年次要覧
第71号 2022年度 III. 研究活動

3. 研究部・センターの各研究室における研究

3. 研究部・センターの各研究室における研究

構造物の静的および動的破壊に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 中埜 良昭

無補強組積造壁を含むRC造脆弱架構の構造性能に関する実験的研究

教授 中埜 良昭,助教(中埜研) 松川 和人,シニア協力員(中埜研) 芳賀 勇治,大学院学生(中埜研) Adnan S.M. Naheed
途上国でみられる無補強組積造壁を含むRC造脆弱架構の破壊メカニズムと構造性能の検討を目的として,比較的知見が蓄積されているバングラデシュ国での事例を参考に,無補強組積造壁の有無をパラメータとした2層2スパンの骨組試験体を2体作製し加力実験を2018年度に行った.2019~2020年度には無補強組積造壁付き試験体の挙動を再現でき,さまざまな破壊モードに適用可能なマクロモデルの開発を実施してきた.2022年度は,面外挙動を再現できるモデルの開発と,面外方向振動台実験の計画を行った.

都市の急激な高密度化に伴う災害脆弱性を克服する技術開発と都市政策への戦略的展開プロジェクト

教授 中埜 良昭,教授(東北大) 前田 匡樹,教授(大阪大) 真田 靖士,教授(東北大) 姥浦 道生,助教(中埜研) 松川 和人
本プロジェクトは,バングラデシュ国首都ダッカにおいて,地震や重力などの自然外力に対する建物の強靭化のために同国の材料特性や施工技術を踏まえて新たな建物補強技術を開発するとともに,これを実装することにより,同市の災害レジリエンス向上を実現しようとするものである.本年度は,本プロジェクトの成果をまとめた全4冊のマニュアル・ガイドラインを完成させ,ダッカでの最終セミナーを開催した.

Is値が著しく低い旧基準鉄骨造建築物の耐震性能の実力評価と耐震診断への展開

助教(中埜研) 松川 和人,教授 中埜 良昭
旧基準で建設された建築物が地震に対してより脆弱であることは一般にも知られてきているが,なかでも民間の鉄骨造(S造)建築物について,学術的な検討はほとんど行われてきていない.こうした建築物を耐震診断すると,多くの場合,非常に低い数字が算定されるが,地震を受けて崩壊したという報告は少ない.本研究は,そうした「脆弱」と評価される旧基準S造建築物の「実力」を実験実測的に明らかにし,木造やRC造と同様,被害や実性能と対応する性能評価の実現を最終目標としている.

地震による構造物の破壊機構解析(共同研究)

教授 川口 健一,教授 目黒 公郎,准教授 清田 隆,教授 桑野 玲子,教授 腰原 幹雄,助教(川口(健)研) 張 天昊,教授 中埜 良昭,准教授 沼田 宗純

CFRP製ジェットエンジンファンブレードの開発

教授 吉川 暢宏,大学院学生(吉川(暢)研) 佐原 由香
CFRP製ファンブレードの長期信頼性を確保するためCFRP材料の疲労強度評価手法を開発している.樹脂と炭素繊維を区分するミクロスケールシミュレーションにより,樹脂の局所的応力上昇を的確に評価することで疲労寿命が予測できることを,積層CFRP試験片を用いた疲労試験により確認した.本年度は特に低サイクル疲労に関する検討を行った.

ミクロスケール強度基準に基づく短繊維熱可塑性CFRP部材の強度評価

教授 吉川 暢宏,特任研究員(吉川(暢)研) 小笠原 朋隆
短繊維熱可塑CFRP材料の強度評価手法を開発している.ランダムに配置された短炭素繊維の状況を把握するためX線CTにより撮像された画像から内部構造を構築するための画像処理技術を開発した.作成された内部構造の3次元モデルに基づく強度評価手法を樹脂の材料非線形強度モデルを導入して検討した.現実的なマクロ破壊モデルを構築するための統計的強度モデルを検討し,最弱リンクモデルではなく並列モデルで破壊強度が設定できることを確認した.成形時に樹脂に発生する残留応力を評価し,疲労寿命に与える影響を検討した.

宇宙輸送機用低温液化燃料タンクの開発

教授 吉川 暢宏,特任研究員(吉川(暢)研) 小笠原 朋隆
CFRP製極低温液化燃料タンクの実用化のため,マイクロクラック発生メカニズムをミクロスケール有限要素解析により解明する.正確な樹脂物性を入力して極低温により発生する熱負荷を与えて,炭素繊維間の樹脂に発生する力学場を解析する.実験との照合によりシミュレーションの妥当性を検証する.

機械学習を利用した高圧水素容器の最適設計

教授 吉川 暢宏,特任教授 竹本 真一郎
設計変数が膨大な炭素繊維強化プラスチック製の高圧水素容器について,最適設計を効率よく探索するための機械学習の活用法を検討している.炭素繊維強化プラスチック層の積層構成や容器の形状を適切にパラメータ表記し,パラメータをランダムに変動させて機械学習用の有限要素モデルデータを生成する.メゾスケール有限要素解析により,個々の設計の破裂圧力を正確に予測して機械学習データに加え,軽量最適設計を探索するアルゴリズムを開発した.

熱可塑複合材料の製造プロセスシミュレーターの研究開発

教授 吉川 暢宏,特任研究員(吉川(暢)研) 小笠原 朋隆
熱可塑炭素繊維強化複合材料の強度信頼性評価を,製造プロセス段階にまで立ち入って的確に評価するためのシミュレーションシステムを開発している.ミクロスケールでの炭素繊維と樹脂の複合システムとしての加工特性をシミュレーション可能なように,樹脂の温度依存非線形材料特性を直接的に導入した.マルチスケール展開によりマクロな加工特性を導出し,実部品の熱可塑プレス成形プロセス中に発生する不整を評価可能にした.ファイバステアリング技術への適用のため,Automated Tape Laying時の温度とひずみ計測結果を用いてバリデーションを行った.

高圧水素用タイプ3繊維強化プラスチック製蓄圧器の疲労寿命評価法の開発

教授 吉川 暢宏,技術専門職員(吉川(暢)研) 針谷 耕太,特任研究員(吉川(暢)研) キム サンウォン
水素社会を支える基盤インフラである水素スタンド用蓄圧器で活用されるタイプ3炭素繊維強化複合容器の最適設計のため,圧力サイクルに対する的確な寿命予測を行うための有限要素解析手法を開発している.フィラメントワィンディングされた炭素繊維強化プラスチックの積層構成を正確にモデル化するためのソフトウエアFrontCOMP_tankを開発した.詳細な有限要素解析によりアルミ合金ライナーの疲労強度予測の枠組みで寿命予測が可能であることを実証した.また自緊処理により発生する圧縮残留応力により延長される圧力サイクル寿命のメカニズムを検討している.

2次元物質による水素センシング

教授 福谷 克之,研究員((国研)日本原子力研究開発機構) 寺澤 知潮,(国研)日本原子力研究開発機構 鈴木 誠也,准教授(大阪大) Wilson Dino
グラフェンをはじめとする2次元原子層物質は水素貯蔵や水素センサーとしての応用が期待される.最近グラフェンには水素透過性があり,その際大きな同位体効果を示すことが示され,同位体分離への応用が期待されているが,その詳細な分離効率や透過機構は明らかではない.本研究では超低速イオンビームを開発し,高品質2次元物質におけるプロトン透過能を実験的に明らかにすることを目指している.昨年度までに,半球型分析器にイオン源を組み込み,ウインフィルターを導入することで,エネルギーと質量を選別した超低速イオンビーム源を開発した.このとき,水素分子イオンに対して水素原子イオンの量が二桁程度小さいことが問題となった.今年度は,イオン源のエミッション電圧の最適化,ガス導入系の改良,さらにパルス計測法の構築を行い,検出感度の向上をはかった.

スピン偏極水素源の開発と応用

教授 福谷 克之,大学院学生(福谷研) 大橋 悠生,研究員((国研)日本原子力研究開発機構) 植田 寛和,大学院学生(福谷研) 石崎 雄士,助教(福谷研) 小澤 孝拓
水素原子はスピン1/2を持つ電子と陽子からなる複合ボゾンであり,超微細相互作用により全スピン1と0の2つの状態が存在する.本研究では,スピン状態が偏極した水素ビームを作成し,スピンダイナミクス解明と散乱を利用した表面磁性プローブを開発することを目的として研究を進めている.今年度は,磁性体であるニッケル表面および表面状態がラシュバ分裂するAg(111)-Bi表面とスピン偏極水素との相互作用を調べた.一定時間スピン偏極水素を照射したのちに熱脱離スペクトルを測定することで,吸着確率の評価を行ったところスピン方向に大きく依存することがわかった.またニッケル表面では,水素引き抜き反応のスピン方向依存性も調べ,同様に大きな依存性があることを見出した.また新たな試料として,トポロジカル絶縁体であるBi2Se3薄膜の作製と水素吸着特性の評価を行った.Si(111)表面にBiとSeを共吸着させることで薄膜の作製に成功した.さらに水素吸着を行ったところ,表面と層間へのインターカレーションを示唆する結果が得られた.

ミュオンスピン回転緩和法による氷中水素イオン構造の解析

教授 福谷 克之,技術専門職員(福谷研) 河内 泰三,研究員((国研)日本原子力研究開発機構) 伊藤 孝,研究員((国研)日本原子力研究開発機構) 髭本 亘,(国研)日本原子力研究開発機構 志賀 基之
氷中の水素イオンは,水素結合間に配置した構造を取るが,2つの酸素原子の中央に位置する場合と片側に偏った場合が考えられ,その詳細は環境に依存する.昨年度までに,ミュオンスピン回転緩和法を用いて,アモルファス氷中の水素イオンの構造を明らかにした.今年度は結晶氷中の水素イオンについて,ミュオンスピン回転緩和スペクトルの解析を行い,第一原理分子動力学計算の結果と合わせて検討した.スピン緩和のスペクトルを,複数スピンの時間発展を考慮したシミュレーションと比較したところ,アモルファス氷中に比べて最近接プロトンの距離が短い中性分子状態がよく結果を再現することがわかった.第一原理分子動力学計算の結果を解析したところ,イオン状態からプロトンが拡散するため,中性分子状態が形成されることがわかった.

水素の物理吸着とオルト─パラ転換・分離

教授 福谷 克之,研究員((国研)日本原子力研究開発機構) 植田 寛和,(国研)日本原子力研究開発機構 山川 紘一郎
水素分子には核スピン3重項のオルト水素と1重項のパラ水素が存在し,固体の表面でオルト−パラ転換が生じることが知られている.水素の液化貯蔵には,オルト−パラ転換が不可欠なことから,転換の物理的機構解明と高効率転換触媒の開発が必要とされている.本研究では,これまでに,転換速度測定の時間分解能を1s以下に向上させることに成功し,Pd(210)表面に化学吸着した水素分子のオルト−パラ転換速度を明らかにした.今年度はさらに転換速度の温度依存性の結果の詳細な考察を行った.電子系がフェルミ分布,フォノン系がボーズ分布することを考慮し,転換の状態密度を理論的に計算し実験結果と比較検討を行った.その結果,転換エネルギーが電子系と2フォノンに散逸するモデルで実験結果を再現することを明らかにした.

遷移金属酸化物表面の電子状態・表面伝導

教授 福谷 克之,大学院学生(福谷研) 松澤 郁也,大学院学生(福谷研) Muhammad Irfandi,助教(福谷研) 小澤 孝拓,特任研究員(福谷研) 加藤 弘一,教授(大阪大) 田中 秀和
金属酸化物は光触媒や新規電子・磁気デバイスとして注目される.ペロブスカイト型希土類ニッケル酸化物の水素吸蔵に伴う金属絶縁体転移を調べた.Pt触媒を用いた水素化では,水素化領域の空間分布が抵抗測定の結果に影響を与えることがわかった.均一に水素化されるSmNiO3では,水素濃度が50%程度で抵抗の極大があらわれ,その後水素濃度100%で抵抗が低下することが判明した.2種類の絶縁体状態が存在すると考えられる.並行して,Pt触媒を用いない水素化方法を考案し,試料を均一に水素化する方法を確立した.これまでTiO2の水素化を行い,それに伴う電子状態変化を調べてきたが,今回新たにルチル型TiO2(100)の水素イオンによる水素化に伴う電子状態と電気抵抗同時測定を行った.水素化に伴い室温で電気抵抗が低下するとともに,バンドギャップ中にスモールポーラロンによる電子状態が生じることを明らかにした.

金属表面への水素吸着・吸蔵と伝導特性,表面反応

教授 福谷 克之,大学院学生(福谷研) 小澤 孝拓,大学院学生(福谷研) 石崎 雄士,特任研究員(福谷研) Sudhansu Das,特任研究員(福谷研) 加藤 弘一,講師(筑波大) 関場 大一郎,研究員((国研)日本原子力研究開発機構) 植田 寛和
金属には水素を自発的に解離吸着し,さらに吸蔵する金属があり,触媒活性や吸蔵金属として注目される.本研究では,水素吸着・吸蔵における表面効果と表面触媒反応,伝導特性に関する研究を行っている.本年度は,プラチナ薄膜中に低エネルギー水素イオン照射で形成される準安定状態の緩和を抵抗測定により観測した.高温で熱活性化過程を示すのに対して低温で温度にあまり依存しないトンネル効果による拡散を生じることがわかった.さらに両者のクロスオーバー領域ではフォノンとの相互作用に起因したディップ構造があらわれることを見出した.核反応法を用いて水素の分布を調べ,さらに熱脱離分光により熱的安定性を明らかにした.昨年度から着手したAg-Bi表面への水素吸着について,熱脱離分光と低速電子回折の結果を考察し,水素に誘起されるBi原子の移動機構を考察した.

ナノ・マイクロ流体ダイナミクスの研究

教授 酒井 啓司,助教(酒井(啓)研) 美谷 周二朗
近年,直径数μm程度の微小流体粒を用いた新たなデバイス作製技術の研究が盛んに行われている.この程度の微粒子では,表面エネルギーや表面粘弾性,あるいは流体内イオンによる静電相互作用により,そのダイナミクスがマクロな液滴とは極めて異なったものとなることが予想される.本研究では,これまで精密な測定が困難であった微小複雑流体粒子の静的構造や粒子運動を観測する新たな手法の開発を行っている.本年度は引き続き微小粒子生成デバイスの開発に取り組むとともに,マイクロレオロジーの展開を見据え,固体基板上に着弾した微小液滴の振動挙動を高い空間・時間分解能で観察する手法の検討を行った.

多自由度が競合する複雑流体における分子緩和現象の研究

教授 酒井 啓司,助教(酒井(啓)研) 美谷 周二朗,リサーチフェロー(酒井(啓)研) 平野 太一,リサーチフェロー(酒井(啓)研) 細田 真妃子
流れ場に加えて濃度場や分子配向,温度勾配などの自由度が相互にカップルする複雑流体においては,各自由度の緩和過程が他の自由度からの影響を受けて特異なスペクトルを示す.この緩和スペクトルを精密に測定することにより,各自由度間の結合の起源を分子レベルで明らかにする試みを行っている.本年度は,振動する固体基板上に付着した液滴の振動モード解析によりミクロな液体のレオロジー計測を実現する手法の検討を行い,空中に浮遊する分子が液滴表面に吸着する過程を表面張力変化としてとらえることに成功した.

液体表・界面構造と動的分子物性

教授 酒井 啓司,リサーチフェロー(酒井(啓)研) 平野 太一,リサーチフェロー(酒井(啓)研) 細田 真妃子,大学院学生(酒井(啓)研) 竹内 晴哉
液体表面や液液界面など異なる相が接する境界領域での,特異的な分子集合体の構造や現象に関する研究を行っており,ゲル表面における振動モードの顕微直接観察手法を利用した,表面張力およびずり弾性率を復元力として伝搬する複雑流体上の表面振動モードの定量的解析などの研究を行っている.本年度は当研究室で開発したEMSレオメータの測定限界を広げるために新たなプローブおよび検出手法の検討などを行い,微粒子分散系や液体混合系などのレオロジー測定や高分子系のレオロジー計測を進めた.

複雑流体表面の超高分解能マイクロスペクトロスコピー

教授 酒井 啓司,助教(酒井(啓)研) 美谷 周二朗,リサーチフェロー(酒井(啓)研) 平野 太一
液体表面の力学的物性,特に分子吸着に伴う表面エネルギーと表面粘弾性の動的変化を調べる新しい手法の開発を行っている.本年度は,引き続き局所的な電場印加によって液体表面の変形を励起し,その応答から表面の力学物性を調べる電界ピンセット技術を応用した,空中を飛翔する微小液滴のレオロジー計測および液体表面・界面物性計測が可能な新たな材料評価技術の開発を進めるとともに,電解ピンセット技術による液体薄膜のレオロジー計測の新たな可能性を探るための技術開発を進めた.

乱流の非局所的な輸送拡散現象

教授 半場 藤弘
乱流モデルで良く用いられる渦粘性近似・渦拡散近似は,レイノルズ応力やスカラーフラックスがその場の平均量の勾配に比例するという局所近似を仮定している.しかし熱対流乱流など大規模な対流渦を含む流れ場では局所近似が良くないことが知られている.本研究では乱流の非局所性を解析し,その機構の解明とモデルの改良を行っている.特に一様等方乱流の数値計算を用いて非局所渦拡散率の分布を求め,統計理論の知見を元にそのモデル式を導出し検証と考察を行った.

回転・旋回乱流の解析とLESのモデリング

教授 半場 藤弘,助教(半場研) 横井 喜充,技術専門職員(半場研) 小山 省司,大学院学生(半場研) 堀江 真惟人
円管内の流れに旋回を加えると中心軸付近で主流分布が凹んだり逆流が生じるなど,回転の効果を受けた乱流は興味深い性質を示す.乱流ヘリシティーはそのような回転乱流を特徴づける統計量の一つである.本研究では乱流エクマン層や回転チャネル乱流のヘリシティーの生成と輸送を解析した.特にエクマン層においてヘリシティー輸送方程式の拡散項について考察した.また回転チャネル乱流のLESを行い,ヘリシティーの散逸率とスペクトル分布について解析した.

圧縮性乱流の解析とモデリング

教授 半場 藤弘,大学院学生(半場研) 中村 元紀
流体の速度が音速と同程度になると圧縮性効果が重要となり,その効果を適切に取り入れて乱流モデルを拡張する必要がある.本研究では乱流と衝撃波の相互作用に着目し,直接数値計算データを用いて乱流エネルギーの増幅の機構を考察し,増幅を適切に再現するために乱流モデルを改良した.

電磁流体乱流のダイナモ機構とその応用

教授 半場 藤弘,助教(半場研) 横井 喜充
地球や太陽などの天体で見られる磁場はダイナモ機構すなわち天体内部の電導性流体の運動によって駆動され維持されると考えられる.また磁力線がつなぎかわる現象である磁気リコネクションは,宇宙・天体・実験室のプラズマ現象で重要な役割を果たす.本研究では乱流の統計理論を用いて非圧縮性および圧縮性の電磁流体のクロスヘリシティーの乱流モデルを導き,太陽ダイナモ現象や乱流磁気リコネクションなどに適用した.また圧縮性電磁流体乱流の傾磁場効果や超新星爆発の輸送現象について考察した.

超新星爆発の乱流モデル

助教(半場研) 横井 喜充
星の進化とその最終段階である超新星爆発は,恒星内部のダイナミクスと非線型相互作用で結びついた乱流の輸送に支配される.しかし,通常の乱流モデルは,混合距離理論に代表されるように,その場限りで経験的に与えられるものにとどまっている.本研究では,強非線型かつ非一様な乱流の理論を星の進化を記述する方程式系に適用し,応力(運動量輸送),乱流質量流束,乱流熱流束などの乱流相関を解析した.その結果を用いて,経験的ではなく基礎方程式に基づいた乱流モデルの構築を行っている.特に,対乱流中のコヒーレントなゆらぎ構造であるプルームのもつ非平衡性に注目し,その効果を取り入れるための時間−空間の二重平均操作を用いてモデルを構成し,星内部の対流問題に適用している.

分子動力学シミュレーションによる正20面体準結晶の比熱の研究

助教(枝川研) 上村 祥史

自己相似変換法によるTaTe系2次元正12回対称準結晶構造モデルの作成

助教(枝川研) 上村 祥史

二次元物質ファンデルワールスヘテロ構造における光電気物性の研究

助教(町田研) 張 奕勁

フォノン流体力学に基づく熱伝導

教授 野村 政宏,協力研究員(野村研) Yangyu Guo,国際研究員(野村研) Sebastian Volz,大学院学生(野村研) Xin Huang,教授 町田 友樹,特任准教授 増渕 覚

量子相関および情報を考慮した量子熱力学の構築に関する研究

大学院学生(羽田野研) 石崎 未来,教授 羽田野 直道,協力研究員(羽田野研) 田島 裕康,助教(羽田野研) 李 宰河
近年,半導体において,投入された電力に対する膨大な廃熱が技術的課題として注目されており,廃熱を電気信号に再利用するような研究が行われている.この動向を踏まえ,半導体のような量子系への応用を視野に入れた量子熱力学の研究を行う.本研究のテーマである量子熱力学は,熱力学を量子力学のスケールまで拡張し,量子的効果を取り入れた研究分野である.現状の量子熱力学では揺らぎや乱雑さといった観点での量子的性質は考慮されているが,量子相関や,測定により得られた情報のフィードバックによるエントロピーは体系的に考慮されていない.そこで本研究では,量子的性質を利用するというリソース理論の観点から,量子相関と情報に着目して情報量子熱力学を構築する.また,現状では量子系が行う仕事の定量化はマルコフ的な近似手法を用いたままとなっている.より現実に沿った形での記述をするため,このような近似手法を用いずに,仕事をする量子ビットと仕事を受け取る量子系の相互作用の結果として仕事の定量化を行う.

弱測定の精密測定への応用に向けた理論解析

助教(羽田野研) 李 宰河,准教授(高エネルギー加速器研究機構) 筒井 泉
量子測定において有用な測定値を選別する手法としての弱測定法が,測定精度の向上をもたらし得る機構を解析し,既存の実験のデータの分析・検証を通したその有用性の実証や,今後の幅広い応用へ向けた検討を行う.

量子論における不確定性原理の普遍的定式化

助教(羽田野研) 李 宰河
不確定性原理の普遍的な定式化を通して,量子論における不確定性の多彩な顕現様式を融合し,またこれに起因する各種の量子現象を解析することで,その包括的理解に資することを目的とする.

GKSL方程式の有効性に関する研究

大学院学生(羽田野研) 金川 隼人,教授 羽田野 直道
GKSL方程式の導出過程で用いられる諸近似の正当性についての研究を行った.特にFriedrichs模型を題材に近似の有効性を注目系と環境系の性質まで還元することを試みた.

孤立した量子多体系の熱平衡化現象

大学院学生(羽田野研) 吉永 敦紀,教授 羽田野 直道
孤立した量子多体系における熱平衡化現象に関して熱化を阻害する新たな機構を発見した.

有向ネットワークレゾルベントの摂動解析

大学院学生(羽田野研) 越智 昌毅,教授(ハイファ大) Joshua Feinberg,教授 羽田野 直道
有向ネットワークにおいてある有向辺を除去・付加した際の隣接行列レゾルベントの変化量を計算する公式を見出し,それを用いて向きを加味した新たな辺の中心性の提案や,重要な辺のみを抽出する backboning への応用を考えている.

精度の熱力学:線形的にカップリングされる輸送チャンネルの場合

大学院学生(羽田野研) 王 鑫,教授 羽田野 直道
古典確率熱力学の枠組みの中で,二つの線形的にカップリングされる輸送チャンネルにおける熱力学不確定関係の下限はいかに環境温度やカップリング係数に影響されるかを議論する.

量子アクティブ粒子・非エルミート量子ウォーク・Dirac粒子への変換

大学院学生(羽田野研) 山岸 愛,教授 羽田野 直道
古典系において研究が進められているアクティブマターを,非エルミート量子ウォークを用いて一次元・二次元量子系で定義し,古典系での先行研究と同様の,エネルギー取り込みがあるとその分運動が活発になりポテンシャル障壁を登るという振る舞いを確認した. また,二次元系への拡張に伴い新たな高次元量子ウォークのモデルを提案し,そのダイナミクスやトポロジカルな性質を調べた.

非エルミート多体系における量子もつれのダイナミクスの研究

PD(東大) 折戸 隆寛,特任研究員(羽田野研) 井村 健一郎
非エルミート量子力学系では固有状態の性質が通常のエンタングルと大きく異なることが盛んに議論されているが,波束のダイナミクスもまたエルミート系の場合と定性的に異なる.羽田野−ネルソン模型のような非対称ホッピングの非エルミート系では清浄極限では量子干渉が抑えられて古典的な拡散現象が見られ,不純物強度の増加と共に量子干渉が回復する.本研究では多体効果も取り入れて,量子もつれのダイナミクスを調べ,エンタングルメント・エントロピーが時間的に非単調なふるまいをすることを見出した.

