年次要覧
第69号 2020年度 I. 概要

3. 令和2年度の主な活動内容

3. 令和2年度の主な活動内容

令和2年度は新型コロナウイルスの感染拡大によって,例年とは大きく異なる一年となった.国の緊急事態宣言(1回目)が4月7日に出され,5月25日に解除されるまで,特に実験やフィールドワークを行う研究の遂行が大きく制限された.その後は全学の活動制限に準じて,感染拡大防止対策を実施しながら研究・教育活動を続けている.このような状況のなか,4月下旬には本部に倣って所内に「生研・新型コロナウイルス対策タスクフォース」を立ち上げ,全構成員を対象にしたアンケートの実施と課題の把握,ウェブサイトの立ち上げとアンケート集計結果・FAQ・学生向け支援情報の掲載,日本語と英語による迅速な情報発信,所内学生用Slack の立ち上げなど,多くの危機管理・支援業務を遂行した.次世代育成オフィス(ONG)では,大型連休に自宅にいる子どもに向けて,「最先端の科学技術」をテーマにした動画を集めたオンライン教材「ONG STEAM STREAM」を公開するなど,所内のみならず所外に対しても貢献を行った.毎年初夏に実施している駒場リサーチキャンパス公開は中止となったが,秋の柏キャンパス公開はオンラインで実施することができ,普段は柏キャンパスまでお越しいただけない遠方の方々のアクセスが増えたと推察されるなど,今後のキャンパス公開の開催形式を議論する上で参考になる点もあった.さらに,緊急措置として所内予算を配分して,所内から提案があった19件の新型コロナウイルス感染症対策のための研究活動を6月から開始し,既に成果が出始めているものもある.

70周年記念事業の一環として令和元年度から進めている,日本各地が誇る魅力とビジョンを描いた大漁旗を自治体ごとに制作し,東京大学 安田講堂にすべての大漁旗を結集してたなびかせる「日本各地の「魅力」と「願い」をつなぐ大漁旗プロジェクト」では,令和2年度末までに51自治体等の大漁旗が制作された.また,大漁旗図案のアイデアをサポートするため,本所教職員によるワークショップ「もしかする未来~自然×科学×まちづくり~」は,対面とオンラインを併用することにより令和2年度は5回実施した.なお,令和3年初頭に予定していた安田講堂でのイベントは,新型コロナウイルス感染拡大のため延期された.

研究組織については,令和2年4月に千葉実験所を本所の活動を広く支える基盤組織と位置付けるため,大規模実験高度解析推進基盤に改組した.11月には日本の河川流域から地球規模までを対象とした水文現象の観測,プロセス解明,モデリング,並びに予測に関する最先端研究を推進すること,及びその成果を用いて社会に貢献することを目的に,所内センターとしてグローバル水文予測センターを設置した.また,寄付研究部門として,主に新技術による遺伝子改変ウイルスベクターを用いて,新しいワクチン開発や難治性疾患に対する新治療法を開発するとともに,本所の様々な技術開発研究とも連携して新しい医療技術を開発して,社会に貢献することを目的として,ウイルス医療学寄付研究部門を令和2年4月に設置した.社会連携研究部門として,学際的なアプローチによりCyber空間とPhysical空間を整合・統合させるアーキテクチャを構想するとともに,その構築に資する学理を創成することを目的として,建築・都市サイバー・フィジカル・アーキテクチャ学社会連携研究部門を令和2年4月に設置した.また,理論・シミュレーション・実験を融合することにより,ミクロからマクロにわたる新たな階層的な視点から,着霜という非平衡現象の物理的な機構に迫ることで,この現象の基礎的な解明をはかるとともに,社会的問題の解決のための基本的な物理的指針を確立することを目指した着霜制御サイエンス社会連携研究部門を10月に設置した.さらに,大規模農業において様々なセンシング装置を搭載した遠隔ロボットを用いて環境,生育に関するデータ収集を行い,学習を利用したデータ解析を行うことによって効率的な農業生産の実現を目指すほか,新たなセンシング技術として高性能FPDおよび学習ベースの画像処理技術によるX線撮影装置の多機能化,高精度化,低コスト化を目指してIoTセンシング解析技術社会連携研究部門を12月に設置した.一方,令和3年3月末に未来ロボット基盤技術社会連携研究部門,社会課題解決のためのブレインモルフィックAI社会連携研究部門,マイクロナノ学際研究センター,持続型エネルギー・材料統合研究センター,都市基盤安全工学国際研究センター,海中観測実装工学研究センターが時限を迎え,令和3年4月からマイクロナノ学際研究センター,持続型エネルギー・材料統合研究センター,海中観測実装工学研究センターは所内センターとして活動を続けることとなった.都市基盤安全工学国際研究センターは本所の附属研究センターとしての活動は終了することとなったが,全学の連携研究機構である「災害・復興知連携研究機構」と「One Health One World連携研究機構」の設立に繋がっているほか,都市基盤安全工学国際研究センターと情報学環附属総合防災情報研究センターに設置された災害対策トレーニングセンターは所内センターとして引き続き2部局に跨るかたちで設置し,活動することとなった.連携研究センター,国際連携研究センターについては,ソーシャルビッグデータICT連携研究センターは令和3年3月末をもって活動を終了し,LIMMS/CNRS-IIS(UMI2820)国際連携研究センターは令和3年1月1日にLIMMS/CNRS-IIS(IRL2820)国際連携研究センターに名称が変更された.

海外との連携の推進としては,令和2年7月に本所が主担当部局になって国立清華大学と全学協定を締結したほか,令和2年6月にギュスターヴ・エッフェル大学と,10月にトエンテ大学MESA+研究所と部局間協定を締結した.国内における連携の推進については,地域文化・産業振興等を目的として令和2年4月に鹿児島県肝属郡肝付町と,令和3年3月には柏の葉地区において自動運転バスに関する実証実験を実施し,それにより得られるデータ等に基づいて自動運転バスの運行に関する調査・研究開発の推進を目的に愛知製鋼(株),柏市,柏の葉アーバンデザインセンター,(株)IHI,コイト電工(株),先進モビリティ(株),損害保険ジャパン(株),東京大学大学院新領域創成科学研究科,東京大学モビリティ・イノベーション連携研究機構,東武バスイースト(株),パシフィックコンサルタンツ(株),BOLDLY(株),三井不動産(株)および三菱オートリース(株)と協定を締結したほか,(国研)情報通信研究機構および大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立情報学研究所とは平成25年に締結した「情報通信分野における連携・協力の推進に関する個別協定書」の協定関係を継続するために,改めて情報通信分野における連携・協力の推進に関する連携協力協定を締結した.

組織の運営に関する事項としては,本所の特徴と魅力を多面的に描き出した冊子“生研プロファイル:エディ(IIS Profiles : Eddy)”の発行(令和元年10月)を経て,3名の副所長を中心とする将来構想戦略化WGを組織して将来構想に関する議論を行った.令和2年10月には本所における研究の一層の進展をはかり,研究振興の方策等について助言協力を仰ぐため,横山禎徳氏を特別研究顧問に迎えたほか,令和3年1月には研究顧問懇談会を開催し,産学官の様々な立場でご活躍の21名の研究顧問の方々にご参加いただき,本所全体に対する活動への印象,感想,助言,取り組むべき課題などについて意見交換を行った.自己点検・評価関連については,教員レビュー制度によって5名のレビューを実施した.その他,産学連携,国際連携に続き社会連携を強化するための議論・検討を進め,令和3年4月に二工歴史資料室を社会連携・史料室に改組することとなった.