所長挨拶
所長挨拶

コロナ禍により、私達の生活は一変し、強力なウイルスに対する科学や技術の無力さを痛感しました。同時に、テレワークやリモート講義などを通じて、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の重要性や将来性を身近に認識するようになりました。技術だけでは解決できない問題もあるものの、複雑化、多様化を続ける現代社会が抱える問題を解決するために、工学に期待される役割は益々大きくなってまいりました。

東京大学生産技術研究所は、日本で最大規模の大学附置研究所です。学術的な真理を探求する研究・教育姿勢を基本としつつ、伝統的な特徴である垣根のない分野横断型の研究、さらには、実践的な産学連携や国際連携、社会実装を目指した実学的な研究など、幅広く教育・研究活動を展開しております。
2019年には設立70周年を迎え、この間、多くの優れた研究成果を創出するとともに、多くの優秀な人材を輩出してきました。

本所は、工学のほぼすべての領域を包含する総合工学研究所であり、5つの研究部門から構成されています。教授・准教授・講師がそれぞれ主宰する約120の研究室を擁し、約250名の教員と約150名の職員、約800名の大学院学生・ポスドクの総勢1,200名以上が教育研究活動に従事しています。これらの構成員が一体となって、優れた才能を育成する教育および研究活動に参加しています。

さらに、本所には複数の研究部門を跨る3つの附属研究センターと7つの所内センターおよび2つの連携研究センター、国際的な共同研究を展開する国際連携研究センターが設置されています。各研究室は、専門分野の独創的な研究の推進に加えて、センターなどの分野横断型の組織を活用した分野融合あるいは国際的な活動を組織的に展開しています。
2017年には、附属千葉実験所が本所発祥の地である西千葉地区から柏キャンパスに機能移転し、2020年から大規模実験高度解析推進基盤として新たに活動しています。また、2017年には、価値創造デザイン推進基盤という、これまでになかった全く新しい施設も活動を開始しました。
 
本所は設立当初から、工学としての学術研究の意義は社会実装の実現にあることを強く意識し、専門分野の深耕と垣根を超えた協働を通して、新たな学問分野を創出するだけではなく、実社会での課題解決に貢献できる技術の開発と展開を実践してきました。また、産業界において技術開発と普及の実務を担う人材の育成も使命としてきました。本所設立以来のこの精神と使命感は脈々として継承され、産学連携を標榜する組織の先駆けとして、工学に関わる諸課題に実践的に取り組んでおります。

このような実績と積極的な取り組み姿勢は、“生研(SEIKEN)”の名と共に広く認識されています。今後も私たちは、大学の研究機関として学術的真実を追求しつつ、革新を通じて新たな価値の創造に貢献し、実社会への実装を見据えて、人文科学と工学を統合する学際的なアプローチを追求する新しいSEIKENスタイルの構築を模索していきます。

国内最大ながらも、組織としての強い一体感を維持している本所は、機動力と総合力を生かし、工学分野における世界最高レベルの研究所として、研究と教育を通じて、これからも社会貢献を果たして行くものと信じております。

所長 岡部 徹