非エルミート系における散乱問題の研究

教授(広島大) 高根 美武,特任研究員(羽田野研) 井村 健一郎,大学院学生(広島大) 小林 志遠
非エルミート系における散乱問題では,反射率・透過率等の解釈に困難が生じる.本研究では,複素ポテンシャルも入った羽田野−ネルソン型の非エルミート1次元系における具体的な反射・透過の問題を考え,反射率・透過率等の解釈について再検討した.確率流とその保存について新解釈を提案し,その局所的な保存則を導いた.電気伝導度に対するランダウアー公式の非エルミート系への拡張について議論する.

頂点順序推定によるコミュニティ検出

大学院学生(羽田野研) 越智 昌毅,研究員((国研)産業技術総合研究所) 川本 達郎
ネットワークにおけるコミュニティ構造は隣接行列のプロットによって視覚的に検出可能だが,そのためには頂点を適切な順序で並べる必要がある.我々は ordered random graph model を用いた最尤推定による頂点順序推定法を提案した.

赤外パルスを用いた気相分子の振動回転励起に関する研究

教授 芦原 聡,助教(芦原研) 森近 一貴,大学院学生(芦原研) 津坂 裕己
赤外超短パルスレーザーを用いた分子振動励起により化学結合の選択的な切断・生成が可能になると期待されている.これまで,気相分子に対して解離反応を制御した例が報告されているが,複数分子の関わる会合反応などに適用するためには分子の回転運動を制御することが重要となる.そこで本研究では,赤外ポンプ・プローブ分光法による気相分子の振動・回転励起ダイナミクスの観測に取り組んでいる.気相分子の高振動状態への励起に成功し,リウヴィル経路解析により,振動励起状態に回転波束が形成されていることを明らかにした.

赤外プラズモニクスを活用した電気化学反応の新規振動分光法の開発

教授 芦原 聡,助教(芦原研) 森近 一貴,大学院学生(芦原研) 万 秋明
電気化学反応は,環境・エネルギー問題を解決するための有望なエネルギー変換技術の一つである.そのメカニズムを解明するためには,電極表面における分子の構造を理解することが不可欠である.赤外分光法は,分子の構造を非破壊的かつその場で測定できる強力なツールであるが,本質的に測定感度に乏しいという欠点がある.そこで本研究では,金属ナノ構造の表面プラズモン励起に伴う電場増強効果を利用した,電気化学反応を高感度に計測できる新規赤外分光法の開発を目的とした.本年度は,プリズム上に蒸着した金薄膜を作用電極とすることで,電気化学反応を非破壊かつその場で赤外分光計測を可能とするデバイスを作製し,その評価を行った.

赤外モード同期レーザーを活用した微量分子検知手法の創出

教授 芦原 聡,助教(芦原研) 森近 一貴,大学院学生(芦原研) 宋 文清,大学院学生(芦原研) 藤原 心
赤外波長域は「分子の指紋領域」と呼ばれるように,分子振動モードの共鳴線が多数存在する.そのため,赤外域の吸収・散乱計測により,分子構造解析,化学種の同定・定量分析が可能となる(振動分光法).本研究では,指向性・広帯域性・短パルス性をあわせもつ赤外モード同期レーザーを活用した新しい振動分光法の創出に取り組んでいる.吸収および分散に由来する信号が光源の輝度に比例して増大するバックグラウンドフリー分光法を開発し,気相分子の高感度検知を実現した.

赤外モード同期固体レーザーの開発とその周波数下方変換

教授 芦原 聡,特任研究員(芦原研) 卜 祥宝,特任研究員(芦原研) 張 哲元,大学院学生(芦原研) 洲鎌 英行,大学院学生(芦原研) 村田 拡輝,大学院学生(芦原研) 曾 可嘉
振動分光法に革新をもたらすキーデバイスの一つが,赤外波長域の広帯域コヒーレント光源である.本研究では,赤外波長2ミクロン帯で広帯域な蛍光スペクトルを示すクロム添加硫化亜鉛結晶を利得媒質とするモード同期レーザーの開発,特にその高出力化およびスペクトル構造の制御に取り組んだ.また,このモード同期レーザーを基礎に据えて「分子の指紋領域」と呼ばれる長波長の中赤外フェムト秒パルスを発生するシステムの開発に取り組んだ.

金属─誘電体ハイブリッド構造における電子放出を利用した光電場計測素子の開発

教授 芦原 聡,助教(芦原研) 森近 一貴,特任研究員(芦原研) 新井 滉
通常,光検出器といえば光の時間平均的な強度を測るものであり,光の瞬時電場を計測できるものではない.これは,電波と異なり,光の電場振動がペタヘルツという極めて高い周波数領域にあり,電気回路が追従できないためである.ところが,光電場が物質中のクーロン電場に匹敵するほど強くなると,物質中の電子が光の瞬時電場に追随して応答するようになる.本研究では,このような電子の瞬時応答を利用して,光の電場を直接的に計測する手法の開発を行った.特に,金属と誘電体のハイブリッド構造を採用することにより,光電場の検出感度を大幅に向上させるとともに,光電場の向きを敏感に判別できることを確認した.

デバイス信頼性評価のための拡張型原子間ポテンシャルの開発

教授 梅野 宜崇
デバイス材料の信頼性評価のための高精度な原子モデリング手法の確立を目的として,電子状態の影響などを考慮し環境非依存性に優れた拡張型原子間ポテンシャルの開発に取り組んでいる.

ポリマー変形および破壊のマルチスケールモデリング

教授 梅野 宜崇
ポリマーの変形・破壊に及ぼす分子構造の影響を明らかにするための粗視化分子動力学モデリング,粘弾性体に特徴的な破壊挙動の解明のための有限要素モデリング法の研究を行っている.

固体結晶の理想強度に関する第一原理および原子モデル解析

教授 梅野 宜崇
材料強度の本質に迫るため,原子間結合の特性が支配する固体結晶の理想強度(理論強度)について密度汎関数理論第一原理計算および原子モデル解析(分子動力学法)による評価を行っている.

材料の原子レベル構造不安定性の研究

教授 梅野 宜崇
特にナノレベルにおける構造不安定現象を本質的に理解することを目的として,原子レベル構造不安定モード解析法を提唱し,様々なナノ構造体の変形・破壊現象の解明に取り組んでいる.

深層学習によるマルチフィジックス原子モデリング法の開発

教授 梅野 宜崇
深層学習を応用した,原子構造の変化による電子状態変化を高速に求めるためのシミュレーション法の開発を行っている.

雨による急速かつ長時間にわたる地すべりの早期警報技術の開発(Project RRLL)【柏地区利用研究課題】

准教授 清田 隆

複雑流体物理学

准教授 古川 亮
複雑流体の動的問題について幅広く研究を行った.ガラス転移の物理機構及びその周辺の課題に対する理論的な解明に向けた努力を主に展開しているが,今年度の主な成果として,以下を列記する. (i)剪断下でのガラス液体の問題に対して自由体積描像に基づいたアプローチは一つの大きな潮流をなしている.しかしながら,自由体積の物理的実体が明らかでないため,概念的な理解を超えるものではなかった.これに対し,自由体積(密度)の剪断下での変化の実体を明確にし,これを定量化するアプローチを確立した.このようにして見積もられた自由体積を緩和時間のDoolittle則と組み合わせることで,非線形領域まで統一的に記述しうる構成方程式を提案した.また,fragile液体とネットワーク形成strong液体の間での,流動応答の質的差異とそのシアシニングの発生機構への影響を明らかにした.fragile液体では,シアシニングは剪断流による有効体積分率の減少に起因し,strong液体では剪断流による有効活性化エネルギーの減少が緩和を著しく促進させる.実験観測量のみで記述されるニュートン−非ニュートンレオロジーのクロスオーバー剪断率を導出したが,このクロスオーバー剪断率は,分子動力学シミュレーションの結果と定量的に一致する.(ii)strongガラスの緩和メカニズムについて,フランス国立土木学校・ナビエ研究所のアナエル・ルメートル研究員と共同研究を行っており,欠陥構造の運動が緩和メカニズムを支配することを明らかにした.(iii)高密度の非ブラウン粒子懸濁液は顕著なシアシニングを示すが,そのメカニズムは未だ明らかでない.構成粒子間の流体力学的相互作用の役割は,その強い非線形・非平衡性のため,まだ十分に理解されていない.本研究では,直接流体力学シミュレーションによってこの問題に取り組み,溶媒の流体力学と多体の粒子運動の間に存在する密接な相互作用を明らかにした:粘性散逸と粒子運動は強い空間相関を示し,両者は同じ特徴的長さを共有する.さらに,この長さスケールは剪断率の増加とともに減少する.また,低剪断率では,非圧縮性に抗して著しい粒子密度の変化が引き起こされうることも併せて示したが,この事実は溶媒の隙間や流路が協同的に生成・消滅していることを示唆している.これらの結果から,高密度であっても,流体力学的な相互作用は遮蔽されず,粒子の再配置運動を大幅に制限することで懸濁液のマクロレオロジーに影響を与えることを結論する.(iv)大腸菌様モデルスイマーを用いた流体力学シミュレーションにより,アクティブサスペンションの異常なレオロジーのメカニズムについて検討した:剪断流下での流体力学的相互作用は,スイマーを伸長方向に系統的に配向させ,これが大域的な泳動状態の決定とその結果としての著しい粘性低下の原因となることを明らかにした.本研究結果は,アクティブサスペンションのレオロジー特性を制御する素過程において,流体力学的相互作用が重要な役割を果たすことを明らかにするものである.また同様の系で,マイクロレオロジー研究を行い,プローブ粒子とモデル微生物の相互作用により,溶媒のストークス抵抗よりも著しく小さな抵抗を観測することを明らかにした.

原子分解能その場機械試験による酸化物結晶の変形・破壊挙動解析

准教授 栃木 栄太

キラル分子からなる結晶の半スキルミオン動力学

特任講師 高江 恭平
らせん状や渦巻き状など鏡像と重ならない複数の構造を示す「トポロジカル材料」の相転移を制御するモデルを新たに提案し,半スキルミオンが混み合った環境下では,拡散が抑えられるにも関わらず,半スキルミオン同士の合体・分裂により緩和が起こることを明らかにした.高密度スキルミオンの輸送制御への応用が期待される.

ソフトポーラスクリスタルにおける弾性不均一

特任講師 高江 恭平
金属有機構造体に代表される柔らかな多孔性結晶−ソフトポーラスクリスタル−においては,多孔質に吸着される分子の分布が非対称であるために,格子のひずみや硬さに分布(弾性不均一)が生ずることを,統計力学モデルにより示した.

ハイエントロピー合金のソフトニング

特任講師 高江 恭平,教授(東京都立大) 栗田 玲,准教授(東京都立大) 水口 佳一
ハイエントロピー合金は,多種(5種以上)の原子が混ざりあった結晶のことであり,その力学特性が注目されている.我々は,分子動力学シミュレーションにより,原子が混ざりあったことでフォノンの分散が広がり,また柔らかくなることを見出した.

自己回転粒子の相分離

PhD. student (Indian Institute of Technology, Madras) Bhadra HRISHIKESH,客員共同研究員(東大) 田中 肇,特任講師 高江 恭平

荷電コロイドの流体力学における電荷の不均一性

特任講師 高江 恭平,客員共同研究員(東大) 田中 肇,特任研究員(東大) Jiaxing YUAN
コロイド粒子とは目では見えないほど小さく,しかし原子分子よりはるかに大きな大きさを持つ粒子の総称であり,相互作用が多彩であること,熱ゆらぎの影響を強く受けることなどから,多様な構造形成,ダイナミクスを示す.多くのコロイド粒子は,表面に電荷を持ち,水などの溶媒中に分散したイオンと相互作用することで複雑な挙動を示すが,そこでは,コロイド表面の電荷が不均一になることが重要であり,コロイドの凝集過程や,水と油の混合溶液における運動を支配している.そのような複雑なふるまいを,電荷の不均一性と流体力学の結合に着目して,統一的に理解することを目的としている.それにより,コロイド溶液のダイナミクスに普遍的な物理的描像を与えること,またコロイドを構成要素とした高次の構造形成に対する,指針を与えることが可能になると期待している.

航空機製造におけるものづくりに関する技術開発

教授 臼杵 年,教授 岡部 徹,教授 岡部 洋二,准教授 土屋 健介,特任教授 橋本 彰,元特任講師 馬渡 正道,教授(東大) 柳本 潤,准教授 山川 雄司
次世代の航空機製造技術に関して,複数のテーマを同時進行でその課題解決に取り組んでいる.

ITS(高度道路交通システム)における自動車の運動制御に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大

ITS(高度道路交通システム)に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大,教授 中野 公彦,教授 大口 敬

「柏の葉地区における自動運転バス実証実験運行事業」に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大,教授 中野 公彦,教授 大口 敬

ビークルにおけるマルチボディ・ダイナミクスに関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大

モビリティ・イノベーション連携に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大,教授 中野 公彦,教授 大口 敬

人間行動指標による公共交通システムの快適性評価【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大

小型モビリティの自動運転システムにおけるHMIおよび車両・インフラ側のセンサーフュージョンに関する基礎検証【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大

新たな鉄道技術の開発と推進及び鉄道と自動車交通のインタラクティブなシステムに関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大,教授 中野 公彦

次世代モビリティ評価シミュレーションに関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大

自動運転による社会・経済に与えるインパクト評価と普及促進策に関する研究(NEDO SIP)【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大,教授 中野 公彦,教授 大口 敬

自動運転に係る海外研究機関との共同研究の推進に向けた連携体制の構築(NEDO SIP)【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大,教授 中野 公彦,教授 大口 敬

自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実証プロジェクト(METI)【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大,教授 中野 公彦,教授 大口 敬

超低速移動体の自立移動モビリティ評価【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大

車両空間の最適利用に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大

車輪 ・ レール系の知能化に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大

オペランド環境走査型プローブ顕微鏡

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
探針や表面の修飾や改変のインプロセス観察を目的とした,環境可変,雰囲気可変走査型プローブ顕微鏡の開発を行なっている.

カラー原子間力顕微鏡の理論考察

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
カラー原子間力の像解釈と理想的探針についての理想的考察

コンタクトモード原子分解能走査型力顕微鏡

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
単原子架橋時に得られる可能性のある接触モード原子分解能撮像の研究.ナノトライボロジー応用と試料観察新手法の実現を目指している.

導電性ポリマーによる吸湿過程の微視的考察

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大,准教授(東北大) 小林 光
導電性ポリマーによる吸湿性を,微小質量計測,顕微鏡観察,微視的粘弾性計測などを用いて明らかにする.社会実装の空調装置としては,東北大学小林光准教授が研究代表者を務めている.

探針のフォーススペクトロスコピー

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大,教授(三重大) 北川 敏一,教授(電気通信大) 佐々木 成朗
分子修飾法,背景力評価等をFIMAFMFIMAFM等で評価.小型の走査型プローブ顕微鏡で,修飾分子を含む気体を還流し表面や探針の修飾の可能なものの研究を行なっている.

生体シュリーレン顕微法

教授 川勝 英樹
濃度差のある溶液中での走流性,化走流等を可視化するためにシュリーレン顕微鏡で,配偶子の観察に適したものを実現している.

生殖細胞の力学的計測

教授 川勝 英樹
配偶子の力学的計測を行うために,力や水中の音に対して感度の高い検出方法を開発している.

空調パイプを用いた除湿・湿度制御に関する研究

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大,准教授(東北大) 小林 光
空調に広く用いられているパイプやダクトを湿度制御のために用いる研究

踏力のリアルタイム計測

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
スポーツにおけるトレーニングや戦略への応用として,IOT技術や通信技術を応用して,多チャンネルの情報取得を構築している.

CT画像からの3次元血管形状自動抽出手法,血管形状編集手法の開発

教授 大島 まり,受託研究員(大島研) 小林 匡治,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹,リサーチフェロー(大島研) 早川 基治,リサーチフェロー(大島研) 庄島 正明,講師(東大) 保科 克行,大学院学生(大島研) 陳 琰
CTのスライス画像を重ねて3次元血管形状を構築する際には,近接血管がくっついて認識してしまうことがあるほか,CT解像度程度の細い血管が分岐することに起因する血管の突起など,セグメンテーション処理において医学的知見に基づいて手動で補正しなければならない.また,動脈瘤が出現する過程を考察するため,動脈瘤を除去した血管形状をセグメンテーション領域に対して手動で編集する必要がある.本研究ではそれらの作業を自動で行うことのできるアルゴリズムの開発を目指す.

Image-Based Simulationにおける脳血管形状の血行力学に与える影響の考察

教授 大島 まり,大学院学生(大島研) 陳 琰,受託研究員(大島研) 小林 匡治,リサーチフェロー(大島研) 庄島 正明,リサーチフェロー(大島研) 高木 清,リサーチフェロー(大島研) 早川 基治,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹
重大な脳血管疾患であるクモ膜下出血に対して,その主要因の脳動脈瘤の破裂に関連する手術ガイドライン作成が求められている.そこで,本研究では脳血管の血流を数値シミュレーションし,動脈瘤の発生,破裂のメカニズムの解明を目指している.シミュレーションに用いる3次元血管モデルについて,医用画像から血管抽出および,3次元構築の手法の問題点と解決法を検討する.さらに,モデルの中心線を抽出することにより形状をパラメータ化し,モデルをパラメトリックに変形して血管形状の血行力学に与える影響を考察する.

Willis動脈輪における血管形状のパラメータ化と形状分析

教授 大島 まり,大学院学生(大島研) 陳 琰
血管内の壁面せん断応力(WSS)は,血管内皮細胞に直接作用を及ぼし,血管疾患の発生に関係する血行力的因子である.WSSは,血管形状に大きく影響される.本研究は,61例のMRA画像(Brain Vasculature database, BraVa)と9例のCT画像から抽出した脳部動脈血管スケルトンデータを対象とし,曲率とねじれ率からなる三次元形状パラメータを用いて血管形状の特徴を分析する.また,データ駆動型のアプローチにより,動脈瘤・狭窄症が起こりやすい脳主幹動脈形状の主成分分析を行う.

「総合的な探究の時間」に向けた探究学習デザインメソッドの開発

教授 大島 まり,准教授 川越 至桜,学術専門職員(次世代育成オフィス) 上田 史恵,学術専門職員(次世代育成オフィス) 志水 正敏,大学院学生(大島研) 山田 瑞季
高校「総合的な探究の時間」における探究学習において,生徒自ら取り組む課題を設定するためのワークショップを軸にした教材開発を目指すもの.

デジタルホログラフィック計測によるマイクロ混相流動現象の3次元計測

教授 大島 まり,技術専門職員(大島研) 大石 正道
血液診断チップに代表されるマイクロ流体デバイスは,多くの利点から普及が期待されているものの,デバイス内で起きている3次元的で複数の物理現象が重複した流れを定量的に計測する手法が確立されていないことが,実用化に向けた障害となっている.本研究では,対象の3次元情報を2次元のホログラム画像に記録できるデジタルホログラフィック顕微鏡(DHM)を用いて,これらマイクロスケールにおけるマルチフィジックス現象の定量的な計測を目指す.特に,本計測手法を用いて,マイクロ流体デバイスで頻繁に用いられるマイクロ液滴の生成・流動挙動計測を行う.

マイクロ3次元光造形法の開発

教授 大島 まり,技術専門職員(大島研) 大石 正道
本研究では,赤血球のマイクロ挙動解明に向けたモデル実験に用いる,3次元特殊形状マイクロビーズの造形を念頭においた,マイクロ流路内に複雑な3次元形状の構造物を高速造形する手法の開発を目的とする.本手法で作成する赤血球モデルの混相流計測を行うとともに,本手法が持つ高速性,製作精度,生産性,造形できる形状および機能の自由度の高さといったアドバンテージを生かし,マイクロ流体デバイスの開発手法に強力な造形ツールとして提案する.

モデリング及び可視化機能のある統合的血流1D-0Dシミュレーションシステムの開発

教授 大島 まり,受託研究員(大島研) 小林 匡治,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹,リサーチフェロー(大島研) 早川 基治,大学院学生(大島研) 陳 琰
血流1D-0Dシミュレーションは,手術効果予測・評価のために行われる.全身動脈の血流状態を直感的に把握するには,シミュレーション計算に使われる患者固有医療画像データだけでなく,統計データも取り入れて,人体の全身循環網を3次元に構築し,可視化する必要性がある.本研究は,統計データに基づいて全身の主な動脈の3次元モデルを構築し,deformable modelの手法により患者固有形状モデルと連結させて,その上にシミュレーション結果を可視化する.また,仮想手術と想定する,システム上でインタラクティブに血管径を調整し,1D-0Dシミュレーションに使うインプットファイルを作成する機能もモジュールに取り入れる.

上顎骨の後上方移動術前後における鼻呼吸機能の流体解析

教授 大島 まり,研究実習生(大島研) 青柳 美咲
不正咬合や咀嚼機能の改善に顎顔面領域の外科治療が多く行われており,主として咬合関係や顔貌形態を基準に手術計画が作られる.しかし,術後に気道形態が変化することが指摘され,睡眠時無呼吸症候群などの呼吸障害が生じるおそれがある.上顎骨の移動が呼吸に与える影響は大きく機能的評価が必要であるが,上顎骨後上方移動に伴う鼻腔,咽頭部の変化に関する報告は認められない.そこで,医用画像から気道の3次元モデルを構築し,上顎骨後上方移動を伴う顎矯正手術が鼻呼吸機能に与える影響を機能的に明らかにすることを目的に解析を行っている.

下肢動脈の血管ステント挿入時の血流解析

教授 大島 まり,リサーチフェロー(大島研) 早川 基治,大学院学生(大島研) Chen Wang
Unlike the straight model, the curved helix model will occur secondary flow performance at the curved part of the vessel, which will affect the local wall shear stress and oscillatory shear index distribution, to further investigate on how the shape of the curved helix would affect the flow performance inside the targeted artery, we try to design helix models with different combinations of curvature and torsion and simulate cases using Openfoam and compare the results to the reference straight model.

多波長共焦点マイクロPIVによるマイクロ混相流の可視化計測

教授 大島 まり,技術専門職員(大島研) 大石 正道
近年,発展の目覚しいマイクロTASの分野においては,混合や分離,化学反応,運搬といった様々な機能を,微少流体の正確な操作により実現することを目的としている.主なアプリケーションとして,マイクロ液滴を用いたデッドボリュームの少なさによる混合や反応の高速化,生体細胞やDNAを内包しての運搬などが開発されている.これら主な機能を果たすのは液滴や固体粒子が混在する液液混相流もしくは固液混相流である.そのため,マイクロスケールにおける各相の相互作用の解明が重要である.本研究では本研究室で開発された共焦点マイクロPIVの技術を応用し,マイクロ混相流の計測が可能な2波長分離ユニットを組み込んだ.これにより,マイクロ液滴の内部および外部流速の同時計測や,マイクロジャンクションにおけるwater in oil液滴生成機構の計測,マイクロビーズを含む固液混相流の計測を行っている.

大動脈瘤への形状パラメータの影響

教授 大島 まり,研究実習生(大島研) 中島 嘉春
曲率・捩率を基本とした形状パラメータのWSSへの影響を調べることで動脈瘤形成部位の予測を目指す.

機械学習による代理モデルを用いた脳循環シミュレーションの不確かさ解析

教授 大島 まり,リサーチフェロー(大島研) 早川 基治,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹,大学院学生(大島研) 大囿 勇也
血流シミュレーションによる予測結果の信頼性を評価するには,医用計測データに基づいて設定したモデルパラメータの不確かさが,予測結果に及ぼす影響を定量化する必要がある.そのためには,不確かさ範囲内の異なる条件でシミュレーションを繰り返し,結果の統計量を得る必要があるが,計算規模が必然的に大きくなることから,医療現場での実施が難しいという問題点がある.そこで本研究では,深層学習を活用し,従来の血流シミュレーションと同等な予測を高速で行う代理モデルを作成した.これにより,不確かさ解析をデスクトップPCにて数分で実施可能にした.

粒子法による液滴の滴下挙動再現と定量的評価

教授 大島 まり,技術専門職員(大島研) 大石 正道,リサーチフェロー(大島研) 向井 信彦,研究実習生(大島研) 夏目 拓也
脳動脈瘤の破裂によって引き起こされるクモ膜下出血への予防術式として,海外では液体を用いて瘤内を塞栓する液体塞栓術も用いられており,歪かつ巨大な脳動脈瘤に対応可能であることから今後は有力な術式と期待されている.しかしながら,液体塞栓術は塞栓材が瘤外へ流出して健常な血管も塞栓する危険性があるため,国内では未認可である.我々は,粒子法を用いて液体塞栓術への応用を目的とした塞栓材注入シミュレーションを開発し,物理実験と比較することで精度の検証を行ってきた.しかしながら,これまでのシミュレーションで形成された液滴は物理実験のような滴下の挙動を再現できていなかったため,物理実験との比較による定量的な精度検証はできていなかった.そこで,界面張力モデルとしてポテンシャルモデルを用いることで,シミュレーションでも液滴の滴下挙動を再現し,物理実験との比較により液滴挙動の定量的評価を行った.本手法の適用により,液滴の滴下挙動が再現でき,また,滴下時刻は若干異なるが形成過程は物理実験とほぼ一致していることを確認した.

脳循環の末梢血流を考慮した数理モデルの構築

教授 大島 まり,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹,大学院学生(大島研) 祇園 真志
末梢部の流れを考慮した脳循環のモデルを構築することを目的とし,末梢部の側副血行の影響を調べた.

