構造有機化学質問掲示板

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構造有機化学の演習問題について

匿名 (2009-01-24 (土) 20:17:40)

問題5.で、クライゼン転位では、電子がフェノラートイオンのHOMOからアリルカチオンのLUMOに移動することで反応は進行しますが、このときなぜ最も波動関数の振幅が大きい炭素どうしの間に共有結合ができるのかわかりません。

  • 結合次数の考え方を思い出してみてください。結合次数とは、隣り合う原子の軌道関数の係数の積をとって分子軌道ごとに足し合わせたものでした。係数が同符号でそれぞれの値が大きいほど結合次数が大きくなります。フェノラートのHOMOとアリルのLUMOが相互作用してできる軌道を考えると、振幅の大きい炭素間の結合次数が大きくなり、結合ができるというわけです。 -- 北條 2009-01-24 (土) 23:10:04
  • 補足:Bruiceの有機化学,p.355,p.1320およびその近傍も参照してください。 -- 北條 2009-01-26 (月) 11:44:30

構造有機化学で配られた、演習問題について質問があります。

匿名 (2009-01-23 (金) 17:33:09)

1.なのですが、よく分かりません…。
 「塩の溶解」「酸化還元反応」「中和反応」「鉄の磁化」は、イオンが関係しているから価電子と直接的な関与があると思い、(a)と考えました。

 「可視光吸収」「融解」「凝固点降下」「沸騰」「気体の熱膨張」「電子レンジによる加熱」「シリカゲルによる乾燥」「屈折」「水とベンゼンの相分離」は、価電子ではなく、双極子によるものだと思い、(b)と考えました。
 
自分でも、どういう基準で分ければいいのかが分かりません。考え方を教えて下さい。

  • 「直接的に関与」「関与がごく小さい」というのが少し曖昧で戸惑ったかもしれませんが,要するに明確に線引きすることはできないことをあらかじめ断わっておきます。 問題の意図は,その現象にともなって価電子が移動したり運動の状態が変わるかどうか,を判定することです。価電子がある状態のまま「凍りついて」いてもその現象がおきるかどうか考えてみてください。 「塩の溶解」ではイオンだったものがそのままイオンに分かれます。 「酸化還元反応」では還元剤から酸化剤へ電子が移ります。 「中和反応」ではプロトンとの共有結合ができたり壊れたりします。 「鉄の磁化」では電子のスピンの状態がマクロなスケールで変わります。 「可視光吸収」では占有軌道から空軌道への電子遷移がおこり電子の状態が変わります。 「融解」は価電子間の交換斥力によって起きますが,電子状態そのものの変化は小さい。 「凝固点降下」は分子の性質によらず粒子の数のみで決まります。 「沸騰」は分子間の引力と運動エネルギーのバランスで決まります。分子間引力は価電子の分布に左右されますが沸騰の前後であまり変化しません。 「気体の熱膨張」は気体分子の種類によらず運動エネルギー分布でほぼ決まります。 「電子レンジによる加熱」は分子の双極子が電場から受けるエネルギーが熱に変わる現象です。双極子モーメントは価電子の分布に左右されますが加熱の前後であまり変化しません。 「シリカゲルによる乾燥」はいわゆる物理吸着で,分子の種類にあまり依存しません。 「屈折」は光の電場によって価電子が揺さぶられ,電子状態が変化することによって起こります。 「水とベンゼンの相分離」は分子間の引力によって決まりますが,相分離の前後で電子状態はあまり変化しません。 -- 北條 2009-01-23 (金) 17:33:49

構造有機化学について4つ質問があります。

匿名 (2009-01-22 (木) 22:46:10)

まず、最後の授業で配布してもらった演習問題5.の解答を、次のように考えました。
クライゼン転位は、エーテル結合が切れてアリルカチオンがフェノラートイオンの芳香環に置換することによって進行する。このとき、アリルカチオンは結合次数の小さい、二重結合の緩んだ炭素を攻撃して置換する。

どうでしょうか?どんなふうに答えていいのかいまいち分からなくて…。

そして、演習問題の4.(3)ベンゼンの軌道エネルギー計算について、(1)や(2)と同様に解こうとしてもφの組み合わせ方が分かりません。
(2)1,3-ブタジエンの軌道エネルギーは、節の少ないものから順に、α+1.62β,α+0.62β,α-0.62β,α-1.62βとなったのですが、合っていますか?


最後に、12月4日の演習の問2についても質問があります。
二重結合の基底状態と励起状態の差が、右端から2番目のものが( 0.717-0.549 = 0.168 )で、右端から4番目のもの( 0.741-0.607 = 0.134 )よりも大きく、より緩むためcis-trans異性が起きやすいと考えられるのですが、中程に位置する二重結合の方がcis-trans異性化を起こしやすいのでしょうか??

  • まず最初の質問から。アリルカチオンがフェノラートイオンの炭素を攻撃するところまではOKです。このとき電子はフェノラートイオンのHOMOからアリルカチオンのLUMOに移動します。それぞれの軌道で,もっとも波動関数の振幅が大きい炭素どうしの間に共有結合ができますが,それはどこであるか考えてみましょう。フェノラートのπ軌道を教科書で探したり,ヒュッケル計算機で計算してみましょう。 -- 北條 2009-01-23 (金) 17:11:20
  • 次の質問。炭素に順番に1〜6の番号を振ります。1−4を貫く線をx軸,それに垂直な軸をy軸とします。φを1と4の組と2,3,5,6の組にわけて,それぞれSS(x軸に関して対称,y軸に関して対称。以下同様),SA,AS,AAの対称性をもつ線形結合を作ります。あとは同じ対称性のもの同士で行列を対角化する点は(1),(2)と同じです。1,3-ブタジエンの解,それであってます。 -- 北條 2009-01-23 (金) 17:17:08
  • 最後の質問。異性化しやすいかどうかは,結合次数の変化の大きさよりも励起状態での結合次数の大きさ(小ささ)だと思います。もっとも,このヒュッケル計算のレベルから考えると定性的な議論(励起したらまわりやすくなるという程度)をするのが精々で,位置ごとの相対的な比較をするのは難しいです。 -- 北條 2009-01-23 (金) 17:31:31

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