデータを活用する一体的な施策立案の実現を目指す研究を進め、昨年度、医療・介護・健診のそれぞれのビッグデータを統合して解析可能な超高速ヘルスケアビッグデータ解析システムの試作に成功しています。この度の取組みは、当該研究を発展させると共に、さらに名張市の協力を得ることにより、地域における医療・介護・健診の実態に即した地域包括ケアシステムの確立に向けた具体的な施策立案を目指すものであり、我が国で初めての試みです。
さらに、名張市は、地域福祉教育総合支援システムの推進を行っており、「名張版ネウボラ~妊娠・出産・育児の切れ目のない支援」、「まちじゅう元気!!プロジェクト」等の活動を行っています。医療・介護・健診に関するビッグデータに加え、新たなビッグデータを融合して活用していくことにより、科学的な自立支援等のエビデンスの分析も進めていきます。

<原田博司プログラム・マネージャーのコメント>
本研究開発プログラムは、現状のビッグデータ規模を遙かに凌ぐ「超ビッグデータ」時代に向けて、広域通信ネットワークと超高速データベース処理の2柱を統合した基盤技術を世界に先駆けて確立するとともに、この基盤技術により、国民(ヒト)と生産現場(工場)の健全性維持のための課題解決に挑戦するものです。医療経済研究機構と東大生研の研究グループは、三重県下の自治体との協力関係の下、自身が開発した超高速ヘルスケアビッグデータ解析システムを駆使し、地域における通院実態や特定疾患の経時的変化の解明を進める等、先駆的な研究成果を次々と達成してきています。この度、名張市の協力を得て新たに着手する研究の取組みは、これまでに培ってきたビッグデータ分析に関する研究成果を昇華し、実際の地域医療施策の立案に繋げるものであり、我が国初の試みです。

<研究の内容>
医療経済研究機構と東京大学は、これまで内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム」(プログラム・マネージャー:原田博司、以下、ImPACT)の支援の下、東大生研の保有する非順序型実行原理に基づく超高速データベース技術[1,2]を用いた健康・医療ビッグデータの利活用に向けた研究を推進してきております[3,4]。その一環として、地域における医療・介護・健診のビッグデータを活用した施策立案を目指す研究を進めてきており、昨年度には、医療・介護・健診のそれぞれのビッグデータを統合して解析可能な超高速ヘルスケアビッグデータ解析システムの試作に成功しています。当該システムにより、例えば図1に示すように、地域の通院動態を多角的に捉えることが可能となりました。現在、試作したシステムに対し、更に多くの健康・医療ビッグデータを取り込み、施策の立案に必要となる機能を追加し、実用化に資するよう発展させています。

<今後の展開>
医療経済研究機構と東大生研は、名張市の協力を得ることにより、この発展させた解析システムを用い、地域における医療・介護・健診の実態に即した地域包括ケアシステムの確立に向けた具体的な施策立案を目指す取組みを行います。具体的には、今年度中に医療・介護の需要供給の実態の可視化、特定健診受診率の向上と効率化分析、各種リスクファクターに基づくベンチマーク分析、医療・介護支出目標の予測手法の確立等を進め、これらの成果に基づき、来年度中に財源調整等の立案へ結びつける予定です。また、名張市が推進している「まちじゅう元気!!プロジェクト[5]」等の活動と連携し、これらの活動から生み出されるビッグデータについても、生活習慣病の重症化予防、科学的な自立支援等への利活用に向けた分析を進める予定です。

○問い合わせ先
<研究(医療経済学)に関すること>
一般財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構
満武 巨裕(ミツタケ ナオヒロ)
〒105-0003東京都港区西新橋1-5-11 第11東洋海事ビル2F
Tel:03-3506-8529 Fax: 03-3506-8528

<研究(医療経済学)に関すること>
国立大学法人東京大学 生産技術研究所
合田 和生(ゴウダ カズオ)
〒153-8505 東京都目黒区駒場四丁目6番1号
Tel:03-5452-6594 Fax: 03-5452-6577

<ImPACTの事業に関すること>
内閣府 革新的研究開発推進プログラム担当室
〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
Tel:03-6257-1339

<ImPACTプログラムの内容およびPMに関すること>
科学技術振興機構 革新的研究開発推進室
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K's五番町
Tel:03-6380-9012 Fax:03-6380-8263

資料

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図 三重県に於ける国民健康保険被保険者の通院動態の可視化の一例

参考

[1]
喜連川優,合田和生.アウトオブオーダ型データベースエンジンOoODE の構想と初期実験.日本データベース学会論文誌.Vol.8 No.1, pp.131-136 (2009)

[2]
山田浩之,合田和生,喜連川優.128ノード規模のストレージインテンシブクラスタ環境におけるアウトオブオーダ型並列データ処理系の性能評価.電子情報通信学会論文誌 Vol.J98-D No.5, pp.728-741 (2015)

[3]
満武巨裕.日本のレセプト情報・特定健診情報等データベース(NDB)の有効活用.情報処理 Vol.56 No.2, pp.140-144 (2015)

[4]
満武巨裕.レセプトビッグデータ解析の現状と将来.実験医学 Vol.34 No.5, pp. 799-804 (2016)

[5]
柴垣維乃.まちじゅう元気!!プロジェクト~地域の元気づくり・人づくりのプロジェクト~.第57回全国国保地域医療学会,演題189 (2016)

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