脳血管モデルが血行動態に与える影響の評価

教授 大島 まり,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹,大学院学生(大島研) 大囿 勇也
医療計測データに基づく不確かさを含めた血流シミュレーションは,過灌流リスクを非侵襲的に評価することが可能であるが,医療現場での利用には多数の実症例で妥当性を検証することが必要である.本研究ではより多数の症例におけるシミュレーションを実施し,予測精度の検証と向上を図る.

腹部大動脈瘤におけるステントグラフトの3次元形状の経時変化の定量化

教授 大島 まり,受託研究員(大島研) 小林 匡治,教授(東大) 高木 周,大学院学生(東大) 根元 洋光,講師(東大) 保科 克行
腹部大動脈瘤におけるステントグラフトを用いた血管内治療は,開腹手術に比べて患者への負担が小さいため広まっている.一方で,ステントグラフトのマイグレーションに起因した有害事象が発生しており,原因調査や対策が研究されている.本研究は,医用画像から得られたステントグラフトの中心線を抽出し,曲率や捩れ率等の形状パラメータとして定量化することで,ステントグラフトのマイグレーションによる有害事象の予兆を定量的に把握するための手法を開発する.医用画像から得られた中心線は画像ノイズを持つため,ペナルティ項付のスプラインフィッティング手法を適用することで,曲線の特徴を消さない平滑化を行う.

腹部大動脈瘤における薬剤内包ミセルのマルチスケール流体―粒子連成解析

教授 大島 まり,客員教授 向井 信彦,講師(東大) 保科 克行,大学院学生(東大) 福原 奈摘,研究実習生(大島研) 田島 拓也,大学院学生(大島研) 三好 紘太郎
腹部大動脈瘤に対する治療法として薬剤投与が有効であると考えられており,その臨床化に向けて薬剤ミセルの滞留メカニズムを明らかにする.

腹部大動脈瘤に対する薬剤の挙動解析

教授 大島 まり,講師(東大) 保科 克行,リサーチフェロー(大島研) 向井 信彦,研究実習生(大島研) 夏目 拓也,大学院学生(東大) 福原 菜摘,大学院学生(大島研) 渕 将徳
腹部大動脈瘤に対する治療法として薬剤投与が有効であると考えられており,その臨床化に向けて薬剤ミセルの滞留メカニズムを明らかにする.

色収差を利用した3次元マイクロ速度場計測法の開発

教授 大島 まり,技術専門職員(大島研) 大石 正道,リサーチフェロー(大島研) 向井 信彦
本研究では,共焦点マイクロPIV(Particle Image Velocimetry:粒子画像流速測定法)の欠点であった3次元計測に向けて,クロマティック(色収差)レンズを利用した,3次元マイクロ速度場計測法の開発を行っている.本手法は面倒なキャリブレーション作業を必要とせず,シンプルな機器構成で実現できるアドバンテージがあり,従来の手法よりも高倍率・高解像な計測が可能である.本手法においては光学設計とともに高精度な画像処理技術と3次元速度算出アルゴリズムの開発が重要な要素である.

血管内皮細胞骨格の三次元画像再構築と骨格配向・密度の定量評価

教授 大島 まり,研究員(大島研) 山本 創太,技術専門職員(大島研) 大石 正道,研究実習生(大島研) 慶田 真弘
画像解析ソフトImageJによりアクチンフィラメントの画像の三次元再構築を行い,密度変化を測定した.また,繊維配向プログラムより骨格配向を測定し,壁面せん断応力の影響による配向の変化を考察した.

SARS-CoV-2タンパク質の電子状態解析

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
SARS-CoV-2ウイルスの感染は,ACE2にスパイクタンパク質が結合することで始まる.そのため,スパイクタンパク質の阻害剤はCOVID-19の治療薬やウイルス検出剤の候補となりうる.本研究では,ACE2タンパク質のスパイクタンパク質に隣接する領域において正準分子軌道(CMO)計算を行った.60個のアミノ酸残基からなるACE2の計算モデルでCMO計算に基づき,正確な静電ポテンシャルを得ることができた.

密度汎関数法に基づく第3世代カノニカル分子軌道法とQCLO法の開発

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
グリッドフリー法とコレスキー分解法を組み合わせて,スパコンで十分な性能を引き出すことができる第3世代法を開発した.今年度は特に重なりによる分子軌道の解析法を開発した.

アミロイド線維状と細胞固有プリオンとの電子構造研究

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行,大学院学生(佐藤(文)研) 張 雄
正準分子軌道計算により正常PrPCとアミロイドフィブリルの前半部の電子構造を求めた.Lys111とAsp144付近の原子電荷が重要な変化を示していた.ESPを比較したところ,124-130残基がフィブリルの構造維持に重要な役割を果たしている可能性があることが示唆された.

インターフェロンα2の電子状態に基づく作用機序の研究

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行,大学院学生(佐藤(文)研) 中岡 亮太
インターフェロン(IFN)α2 は 165 残基からなるタンパク質で,アミノ酸配列の 23 番目のみが野生株(IFNα2a)と異なる(Lys23Arg)遺伝子組み換えの IFNα2b が存在する.IFNα2a はインターフェロン受容体(IFNAR2)に結合する.23 番目のアミノ酸は IFNAR2 と直に接しないが,IFNα2b の方がより活性が高いことが知られている.本研究ではこの原因を探るために正準分子軌道計算を行い,変異に伴う電子状態の差異を調べた.静電ポテンシャルや Mulliken 電荷の結果から,Lys23Arg の差異によってクーロン力に利得が生まれる可能性が示唆された.

正準分子軌道法による PETase の活性部位の触媒反応発生における役割に関する研究

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行,大学院学生(佐藤(文)研) 王 天宇
ポリエチレンテレフタラート(PET)を分解できる酵素の一つとしてPETase が知られている.本研究では,PETase の基質特異性と PET 分解反応機構を解明するために,正準分子軌道計算による PETase の電子構造計算を試みた.その結果,PETase の触媒三残基が形成する電子構造を維持し,Serine のヒドロキシル酸素はその求核性を示した.周辺アミノ酸残基は触媒三残基の特徴的な立体構造と電子構造を保護している可能性が示唆された.

インターフェロンα2の電子構造研究

大学院学生(佐藤(文)研) 中岡 亮太,教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
インターフェロン(IFN)は,ウィルスなどの侵入に対して細胞が分泌するサイトカインである.IFNα2はI型インターフェロンでヒトでIFNα2b変異体が市販されており,天然と活性に有意な差がある.IFNα2とIFNα2bのアミノ酸配列の変異は1か所だけであり(Lys23Arg),電荷に変化はなく,23番目のアミノ酸残基はIFN受容体の結合部位には存在しない.本研究では,変異体による電子状態の変化が遠方にまで及び活性の違いを与えていると仮説を立てIFNα2の作用機序を電子レベルで解析した.

平塚市・東大生研連携協力協定

教授 林 昌奎
この協定は,東京大学 生産技術研究所および平塚市の密接な連携と協力の下,海洋活用技術の研究開発を推進するとともに,新産業創出,人材育成等に寄与することを目的とする.

マイクロ2相流の基礎研究

教授 鹿園 直毅
将来のエネルギー問題を解決する上で,エクセルギー損失の小さい低温度差の熱機関であるヒートポンプや蒸気エンジンへの期待は非常に大きい.一方で,競合技術である燃焼式の給湯器やエンジンに比べ大型・高価であることが課題である.極めて細い冷媒流路を用いることで,ヒートポンプや蒸気エンジン用熱交換器の大幅な小型軽量化が実現できるが,本研究では,そのために必要となる超薄液膜二相流の基礎的な現象理解を進めている.具体的には,共焦点レーザー変位計を用いたマイクロチャネル内の薄液膜厚さの測定およびそのモデリング,マイクロチャネルを利用した高性能蒸発器の限界熱流束の研究等を行っている.

固体酸化物形燃料電池(SOFC)の実験および数値シミュレーション

教授 鹿園 直毅
エクセルギー有効利用の重要性から,700~1000度で作動する固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)に注目が集まっている.SOFCは単体での高い発電効率に加え,様々な炭化水素燃料に対応できること,熱機関や内部改質による排熱利用が可能である等,様々なメリットを有する.しかしながら,SOFCの実用化のためにはコストや耐久性といった課題を克服する必要があり,そのためにはシステムとそれを構成するセルや電極の階層的な設計技術を高度化する必要がある.本研究では,SOFCの高信頼性,高効率化に向けて,実験および数値計算手法を開発し,発電システムから電極レベルに至る広い時空間スケールの現象を予測,制御するための研究を行っている.特に,電極微細構造が発電性能に与える影響に注目し,微細構造を制御したSOFCの性能を実験により計測するとともに,収束イオンビーム走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)を用いた3次元電極微細構造の直接計測,ミクロな実構造における拡散と電気化学反応を連成させた格子ボルツマン法による数値シミュレーションを行っている.

次世代熱機関用要素技術の研究

教授 鹿園 直毅
低温度差で作動するヒートポンプや蒸気エンジンはエクセルギー損失が非常に小さく,将来のエネルギー問題の解決に不可欠な技術である.一方で,競合する燃焼式給湯器等に比べ大型で高価であることが課題であり,従来の延長線上にない画期的な要素技術が求められている.本研究では,基礎的な研究に基づいて,より高性能,高信頼性,小型,安価を実現する新たな機構を提案し実証している.

生体分解性・多孔質マイクロニードルとペーパーベースの無痛・迅速診断チップの開発

教授 金 範埈,助教(金(範)研) 朴 鍾淏,特任教授 甲斐 知惠子,特任教授 米田 美佐子
本研究は,“生体分解性多孔質マイクロニードルを用いた医療用パッチ”の新たな応用として,新型コロナウイルス感染症の低侵襲(無痛)自己診断チップの開発に関するものである. 専門的な医療従事者を要しないかつ簡便で迅速な感染症の診断を実現できるため,まず診断対象である血清又は間質液からの無痛かつ適量の抽出が可能な新規マイクロニードルの構造設計及び製作に関する研究を進めている.

SiおよびSiGe薄膜ペルチェ素子を用いた局所冷却

教授 野村 政宏,教授 金 範埈,国際研究員(野村研) Sebastian Volz,特任准教授 アヌフリエフ ロマン,特任助教(野村研) 柳澤 亮人
本研究室では,シリコン薄膜を用いた熱電変換デバイス開発を進めているが,ゼーベック効果とペルチェ効果が表裏一体であるため,電流を流すことで局所冷却デバイスも実現できる.本研究では,シリコン薄膜にペルチェ素子を形成し,世界最小サイズのペルチェ素子を実現することを目指す.

バイオ薬剤の常温乾燥保存法の開発

教授 白樫 了,元助教(白樫研) 高野 清
リポソーム薬剤やタンパク質を主成分とするバイオ薬剤の多くは,液状あるいは凍結状態で流通しており,長期間の高品位保存ができない場合が多い.本研究では,これらの薬剤を常温で品質を維持したまま保存するための保護物質の選定・調合,乾燥手法の開発を目的とする.

医療検体試料の高品位保存に関する研究

教授 白樫 了,DIRECTOR-AT-LARGE - Indo-Pacific. Rim (ISBER) 古田 耕,元助教(白樫研) 高野 清
血液や組織等の臨床検体に含まれるバイオマーカ,DNA, RNA等には,検体を取り出した個体特有の生物学的状態を反映した情報が,多く含まれている.この様な生体分子の劣化を抑制して保存することは,個別医療で重要な生理状態の情報を保存することに他ならない.本研究では,これら臨床検体を高品位且つ簡便に凍結や常温乾燥することで保存する手法の開発を行う.

広帯域誘電分光によるパン生地粘弾性特性の予測

教授 白樫 了,准教授(埼玉大) 上野 茂明
パン生地の粘弾性は,製品の品質を左右することが知られているが,現状では経験的に製造条件・評価を行っている.本研究では,含水量と混錬時間が異なるパン生地の粘弾性特性を,広帯域誘電分光スペクトルの緩和時間解析より簡便に予測する手法の開発を目指す.

水分子ダイナミクス測定と分子計算によるタンパク質劣化と最適保護物質特性の予測

教授 白樫 了,助教(白樫研) 松浦 弘明
ワクチンやタンパク質薬剤の多くは,液体であり薬効のある分子が水溶液中に存在している.この様な液体中の薬剤は,劣化が進みやすいため,保護物質を添加して有効期間を延ばしているが,その選択は経験的であり,保護物質分子の性質・構造から薬剤の劣化速度を予測し,適切にスクリーニング・設計する指針がない.本研究では,劣化の鍵とみられるタンパク質薬剤の溶媒である保護物質水溶液中の水の分子回転緩和時間を誘電分光により測定し,タンパク質薬剤の失活速度を予測する手法を開発する.さらに,保護物質分子周囲の水分子の回転緩和時間を左右する保護物質分子に由来する素現象を,分子動力学法により計算されるタンパク質や保護物質等の溶質分子周辺の分子運動を解析することにより見出し,保護物質の構造と水分子の回転緩和時間の相関を調べる.

生体由来物質内の結合水の定量化に関する研究

教授 白樫 了,教授 平川 一彦,元助教(平川研) 大塚 由紀子,元助教(白樫研) 高野 清,教授 工藤 一秋,助教(白樫研) 松浦 弘明
生体をはじめとする様々な材料内に存在する結合水は,誘電分光や赤外分光等により検出することができるが,それらの測定値の相互の関係は必ずしも明らかではない.また,定量化された値が材料の物性に及ぼす影響も明確ではない.本研究では,特に生体由来物質や生体保護物質を対象材料として,内部の結合水を定量測定する測定・解析手法を開発すると共に,実験データを通じて上記の点を明らかにする理論の構築を目的としている.

ITS技術の鉄道車両への展開【柏地区利用研究課題】

教授 中野 公彦

フィールドロボティクス技術を活用した走行実験【柏地区利用研究課題】

教授 中野 公彦

ロボットビークルに関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 中野 公彦

自動運転技術に関する車両走行実験【柏地区利用研究課題】

教授 中野 公彦

自動運転技術,運転支援技術に関するドライビングシミュレータ実験【柏地区利用研究課題】

教授 中野 公彦

自動運転技術,運転支援技術に関する車両走行実験【柏地区利用研究課題】

教授 中野 公彦

電気自動車技術に関する車両走行実験【柏地区利用研究課題】

教授 中野 公彦

カーボンナノチューブ複合材料ひずみセンサの開発

教授 岡部 洋二,特任助教(岡部(洋)研) 于 豊銘,大学院学生(岡部(洋)研) 宋 毅恒,大学院学生(岡部(洋)研) 劉 桐楊
運用中の構造物における過剰ひずみの発生をモニタリングするため,カーボンナノチューブを用いたナノ複合材料によるひずみセンサを開発する.

複合材におけるレーザー超音波励起挙動の数値シミュレーション

教授 岡部 洋二,助教(岡部(洋)研) 齋藤 理,大学院学生(岡部(洋)研) 張 澤平
レーザー超音波法による高効率な非破壊検査を実現するため,コーティング付きの複合材料積層板表面にレーザーを照射した場合の超音波の励起・伝搬挙動を,理論数値シミュレーションに基づいて明らかにする.

超音波ガイド波による複合材料構造の損傷モニタリング

教授 岡部 洋二,助教(岡部(洋)研) 齋藤 理,特任助教(岡部(洋)研) 于 豊銘,大学院学生(岡部(洋)研) 譚 朗星,大学院学生(岡部(洋)研) 董 澤宇,大学院学生(岡部(洋)研) LAN Zifeng,大学院学生(岡部(洋)研) CHEN Weikun
複合材料およびハニカムサンドイッチ構造に対して超音波ガイド波を伝播させ,その伝播挙動の変化や散乱波の発生,および非線形成分の変化を利用することで,剥離や亀裂等の微視的な内部損傷の発生をモニタリングあるいは非破壊検査する手法の構築を試みている.

高温用光ファイバ超音波センサの開発

教授 岡部 洋二,特任助教(岡部(洋)研) 于 豊銘,大学院学生(岡部(洋)研) 李 梓萱,大学院学生(岡部(洋)研) 徐 傳恒
1000度レべルの高温環境でも超音波受信およびAE計測を可能にするため,高耐熱性の被覆を有する再生PSFBG光ファイバ超音波センサを開発する.

Coalition for Epidemic Preparedness Innovations ニパワクチン実用化プロジェクト

特任教授 甲斐 知惠子,特任教授 米田 美佐子,特任准教授 藤幸 知子,特任准教授 佐藤 宏樹,特任研究員(甲斐研) 森藤 可南子
麻疹ウイルスをベクターとしたニパウイルス感染症に対するワクチンの開発研究

日本医療研究開発機構 麻疹ウイルスベクターを用いたニパウイルス感染症ワクチンの開発

特任教授 甲斐 知惠子

(国研)日本医療研究開発機構 医療研究開発推進事業費補助金(革新的がん医療実用化研究事業) 遺伝子組換え麻疹ウイルスを用いた抗がんウイルス療法の臨床研究

特任教授 甲斐 知惠子,特任教授 米田 美佐子,特任准教授 藤幸 知子,特任准教授 佐藤 宏樹

レベル4自動運転車におけるリスク最小化制御が交通へ与える影響評価

特任教授 平岡 敏洋,特任助教(須田研) 霜野 慧亮,教授 須田 義大
レベル4自動運転車におけるリスク最小化制御による安全な停止手法は,車線内停止や,車線外まで移動して停止する手法など複数想定されている.しかし,車線外まで移動する手法では,停止場所までの徐行時に後続車の追突リスクが上昇する恐れもある.そこで先行研究で提案した四つの停止手法それぞれを自由流の交通下で実行したときに,交通流が受ける影響の差異について,交通環境を模擬した交通流シミュレーションを用いて比較評価した.結果として,全ての条件において,広くて安全な場所まで徐行して車線外に退避する停止手法が最も安全であることが示された.実勢速度が遅い交通流では,直近の路肩に停止する手法も比較的安全となる場合もあった.また,各停止手法で最も安全性が低下するフェーズも異なり,車線外退避の手法では徐行中に,路肩停止または車線内停止の手法では停止後に,安全性が低下することがわかった.

人間機械系における新しいシステム設計論の構築

特任教授 平岡 敏洋
人間機械系を設計するうえで,従来のシステム設計論では,メインタスク達成に要するユーザの物理的労力ならびに心理的労力をいかに減らすかという視点で,自動化を導入することが殆どであった.しかしながら,1) ユーザの技能低下,2) ユーザの対象系理解度の低下,3) システム異常時(故障時)の対応力低下,4) システムに対する過信増大,といった弊害も生じている.本研究では,メインタスク達成のために,あえてユーザに労力をかけさせるような設計にすることで,上述する弊害を軽減もしくは解消することを目指して,新しいシステム設計論の体系化を行っている.

無人移動サービス車両における乗客の車内転倒防止のための運動制御

特任教授 平岡 敏洋,特任助教(須田研) 霜野 慧亮,教授 須田 義大
車内における乗客の転倒は,加減速時に生じる慣性力の影響で発生する.床面と水平な方向に生じる慣性力を低減できれば,車内事故の軽減につながると期待される.加減速に合わせ意図的に車体を傾斜させることで慣性力の方向を床面方向に向けて水平方向の影響を減らせると考えられる.自動運転と合わせて注目される電気自動車では,前後輪にインホイールモータを内蔵するものもあり,前後輪の制駆動力を制御することでピッチ角を制御できる.この特徴を活かした先行研究では,車両運動の安定性向上を目的としたピッチ角抑制制御を行っている.それに対して本研究では,車内に立って乗車する乗客の転倒防止を目的として,車両が加減速する際に乗客に作用する慣性力の影響を打ち消すようなピッチ角制御を行う.

自動運転車両に対する歩行者の信頼度推定

特任教授 平岡 敏洋,特任准教授 小野 晋太郎,教授 須田 義大
本研究では,扱う対象を自動運転車が接近する道路を横断する際に歩行者が車両に対して抱く信頼車両に対する歩行者の信頼度に絞ったうえで,それを「自動運転車の挙動次第では衝突の恐れがある状況下において,歩行者の道路横断を阻害しない能力を持っているだろうという主観的判断」と定義した.さらに,常に信頼を評価するために評価指標を,横断前,横断中で3つずつ作成した.その後,VR空間内で横断歩道に自動運転車が接近する状況を再現して歩行者横断実験を行い,実験参加者挙動データと試行中と試行後に車両に対する信頼度主観評価を取得した.試行後に得られた信頼度主観評価と特定の歩行者パラメータで相関分析を行い,信頼度と相関のある挙動を明らかにした.そしてそれらに関連する時系列データに基づいて試行中に記録した信頼度主観評価を推定する深層学習モデルを横断前と横断中で分けて作成し,それぞれ正解率は65%, 71%であった.

0.1µmの分解能を有する接触式工具長測定器の開発

准教授 土屋 健介
精密切削加工の精度を従来より1桁向上させるために,0.1µmの分解能を有する接触式工具長測定器を開発する.測定器はシーソー構造とエア圧によって接触子を微小な力で工具に接触させる.これにより,微小な工具を破損したり,回転する工具で接触子が摩耗したりせずに,工具長を測定することができる.この接触式工具長測定具の有用性を検証し,事業化可能性調査を実施する.

CFRP用工具ベンチマーク

准教授 土屋 健介
CFRP用工具について,市場調査と過去の切削試験の知見に基づいて切削試験の評価基準を提案する.

CMG(Chemo-Mechanical Grinding)砥石における反応機構の解明

准教授 土屋 健介
従来不明だった砥粒と被削材での化学的反応機構を明らかにすることで,様々な次世代半導体材料に応じた最適な砥粒(金属酸化物等)の選定を,総当たり的な実験ではなく理論的に行うことができるようにする.

安定した印刷の実現に向けた印刷ツールの最適化

准教授 土屋 健介

工具材料の金属組織最適化によるラッピング工具表面制御

准教授 土屋 健介
ハードディスクドライブの磁気スライダ製造プロセスのラッピングプレート材料としてスズ合金が使用されているが,不安定性の問題があり,それがラッピング特性とプレート寿命に影響を与えることが実験的に観察されている.本研究の目的は,スズ合金ラッピングプレートの既存の不安定現象を金属組織の観点から明らかにし,安定したプレート表面を得る方法を見出すことである.ラッピングプレートの金属組織の状態を制御し,工具製作条件を最適化することでプレート表面を安定化させ,工具寿命向上,製品品質を改善する.

応力下における切削面の残留応力分布に関する研究

准教授 土屋 健介
本研究は,切削加工と同時に圧縮残留応力を付与することを目的としている.試験片に荷重を加え,引っ張り応力を加えた状態で切削を行い,X線残留応力測定装置によって切削面の測定を行った.実験後の試験片には圧縮残留応力が付与されていることが確認できた.圧縮残留応力が付与された要因について,熱的要因,機械的要因から考察した.

樹脂材料の鏡面切削加工

准教授 土屋 健介
樹脂材料の機械加工において,工具と材料の接点で生じる加工現象に着目し,工具・工作機械・加工条件を最適化することによって高効率かつ高精度な加工を実現する.

研磨研削工程の加工点精密観察および制御

准教授 土屋 健介
ガラスと砥粒の界面で生じる加工現象の素過程を,力学的・化学的観点から解明する.そのために,顕微鏡観察下で,単一砥粒で材料を加工し,その時の微小な加工力および加工前後での砥粒・材料の変化を計測する.

粗面ガラスをワンプロセスで鏡面研磨する固定砥粒二層構造工具の開発

准教授 土屋 健介
ガラス等の機械的研磨における1つの問題は,様々な径の砥粒によるスクラッチの発生である.これらの傷には潜傷が含まれるため,このような砥粒径のバラツキの影響を抑制する必要がある.本研究では,粗面ガラスをワンプロセスで鏡面研磨するために,変形可能な砥粒層を有する二層構造の固定砥粒研磨工具を提案する.

航空機製造技術の高度化【柏地区利用研究課題】

准教授 土屋 健介

走査型電子顕微鏡下における単一砥粒の加工試験・分析の一貫システムの構築

准教授 土屋 健介
本研究の目的は,機械化学研削加工において,微視的な機械的・化学的現象を理解するために,単粒加工試験と分析とを電子顕微鏡観察下で行う一貫システムを構築することである.固定砥粒による機械化学研磨加工は,次世代半導体材料の加工技術であると同時に,持続可能な開発目標(SDG's)の一部として注目されているが,その加工メカニズムに不明点があり実用化に至っていない.本研究では,多軸の微小力センサを有するマイクロマニピュレータを用いることで,数μm~サブμmの砥粒一粒に注目して,加工点,荷重,加工速度を自由に設定し,様々な条件の加工試験を可能にする.また,加工試験自体を電子顕微鏡観察下で行うことで,砥粒・加工物・切屑について,加工中の挙動と,形状や成分の分析をその場で観察・分析することができる.これらによって,単一砥粒による機械化学研削加工を詳細に解明し,各種条件最適化によって加工性能を向上させる.

高難易度部材加工プログラムのアルゴリズム提案

准教授 土屋 健介
航空機製造は,ローコストオペレーションとして工程自動化と労働人口減少への代替化技術が日本のモノづくり力として求められている.従来,エキスパートシステムなど熟練作業者の技能の取り込みや過去のデータベース化で最適切削条件等を見出すなどの取り組みがあるが実績を超えるような成果を得られず,製造現場では未だに最適化の切削条件の決定には熟練者の経験に頼っている.そのため切削難度判定に関する要素を抽出し,最適切削条件を選定する手法の確立を目指す.

パッシブTHz近接場顕微技術の開拓

准教授 梶原 優介,特任助教(梶原研) 林 冠廷,大学院学生(梶原研) 佐久間 涼子,大学院学生(梶原研) 長井 紀樹,大学院学生(梶原研) 杉村 怜哉
テラヘルツ波(波長10 μm~1 mm)は,分子運動や格子振動など物質現象のモードがほとんど含まれる極めて重要なスペクトル領域である.本研究では試料自身の局所挙動にともなって僅かに生じるテラヘルツエバネッセント波を,外部から光を照射せずに「パッシブ」かつ「ナノスケール」で可視化する顕微鏡を開発している.使用する検出器は単一光子レベルの感度を持つCSIP(Charge Sensitive Infrared Phototransistor)であり,近接場光学系導入により空間分解能20 nm(検出波長: 14.5 μm)を達成している.最近では誘電体上の表面フォノン等の検出・解析や,グラフェン等の非平衡現象の観測,実デバイス上のエネルギー散逸観測などの応用展開のほか,極低温試料測定や近接場分光への拡張を進めている.

樹脂内部物性評価法の開拓

准教授 梶原 優介,助教(梶原研) 木村 文信,リサーチフェロー(梶原研) 吉田 一朗,大学院学生(梶原研) 田中 惇士
プラスチック成形品の非破壊的な内部残留応力評価法として,テラヘルツ(THz) 偏光に対する高分子配向の応答を利用する方法の妥当性を検証している.THz 偏光依存性と残留応力に起因する寸法変化との間に相関関係があることが示されたため,差周波THz光源を導入した偏光特性評価光学系を構築し,本計測法の確立を推し進めている.

表面微細構造を利用した金属/樹脂直接接合技術の開拓

准教授 梶原 優介,助教(梶原研) 木村 文信,大学院学生(梶原研) 陳 偉彦,大学院学生(梶原研) 王 鑠涵,大学院学生(梶原研) 大房 徹也
金属表面にマイクロ微細構造を創製し,インサート射出成形を行うことによって強固な金属/樹脂接合について,表面処理や成形条件の最適化,および接合メカニズムの解明を進めている.現在は化学エッチングによって表面処理を行ったアルミニウムとPBTの直接接合に成功し,射出圧や保圧,アニール条件の最適化,および SEM, TEMによる断面観察を通した接合指導原理の解明を進めている.加えて,微細構造を応用したCFRPの接着技術に関する研究も行っている.

STEAM教育に向けたオンライン教材開発

准教授 川越 至桜,教授 北澤 大輔,教授 大島 まり,准教授 八木 俊介,准教授 ヘイチク パヴェル,准教授 杉浦 慎哉,准教授 酒井 雄也
オンライン学習が急速に普及し,ポストコロナでは教育のあり方も大きく変化すると予想される.今後は,オンライン学習を活用するとともに,教室や人がいる場の良さを生かした新しいオフライン教育が求められる.本研究では,オンライン学習を支援するためのデジタルコンテンツを開発するとともに,それらを活用したオフラインでの教育プログラムを開発する.その際,本所で行われている研究をSTEAM(Science, Technology, Engineering, Arts, and Mathematics)という観点から整理することで,初等中等教育における「理数探究」や大学・大学院でのProject-Based Learningなどの基盤となる教育プログラムにもつなげていく予定である.

天文学を軸とした次世代育成とSTEAM教育

准教授 川越 至桜,特任専門員(自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター) 日下部 展彦
天文学は総合科学であるとともに観測機器の設計やデータの可視化など学際的な分野であり,STEAM教育の題材として適している.本研究では,都内の中高一貫校の天文部にて,STEAM教育を念頭においたプログラムを開発し実践した.その結果,生徒たちは天文学のみならず,望遠鏡やプラネタリウム本体,エアドームの設計・製作,データ解析および可視化等,様々な知識を深めることができた.従って,天文学を軸としたSTEAM教育を実践することができたと考えられる.

産業界との協働による新しいSTEAM教育活動・ワークショップの研究開発

准教授 川越 至桜,教授 大島 まり
産業界と協働したSTEAM教育として,東京大学生産技術研究所の次世代育成オフィスが中心となって実験教材を開発し,産学連携ワークショップを実施した.また,それを基に初等・中等教育で使用できる映像教材を開発した.その結果,実験教材を用いたワークショップは,科学技術や産業界への興味・関心を喚起し,理科や科学の学習に有効であった.また科学技術の社会的な役割や意義を理解する上でも有効だと考えられる.

ニュートリノ振動を考慮したニュートリノスペクトルの系統的研究

助教(国立天文台) 滝脇 知也,日本学術振興会特別研究員(国立天文台) 佐々木 宏和,准教授 川越 至桜,Assistant Professor (Virginia Polytechnic Institute and State University) 堀内 俊作,助教(東北大) 石徹白 晃治
重力崩壊型超新星爆発から放射されるニュートリノスペクトルの評価には,ニュートリノ振動を考慮することが不可欠である.本研究では,ニュートリノ振動を考慮したニュートリノスペクトルを系統的に明らかにすることを目的としている.

天文学を題材とする課題把握・俯瞰能力向上の為のVRを活用した教育プログラム開発

准教授 川越 至桜,大学院学生(川越研) 福島 広大
社会や経済が急速に変化する現在,地球環境や人間社会において世界が一丸となって取り組むべき規模の課題が山積している.これらの解決には,私達一人一人が自分事として課題を捉え認識し,また様々な情報の俯瞰を通して課題把握する事が重要である. 本研究では地球環境や人間社会に対する俯瞰能力および課題把握能力の向上を目的とした教育プログラムの開発を目指す.その上で,巨視的規模までを包括的・学際的に扱う学問である天文学を題材とし,広い視点から社会を俯瞰すると共に,VR(仮想現実)による没入感を活用し,地球規模の諸課題を自分事として認識し把握できる教育プログラムを開発する.また本教育コンテンツ活用を通し,俯瞰能力および課題把握能力の向上を検証する上で,その評価基準および方法の開発も行う.

学習者の形成的評価と一体化した確率・統計分野における ICT 端末用教材の開発と実践

准教授 川越 至桜,大学院学生(川越研) 倉田 将希
近年,情報化やグローバル化が進み,急激に変化する時代が想定される中で,こうした時代を生き抜く子どもたちにどのような資質・能力を育成すべきか,盛んに議論が行われている.平成 29 年に告示された初等中等教育の新学習指導要領では,複雑で予測困難な令和の社会に対応できる創造性豊かな人材の育成を目指し「主体的・対話的で深い学び」の実現が掲げられ,資質・能力ベースの探究学習が推進されている.同時に,学習指導要領で定めた資質・能力が児童生徒に確実に育成されているかを測定するための学習評価の在り方も見直され,教師の指導改善や児童生徒の学習改善のための評価(形成的評価)の充実が図られるようになった.また,資質・能力を一層確実に育成できる「個別最適な学び」の実現を目指し,児童生徒の一人一台端末や高速大容量通信ネットワークの整備も進んでいる(GIGA スクール構想).しかし,ICT 端末の活用例は情報の共有や可視化に留まることが多く,端末の操作性を活かした利活用や形成的評価と一体化した指導への利活用には課題がある.さらに,探究的な学習内容が各学校・各教師に依存し,探究学習の取り扱いそのものに確立された教授方略がないという背景から,ICT 機器と関連させた探究的な実践に対して学校教育現場での混乱が生じているという問題点もある. 本研究では,令和の日本型学校教育として注目される資質・能力ベースの探究学習に,指導と評価の一体化の観点を融合した,ICT端末用学習教材を開発する.特に中高数学科確率の単元を題材に,多数回試行や日常生活との関連の中で確率の概念的理解を深めながら,形成的評価と一体化した教科指導を効果的に支援できる教材を開発する.中高生向けの実践結果から,本教材が教師の指導改善や生徒の概念的理解の深化に貢献できることが示唆された.

探究型学習における教育データ分析と「総合的な探究の時間」の評価方法の開発

准教授 川越 至桜,大学院学生(川越研) 中澤 紀香
平成30年に告示された新学習指導要領では,高等学校の「総合的な学習の時間」が「総合的な探究の時間」に変更され,教科等横断的な学習を往還し,社会で生きて働く資質・能力を育成することが目指されている.また,生徒の学習状況の評価方法として「信頼される評価の方法であること」「多面的な評価の方法であること」「学習状況の過程を評価する方法であること」の三つが重要とされている.しかし,具体的な評価方法については明示されていないことから,どのように評価を行うのかが教育現場では課題となっている. 一方,文部科学省によりスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受けた一部の高等学校等では,理数系の課題研究が実施されている.SSH事業は20年以上にわたり実施されており,各SSH校での取り組みは研究開発実施報告書という形で報告され,探究活動やそれらの評価に関するノウハウが蓄積されている. 本研究では,SSH各校で実施されてきた評価方法の分析から,理数系を題材とした探究型学習における評価基準や評価方法を整理する.そして,理数系に限らない「総合的な探究の時間」に応用するための課題を明らかにするとともに,その評価方法を開発する.

マルチセンシング機構解明のためのマイクロ流体デバイス開発

准教授 松永 行子

三次元微小血管モデル作成技術を基盤とした,ポリクローナル転移時におけるがん血管内外浸潤動態の解明

准教授 松永 行子,大学院学生(松永研) 池田 行徳

微小血管モデルによる血管微小環境の時空間解析手法の構築

准教授 松永 行子,東京大学特別研究員(松永研) CACHEUX JEAN

指先毛細血管情報による健康管理ツールの開発

准教授 松永 行子

科学とデザインによる健康デザインに関する研究

准教授 松永 行子

3次元微小血管モデルを用いたがん細胞の血管内侵入の分子機構の解明と治療への応用

東京大学特別研究員(松永研) 高橋 和樹,准教授 松永 行子

ケミカルルーピングによる高効率水素製造・CO2分離の性能向上

准教授 アズィッズ ムハンマッド,大学院学生(アズィッズ研) Zhuang SUN,大学院学生(アズィッズ研) Chen Xiangxiang,国際研究員(アズィッズ研) Po-Chih KUO,大学院学生(アズィッズ研) Hafif DAFIQURROHMAN

デジタルツインによる水素・アンモニア燃焼の予測

准教授 アズィッズ ムハンマッド,大学院学生(アズィッズ研) Rahmat WALUYO,大学院学生(アズィッズ研) 大平 和季

三重周期最小表面構造による水素貯蔵の高効率化

准教授 アズィッズ ムハンマッド,大学院学生(アズィッズ研) Luthfan Adhy LESMANA

水素・アンモニアによるエネルギーシステムの構築および経済性検討

准教授 アズィッズ ムハンマッド,大学院学生(アズィッズ研) Du WEN,大学院学生(アズィッズ研) Jinyue CUI

鉄レドックスフロー電池の性能向上

准教授 アズィッズ ムハンマッド,大学院学生(アズィッズ研) Jeremiah BELVA

変形加工学に関する研究【柏地区利用研究課題】

准教授 古島 剛

海洋センシング

准教授 ソーントン ブレア
Underwater sensing is the raw material of how we perceive the ocean. We aim to improve how the ocean can be observed by investigating the interactions of photons in underwater environments, integrating advanced instrumentation on robotic platforms, and combining this with methods for automated data interpretation. Our group collaborates closely with institutes in the UK, Australia and the USA, and participates in international programs to maximise the global impact of our research and ensure our members can conduct research effectively in an international environment.

海洋センシングに関する連携研究【柏地区利用研究課題】

准教授 ソーントン ブレア

柔軟物の動的操り

准教授 山川 雄司
高速なビジョンとアクチュエータを用いて,柔軟物を動的かつ巧みに操り,様々なアプリケーションを創出することを目指している.

高速センサネットワークシステムとその応用

准教授 山川 雄司,特任助教(山川研) 金 賢梧
各種センサをネットワーク上に接続し,センサネットワークシステムを構築することにより実世界を高速かつ包括的に認識するシステム構築とその応用を目指している.

高速ビジョンのITS応用

准教授 山川 雄司,助教(山川研) 平野 正浩
高速ビジョンを移動体に設置し,高速画像処理を駆使することにより,高速画像センシング技術によるITS応用を目指す.

高速ロボットを用いた人間ロボット協調

准教授 山川 雄司
高速ロボットを用いて,人間とロボットとの協調をリアルタイムで実現することにより,従来の人間ロボット協調とは異なる次世代の人間ロボットインタラクションを目指している.

海洋複合計測システムの実現に関する研究

特任准教授 福場 辰洋,特任助教(ペニントン研) 木下 晴之,国際研究員(金(秀)研) Nicolas Clement
海洋環境中において,生物地球化学的パラメタの複合計測とそれによる高度な海洋計測を実現するため,センサ・現場型分析装置の小型化・機能集積化を進める.環境DNAに関連した装置に関する研究を行う.

癌治療用組換え麻疹ウイルスによる細胞死メカニズムと免疫誘導性の解析

特任准教授 藤幸 知子
令和4(2022)年度 基盤研究(B)

実映像ドライビングシミュレータに関する研究

特任准教授 小野 晋太郎,准教授(愛知県立大) 河中 治樹,教授(愛知県立大) 小栗 宏次

並列セルソーターの開発に関する研究

講師 金 秀炫

単一細胞相互作用解析

講師 金 秀炫

高感度リキッドバイオプシーを可能とするバイオマイクロシステムの開発

講師 金 秀炫

半導体ナノ構造とテラヘルツ電磁波の相互作用の制御と応用

教授 平川 一彦,助教(平川研) 黒山 和幸,特任研究員(平川研) 長井 奈緒美
半導体量子ナノ構造とテラヘルツ電磁波の相互作用とその応用に関する研究を行っている.特にスプリットリング共振器と呼ばれるテラヘルツ電磁波に対する共振器に近接させた量子ポイントコンタクト構造や量子ドットの電気伝導特性を調べ,テラヘルツ電磁波とナノ構造とが強く結合した系において発現する新しい物理を探索している.

半導体量子構造を用いたテラヘルツ光源・検出器の開発

教授 平川 一彦,大学院学生(平川研) 牛 天野,大学院学生(平川研) 小田嶋 修,民間等共同研究員(平川研) 高橋 和宏,准教授(東京農工大) 張 亜,特任研究員(平川研) 渡辺 宣朗,特任研究員(平川研) 長井 奈緒美
半導体量子構造を用いて,これまで未開拓であったテラヘルツ領域で動作する新規光源,検出器の開拓を行っている.本年度は,MEMSを用いたボロメータについて,(1)p型ヘテロ構造を用いることにより,MEMS共振信号をピエゾ抵抗効果により読み出すことができた.さらにバッファートランジスタを用いなくても,mVオーダーのrf信号を得ることができた.(2)大振幅非線形駆動時に梁内部で起こるモード間結合効果について実験と考察を行い,モード間結合が起きるとモードの振動線幅が大きく減少することを見出すとともに,非線形光学効果における4光波混合のようにパラメトリックな効果が観測されるなど,成果が挙がった.

半導体量子構造を用いた固体冷却素子の開発

教授 平川 一彦,研究員(LIMMS) BESCOND MARC,東京大学特別研究員(平川研) SALHANI Chloe,大学院学生(平川研) 朱 翔宇,特任研究員(平川研) 長井 奈緒美
現代のLSIに代表されるエレクトロニクスの進歩を大きく阻んでいるのが発熱による問題であり,冷却技術は将来のエレクトロニクスの発展の鍵を握る技術と言っても過言ではない.我々は半導体へテロ構造のバンドを適切に設計し,熱電子放出と共鳴トンネル効果を同時に制御して実現できるサーミオニッククーリング技術に注目している.本サーミオニッククーリングにおいては,トンネル障壁を介して量子井戸に低エネルギーの電子が共鳴的に注入され,量子井戸を出るときには低くて厚い障壁を高エネルギーの熱電子が熱的に越えていく過程を用いる素子であり,電流を流すにつれて量子井戸層が冷却されていくデバイスである. 本年度は,(1)非平衡グリーン関数法による数値計算により,構造パラメータと電子温度の関係に関する議論を行っている.(2)量子井戸を複数個直列に接合したより高効率な冷却素子構造を提案し,電子温度を評価した.その結果,バイアス電圧によっては,電子温度の上昇も観測されることがわかった.その機構などは,現在検討中である.

単一原子レベルの超微細加工プロセスと単一分子トランジスタ

教授 平川 一彦,協力研究員(平川研) 杜 少卿,大学院学生(平川研) 田 玥,特任助教(平川研) 相場 諒,教授(東北大) 平山 祥郎,助教(東北大) 橋本 克之,教授(京都大) 村田 靖次郎,助教(京都大) 橋川 祥史
我々は,原子レベルでの金属超微細電極の加工プロセスおよびそれを用いて作製した単一分子トランジスタの伝導の研究を行っている.本年度は,(1)単一水分子を内包したフラーレン分子の伝導特性とテラヘルツ分光の実験に着手し,フラーレン分子に内包された水分子の回転モード・振動モードの観測を行った.その結果,C60分子の中では水分子がオルソとパラ状態間を揺らいでいることが明らかになった.また,強磁場下での伝導も評価したところ,B < 2Tで分子のコンダクタンスがヒステリシスを示すことを見出した.(2)通電断線における臨界電圧の振る舞いから,1個の伝導電子から1個の原子へのエネルギー移動が原子を移動させる主な原因であり,ジュール熱はマイナーな効果しか果たしていないことがわかった.

赤外分光技術の開発と応用

教授 平川 一彦,元助教(平川研) 大塚 由紀子,教授 白樫 了
フーリエ変換赤外分光光度計を用いて赤外分光を行うことにより,様々な物性研究を行っている.本年度は,グルテンフリーの食材として注目を集めている米ゲルおよび米粉について,水分子の赤外吸収スペクトルを調べることにより,水分子の水素結合が変化する過程の解明や,自由水・結合水の構造に関する重要な知見を得た.また,米ゲルの老化についても検討し,示差走査型熱量計(DSC)を用いて,老化のプロセスに関する詳細な検討を行うとともに,赤外分光を用いた新たな測定法を確立することを検討しているところである.

シリコン量子ビットの集積化に関する研究

教授 平本 俊郎,准教授 小林 正治,助手(平本研) 更屋 拓哉
CMOSによるバイナリーディジタル演算に代わるコンピューティング手法として量子計算が注目されている.本研究室では,量子計算に用いる量子ビットをシリコンで実現し,さらに多量子ビットを集積化する研究を行っている.大規模集積回路プロセス互換のプロセスを用いて集積化を実現する.

ナノスケールCMOSデバイスの特性ばらつきに関する研究

教授 平本 俊郎,准教授 小林 正治,助手(平本研) 更屋 拓哉
MOSトランジスタが微細化されるとともに,ランダムな特性ばらつきの影響が無視できないほど大きくなってきている.その原因は主にチャネル中の不純物数の揺らぎであるが,ばらつき原因は定量的にはまだ明らかとなっていない.本研究では,ランダムな特性ばらつきの評価と,そのデバイス・回路特性への影響について検討している.

MaaS時代における安心・安全なモビリティ環境実現に向けた利用状況分析・コンテキスト推定基盤

教授 瀬崎 薫,講師(東大) 西山 勇毅,助教(瀬崎研) 田谷 昭仁,大学院学生(瀬崎研) 笠原 有貴,大学院学生(瀬崎研) 鈴木 凌斗,大学院学生(瀬崎研) 唐 奥,大学院学生(瀬崎研) 董 学甫,大学院学生(瀬崎研) 彭 何林訳,大学院学生(瀬崎研) 牛島 秀暢,大学院学生(瀬崎研) 徐 立強,大学院学生(瀬崎研) 小野 翔多,大学院学生(瀬崎研) 韓 増易,大学院学生(瀬崎研) 松野 有弥,大学院学生(瀬崎研) 大塚 理恵子,大学院学生(瀬崎研) 呂 蘇幸,大学院学生(瀬崎研) 細沼 恵里,大学院学生(瀬崎研) 諸 震,大学院学生(瀬崎研) 荘 昊昱,大学院学生(瀬崎研) 石岡 陸,大学院学生(瀬崎研) 小野寺 文香
MaaSにおいてはサービスの利用者属性,目的地のような従来用いられてきた利用状況に加え,利用者の身体状況など高度のコンテキストを考慮した最適化が求められている.本研究ではセンサを利用し,高度のコンテキストを推定する手法を開発すると共にその応用手法についても包括的に検討を行った.

モバイル・ウェアラブルデバイスを用いたコンテキスト認識と人・集団の行動変容促進

講師(東大) 西山 勇毅,教授 瀬崎 薫,大学院学生(瀬崎研) 韓 増易,大学院学生(瀬崎研) 小野 翔多,大学院学生(瀬崎研) 徐 立強,大学院学生(瀬崎研) 牛島 秀暢,大学院学生(瀬崎研) 董 学甫,大学院学生(瀬崎研) 下条 和暉,大学院学生(瀬崎研) 鈴木 凌斗,大学院学生(瀬崎研) 笠原 有貴,大学院学生(瀬崎研) 小野寺 文香,大学院学生(瀬崎研) 荘 昊昱,大学院学生(瀬崎研) 諸 震
最新のモバイル・ウェアラブルデバイスには複数のハード・ソフトウェアセンサが搭載されている.本研究では,それら複数センサデータの収集・分析基盤の開発と,機械学習等を用いた人・環境のコンテキスト認識技術の研究・開発を行う.さらに,人々のWell-Being実現に向けた,抽出コンテキストの人・集団への情報還元基盤に関する研究も行う.

Tor Hidden Serviceに対するTraffic Confirmation攻撃のためのオーバーレイ通信システム

助教授(警察大学校) 島田 要,教授 松浦 幹太
Tor Hidden Serviceは,匿名通信システムTorを使用したいわゆるダークネットの一部である.具体的には,Torネットワーク上でサーバのIPアドレスを秘匿しながら,そのサーバをホストとするサービスが提供される.一般に,Torやその応用システムで匿名性を低下させる攻撃の種類の一つとして,ある特徴を持つ通信(信号)が攻撃者の観測点で検出されたことを確認することによって通信経路を特定する攻撃(Traffic confirmation攻撃)がある.本研究では,Tor Hidden Serviceに対するTraffic confirmation攻撃において信号の発信者を確認可能とする技術を提案し,同攻撃の強度を高めることに成功した.

ブロックチェーンの安全性を強化し環境負荷を低減する検証証明技術

教授 松浦 幹太,技術専門職員(松浦研) 細井 琢朗
ブロックチェーンのネットワークでは,追記する取引情報の正しさを検証する同じ作業を,多くのノードが様々なフェーズで繰り返し実施する.検証を省略することによって利益を得る確率が高まるため,ノードが検証を省略するインセンティブが生じる.省略を許さない制約を加えると,全体として極めて環境負荷が高くなり,ビットコイン型の実装では欧州の中規模国1国に相当する電力消費にまでなるという試算もあるほどである.本研究では,各取引情報を少なくとも一つのノードが必ず検証し,しかも他のノードが低消費電力でその事実を確認できるメカニズムを提案している.これにより,ブロックチェーンの安全性強化と環境負荷低減を両立することができる.これまでに,実験的評価では,隔離されたノードでの有効性検証に成功した.また,理論的評価では,とくに電子署名の安全性強化に関する新たな知見を得た.

ブロックチェーン匿名通貨のプライバシー解析

大学院学生(松浦研) 宮前 剛,教授 松浦 幹太
ブロックチェーンを用いて構成する暗号通貨では,公開鍵のハッシュ値をID代わりとすることにより,ある程度の匿名性を確保できる.ゼロ知識証明技術を活用してさらに匿名性を高める方法が知られているが,厳密なプライバシーモデルは確立されておらず評価が難しかった.本研究では,送金者や受領者もプライバシーの攻撃者と見なす新しい攻撃体系を定式化した上で,ゼロ知識性の概念を匿名性のモデル化自体に応用して,送金プロトコルの関連付け困難性を容易に証明する手法を提案した.

効率的な紛失評価プロトコルと条件付き秘密開示技術

大学院学生(松浦研) Kittiphop Phalakarn,(国研)産業技術総合研究所 Nuttapong Attrapadung,教授 松浦 幹太
In oblivious finite automata evaluation, one party holds a private automaton, and the other party holds a private string of characters. The objective is to let the parties know whether the string is accepted by the automaton or not, while keeping their inputs secret. The applications include DNA searching, pattern matching, and more. Most of the previous works are based on asymmetric cryptographic primitives, such as homomorphic encryption and oblivious transfer. These primitives are significantly slower than symmetric ones. Moreover, some protocols also require several rounds of interaction. As our main contribution, we propose an oblivious finite automata evaluation protocol via conditional disclosure of secrets (CDS), using one (potentially malicious) outsourcing server. This results in a constant-round protocol, and no heavy asymmetric-key primitives are needed.

動的に不正署名を生成するデバイスを追跡可能な集約署名とその応用

大学院学生(松浦研) 石井 龍,(国研)産業技術総合研究所 照屋 唯紀,(国研)産業技術総合研究所 坂井 祐介,(国研)産業技術総合研究所 松田 隆宏,研究グループ長((国研)産業技術総合研究所) 花岡 悟一郎,教授 松浦 幹太,(国研)産業技術総合研究所/横浜国立大 松本 勉
集約署名は,複数の署名を1 つの署名に集約でき,全体署名長および署名検証時間の短縮という効率性を持つため,センサーネットワークなど多数のユーザやデバイスが署名を送信するシステムでの活用が期待されている.しかし,不正署名を1 つでも含んで集約すると集約署名は不正となり,検証者はどのユーザやデバイスが不正署名を生成したかを特定できない.さらに,上記のセンサーネットワーク等の応用では,多数のデバイスが定期的にデータと署名を送信し,かつ(故障などにより) 不正署名を生成するデバイスが時々刻々と変わることが自然に想定される.本研究では,そのような状況を捉えた追跡可能集約署名のモデルを導入し,その機能的要件と安全性要件の定義を行う.さらに,通常の集約署名とDynamic Traitor Tracing を用いた一般的構成を提案した.また,実応用のパフォーマンス評価を実験的に行い,典型的なIOTシステムで活用するための条件を明らかにした.

匿名レビューシステムの簡潔で自然な構成とその効率的な一般的構成法

大学院学生(松浦研) 林 リウヤ,(国研)産業技術総合研究所 勝又 秀一,(国研)産業技術総合研究所 坂井 祐介,教授 松浦 幹太
匿名レビューシステム(ARS: Anonymous Reputation System) は,電子商取引サイトにおいてユーザが購入した商品に対して匿名でレビューを付けられるシステムである.Blomer らによりグループ署名ベースのモデルで初めて定義され(2015年),その後 El Kaafarani らにより安全性の強化が行われた(2018年).本研究では,以下の3つの貢献により,さらに完成度の高いARSの理論を構成した.1つ目は,ARS の簡潔で自然なモデルの提案である.Blomer らのモデルは,管理者が2種類存在するモデルであったが,彼らのモデルではなりすましや偽造に対する安全性の考慮が不足していた.また,El Kaafaraniらは1つの管理者のみを考えるモデルを提案したが,売買を管理者に委託するため信頼の一極化が生じ,管理者がユーザの購入情報を見られるという問題があった.我々は,これらを防ぐ新たなモデルを提案した.2つ目は,ARS の新たな安全性として Purchase Privacyを定義したことである.3つ目は,ARSの効率的な一般的構成法を示したことである.これにより,アジャイル開発と親和性の高いARSが可能となった.

悪性なスマート契約の分類とその応用に関する研究

大学院学生(松浦研) 五十嵐 太一,教授 松浦 幹太
ブロックチェーンシステムの中で実行されるコンピュータプログラムであるスマート契約は,暗号資産に関する取引を行う際に重要な役割を担うだけでなく,ブロックチェーンの応用を広げる際の安全性維持に大きな影響を与える技術となっている.だからこそ,スマート契約は,しばしば不正なユーザによる攻撃の対象となり,犯罪に利用される事例が発生している.本研究では,攻撃や犯罪に利用される悪性なスマート契約を体系的に分析した.そして,従来知られていた二種類ではなく,新たに詐欺行為を含む三種類に分類すれば攻撃の検知や対策技術の評価に有益であることを示した.

脳マイクロサーキットモデルの構築と回路実装

教授 河野 崇,助教(河野研) 名波 拓哉
神経細胞・シナプスレベルでの脳回路モデルを構築するとともにシリコン神経ネットワーク技術を用いて実装することにより,脳神経回路の動作原理を構築による解析アプローチで解明するためのプラットフォーム構築を目指す.

超低電力シリコン神経ネットワークの開発

教授 河野 崇,准教授 小林 正治,大学院学生(河野研) Ashish Gautam
超低電力アナログCMOS回路とFeFETとを組み合わせることにより,脳に匹敵する超低電力アナログニューロモルフィックハードウェア基盤を構築する.

ゲートドライバICによるパワーデバイスの過電流検出

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
パワーデバイスの動作状態を監視する手法として,従来は温度センサを用いた接合温度測定や電流センサを用いた負荷電流測定などが行われるが,これらのセンサを使った手法はコストやサイズが増大してしまう.本研究では,ゲートドライバの出力電圧からパワーデバイスの動作状態を推定する手法を提案し,ゲートドライバICに集積可能にすることでコストやサイズの低減を実現する.

ゲート電圧波形の機械学習を用いたパワーデバイスの劣化推定

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
パワーデバイスのゲート電圧波形から機械学習を用いて,パワーデバイス故障の一要因であるボンディングワイヤ剥がれを検出する手法を提案する.従来のボンディングワイヤ剥がれ検出手法と比較して検出回路に絶縁の必要がなく,ゲート電圧波形から抽出されるパラメータを用いて,負荷電流変動と温度変動にロバストなボンディングワイヤ剥がれ検出手法を構築する.

パワーエレクトロニクスにおけるEMI問題を解決するデジタルゲート駆動技術

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
EMI規格を満たしつつスイッチング損失を最小化するデジタルゲート駆動技術を確立し,パワーエレクトロニクスにおけるEMI問題を簡単・迅速・低コストに解決することを目指す.EMI規格を満たしつつスイッチング損失を最小化するデジタルゲート駆動技術の提案およびデジタルゲートドライバICの設計・試作・評価を行う.

パワートランジスタ駆動用の波形制御プログラマブルゲートドライバIC

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
パワーエレクトロニクスとLSIの異分野連携により,パワートランジスタのゲート駆動電流をデジタルインターフェースで変えられるプログラマブルゲートドライバICを開発した.AIを使った自動最適制御によって,スイッチング時の損失低減とノイズ低減を両立するとともに,動作条件に応じた最適化手法の更なる高度化に取り組んでいる.

パワー半導体を省エネに操る自動波形変化ゲート駆動ICの開発

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
パワー半導体のゲート端子を駆動する電流波形を自動で制御するため,ゲート駆動回路・センサ回路・制御回路をまとめて1チップ化し,省スペースかつ低コストで誰でも使うことができるゲートドライバICを開発する.従来のゲート駆動ICチップと置き換えるだけで,パワー半導体のスイッチング損失を低減でき,パワーエレクトロニクス機器が大量普及した社会の脱炭素化に貢献する.

小型・高効率を実現するハイブリッドDC-DCコンバータの開発

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
従来の電源回路における効率と体積のトレードオフを克服するハイブリッドDC-DCコンバータの研究開発に取り組んでいる.特に,高入力電圧および高降圧比のアプリケーションに着目し,新しい回路トポロジーの提案と回路設計技術の開発に取り組んでいる.

絶縁型ハイブリッドDC-DCコンバータに関する研究開発

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
効率と体積のトレードオフを克服できる非絶縁型ハイブリッドDC-DCコンバータの回路トポロジーを参考にして,絶縁型DC-DCコンバータの同期整流回路に応用するための回路設計技術と新しい回路トポロジーの提案に向けた研究開発に取り組んでいる.

高エネルギー効率のピクセル近傍2次元CNNアクセラレータ

教授 高宮 真
画像認識を高エネルギー効率で行うことを目的として,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)アルゴリズムの本来の特徴である注目ピクセルの近傍に対してのみ畳み込み演算を行う点を利用し,ピクセル近傍に集積されたデジタル回路を用いて外部メモリへのデータ書き込みなしでCNN演算を2次元的に実現する.

高耐圧IGBT向けデジタルゲートドライバの開発

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
デジタルゲート駆動技術を高耐圧IGBTに利用するため,ゲート駆動の大電流化を実現するデジタルゲートドライバの開発・実証を行う.

ワイヤレス給電を活用した大容量キャパシタの新しい用途開拓に関する研究

助教(高宮研) 畑 勝裕
各種モバイル機器やEV等のモビリティなどはこれまで電池利用が一般的であったが,ワイヤレス給電技術の普及によって高頻度給電が可能となれば,電池に変わって大容量キャパシタを利用できるアプリケーションが数多く存在すると考えられる.そのため,大容量キャパシタとワイヤレス給電の融合に基づく新たな電源設計技術を確立し,大容量キャパシタの新たな用途開拓とシステム構築に向けた研究開発に取り組む.

非接触給電等によるエネルギー・モビリティ統合システムの研究開発

助教(高宮研) 畑 勝裕
自動運転技術やデマンド型交通などを利用した公共交通サービスではカバーできない過疎地域の移動課題を解決するため,次世代モビリティと給電インフラの協調によるエネルギー・モビリティ統合システムを開発する.

ワイヤレス給電技術の宇宙応用に関する研究

准教授(東京理科大) 居村 岳広,教授(東京理科大) 堀 洋一,助教(高宮研) 畑 勝裕,JAXA 嶋田 修平,JAXA 本田 さゆり

非接触給電舗装の実用化に関する研究

准教授(東京理科大) 居村 岳広,教授(東京理科大) 堀 洋一,教授(東大) 藤本 博志,助教(高宮研) 畑 勝裕,東亜道路工業(株) 阿部 長門
走行中充電における道路側コイルの電気的特性と機械的強度向上させた上で,アスファルトへの埋込み技術確立を目的とする.電気的特性(効率・電力など)と機械的特性(耐久性など)を従来コイルと比較し,経年劣化の評価を行い,埋込み深さの最適化,低コストコイル等の可能性を示す.

ダイヤモンド微小共振器技術の開発

教授 岩本 敏,助手(東大) 石田 悟己,主任研究員((国研)産業技術総合研究所) 加藤 宙光,研究チーム長((国研)産業技術総合研究所) 牧野 俊晴,教授(横浜国立大) 小坂 英男
近年,ダイヤモンド中の色中心を用いた量子センサや量子メモリなどの量子情報デバイスが高い関心を集めている.しかし,これら素子の効率は必ずしも十分ではなく,ダイヤモンド色中心と光子の相互作用を増強することによる高効率化の実現が大いに期待されている. 我々の研究室では,これまでにシリコンや化合物半導体を用いて培ってきたフォトニック結晶技術をダイヤモンドに展開し,量子デバイスの高効率化に資するダイヤモンドフォトニック結晶ナノ共振器の基盤技術開発を進めている.ダイヤモンド微小共振器構造の設計のほか,それを実現するためのダイヤモンド微細加工技術の開発にも取り組んでいる.

フォノンの二経路干渉による熱伝導の理論的研究

教授 野村 政宏,国際研究員(野村研) Sebastian Volz,国際研究員(野村研) Yury Kosevich

量子中継応用にむけたダイヤモンドオプトメカニクス系のシミュレーション

教授 野村 政宏,教授(横浜国立大) 小坂 英男,教授 岩本 敏,特任助教(野村研) キム ビョンギ,特任研究員(野村研) Michele Diego

分散型地球環境情報ベース【柏地区利用研究課題】

准教授 根本 利弘

地球環境デジタル基盤の構築とその高度化

准教授 根本 利弘,特任准教授(東大) 生駒 栄司,特任助教(東大) 安川 雅紀,特任助教(東大) 山本 昭夫,特任研究員(東大) 松村 浩道,特任研究員(合田研) 服部 純子,特任研究員(東大) 平川 晶子,特任研究員(東大) 西川 史恵,特別教授(東大) 喜連川 優
地球環境分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)を更に推進するとともに,国,地方自治体,企業等の意思決定に貢献する,気候変動対策や防災・減災対策等を中心とした地球環境全体のデータプラットフォームとしての土台を築く.

Bio-Sensing platform for neuro-cardiac axis investigation

准教授 ティクシエ 三田 アニエス,共同研究員(年吉研) 井樋田 悟史,教授(The University of Bordeaux) Timothee Levi,特任准教授(東大) 藤生 克仁,准教授 池内 与志穂,教授 年吉 洋,博士(The University of Bordeaux) Pierre-Marie Faure
In the body, heart and brain interact continuously through various electrical and biomolecule signals to maintain heart homeostasis. But how equilibrium is maintained when a disequilibrium occurs, and how disruption happens in the case of disease, like heart stroke, it is still not well understood. If we can understand it, it will be possible to intervene artificially and reestablish homeostasis. For investigation, it is essential to study the neuro-cardiac axis outside of the body in in-vitro. In this research, a bio-sensing platform is developed to investigate the interactions between heart cells and neurons. This platform contains an array of a multitude of sensors for electrophysiology and bio-chemical sensing, and electrodes for stimulation and artificial control of the activity. In addition, neuromorphic devices providing sensing and biomimetic stimulation of heart cells or neurons, are also created to control the biological system, through the bio-sensing platform, in a close-loop, as it happens in the body. The technology for the bio-sensing platform is based on thin-film-transistor technology, and for the neuromorphic device on FPGA circuits.

Bio-sensing array platform for pancreatic Beta-cell investigation

准教授 ティクシエ 三田 アニエス,教授 年吉 洋,共同研究員(年吉研) 井樋田 悟史,博士(東大) Dongchen Zhu,教授(東大) 酒井 康行,准教授(近畿大) 小森 喜久夫,助教(東大) Mathieu Danoy
Diabetes is a chronic disease which can provoke blindness, heart attack, stroke and so on when not treated. It occurs when the pancreas does not use well enough or produces enough insulin hormone to regulate the concentration of glucose in blood. It is the Beta-cells which can be found in the islets of Langerhans that secrete insulin: a deficiency in the functioning of Beta-cells perturbs glucose homeostasis and can provoke diabetes. To elucidate the pathophysiology of islet-related diseases, a bio-sensing platform able to study islets at the level of Beta-cell have to be developed. The bio-sensing platform is made of an array of sensors to sense the electrophysiology activity of a Beta-cell culture during stimulation with glucose. Insulin sensor will be integrated too on the platform to monitor insulin secretion. Various experimental conditions are tested to reproduce disease in an in-vitro environment. The bio-sensing platform is based on thin-film-transistor technology thanks to which a large array with multiple sensors can be fabricated.

3次元デジタル化とロボティクス

准教授 大石 岳史,助教(大石研) 影澤 政隆,特任助教(大石研) 岡本 泰英,特任助教(大石研) 佐藤 啓宏,特任助教(大石研) メナンドロ ローハス,特任研究員(大石研) 石川 涼一
カメラやLiDARを用いて実世界を3次元デジタル化する移動体計測システムを開発している.ローバーやドローンの位置姿勢をセンサデータから推定し,推定された位置姿勢をもとにLiDARデータを再配置することによって対象の3次元点群を得ることが可能となる.このような計測システムだけでなく遠隔作業を目的としたヒューマノイドロボットの仮想空間操作インタフェースや,SLAMデバイスを用いたロボットナビゲーション技術,学習ベースの自動3次元計測ロボットなどの開発も進めている.

サイバー考古学

准教授 大石 岳史,助教(大石研) 影澤 政隆,特任助教(大石研) 岡本 泰英,特任助教(大石研) メナンドロ ローハス,特任研究員(大石研) 石川 涼一
文化財などの3次元デジタルデータを解析し,考古学,美術史学,建築学といった異分野との融合によって新たな知見を得る学際研究を推進している.これまでにアンコール遺跡群尊顔の解析,アウグストゥス像の分類や,クフ王の太陽の船の仮想復元など,デジタルデータの特性を生かした解析手法の開発を行ってきた.また3Dプリンタによる出力モデルを用いた風洞実験や,レプリカの生成など様々な形で学術的,社会的な貢献を目指している.

複合現実感モビリティシステムの開発

准教授 大石 岳史,助教(大石研) 影澤 政隆,特任助教(大石研) 岡本 泰英,特任助教(大石研) メナンドロ ローハス,特任研究員(大石研) 石川 涼一
車両を利用した複数ユーザが同時体験可能な複合現実感(MR)システムを開発している.近年,文化財のモデル化,表示,解析などを目的としたe-Heritage分野の研究が盛んに行われている.その中でもMR技術は,失われた文化財を仮想的に復元展示する手法として注目されつつある.この復元展示で対象となる遺跡は屋外であることが多く,光源環境の変化などから様々な技術的課題が残されている.またこれまでのMRシステムは個人で利用するものが主であり,さらに広範囲を移動できないといった問題があった.そこで我々は,車両を利用して遺跡内を移動しながら複数ユーザが同時に体験可能な復元展示MRシステムを開発している.

定量免疫学

准教授 小林 徹也
免疫は未知で多様な外敵を認識・学習し,速やかに外敵を排除する生体防御システムである.免疫による外敵の認識・学習において,T細胞・B細胞をはじめとした免疫細胞の多様性(レパートリー)とその変化が重要な役割を果たす.本研究では,免疫細胞集団の集団ダイナミクスモデルと,ハイスループットシーケンシングに基づく免疫レパートリー解析を統合し,我々の免疫状態がどのように維持され,また動的に制御されているか,その原理の理解に取り組んでいる.

定量発生学

准教授 小林 徹也
着床前胚の形成は,1つの受精卵が多能性細胞を含む複数の状態の細胞に分化・脱分化をする哺乳類胚発生の最も単純な第一ステップである.複雑な多細胞構造が動的にまた空間的に形成される原理を理解するためには,発生の系譜を追跡し再構成することが不可欠である.本研究では,長期胚培養,定量的3Dタイムラプスイメージング,画像からの細胞核の自動同定,核の自動追跡アルゴリズム,発生系譜の統計解析技法,そして胚発生の力学モデルなどの技術開発に取り組んでいる.これらの手法は発生の理解のみならず,胚の状態を定量化し,その培養条件を最適化する応用にも貢献すると期待される.

定量細胞生物学

准教授 小林 徹也
大腸菌,酵母,細胞性粘菌,培養細胞などの単細胞生物は,生命システムにおける定量的な法則を見出すためのよいモデルシステムである.本プロジェクトでは,様々な実験研究者と協力することで,多様な定量データに様々な数理・データ解析手法を組み合わせ,新たな法則の発見に取り組んでいる.特に我々は,1細胞レベルでの振る舞いと細胞ごとの確率性・多様性の結果として,どのように細胞集団の挙動や機能が実現しているか?に着目して研究を進めている.

生体情報処理の数理理論

准教授 小林 徹也
生体システムは個体から細胞まで積極的に環境の情報を取得・処理し,運動・状態変化などの応答を決定する.しかし,ミクロな細胞を構成する化学反応は極めて確率的でノイジーである.ノイジーな化学反応を用いてどのように細胞は情報を扱い,そして情報をどう活用しているのか.その原理は明らかではない.本研究では,情報理論や情報熱力学をベースとして,動的に変化する環境の認識や探索に関する数理理論の構築を行っている.またそれを定量的な計測と組み合わせて,生体情報処理を情報の観点から理解することを探求する.

確率生体現象の数理と熱力学

准教授 小林 徹也
細胞はすべての多細胞生物の構成要素であり,また化学反応はすべての細胞の構成要素である.細胞という微小環境に閉じ込められた,少数だが多種の反応群は極めて確率性の高い挙動を示す.本研究では,確率論に基づく数理理論の構築と,定量データを用いた理論の検証を通して,このような現象をどのように記述したら良いのか?分子の少数性は現象の定性的な振る舞いにどのような影響を持つのか?少数分子からなる平衡・非平衡系に成り立つ熱力学的法則は何か?といった問題を数理的な立場から解決することを目指す.

進化と適応の統一理論

准教授 小林 徹也
生体システムは確率的に変動する環境に柔軟に適応する能力を有する.自然選択に基づくダーウィン進化は,環境適応の基本メカニズムの一つであり,生体は集団内に遺伝型・表現型の多様性を生成することで,未知の環境変動へのリスクを分散し,生存確率や適応度を高める.一方で,生体システムは環境を積極的に感知・予測し,事前に適応的な状態を選択することのできる脳の様な器官を発達させてきた.この2つの適応機構はどのように関連しているのか?本研究では,ダーウィン的自然選択と予測的情報処理に共通する情報論的変分構造を用いて,この2つの適応機構を理論的に統合し,生物の適応に関わる統一理論の構築とその応用に取り組んでいる.

Faster-than-Nyquist信号処理技術

准教授 杉浦 慎哉
ナイキスト基準で表されるシンボルインターバルの限界を超える高速信号伝送技術であるFaster-than-Nyquist (FTN) 伝送について取り組んでいる.特に,受信機でのシンボル間干渉を許容することにより,周波数帯域を増加させることなく,シンボルレートを向上させることを特徴とする.これまで開発を進めてきたFTN伝送技術を海中音響通信に応用することで,海中音響通信特有の課題である二重選択性の影響を低減できることを明らかにした.また,提案方式のシステムパラメータの設計手法を示した.

知的反射板制御アルゴリズムの開発

准教授 杉浦 慎哉
ミリ波やテラヘルツ波などによるワイヤレス通信では広帯域が利用可能である一方,電波の距離減衰や直進性が高く障害物による遮蔽に弱いため,見通し外通信に不向きであるという欠点がある.反射波の特性を柔軟に制御可能な知的反射板によりこの欠点を克服することが期待されている.本研究では,QoSを保証しながら低消費電力を実現するための制御アルゴリズムを提案した.また,グラフェンを利用した高自由度の知的反射板を開発した.

HfO2系材料における強誘電性発現のメカニズムの解明

准教授 小林 正治,教授 平本 俊郎,助手(平本研) 更屋 拓哉
本研究では,三次元構造の強誘電体メモリデバイスの実現に欠かせない,三次元構造への強誘電体薄膜の形成と,強誘電性発現のメカニズムを解明することを目的としている.今年度は,第一原理計算と強誘電体薄膜の電子線回折マッピングの手法により,成膜アニール後には強誘電体が面内配向し,電圧印加によって面直配向することが明らかになり,三次元構造にあっても初期の電圧サイクルで強誘電性が実現できることを示唆する結果を得た.

三次元集積メモリデバイス応用に向けた原子層堆積法による酸化物半導体の形成とデバイス実証に向けた研究

准教授 小林 正治,教授 平本 俊郎,助手(平本研) 更屋 拓哉
半導体の微細化が鈍化する中,さらなる高集積化と高機能化のためには,配線層へのアクティブデバイスの形成が必要であり,酸化物半導体は低温でトランジスタを形成可能であり注目を集めている.従来酸化物半導体はスパッタ法による平面への成膜が主流であったが,半導体の三次元集積化に向けては三次元構造への均一な成膜が重要となる.本研究では,原子層堆積法によるIn2O3の成膜を確立し,HfO2系強誘電体および反強誘電体トランジスタ型メモリを設計・試作し,良好なメモリ特性と信頼性を実証することに成功した.

伸縮性フォトディテクタ

准教授 松久 直司,学部学生(慶應義塾大) 周 元元

伸縮性導電性高分子材料の開発

准教授 松久 直司,助教(東京工業大) 芦沢 実,大学院学生(慶應義塾大) 志村 宗彦

伸縮性金電極の高性能化

准教授 松久 直司,学部学生(慶應義塾大) 三友 陽向

構造色を用いた歪センサ

准教授 松久 直司,学部学生(慶應義塾大) 中川 璃郁,教授(慶應義塾大) 斎木 敏治

皮膚と一体化する生体電極

准教授 松久 直司,学部学生(慶應義塾大) 伊藤 蒼太朗,准教授(慶應義塾大) 加藤 健郎,准教授(慶應義塾大) 高橋 英俊

皮膚に一体化するディスプレイデバイス

准教授 松久 直司,助教(東京工業大) 芦沢 実,大学院学生(慶應義塾大) 志村 宗彦,大学院学生(慶應義塾大) 冨永 泰三

超柔軟マルチモーダルセンサ

准教授 松久 直司,Program Manager (Holst Centre) Peter ZALAR,大学院学生(慶應義塾大) Liren WANG

高伸縮性導電性高分子ゲル

准教授 松久 直司,PhD student(ケンブリッジ大) Stephen O'Neill,教授(ケンブリッジ大) George Malliaras,教授(ケンブリッジ大) Oren A. Scherman,助教(東京工業大) 芦沢 実

PSD法によるⅢ族窒化物の成長

教授 藤岡 洋,助教(藤岡研) 上野 耕平
パルスプラズマを励起源として用いて結晶成長を行うことによって高品質Ⅲ族窒素化物薄膜を低温かつ高いスループットで成長させる.この手法により,従来手法では実現できなかった金属上半導体単結晶の高速成膜を実現する.

フレキシブルマイクロLEDの開発

教授 藤岡 洋,助教(藤岡研) 上野 耕平
大面積金属基板上へ半導体単結晶を成長させ受発光素子や電子素子などのエレクトロニクス素子を作製する.その後,作製した素子をポリマーへ転写することによって透明かつ柔軟,大面積のフレキシブルデバイスを作製する.

ガラス表面への階層性ナノ多孔層の形成とその特性

助教(井上(博)研) 木崎 和郎,助手(井上(博)研) 渡辺 康裕,教授 井上 博之
ガラス表面に酸性あるいは塩基性溶液による処理によって,階層性のナノ構造を持った多孔質層を形成できることが見出された.その表面は,超親水性や低反射率などの優れた特性を示す.様々な組成のガラスで,この表面構造の形成条件を探索するとともに,その形成機構を調べることを目的としている.

無容器浮遊法によるガラスの合成と物性

教授 井上 博之,助教(井上(博)研) 木崎 和郎,助手(井上(博)研) 渡辺 康裕
無容器浮遊法で達成される大過冷却液体状態から,熱力学的に非平衡なガラスを室温まで保持することができる.無容器浮遊法のひとつであるガス浮遊炉を用いて既存の方法では得られない物質の創出,物性の発現を目指している.

キラルな無機化合物の合成と物性評価 ガラスを前駆体とした無機化合物の合成

助教(井上(博)研) 木崎 和郎,教授 井上 博之,助手(井上(博)研) 渡辺 康裕
ある種の結晶性無機化合物はその対称性を反映して,キラルな構造をもつ.このキラルな無機化合物の結晶構造と,発光や磁性などの物性との構造物性相関を明らかにする.

ペプチド有機触媒の開発

教授 工藤 一秋,大学院学生(工藤研) 劉 謙,大学院学生(工藤研) Tian Jiaqi,大学院学生(工藤研) 山田 征吾
ペプチド触媒は,酵素,有機低分子化合物に次ぐ第三の分子触媒として,独自の機能が期待される.これに関してペプチド触媒ならではといえる反応の探索を行った.

生合成反応を模倣した生理活性分子の合成

教授 工藤 一秋,大学院学生(工藤研) Shi Yihao,大学院学生(工藤研) 川崎 駿,大学院学生(工藤研) Lu Yu
生体内でアセチルCoAとマロニルCoAから得られる二次代謝物であるポリケチドには多様な分子骨格,生理活性をもつものが存在する.それらは生体内では共通のシンプルな反応の積み重ねによって作られている.そのしくみを模倣することで,多様な化合物を生み出す人工の反応システムの開発へとつなげることを目指す.

プラズモン共鳴の応用

教授 立間 徹,特任助教(立間研) 石田 拓也,技術専門職員(立間研) 黒岩 善徳,特任研究員(立間研) イ スンヒョク,大学院学生(立間研) 大場 友貴
局在表面プラズモン共鳴による光応答増強や,光学材料,色材,スマートウィンドウ,センサ等への応用を図る.

プラズモン誘起電荷分離の応用

教授 立間 徹,特任助教(立間研) 石田 拓也,特任研究員(立間研) イ スンヒョク,大学院学生(立間研) 大木 崚我,大学院学生(立間研) 孫 瑞卓,大学院学生(立間研) 薮野 真弥,大学院学生(立間研) 黒木 秀起,大学院学生(立間研) 澤田 直樹
金属ナノ粒子と半導体の界面において,プラズモン共鳴に基づいて電荷分離が誘起される.この現象の光電変換,光触媒,フォトクロミズム,バイオセンサ,ナノファブリケーション等への応用に関する研究を行う.

プラズモン誘起電荷分離の機構解明

教授 立間 徹,助教(立間研) 西 弘泰,特任助教(立間研) 石田 拓也,特任研究員(立間研) イ スンヒョク,大学院学生(立間研) 左 袁,大学院学生(立間研) 亀岡 ゆり
金属ナノ粒子と半導体の界面において,プラズモン共鳴に基づいて電荷分離が誘起される.この現象の機構を解明する.

光機能ナノ材料の開発

教授 立間 徹,助教(立間研) 西 弘泰,特任研究員(立間研) イ スンヒョク,技術専門職員(立間研) 黒岩 善徳,東大研究員(立間研) 長川 遥輝,大学院学生(立間研) 秋山 倫輝
発光デバイス用量子ドット,抗菌・抗ウイルス性光触媒,水素生成光触媒などの開発を行う.

エントロピー駆動型水素結合による高分子材料の強靭化機構の解明

教授 吉江 尚子,助教(吉江研) 中川 慎太郎,大学院学生(吉江研) 田島 怜奈
共有結合よりも弱い可逆的な動的結合により,高分子材料を強靭化することができる.我々は最近,柔軟かつ三次元的な構造をもつエントロピー駆動型水素結合により,材料の強度と自己修復性などの動的性質の両立を可能にすることを見出している.本研究では,エントロピー駆動型水素結合の特徴を明らかにすることを目的としている.具体的には,計算化学と実材料の物性測定を駆使して,従来のエンタルピー駆動型水素結合とエントロピー駆動型水素結合を直接比較する検討を行っている.

動的可逆結合を利用したスチレンブタジエンゴムの高性能化

教授 吉江 尚子,助教(吉江研) 中川 慎太郎,大学院学生(吉江研) 張 彦豪
様々な用途に広く用いられるゴム材料の高性能化は常に求められている.特に,強度や耐疲労性などの力学特性の強化は,構造材料として用いられるゴム材料において最も重要な課題である.可逆な動的結合を導入することにより,ゴム材料の様々な物性が向上することは知られているが,詳細なメカニズムは未解明である.本研究では,代表的な合成ゴムであるスチレンブタジエンゴムに動的結合を導入し,その粘弾性特性・力学特性を調べることで,ゴム中での動的結合の動作原理の解明を目指している.特に,粘弾性特性・力学強度・疲労回復性などの巨視的な物性と,動的結合の形成確率や寿命などの微視的な性質の相関に焦点を当てている.

動的結合による高分子材料の海洋生分解挙動制御

教授 吉江 尚子,助教(吉江研) 中川 慎太郎,特任研究員(吉江研) 張 典,大学院学生(吉江研) O. Doat,大学院学生(吉江研) 熊野 舜
海洋プラスチック問題等の高分子材料に関わる環境問題の解決のために,使用時には分解せず優れた力学特性を発揮し,かつ自然環境中に廃棄された後には迅速に分解するポリマー材料が求められている.本研究では,加水分解性の動的結合の導入と材料の疎水性制御により,使用時の力学特性を確保しつつ,海洋中に放出された後の生分解挙動を制御するための材料設計原理を確立した.

動的結合の制御配置による高分子材料の強靭化

教授 吉江 尚子,助教(吉江研) 中川 慎太郎,大学院学生(吉江研) X. Guo
可逆的な動的結合を高分子鎖中に組み込むことで,硬さと伸びしろを両立した強靱な高分子材料が得られる.本研究では,金属−配位子相互作用を高分子鎖中に制御配置することで,高靭性な材料の創製を目指す.金属イオンの量や種類により,力学特性を幅広く制御できることを見出した.

新規エントロピー駆動型水素結合性基の開発および高靭性高分子材料への応用

教授 吉江 尚子,助教(吉江研) 中川 慎太郎,特任研究員(吉江研) 張 典
我々が最近見出したエントロピー駆動型水素結合の概念の普遍性の実証および汎用性の向上を目指して,エントロピー駆動型水素結合の新規構造の開拓を行っている.さらに,発見した新規エントロピー駆動型水素結合性基を高分子材料に導入し,力学特性を評価している.量子化学計算を用いて,材料特性と水素結合性基の分子レベルの特性の相関解明にも取り組んでいる.

易分解性樹脂の構造・物性解析

教授 吉江 尚子,助教(吉江研) 中川 慎太郎,特任研究員(吉江研) 周 健
プラスチック材料のリサイクルを推進する上で,高分子の「分解化学」の発展は不可欠である.我々はJST ERATO野崎樹脂分解プロジェクト(研究総括:東京大学 野崎 京子 教授)のメンバーとして,プロジェクト内で開発された新規易分解性樹脂や樹脂分解物の構造・物性解析を担当している.具体的には,プラスチック材料の物性や分解性に強く影響する相分離や結晶化による構造形成過程,および実用性を左右する力学特性の解析を行っている.

巨大なひずみ硬化能を示す高強度エラストマーの創製

助教(吉江研) 中川 慎太郎,教授 吉江 尚子
従来のエラストマー(ゴム)材料において不均一であった高分子網目の構造を均一化することにより,高強度なエラストマーを開発している.開発したエラストマーは,伸長により見かけの剛性率(硬さ)が2,000倍以上にも増大する顕著なひずみ硬化能を示すことを明らかにしている.この材料をロボティクス等に応用するための基礎的検討も行っている.

構造制御されたボトルブラシ型高分子網目の合成および物性

助教(吉江研) 中川 慎太郎,教授 吉江 尚子
高分子鎖に多数の高分子鎖が修飾されたボトルブラシ型高分子が近年その特異な構造・物性から注目を集めている.本研究では,構造がよく制御されたボトルブラシ高分子網目を合成する手法の確立,およびX線散乱法を用いた構造−物性相関の解明を行っている.

構造均一な高分子網目を用いた動的結合と高分子材料の力学特性の相関解明

助教(吉江研) 中川 慎太郎,教授 吉江 尚子,大学院学生(吉江研) 川崎 将和,大学院学生(吉江研) Zhengyuan Liu
共有結合よりも弱く可逆な動的結合は高分子材料の力学特性を向上させるが,動的結合の分子特性と材料の巨視的な力学特性の相関の全貌は明らかになっていない.本研究では,我々が最近開発した構造均一な高分子網目を基盤として,種々の動的結合が力学特性に及ぼす効果の統一的な理解を目指す.

キラル物質の分光学的性質に関する研究

教授 石井 和之

クロロフィル集合体の磁気光学分光

教授 石井 和之

セシウム吸収材を担持させた素材の開発とその製品化

教授 石井 和之

ソフトクリスタルの光機能に関する研究

教授 石井 和之

ビタミンCバイオイメージング用蛍光プローブの開発

教授 石井 和之

ホモキラリティの起源に関する研究

教授 石井 和之

ポルフィリン・フタロシアニンの光機能化に関する研究

教授 石井 和之

二酸化炭素の電気化学的及び光化学的還元に関する研究

教授 石井 和之

光機能性錯体とナノファイバーの複合化研究

教授 石井 和之

光線力学的癌治療を志向した光増感剤の研究

教授 石井 和之

分子性光触媒の研究

教授 石井 和之

分子性結晶の準安定状態に関する研究

教授 石井 和之

刺激応答性クロミック材料の開発

教授 石井 和之

金属錯体の分光測定研究

教授 石井 和之

ガラス・液体の原子分解能構造解析

教授 溝口 照康
STEM-EELSを用いたガラスおよび液体の原子分解能計測

先端計測インフォマティクス

教授 溝口 照康
計測される画像およびスペクトルを,データ駆動型手法により解析

内殻電子励起分光スペクトル(ELNES/XANES)の第一原理計算

教授 溝口 照康
一粒子計算法(DFT-LDA/GGA),二粒子計算法(BSE),および多電子計算法(CI)を用いた内殻電子励起分光スペクトル(ELNES/XANES)の理論計算

半導体,エネルギー材料および機能性セラミックス中格子欠陥における構造機能相関

教授 溝口 照康

格子欠陥のマテリアルズインフォマティクス

教授 溝口 照康

分子間振動の粗視化理論に基づく分子結晶の構造安定性予測

教授 北條 博彦,大学院学生(北條研) 王 越,大学院学生(北條研) 菊岡 龍太郎
超分子複合体や分子結晶における分子間振動モードを分子間力の剛性定数に帰納する理論を構築するとともに,それを分子結晶の多形構造安定性評価へと応用する研究を行う.

分子集積体における電子状態の効率的計算法の開発とその応用

教授 北條 博彦,主任研究員(長崎県工業技術センター) 重光 保博,大学院学生(北條研) 許 明戈,大学院学生(北條研) 鯉渕 領
階層的QM/MM法,周期境界条件をもちいたDFT法などの計算法をもちいて,分子集積体中の着目分子の電子状態を効率的に計算するとともに,固相中で示される分子物性を合理的に説明できるモデルの構築を試みる.

刺激応答性金属錯体の合成と構造化学的研究

教授 北條 博彦,大学院学生(北條研) 黄 召昊,大学院学生(北條研) 影山 泰一
光・熱・電位・イオン添加などの外界刺激によって構造や電子状態が変化する金属錯体を合成し,刺激に伴う物性の変化を出力信号として取り出すことのできる系を構築する.

新規蓄熱材の開発と特性評価

教授 北條 博彦,研究実習生(北條研) アンドレア・ラネア
金属錯体を利用した,過冷却—冷結晶化システムにおいて,錯体の分子構造と蓄熱挙動の関係について調べ,材料設計の指針とする.

有機結晶の光・熱応答特性に関する速度論的および構造化学的研究

教授 北條 博彦,大学院学生(北條研) 鯉渕 領,研究実習生(北條研) 伴 遥
光および熱に応答して電子状態が変化する有機結晶を対象として,その応答特性を速度論的に記述する実験的手法を開発・改良するとともに,得られたパラメータ群と結晶構造との関連付けを試みる.

先端技術を社会実装するための知財保護/知的財産をもとにした産学連携/知的財産をコアにした協創の場のデザイン/協創の場における知的財産保護/知財の視点をもった研究者・技術者の育成

教授 菅野 智子
データを活用した材料開発など,最先端の研究や新しい技術開発における発明創出のプロセスを検証し,またデータを含めた知財の保護の在り方を考察する.また多数主体が関わる研究開発における知財の保護の在り方,産学連携の在り方を考察する.

多数の金属種の配列の精密制御と機能発現

教授 砂田 祐輔
多数の金属種を平面状や立方体状など構造を精密に規定しながら配列し,それらの特異な化学的・物理的機能を開拓する.

発光性金属クラスター材料の開発

教授 砂田 祐輔
複数の金属種を精緻に配列することで可視光吸収および発光特性を有する材料開発を行う.

省エネルギーで作動する安全性の高い化学的水素貯蔵・運搬法の開発

教授 砂田 祐輔
安全・低毒性な水素キャリアの開発,および高活性触媒の開発により,省エネルギー条件下で作動する化学的水素発生・貯蔵法の開発

遷移金属と典型元素の協働作用を活用した高機能性クラスター開発

教授 砂田 祐輔
遷移金属化合物において,典型元素化合物を配位子として導入することで,通常では実現困難な様々な触媒機能を付与できるなど,特異な機能を発現できることを最近当研究室では見出している.本研究では,多数の遷移金属と典型元素から構成されるクラスターを開発し,元素間協働作用に基づく特異な反応性や新規物性の発現を指向した研究を行う.

高機能性ベースメタル触媒開発

教授 砂田 祐輔
有機化合物の合成・変換における多くの場合において,貴金属化合物が触媒として用いられている.近年,貴金属の枯渇や価格の高騰から,貴金属を用いない触媒の開発が望まれており,当研究室では,鉄などの安価なベースメタル触媒の開発を行っている.

亜鉛族元素を中心金属に有する複核錯体の可視光機能開拓

特任助教(砂田研) 和田 啓幹

非鉄金属製錬プロセスの最適化

特任教授 黒川 晴正
銅,鉛,亜鉛などのベースメタルに加え,レアメタル,レアアース,貴金属を含む多岐にわたる金属は,現代社会の発展に必要不可欠な素材であり,今後もますますその重要性は増していく. 一方,優良な資源は枯渇してきているため,従来では経済合理性の無かった難処理・低品位資源,およびリサイクル原料を有効活用する製錬プロセスの改良・開発が急務になってきている.生産プロセスにおける消費エネルギーの最小化,および目的元素を最大限回収することによる廃棄物の発生量低減を通じて,低消費エネルギー・低環境負荷・低コストのプロセススキームを実現することを目指して研究している.

薄膜の脱濡れ現象による自己組織化機能性ナノ材料の創製

助教(八木研) 神子 公男
特異な形状や良質な結晶構造(配向性)を有することで,光学特性や磁気特性といった機能性の向上が期待されるナノ材料を,脱濡れ(熱凝集)現象を用いた自己組織化により作製する.本研究において,目的とする機能層と基板との間に,シード層と呼ばれる薄膜層を挿入することで自己組織化やエピタキシャル成長を促進させ,余分な蝕刻工程等を必要としない,ボトムアップ型のナノ材料創製技術の確立を目指す.

分子認識能を賦与した有機薄膜トランジスタ型化学センサの創製

准教授 南 豪
有機薄膜トランジスタは,軽量性,柔軟性,低環境負荷,大面積デバイス化が可能などの特徴を有していることから,センサデバイス開発において魅力的なプラットフォームである.しかし,センサとしての応用研究は萌芽段階にあり,とりわけ分子認識化学的視点からの研究展開はこれまでにおこなわれていない.そこで本研究では,有機合成化学に立脚して合目的に創製した分子認識材料を有機薄膜トランジスタに組み込むことにより,新たな化学センサデバイスの提案を目指している.

超分子センサアレイによるハイスループット分析手法の開発

准教授 南 豪
ホスト−ゲスト化学に基づいて開発される分子センサは,比較的高い選択性を有する一方で,多成分を迅速かつ同時に検出することは得意ではない.本研究では,あえて標的化学種に対して“低選択性”を有する分子センサ群を“可能な限り簡易に”合成し,これをマイクロアレイ上に並べて,体液などに含まれる多成分をハイスループットに分析する手法を開発する.低選択性分子センサ群のアレイ化により得られる種々の信号応答について,統計学・機械学習に基づくケモメトリックスを用いて解析をおこない,複数種の同時定性・半定量・定量分析を試みている.

トポロジカル絶縁体のバルク絶縁性向上

講師 徳本 有紀
トポロジカル絶縁体の特殊な表面状態に起因する表面伝導,量子振動を検出するためには,バルクの絶縁性を向上させることが不可欠である.表面および転位物性を評価することを念頭に置き,Pb系カルゴゲナイドトポロジカル絶縁体を対象とし,バルク絶縁性向上の研究に取り組んでいる.

トポロジカル絶縁体の塑性変形による転位導入

講師 徳本 有紀
トポロジカル絶縁体中の転位においてヘリカルにスピン偏極した金属状態が生じ得ることが理論的に予測されている.この金属状態の実験的な検証を目指し,転位において特殊な金属状態が発現し得るPb系トポロジカル絶縁体の作製,塑性変形による転位の導入,転位の構造解析を行っている.

層状準結晶の合成および物性評価

講師 徳本 有紀
遷移金属カルコゲナイド系層状物質の中でも未開拓の物質であるTa-Te 準結晶に着目し,新規物性の探索を目指している.

メカノクロミックポリマーを用いたセンサ開発

講師 杉原 加織

異種の抗菌ペプチド混合により発現するコオペラティブ効果を用いた新抗菌薬開発

講師 杉原 加織

IoT特別研究委員会

教授 野城 智也,特任教授 荻本 和彦
生産技術研究所のCOMMAハウス等を活用したテストベッドでの付加価値アプリケーション創出トライアルや,増分コストの極小化策,「IoT由来の脅威」への対処方策などの知見を共有して,IoT社会の早期実現に向けたこれら諸課題の解決方法を検討・発信する.さらに,それらを構成するソフトウェアや,全体機能の維持・運用・情報の取り扱いに関する課題等についても幅広く研究し,これを必要とする事業者に広く便益を提供する中間組織の在り方を取りまとめることとする.

防災ビジネスの創造と育成に関する研究

教授 目黒 公郎,特任助教(目黒研) 山本 憲二郎
防災における「自助・共助・公助」の中で,従来は行政が公的な資金を用いて主導する「公助」が大きな割合を占めてきた.しかし,現在の少子高齢人口減少や財政的な制約を考えると,今後は「公助」の割合は減少する.その不足分は「自助と共助」で補う必要があるが,これを実現する上でのキーワードは,防災の「コストからバリュー」と「フェーズフリー」である.従来は行政も民間も防災対策を「コスト」とみなしていた.コスト型の防災は,継続性が難しく,対策の効果は災害発生時にのみ発現すると考えられてきた.しかしバリュー型の防災対策は継続性が担保され,災害の有無に関わらず常に対策を実施した組織や地域に価値(バリュー)をもたらす.一方フェーズフリーは,発生の有無や時期が不確定な災害に対する対策にお金をかけることは難しいことから,災害時と平時のようにフェーズを分けるのではなく,日常の生活の質を向上させる商品やサービスがそのまま災害時にも有効に活用できるようにしようという考え方である.これらはいずれも,自助や共助の担い手である個人や法人の「良心」に訴えかける防災がもはや限界で,防災対策の自主的な推進を後押しする仕組みとしての「防災ビジネス」の必要性に基づいている.

シェルターのイノベーションに関する研究

教授 川口 健一,助教(川口(健)研) 張 天昊,大学院学生(川口(健)研) 大塚 陽汰,大学院学生(川口(健)研) 武藤 宝,大学院学生(川口(健)研) 寺内 太一
日本における避難所とは一般に学校体育館などの施設を示す場合が多いが,これらは鉄骨バラック建築に近い.一方,地下シェルターは様々な非常時に人命保護としての優れた点が多い.現在,多くの人が集まる場所には地下街を含む地下施設が発達しているが,これらはシェルターとして機能するようには全く考えられていない.本研究では,極限的な災害時にも利用できる地下シェルターの理想的な形態と,都心に存在する地下施設をシェルターとして利用するために改修するロードマップ等に関して研究を行っている.近年は地下施設の浸水について調査するために,ポンド法やMPS法を用いたシミュレーションの研究を行っている.2021年7月3日に発生した熱海における土砂災害のシミュレーションやハザードマップ上で危険とされる老人ホームの改良案の提案なども行っている.さらに,空気膜構造を用いたシェルターやステージを支える構造の開発なども行っている.

テンセグリティ構造物の応力測定システム【柏地区利用研究課題】

教授 川口 健一,教授 今井 公太郎,准教授 本間 健太郎,助教(川口(健)研) 張 天昊,大学院学生(川口(健)研) 佐野 匠

地震による構造物の破壊機構解析(共同研究)

教授 川口 健一,教授 目黒 公郎,准教授 清田 隆,教授 桑野 玲子,教授 腰原 幹雄,助教(川口(健)研) 張 天昊,教授 中埜 良昭,准教授 沼田 宗純

天井等の非構造材の落下事故防止に関わる研究

教授 川口 健一,助教(川口(健)研) 張 天昊,技術専門員(川口(健)研) 大矢 俊治,大学院学生(川口(健)研) 幸田 雄太,大学院学生(川口(健)研) Sophearith Ly,大学院学生(川口(健)研) 寺内 太一,大学院学生(川口(健)研) 武藤 宝
天井等,建築内部空間の高所に設置した非構造材は,様々な理由で落下し内部空間の安全性を著しく損なう.本研究では,軽量な天井材の利用や落下防止ネット,重量天井の落下を防止する方法や被害を軽減する方法,さらにはAIを用いた天井の安全性判定プログラムの開発などを行っている.東京大学施設部における保存カルテ作業における実装研究,2022年3月16日に福島県で発生した地震の被害調査なども行っている.

宇宙構造物及び可動式,展開型構造物に関する研究

教授 川口 健一,教授(東京都市大) 宮坂 明宏,助教(川口(健)研) 張 天昊,技術専門員(川口(健)研) 大矢 俊治,大学院学生(川口(健)研) 永井 翔真,大学院学生(東京都市大) 澤橋 泰介,大学院学生(東京都市大) 土屋 亮太
宇宙展開構造物や開閉式屋根,展開型パーソナルシェルターや可動式構造物など,3次元的な部材配置により高度な機能を実現する構造に関する研究を行っている.東京都市大学の宇宙システム研究室とは継続的に宇宙展開構造物に関する情報交換と研究交流を行っている.

実大テンセグリティ構造物の応力測定システム【柏地区利用研究課題】

教授 川口 健一,元特任講師 中楚 洋介,助教(川口(健)研) 張 天昊,技術専門員(川口(健)研) 大矢 俊治,大学院学生(川口(健)研) 佐野 匠,教授 今井 公太郎,准教授 本間 健太郎
2017年に完成した柏の葉キャンパスにあるWhiteRhinoIIの応力状態の継続的モニタリングを行っている.また数値解析などによりテンセグリティ構造が最適構造となるための条件の探索などを行っている.2001年に竣工した旧西千葉実験所の White Rhino I の撤去作業時の実大モニタリング実験も行った.

建築構造物の力学特性に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 川口 健一

新しい住宅用耐震及び制振部材の開発

教授 川口 健一,技術専門員(川口(健)研) 大矢 俊治,助教(川口(健)研) 張 天昊,大学院学生(川口(健)研) 高橋 祐貴

新しい軽量空間構造物の開発及び歴史的な空間構造物の調査

教授 川口 健一,元特任講師 中楚 洋介,助教(川口(健)研) 張 天昊,技術専門員(川口(健)研) 大矢 俊治,大学院学生(川口(健)研) 水谷 圭佑,大学院学生(川口(健)研) 李 陽洋,大学院学生(川口(健)研) 武藤 宝,大学院学生(川口(健)研) 寺内 太一
構造部材の三次元的な配置を利用した新しい軽量空間構造システムの開発提案を継続的に行っている.微分幾何学に立脚した曲面構造の解析や新しいグリッドパターンの探求,また,日本における初期の鉄骨ドームや鉄筋コンクリートシェルなどの空間構造に関する調査,デジタルアーカイブ化などの研究も行っている.空気膜構造を圧縮材として用いた足場構造の開発や,高所からの落下時に有効な空気膜の応用に関する考察など,軽量化による低炭素社会への貢献の模索も行っている.

歴史的空間構造物の3次元デジタルアーカイブに関する研究

教授 川口 健一,助教(川口(健)研) 張 天昊,大学院学生(川口(健)研) 李 陽洋
シェル構造などに代表される空間構造物は,構造材がそのまま外観として利用されることが多いため,構造が一致している場合が多い.鉄筋コンクリートシェル構造はその出現から100年以上が経過し,当初の物は残っているものが少ない.また残っていても老朽化が進行しているものが多い.これらの保存保全は,今日大きな課題となっており,結果的に壊されるものも多い.これらの貴重なデータを3次元のデータとして取得し,デジタルアーカイブを行うという研究である.建築的な構成を考え,理解することにより,巨大なポイントクラウドデータを画期的にスリム化する技術についても研究している.

生きた植物の建築への利用に関する実験的研究【柏地区利用研究課題】

教授 川口 健一,助教(川口(健)研) 張 天昊,技術専門員(川口(健)研) 大矢 俊治,大学院学生(川口(健)研) 武藤 宝

ひび割れ自己治癒コンクリートの実環境暴露試験に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 岸 利治

大規模展示場における空調制御・最適化システムの開発

教授 大岡 龍三
負荷変動の大きい大規模展示場において,複数の熱源を最適に運転制御し,省エネ・コストの効果を予測可能なシステムを開発する.

学習的探索手法を応用した建築・都市エネルギーシステム最適化手法の開発

教授 大岡 龍三,准教授 菊本 英紀
エネルギーの需給バランス制御と省エネルギー・コスト削減の同時達成を目的とした,1)実建物の計測データ収集,需要・発電量予測に関する既存技術の調査・比較,2)単体建物におけるエネルギーシステムの詳細な最適化計算の手法確立,3)街区モデルへの拡張,4)1および3による不確実性を考慮した最適化シミュレーション手法の開発およびデータ解析による定量的な評価,これら4つを軸とする包括的な最適建築・都市エネルギーマネジメントシステムの方法論を開発している.

飛沫・飛沫核拡散の動的物理モデルの構築

助教(大岡研) 呉 元錫,教授 大岡 龍三,准教授 菊本 英紀
人の活動(咳,くしゃみ,会話)を通じて噴出される飛沫・飛沫核が室内環境へ飛散および拡散する物理的な現象を計測により明確に把握し,数値解析手法(CFD)で再現することを目的とする.咳,くしゃみ,会話等の行為は,気流(気体)と飛沫・飛沫核(液体)が混在する流れを生成する.気流と飛沫・飛沫核の粒径分布を正しく計測するためには,粒子画像流速計測法(PIV)および干渉画像法(IMI)技術を実現させる必要がある.上記の技術は,定常流条件では計測精度が安定的に確保できる反面,非定常流条件の短い時間刻みでの測定に活用することは挑戦的な課題である.加えて,空気中に浮遊する飛沫・飛沫核は粒子が非常に小さく,周囲の環境条件に大きく影響を受け蒸発と凝縮するため,CFDモデルの構築には,環境条件に応じた非定常解析が必要となる.構築したCFDモデルは,咳,くしゃみ,会話等の可視化実験により交差検証を行う.

ネットワーク交通シミュレーション技術の高度化

教授 大口 敬,助教(大口研) 鳥海 梓,大学院学生(大口研) 服部 充宏,大学院学生(大口研) カレル ジャナック
ネットワーク交通シミュレーションの開発,周辺技術検討,さらに高度化に継続的に取組んでいる.交差点周辺,都市レベル,日本全国レベルの様々な空間範囲やシミュレーション記述の粒度の異なるシミュレーションをシームレスに接続するハイブリッドシミュレーション,リアルタイムにセンサやプローブデータと連動させるナウキャストシミュレーション,首都圏3環状道路を対象とした交通施策評価シミュレーションなどを開発している.シミュレーション・パラメータとして,ボトルネック交通容量や自由流速度を設定する必要があるが,これらのパラメータは降雨量や路面状況にも影響を受けることが知られており,交通および気象データを用いたモデル化を進めている.さらに,首都圏3環状道路の効率的な利用を促すための交通マネジメント方策の評価について検討を進めるため,交通需要等の変動特性に関する基礎的な分析を行うとともに,オリ・パラ等の大規模イベント開催時におけるマネジメント施策に関するケーススタディを進めている.

交通信号の路線系統制御に関する理論的研究

教授 大口 敬,住友電工システムソリューション(株) 榊原 肇
複数の交差点の信号タイミングを調整する系統制御について,サイクル長,青時間スプリット,交差点間距離,系統速度,および交通需要条件によってその系統効果を最大化または最小化するオフセット(隣接交差点間の青時間のずれ)は異なる.隣接した2つの交差点を対象として,前述の各種条件に対して一般的な関係性を理論的に体系化することを試みている.さらに,もう1つ隣接交差点が存在する3交差点にすることで,必ずしも2交差点における最適なオフセットが3交差点に対して最適になるとは限らない.その場合の最適特性を理論解析するとともに,両側に1つずつ隣接交差点があるような4交差点に拡張して理論解析することで,多数交差点からなる一般的な路線系統制御における一般解の特徴について理論解析を行っている.

交通信号機および交通信号制御に係わる実証的研究【柏地区利用研究課題】

教授 大口 敬,助教(大口研) 鳥海 梓,シニア協力員(大口研) 新倉 聡,大学院学生(大口研) 白畑 健,大学院学生(大口研) 増井 啓太,大学院学生(大口研) 韓 天陽,大学院学生(大口研) サハチャイセーリー ソンポーン
交通安全上も円滑上も最も重要な平面交差点における交通信号制御について,多角的な研究を推進している.損失時間の実証評価手法の開発,単路部歩行者横断施設による歩行者・車両双方に最適な横断施設運用,左折車と直進車による混用車線によるランダム性の影響評価,信号灯器設置位置による運転挙動への影響分析,さらに最新のセンシング技術および通信技術を用いた自律分散型信号システムの開発などに,柏キャンパス ITS R&R フィールドも活用しながら,実証的に取組んでいる.また強化学習を信号制御に反映することで信号制御の高度化,維持管理の自動化へ向けた検討にも取組んでいる.

交通性能照査型道路計画設計

教授 大口 敬,助教(大口研) 鳥海 梓,大学院学生(大口研) 小川 泰斗,(株)道路計画 石田 貴志
道路の計画・設計段階で,目標とする交通性能を設定し,この性能を実現するかどうかを逐次照査しながら計画・設計を進める手法を提案し,これを実務で適用する方策を実務技術者と一緒に検討し,交通工学研究会におけるweb上で公開したガイドラインの更新に向けた検討を進めるとともに,道路の交通容量に関する最新データを整理し,マニュアルの編纂を行っている.また,交通性能の経年変化傾向とその要因分析も進めている.

自動運転導入にともなう道路交通運用条件に関する研究

教授 大口 敬,助教(大口研) 鳥海 梓,大学院学生(大口研) カラ ジャヤ・バルシニ
自動運転技術の導入初期段階を想定して,高速道路上に自動運転専用車線を設けた場合に必要となる,一般車線への合流区間特性を道路構造や交通流条件などから明らかにするため,一般車両の車頭時間分布特性の道路幾何構造に応じた影響特性を分析している.また,アダプティブクルーズコントロール(ACC)搭載車の混在状況に応じた交通性能の評価モデルを構築している.

街路の計画・設計・交通運用とウォーカビリティの評価に関する研究

教授 大口 敬,助教(大口研) 鳥海 梓,准教授 鈴木 彰一,特任研究委員(大口研) 長谷川 悠
都市内街路における歩行者の歩きやすさや歩きたくなるかどうか(ウォーカビリティ)に影響を及ぼす要因の整理とその評価に取組んでいる.具体的には,街路における駐車場出入口の設置が歩行者に与える影響のシミュレーション評価や,バス停,駐車場出入口,横断歩道等の配置がドライバーの歩行者認知等に及ぼす影響についてのアンケート調査などを行っている.また,街路における道路構造・沿道利用状況と歩行者の車道横断特性に関する実態調査にも取組んでいる.

高頻度鉄道システムの簡略化モデリング

教授 大口 敬,リサーチフェロー(筑波大) 和田 健太郎
首都圏における高頻度鉄道システムは,膨大な通勤需要への対応を可能とする一方,「慢性的な列車遅延」という副作用を引き起こしている.本研究では,この問題の全体像を簡便かつ的確に捉えるために,乗客の時間集中(出発時刻選択)という需要側の要素と,駅・線路上における列車混雑・遅延という供給側の要素の相互作用を考慮したミニマルな(解析的な取り扱いが可能な)鉄道システムモデルの開発に取組んでいる.また,このモデルを用いて,システム全体の効率性と安定性とのトレードオフ関係についての一般的知見を導くこと,その知見に基づく需給両面の交通マネジメント戦略を提案することを目的としている.

木質構造物の崩壊挙動に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 腰原 幹雄

煉瓦造構造物の崩壊挙動に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 腰原 幹雄

地域分析の手法に関する研究

教授 今井 公太郎,准教授 本間 裕大,准教授 本間 健太郎,助教(今井研) 新井 崇俊
地域空間の構造を数理的に把握するための手法論について継続して研究している.本年度も,地方商店街を対象とし商店街の持続可能性について検討を行った.

数理的アプローチによる設計手法に関する実践的研究

教授 今井 公太郎,准教授 本間 裕大,准教授 本間 健太郎,助教(今井研) 新井 崇俊
空間設計の下敷きになる数理解析手法の研究及び開発した手法に基づく空間設計の実践を継続して行っている.本年度は,地下歩行空間の形態と迷いやすさの関係性をはじめ,建築形態が歩行時の視覚体験に与える影響の分析,ミリ波レーダを用いた木造建築物の非破壊検査モデルの構築と実装,重要文化的景観地区の類型化と持続性に関する研究,建築空間ネットワークの縮約手法の開発,自動運転車による施設機能の代替可能性,地熱バイナリー発電と熱カスケード利用の空間的事業性の評価を行った.

空間システムの計画手法の研究と建築設計

教授 今井 公太郎,教授 加藤 孝明,特任研究員(今井研) 国枝 歓
新しい空間のシステムを効果的に計画するための手法を考案・研究している.本年度は,防災施設と観光施設の融合した新たな建築タイプとして,伊豆市において地域の防災計画の主幹をなす津波避難複合施設の実施設計監修を行った.

数理モデルを応用した建築設計手法に関する研究

助教(今井研) 新井 崇俊
数理モデルを応用した空間設計手法に関する研究を行っている.本年度は,建築空間の部分空間の形態情報を抽出するアルゴリズムの開発及び実装を行った.

空間解析モデル開発と地域分析

助教(今井研) 新井 崇俊
都市・建築空間の解析モデル開発及び適用に関する研究を行っている.本年度は,シェアリングエコノミーに着目した配送システムの検証を行い,提案手法と既存手法の比較を通して,既存の近似解法に対する優位性を示し,連続空間とネットワーク空間における数値実験を通じて,買い物代行サービスのように,一の要求に対し複数の集荷地点がある状況においても,高効率なサービスが提供できることを示した.さらに,提案した買い物代行サービスの配送システムの基礎的な性質や移動コストの概算手法を示した.

室内音響に関する研究

教授 坂本 慎一,助教(坂本研) 米村 美紀,大学院学生(坂本研) 萩原 孝彦
ホール・劇場や各種空間の室内音響に関する研究を継続的に行っている.今年度は,鉄道駅の音響改善に関する研究として,鉄道駅における実測調査と音源サンプル収集および3次元音場シミュレーションを用いた聴感評価実験を行った.また,ホール形状データを基に,幾何音響解析に基づく音場シミュレーションを行った.

環境騒音の予測・評価に関する研究

教授 坂本 慎一,助教(坂本研) 米村 美紀,大学院学生(坂本研) 許 文瑞,大学院学生(坂本研) 章 心怡
環境騒音の伝搬予測法および対策法に関する研究を継続的に進めている.今年度は,広域道路交通騒音マップに関する検討を音源特性,伝搬特性の2点に着目して行った.まず音源特性に関しては,近年入手することが容易になってきた広域航空写真のデータを基に道路の交通量を推定し,それを基に道路交通騒音の音響出力を推定する手法を昨年度に引き続き検討し,機械学習アルゴリズムを援用した高精度化を図りその精度検証を行った.伝搬特性に関しては,道路交通騒音に対する地表面効果の計算方法について,実騒音における現場実験結果と波動伝搬理論に基づく理論解析結果を比較検討することによって道路交通騒音予測における設定方法や留意点を明らかにした.

純音性成分を含む騒音の評価に関する研究

教授 坂本 慎一,助教(坂本研) 米村 美紀
風力発電施設から発せられる騒音や,ヒートポンプ給湯器から発せられる騒音は,機械の回転に起因する純音性の成分が多く含まれ,苦情の原因となっている可能性がある.実験室における聴感評価実験を用いて,純音性騒音の不快感を調べる研究を行っている.今年度は,特定の周波数の純音が含まれる騒音のバックグラウンドノイズの特性と純音性成分の程度の関係が騒音の「わずらわしさ」に及ぼす影響に着目し,純音性成分緒ペナルティ関数に関する検討を行った.

音場シミュレーション手法の開発と応用に関する研究

教授 坂本 慎一,助教(坂本研) 米村 美紀,大学院学生(坂本研) 秋山 あさひ
室内音場における聴感印象の評価,各種環境騒音の評価等を目的とした3次元音場シミュレーションシステムの開発と応用,3次元音場再生システムに視覚刺激呈示用のドームスクリーンを組み合わせた評価実験システムの開発と応用に関して研究を行っている.今年度は,環境騒音の大きさ感,うるささ感に及ぼす視覚情報の影響に関して,道路交通騒音と航空機騒音の比較に関する検討を行った.航空機騒音の試験刺激に関して,新たに現場実測を行い,刺激のバリエーションを増やして評価実験に供した.

空から地表からインフラを診る

教授 竹内 渉,教授 桑野 玲子,准教授 水谷 司
日本のインフラの多くが1960年代の高度経済成長期に集中的に整備されているため,およそ半世紀を経た現在,その老朽化が問題となっている.国土規模の道路・地下・橋梁・トンネル・鉄道のインフラストックに対して,点検と診断方法の多くは目視点検や打音調査が基本であり,熟練点検員の減少による人員不足は深刻な問題となっている.これらの問題を改善するために,産学官挙げてインフラ維持・管理に対して IoT 技術の有効活用が期待されている.このような背景の中,生産技術研究所では「災害・環境リモートセンシング」「リアルタイム空間解析工学」「地盤機能保全工学」を専門とする研究者が連携し,「空から地表からインフラを診る」活動を開始した.具体的には,1) 宇宙からのリモートセンシングや空からのドローン撮影,地上・地中レーダー,モバイルマッピングレーザー,高解像度カメラなどの最先端の計測技術,2) AI・機械学習,ディジタル信号処理による超高速解析・検知技術,3) 土質力学や地盤材料の力学特性に基づいた地中構造物や土構造物の長期挙動の診断技術,を複合的に組み合わせ,真に実務的な利用に資する研究を展開し,最新の情報提供を行う.

レジリエントな都市・地域づくりに向けた研究と社会実装

教授 加藤 孝明
都市・地域づくりにおける持続性の維持と自然災害リスクの低減の両立を図る計画論を構築する.防災都市づくりの理念・理論に関する研究,復興の事前準備に関する理論研究の他,復興まちづくりイメージトレーニングを実践し,復興準備の方法論を確立する.

先端技術による都市機能の高度化とレジリエンス技術に関する研究

教授 加藤 孝明
情報技術や多様な要素技術のパッケージング技術を開発し,地域防災活動の高度化や地域防災拠点機能の高度化に資する研究を行う.防災を主軸としたスマートシティを構想,提案する.

先駆的都市・地域づくりモデルの実践的構築

教授 加藤 孝明
時代の最先端地域として,大都市と過疎集落を対象として,都市・地域づくりの新しいモデルを実践的に構築する.人口減社会・過疎社会における先進的まちづくり・地域づくりに関する研究,商業・業務地区の計画技術・エリアマネジメント技術の技術パッケージの高度化,気候変動への適応策としてのまちづくり・地域づくりに関する研究を進めている.

都市・地域の安全性評価技術の開発

教授 加藤 孝明
大都市等の複雑な災害現象を工学的に解明し,災害リスクや脆弱性の評価方法を構築する.併せて,構築された評価方法を逆関数の解を得て,災害リスクの低減に必要とされる地域の条件を明らかにする.大都市地震災害,津波災害,および,気候変動に伴う気象災害を対象として研究をすすめている.

統合陸域シミュレータの開発及び検証

教授 芳村 圭,特任講師 新田 友子,准教授 山崎 大
これまで大気モデルに従属して開発されてきた陸面モデルをベースにして,土地利用や植生変化・人間活動・湖沼や河川の水動態や水温変化・斜面水文過程と地表水−地下水相互作用など多様な時空間スケールの陸域水文過程を包括的に表現可能な次世代陸域モデルである統合陸域シミュレータ(ILS)の開発を行っている.

デジタルスマートシティイニシアティブ

教授 野城 智也,特任教授 関本 義秀,教授 腰原 幹雄
近年のビッグデータ,オープンデータ,AI等,多くの情報関係の技術が加速して進む中で,世界最先端の都市管理に関する様々な情報技術を磨きつつも,各地域が特定の主体等に依存し過ぎないデータ管理技術や,草の根の人的ネットワークの構築等,自律したスマートシティの技術基盤の涵養を行っていく事も重要である.そうした活動をより体系的に行っていくために,防災,交通,建物,インフラ構造物,地域経済等,都市運営の各分野を見据えつつ,都市情報基盤のグランドデザイン・コンセプトを描き,そのためのデータやソフトウェア等から構成されるデジタルシティを構築し,社会実証を行っていく.

人々の流動を計測し,行動モデルと組合せて全体流動を推定するデータ同化技術の開発

特任教授 関本 義秀
多様な観測方法に基づく性質の異なる移動データを,均質なデータとして整理すると共に,特に災害を中心とする平常時とは異なる人の流動について,行動モデルを適用させ推定する人流データ同化技術の開発を行なう.

商業,交通,観光,災害等のコンテクストにおける人々の流動の生態の解明

特任教授 関本 義秀
人々の流動を様々な分野に適用するために,災害時のみならず観光行動や交通モードの推定によるモビリティ分析を行なう.

国や地域のサステナブルな情報流通を支える基盤技術の開発

特任教授 関本 義秀
官民が保有するさまざまな社会基盤情報をワンストップで入手できるようなオープンなプラットフォームを開発するとともに,データを利用した視覚化・地図アプリなどの機能を提供し,データのショーケース化を図る.

国内外の地域の課題をデータと結びつけることによる実証研究的アプローチの開発

特任教授 関本 義秀
国内の社会基盤情報の整備を進めるとともに,国外においても簡易で継続的なデータ収集手法を構築し,データの質を評価するとともに,交通渋滞の解決や都市計画等の基礎データとしての活用を目指す.

都市ダイナミクスの再生に関する研究

元助教(関本研) 樫山 武浩
都市部における人々のモビリティデータの作成と災害時の行動予測を行う.

空間AIのスマートシティへの応用

特任教授 三宅 陽一郎
空間AIとは空間そのものにAIを内在させたものである.スマートシティの最小単位として空間AIを限定した領域に構築し,それらを接続することで,都市におけるカバレージを上げていく.現在は設計とシミュレーションの段階である.

インフラ構造物の維持管理に関する研究

准教授 長井 宏平
損傷した実構造物の損傷検知や補修補強,橋梁群としてのマネージメントなどについて,構造力学的な視点や,AI等の技術活用,データベース分析を通した将来予測に基づく維持管理計画の策定,人口減少等の社会情勢を考慮したインフラ重要度評価など,多角的に取り組んでいる.

インフラ維持管理技術と制度の国内外への展開

准教授 長井 宏平
インフラ維持管理技術や制度を国内外に社会実装をする活動で,海外の損傷橋梁などの性能評価や,維持管理技術者育成も実施している.

鉄筋コンクリートの力学特性に関する研究

准教授 長井 宏平
鉄筋コンクリート構造物の耐力や疲労寿命,損傷部材の補修補強,付着定着など,主に構造特性の観点からの研究を実施している.

鉄筋コンクリートの微細構造解析

准教授 長井 宏平
三次元微細構造解析プログラムを独自に開発し,構造力学特性や腐食による損傷,コンクリートの体積変化によるひび割れの発生や進展のシミュレーションを実施している.

非都市域における都市的地域の空間構造およびネットワーク構造に関する研究

助教(川添研) 小南 弘季

人を健康にする建築のあり方

准教授 川添 善行

建築の時間論

准教授 川添 善行

然形学の体系

准教授 川添 善行

漁業集落における共同体と空間形成プロセスの関連性に着目した集落更新モデルの構築

博士研究員(川添研) 青木 佳子

巡回移動型サービスにおける最適オペレーション手法の構築に関する研究

准教授 本間 裕大,大学院学生(本間(裕)研) 丸山 純矢
LPガス容器の配送などの巡回移動型サービスにおける巡回方法は,未だに人の経験と勘を頼りにしている部分が多く,効率化の余地が多く残されている.そこで,数理最適化の手法を用いることで,配送コストの削減並びに業務負荷の軽減を目指した.

数理最適化に基づく建築空間設計の支援に関するシステム開発

准教授 本間 裕大
建築空間設計では,多様な人と利用目的が空間上で複雑に絡み合うゆえに,人手による再帰的な検討が日常的に生じており,迅速な設計の妨げとなっている.本研究では,数理最適化手法の一つである混合整数計画法を活用し,建築空間設計の定量的評価とその最適化を支援するシステム開発を目指す.

経路情報データを活用した空間移動嗜好の逆推定

准教授 本間 裕大,大学院学生(本間(裕)研) 羽佐田 紘之
空間移動嗜好の把握は,実際の移動経路情報を活用して実現する.空間移動嗜好として,人々の実際の移動を決定づける合成コストと,それを共有する主集団やそれ以外それぞれの移動特性を把握する.経路情報データから空間各所のリンクコストを逆推定する数理最適化モデルを構築し,構築したモデルを利用して,共通のコストを有さない経路情報データを検出する手法を提案する.

電気自動車における将来充電方式の経済合理性に関する研究

准教授 本間 裕大
低炭素社会の実現に向け,代替燃料車の社会的普及が求められている.電気自動車は,その有力な候補となるが,一方で連続航行距離など現状では課題も多い.そこで,本研究では,従来とは異なる将来充電方式を前提としたとき,どの程度の経済合理性が担保されるか,数理的検討を行う.

BLEビーコンデータを用いた建築空間内におけるシークエンスの推定

准教授 本間 裕大,大学院学生(本間(裕)研) 丸山 純矢
本研究では,建物内における人間の移動行動と建物の関係であるシークエンスに着目し,BLEビーコンデータを用いて建物内のシークエンスを推定する数理最適化モデルを提案する.加えて,本大学工学部1号館の建物ネットワークデータを構築し,本モデルの有効性を検証する.

モバイル位置情報データに基づく観光スポットと訪問者の同時クラスタリングと個人的穴場の抽出

准教授 本間 裕大,大学院学生(本間(裕)研) 根本 侑弥
本研究では,モバイル位置情報データから取得した観光スポットの訪問履歴に基づき,相性の良いスポットと訪問者を相互にクラスタリングする.加えて,観光において重要なキーワードである「穴場」を類似した嗜好を持つ特定の訪問者の集団に対する穴場を個人的穴場として定義し,そのスポットを抽出する.

空間相互作用モデルを用いた高校卒業時における地域定着力の推定

准教授 本間 裕大,大学院学生(本間(裕)研) 西山 鈴音
本研究では,高校卒業者の大学進学・就職に着目し,高校卒業者の人口移動における地域内での定着傾向を定量的に評価する.まず,高校卒業者の就職と大学進学とを比較することで地域定着の要因分析を行う.次に,大学進学者については「実家から通うことのできる地域内にある進学先の選択しやすさ」を地域定着力と定義し,大学進学に伴う人口移動における地域定着力の推定を行う.

複数主体を前提とした建築保存における文化的価値の交換スキームに関する数理的研究

准教授 本間 裕大,大学院学生(本間(裕)研) 井澤 佳織
本研究では,歴史建築物の保存を過去と現在とで生じる「時を超えた価値交換」と捉える.建築保存の観点から,「金銭的に測れる価値観と測れない価値観」という両側面の乖離とその交換可能性を追求する.

超高層建築物の日影が街区の日照環境に与える複合的影響

准教授 本間 裕大,特任助教(本間(裕)研) 渡部 宇子
本研究では,超高層建築物と周辺建築物との複合日影に着目し,超高層建築物による日影が街区の日照環境に与える影響を定量的に示す.具体的には,超高層建築物による日影の影響を,日影時間そのものの増加だけでなく,周辺建築物による日影との重複時間の増加という側面からも分析することによって,都市部における日照環境の特徴を明らかにする.本研究では街区における複合日影の影響を,時間と重複の2要素に分解し,(i)日影時間が増加する地域,(ii)影の重複が増加する地域,それぞれの時空間的特徴を明らかにする.詳細な日影シミュレーションを通して,周辺建築物が密集する地域においては,むしろ影の重複が助長され,結果として,重複時間のほうが増加傾向にあることを明らかにし,両指標が互いに補完的関係にあることを示した.既存の等時間日影図では到達しえない知見であり,今後,街区の採光性をより精緻に分析するための応用可能性を秘めている.

データ同化を用いた洪水予測シミュレーションの精度向上

准教授 山崎 大
従来の広域洪水予測シミュレーションでは,気象予測のみを外力としており,その誤差が洪水予測の精度に大きく影響していた.本研究では,衛星観測等による地表水の現状を河川モデルに同化することで,短期〜中期の洪水予測の大幅な精度向上を目指す.

全球河川モデルの社会実装に関する研究

准教授 山崎 大
全球河川モデルは地球システム科学の研究ツールとして開発されてきたが,精度向上と社会からの要請によって,リスク管理や気候変動対策など民間での利用が検討されるようになった.そこで,全球河川モデルの精度検証および社会実装における障壁を明らかにするための研究を行っている.

衛星ビッグデータを用いた地球環境変動の解析とモニタリング

准教授 山崎 大,特任教授 沖 一雄
数ペタバイトにおよぶ長期間・高解像度の衛星観測データを用いて,地球規模での水域分布図の構築や,河川水温の長期トレンド検出など,大規模データ解析にもとづく地球環境変動の新たな知見を創出する.

次世代陸域水文モデルの開発

特任准教授 金 炯俊,准教授 山崎 大,教授 芳村 圭,教授(東京工業大) 鼎 信次郎,室長(国立環境研究所) 花崎 直太,室長(気象研究所) 仲江川 敏之,特任研究員(芳村研) 大沼 友貴彦
これまで大気モデルに従属して開発されてきた陸面モデルをベースにして,土地利用や植生変化・人間活動・湖沼や河川の水動態や水温変化・斜面水文過程と地表水−地下水相互作用など多様な時空間スケールの陸域水文過程を包括的に表現可能な次世代陸域モデルの開発を行っている.陸域の水・エネルギー収支と水循環とを大陸規模・日単位のスケールで精度良く推計でき,大気・海洋・生物圏などからなる地球システムモデルとも結合可能な陸域水循環の物理的側面に関する高精度で高計算効率の陸域水文シミュレーションを実施する.また,超高解像度の水文地理データや水利用データの整備,一貫性の長期気象外力データの整備を行い,全球1km 解像度での高解像度陸域水循環シミュレーションや全大陸50km 解像度での250 年分の長期アンサンブルシミュレーションの実現を目指している.

建築・都市計画におけるデザインとエンジニアリングの融合【柏地区利用研究課題】

准教授 本間 健太郎
建築設計や都市計画に役立つ新たなツールを開発するとともに,それを用いた計画と設計を行っている.今年度は,「出発地から目的地までのシームレスな移動を可能にする統合的なバリアフリールート」の計画ツールを開発して,SP調査と経路選択行動モデルに基づいた最大効用をもたらすエレベータ最適配置案を導出した.またVRアイトラッカーによって収集した注視データと建築空間の可視性分析とを組み合わせ,建築空間が歩行者の視覚体験プロセスに与える影響を分析している.

コンクリートがれきからの炭酸塩の回収

准教授 酒井 雄也
コンクリートがれきからカルシウム分に富む粉末や成分を選別することで,セメント原料などとして活用することを目指している.

コンクリートの完全なリサイクル

准教授 酒井 雄也
粉砕および圧縮成形によりコンクリートがれきを再生することで,副産物が発生せず,新たな材料の投入を必要としないリサイクルを試みている.

廃棄食材を用いた素材の開発

准教授 酒井 雄也
廃棄食材を乾燥して粉砕して得られる粉体を熱プレスすることで製造する,新たな材料の開発を進めている.

植物性コンクリートの開発

准教授 酒井 雄也
木粉などの植物粉と,コンクリートがれきや砂粒子などを混合して熱プレスすることで製造する,新たな材料の開発を進めている.

植物性コンクリート(生分解性コンクリート)の開発

准教授 酒井 雄也
CO2排出などの環境負荷の大きいセメントの代わりに,植物を用いて砂や砂利を接着したコンクリートの開発を進めている.

気体や液状水のコンクリートへの侵入挙動の評価

准教授 酒井 雄也
水銀圧入法により得られるコンクリート空隙構造といった実測値や,水セメント比や養生条件といった作製条件から,コンクリート中の気体や液状水移動を予測する手法を提案している.

環境中の流体・拡散現象の解析・予測・制御技術の開発

准教授 菊本 英紀
都市空間内や建物周辺・内部に形成される気流や空気汚染物質の拡散現象に関して,観測的手法や風洞実験,計算流体力学(CFD)を用いた解析や予測技術の開発を行っている.また,環境中の空気流動や空気汚染物質量を効率的に制御するための理論・実証的研究を行っている.

計測と数値予測を融合した環境解析・制御技術の開発

准教授 菊本 英紀
数理・統計的手法によって計測と数値予測を融合した環境解析・制御技術を開発している.その一つとして,物理モデルや統計モデルを用いて,未知の空気質汚染源などの環境因子を確率的に逆解析する手法を研究している.また,有限の計測データに統計モデルまたは機械学習技術を適用し,環境情報を詳細化・高精度化する技術を研究している.

都市熱環境のモニタリングとその影響評価・予測技術の開発

准教授 菊本 英紀
気候変動や都市化の進展は,都市環境の暑熱化をもたらし,建物のエネルギー負荷の増大や熱中症等の健康被害の深刻化をもたらす.気象観測データやリモートセンシングデータなどを活用し,都市の気候変化をモニタリングするとともに,都市居住者の環境や健康への影響を評価・予測する技術を開発している.

哲学対話を基にした倫理的・法的・社会的課題(Ethical, Legal and Social Issues)抽出手法の開発

准教授 松山 桃世
新技術が社会実装される際には,技術的課題以外にもさまざまな課題が生じうる.人々が技術の普及と暮らしの変化を受け入れるには,事前に人々が対話を重ね,生じうる論点を提示し,専門家がそれらに対処することが望ましい.本研究では,公共交通の自動運転化や台風制御をトピックスに,問いを重ねて対象の理解を深める「哲学対話」の手法を基に,論点抽出手法の開発を進めている.

科学コミュニケーションツール「ひみつの研究道具箱」開発:工学的思考の疑似体験と総合知の醸成

准教授 松山 桃世
本所の設立70周年記念事業の一環として開発した「生研道具箱カードゲーム」をさらにブラッシュアップし,パッケージ化およびウェブ化した.複数の試行会およびワークショップを経て,人々が先進技術を自分ごとと捉え,技術で課題解決方法を自ら考えるという「工学思考の疑似体験」を提供すると同時に,参加者どうしの対話により課題をさまざまな視点からとらえて解決方法を探る「総合知の醸成」のきっかけとなる可能性が見えてきた.

伝家研究

准教授 林 憲吾,教授(神奈川大) 六角 美瑠
家の継承の在り方に関する実践的研究

百年カンポンに関する研究

准教授 林 憲吾,講師(インドネシア大) Evawani Ellisa

長屋門ステイ

准教授 林 憲吾
宮城県栗原市に現存する長屋門の保全再生プロジェクト

オマーンの伝統的集落の保全に関する研究

准教授 林 憲吾,准教授(総合地球環境学研究所) 近藤 康久,教授 腰原 幹雄

東南アジアの近現代建築に関する研究

准教授 林 憲吾,教授(東京理科大) 山名 善之,教授(国立シンガポール大) Johannes Widodo

「第8回価値創造デザインフォーラム :未来の原画」司会

准教授 戸矢 理衣奈

文化×工学研究会の実施,コーディネート

准教授 戸矢 理衣奈
学内外の研究者,実務家,アーティストの方々を講師に迎え,本質的に工学と関連するテーマについてご講演を頂くとともにディスカッションを行っている.東大EMP(エグゼクティブ・マネジメント・プログラム)修了生有志主宰,生産技術研究所の協力のもとで実施しており,全学の教職員とEMP修了生を対象としている.これにより文理融合と社会連携を同時に推進しており,有機的なネットワークの構築を図っている.将来的には領域を超えた共同研究や文系も含めた社会連携の促進を想定している. ※2022年度の開催実績 野村 泰紀(カリフォルニア大学バークレー校教授) 「なぜ宇宙は存在するのか」 岡田 暁生(京都大学人文科学研究所教授) 「ウクライナ侵攻は音楽史からどう見えるか―「西欧近代」とは異質なものをめぐって」  丸井 浩(東京大学名誉教授) 「仏教と工学をつなぐ「二つをひとつに」― ロボット工学者森政弘氏の「ものづくり思想」と仏教」 東原 和成(東京大学大学院農学生命科学研究科) 「においの空間:嗅覚×社会×進化」 中野 香織(服飾史家) 「新しいラグジュアリーが生み出す文化と経済」

資産価格変動研究会の開催と複雑系社会システム研究センターに関連する業務

准教授 戸矢 理衣奈
文化×工学研究会における講演を契機に,市場変動分析に合原一幸教授の点過程分析を応用する研究会が経済学研究科・渡辺努教授のご協力も得て立ち上がり,2021年4月より継続的に研究会を行ってきた.東大基金への寄付金をもとに,チューリヒ工科大学ディディエ・ソネット教授を招聘しての講演をはじめ,学内外の講師を招聘した.こうした活動を経て,2022年4月の複雑系社会システム研究センターの発足へとつながった.センター発足後も,EMP修了生としても,EMP修了生の協力体制の構築及び寄付金獲得やその方法の協議をすすめた(未公開株等の新たな寄付方法に関して本部との協議等も推進した.EMP関係者による本プロジェクトへの個人による寄付金は累計約3千万円となった).加えて金融庁等の外部機関との提携協議をはじめ,東京大学としても新機軸となる取り組みの実現に向けて調整を継続的に行った.

鏡の流通に関する研究の継続

准教授 戸矢 理衣奈
鏡の流通に伴う人間心理の変化に関して,その過渡期である明治末から大正,昭和初期を中心に研究を継続した.

Biosphere and Land Use Exchanges with Groundwater and soils in Earth system Models

特任准教授 金 炯俊,准教授 山崎 大
地下水と土壌水分の相互作用は,土壌,水資源,生態系,地表近くの気候,社会システムを含む臨界領域(CZ)を形成する重要な役割を担っている.土壌水分,地下水,灌漑は,平均的な気候と異常気象(干ばつ,熱波,洪水),生態系生産性(湿地,農地),土壌炭素に影響を与えるが,それに対する応答もまた同様である.これらの結合プロセスは時空間的に対照的な現れ方を示し,観測結果からその相対的な影響を理解することは困難である.そこで我々は高度な数値モデリングを用いて人新世(1900-2100)におけるこれらのプロセスの長期的進化を,地球規模および地域規模(フランス大都市圏とメコン川流域の2つ)において探求する.

水共生学の創生に向けた水とその周辺環境情報の創出と展開

特任准教授 金 炯俊,特定准教授(京都大) 渡辺 哲史,助教(京都先端科学大) 内海 信幸,特任研究員(金(炯)研) 豊嶋 紘一,特任研究員(金研) Marvin SEOW
本研究では,領域目標である水共生学の創生に向け水とその周辺環境情報の創出に取り組む.これは地球圏―生物圏―人間圏の相互作用により成立する水循環システムのゆらぎを社会文化の観点から動態的に明らかにするための基礎情報となる.具体的には,1)水文気候シミュレーションによる過去300年を対象とした長期水文気候再現および将来100年を対象とした将来水文気候予測,2)リモートセンシング等による水を取り巻く周辺環境の計測,3) 観測および数値モデリングによる流域スケールでの水と環境物質動態解明を行い,過去―現在―未来における水とその周辺環境の変化を明らかにする.また,地球科学分野におけるデータが有する時空間解像度や確率的な特徴を,生物圏および人間圏における研究に活用しやすい形に変換する,情報翻訳のアプローチについての開拓にも取り組む.

衛星観測を活用したデータ駆動型の水文季節予報手法の開発

特任准教授 金 炯俊,特任研究員(京都大) 渡辺 哲史,助教(京都先端科学大) 内海 信幸
衛星観測を含む様々なデータを活用してデータ駆動型の水文季節予報手法の開発を行うための国際共同研究枠組みを構築する.米国側カウンターパートはジェット推進研究所であり,主に陸域貯水量変動が河川水位に与える影響についての専門的知見を提供する.一方,日本側は海面温度など全球スケールの様々な変数と流域スケールでの水文量の関係についての知見を提供する.両者を統合し,データ駆動型の水文季節予報手法の開発を行う.

DER遠隔制御機能の整理と配置

特任准教授 馬場 博幸,特任講師 今中 政輝
分散エネルギー資源をアグリゲーターが遠隔制御する際,通信プロトコルや個別機器の仕様によって様々な差異が生ずる.これらの差異の性格を整理し,その差異の吸収機能をどこに配置すべきかを論じたもの.

DRにおけるミクロ─マクロ制御共存に関する研究

特任准教授 馬場 博幸,特任教授 荻本 和彦,特任助教(名古屋大) 今中 政輝,課長(東京電力ホールディングス(株)) 天津 孝之,副長(東京電力ホールディングス(株)) 増田 浩
人為的な出力増減がしづらい再エネの積極的活用には,供給側の制御だけでなく,需給状態に応じた能動的な需要増減も必要であり,この場合,需要側ではマクロな制御とミクロな制御の共存のように,複数の制御が共存する環境が想定される.本研究はこれらの協調について検討する.

複数アプリケーション共存環境下のDER操作に関する研究

特任准教授 馬場 博幸,特任教授 荻本 和彦,特任助教(名古屋大) 今中 政輝,課長(東京電力ホールディングス(株)) 天津 孝之,副長(東京電力ホールディングス(株)) 増田 浩,部長(IoT-EX(株)) 柳川 大直
分散エネルギー資源(DER)を活用して,太陽光などの人為的に出力調整が困難な電源を大量に含む電力システムの安定化を確保する研究を推進.個々のDERは,複数のアプリから制御されることになると想定され,このような環境下でアグリゲーターの需給調整市場への入札商品づくりに寄与する機能の実装を考案し,実験結果を論文化した.論文は2022年5月にエネルギー・資源学会誌に掲載(査読あり).

需要側電力システム研究会の主宰

特任准教授 馬場 博幸,特任教授 荻本 和彦,特任講師 今中 政輝
分散エネルギー資源活用に関する様々な課題解決方策の“共有知化”を目的として,工学系研究科の馬場旬平先生,早稲田大学の石井先生などにも参画頂き,需要側電力システム研究会を主宰.関係企業が30社程度参加中.主要業界紙である電気新聞でも大きく取り上げられた.

EV充電の脱炭素化に向けた方策の一検討

特任准教授 馬場 博幸,特任講師 今中 政輝
太陽光発電が再エネの大宗を占める日本では,一日のうちの時間帯によって二酸化炭素排出量が変化する.これに着目し,排出量の少ない時間帯にEV充電を誘導すべきという考えを提案した論文.

研究用 EV 充電テストベッドの構築

特任准教授 馬場 博幸,特任教授 荻本 和彦,特任講師 今中 政輝
駒Ⅱキャンパス正門横駐車場に設置した研究用EV充電スポットの概要を報告.IoT-HUBを活用した様々な相互接続状況を概説したもの.

電力需給状況に連動した EV 充電サービスの開発研究

特任准教授 馬場 博幸,特任教授 荻本 和彦,特任講師 今中 政輝
再エネの急増に伴って電力需給のひっ迫が発生する.その際,適応的にEV充電の充電電力をIoT技術によって制御し,電力システムへの負担を軽減する仕組みを駒Ⅱ正門横駐車場に設置したEV充電テストベッドを活用して技術的な実現可能性を確認した実験報告.

1次元型表面ホログラフィックメモリーの研究

教授 志村 努,大学院学生(志村研) 古山 昂樹,特任研究員(志村研) 平山 颯紀,客員准教授 藤村 隆史,助教(志村研) 田中 嘉人
ホログラフィックメモリーでは,通常は厚い記録媒体を用いる体積型ホログラムを用いるが,これはBragg回折を用いているため,温度変化による膨張収縮に弱い,ディスクへの一括書き込みができないなどの欠点を持っている.これに対し表面型ホログラフィックメモリーは,Raman-Nath回折であるため,ホログラムの膨張収縮があっても読み書きが可能であり,また射出成型やナノインプリントなどによるディスクの一括複製が可能である.我々は1次元ホログラムをディスク表面に記録し,やはり1次元の像を再生することにより,多チャンネルの時系列信号の同時再生を行い,データ転送レートをこれまでの光ディスクに比べ大きく向上することを狙ったシステムの基本原理の解明を行っている.

Decoding of reproduced images of complex-encoded holographic memory using convolutional neural networks

教授 志村 努,研究実習生(志村研) Jianying Hao,客員准教授 藤村 隆史,特任研究員(志村研) 平山 颯紀,助教(志村研) 田中 嘉人
Holographic memory has a higher storage capacity and data transfer rate than conventional bit-by-bit storage techniques due to its 2-dimensional recording and 3-dimensional volume storage. However, conventional holographic memory only uses amplitude to encode information and does not take advantage of the high capacity of holographic memory. With the progress of research, it has become possible to realize complex-encoded holographic memory using both amplitude and phase encoding. Introducing phase to encode information enables higher encoding efficiency and signal-to-noise ratio than traditional amplitude modulation. However, since the phase cannot be detected directly, it must be demodulated from the intensity image. A direct complex amplitude demodulation method from a near-field diffraction image based on deep learning is proposed. By propagating the reconstructed beam for a short distance, the intensity image containing diffraction features related to both amplitude and phase can be obtained. The inverse process from the near-field diffraction intensity image to the complex amplitude light field is divided into intensity-amplitude and intensity-phase inverse problems separately and represented by two convolutional neural networks (CNNs). After training the CNNs with the training dataset (intensity as input and amplitude/phase as outputs), both the amplitude and phase data pages can be retrieved directly from a single diffraction intensity image simultaneously. The verification of the experiment involving the demodulation of 16-level complex amplitude from a single diffraction image during the decoding process of holographic memory has been conducted.

シリコンメタサーフェスにおける第二高調波発生の研究

教授 志村 努,大学院学生(志村研) 上田 康太郎,助教(志村研) 田中 嘉人,客員准教授 藤村 隆史,特任研究員(志村研) 平山 颯紀
シリコンは通常,その結晶構造の空間対称性のために二次非線形感受率がゼロとなり,したがってシリコン内部で二次非線形光学効果を起こすことはできない.しかしシリコンであっても,表面においては鉛直方向に空間反転対称性が破れ,表面に局在する二次非線形分極が誘起される.その分極による第二高調波発生(SHG)は表面SHGと呼ばれている.本研究では,この表面SHGを利用し,非線形光学材料を用いずシリコンだけでSHGを起こすことを目標にしている.そのために,本来非常に弱い表面SHGを増強する工夫が必要となり,そこでメタサーフェスを利用する.メタサーフェスはメタアトムと呼ばれる光の波長以下の構造を周期的に表面に配列したものである.メタサーフェスにおける表面SHGは配列された各メタアトム表面で発生し,いくつかのメリットがある.まず,微細な凹凸を表面に作るため表面積が増大し,表面でのみ発生する表面SHGも増加すると考えられる.また,メタアトムの構造と配列を設計できるため,表面SHGが増強されるメタサーフェスを人工的に作ることができる.最適な構造を見つけるため,表面SHGをシミュレーションして構造ごとの表面SHGのふるまいを調べている.

メタサーフェスを記録媒体とする多次元光変調ホログラフィックメモリー

教授 志村 努,特任研究員(志村研) 平山 颯紀,客員准教授 藤村 隆史,助教(志村研) 田中 嘉人
表面型ホログラムを記録媒体として利用すると,情報の「高速読み出し・超長期保存・容易な複製」といった特徴をもつユニークな光メモリーが実現できる.サブ波長スケールで適切に微細加工された人工表面構造(メタサーフェス)は,光の位相・振幅・偏光などのさまざまな特性の空間変調が可能であることが知られており,この多次元的な光変調自由度を利用することで記録密度の向上が期待できる.本研究ではシステムの検討・設計理論の構築・メモリー特性の評価を目指して研究を行っており,現段階ではメタサーフェスの光変調特性を定量的に評価可能なシステムの構築を目指している.

産業で用いられる光学の教育

特任教授 菅谷 綾子
近年大きくなりつつある大学の光科学研究と産業界の最先端光学技術との乖離を埋めるため,産業に直結する光学の教育を行って次代の光学産業を担うリーダーとなり得る人材を育成することを目的としている.具体的な活動は以下の通りである.先端レーザー科学教育研究コンソーシアムCORALに参加,大学院学生に「光学産業における光学技術」の題目で講義1回(6/27)とレンズ設計実習「レンズ設計・基礎から実践まで」を2回(6/29, 30)実施,10月~1月に光工学特論の大学院講義を駒場Ⅱで開講.また,駒場リサーチキャンパス公開が3年ぶりに対面式となり6月11日(土)に小・中学生向け理科教室「光を感じて写真をとってみよう!」を開催した.

レベル4自動運転車におけるリスク最小化制御が交通へ与える影響評価

特任教授 平岡 敏洋,特任助教(須田研) 霜野 慧亮,教授 須田 義大
レベル4自動運転車におけるリスク最小化制御による安全な停止手法は,車線内停止や,車線外まで移動して停止する手法など複数想定されている.しかし,車線外まで移動する手法では,停止場所までの徐行時に後続車の追突リスクが上昇する恐れもある.そこで先行研究で提案した四つの停止手法それぞれを自由流の交通下で実行したときに,交通流が受ける影響の差異について,交通環境を模擬した交通流シミュレーションを用いて比較評価した.結果として,全ての条件において,広くて安全な場所まで徐行して車線外に退避する停止手法が最も安全であることが示された.実勢速度が遅い交通流では,直近の路肩に停止する手法も比較的安全となる場合もあった.また,各停止手法で最も安全性が低下するフェーズも異なり,車線外退避の手法では徐行中に,路肩停止または車線内停止の手法では停止後に,安全性が低下することがわかった.

人間機械系における新しいシステム設計論の構築

特任教授 平岡 敏洋
人間機械系を設計するうえで,従来のシステム設計論では,メインタスク達成に要するユーザの物理的労力ならびに心理的労力をいかに減らすかという視点で,自動化を導入することが殆どであった.しかしながら,1) ユーザの技能低下,2) ユーザの対象系理解度の低下,3) システム異常時(故障時)の対応力低下,4) システムに対する過信増大,といった弊害も生じている.本研究では,メインタスク達成のために,あえてユーザに労力をかけさせるような設計にすることで,上述する弊害を軽減もしくは解消することを目指して,新しいシステム設計論の体系化を行っている.

無人移動サービス車両における乗客の車内転倒防止のための運動制御

特任教授 平岡 敏洋,特任助教(須田研) 霜野 慧亮,教授 須田 義大
車内における乗客の転倒は,加減速時に生じる慣性力の影響で発生する.床面と水平な方向に生じる慣性力を低減できれば,車内事故の軽減につながると期待される.加減速に合わせ意図的に車体を傾斜させることで慣性力の方向を床面方向に向けて水平方向の影響を減らせると考えられる.自動運転と合わせて注目される電気自動車では,前後輪にインホイールモータを内蔵するものもあり,前後輪の制駆動力を制御することでピッチ角を制御できる.この特徴を活かした先行研究では,車両運動の安定性向上を目的としたピッチ角抑制制御を行っている.それに対して本研究では,車内に立って乗車する乗客の転倒防止を目的として,車両が加減速する際に乗客に作用する慣性力の影響を打ち消すようなピッチ角制御を行う.

自動運転車両に対する歩行者の信頼度推定

特任教授 平岡 敏洋,特任准教授 小野 晋太郎,教授 須田 義大
本研究では,扱う対象を自動運転車が接近する道路を横断する際に歩行者が車両に対して抱く信頼車両に対する歩行者の信頼度に絞ったうえで,それを「自動運転車の挙動次第では衝突の恐れがある状況下において,歩行者の道路横断を阻害しない能力を持っているだろうという主観的判断」と定義した.さらに,常に信頼を評価するために評価指標を,横断前,横断中で3つずつ作成した.その後,VR空間内で横断歩道に自動運転車が接近する状況を再現して歩行者横断実験を行い,実験参加者挙動データと試行中と試行後に車両に対する信頼度主観評価を取得した.試行後に得られた信頼度主観評価と特定の歩行者パラメータで相関分析を行い,信頼度と相関のある挙動を明らかにした.そしてそれらに関連する時系列データに基づいて試行中に記録した信頼度主観評価を推定する深層学習モデルを横断前と横断中で分けて作成し,それぞれ正解率は65%, 71%であった.

実映像ドライビングシミュレータに関する研究

特任准教授 小野 晋太郎,准教授(愛知県立大) 河中 治樹,教授(愛知県立大) 小栗 宏次

生体分解性・多孔質マイクロニードルとペーパーベースの無痛・迅速診断チップの開発

教授 金 範埈,助教(金(範)研) 朴 鍾淏,特任教授 甲斐 知惠子,特任教授 米田 美佐子
本研究は,“生体分解性多孔質マイクロニードルを用いた医療用パッチ”の新たな応用として,新型コロナウイルス感染症の低侵襲(無痛)自己診断チップの開発に関するものである. 専門的な医療従事者を要しないかつ簡便で迅速な感染症の診断を実現できるため,まず診断対象である血清又は間質液からの無痛かつ適量の抽出が可能な新規マイクロニードルの構造設計及び製作に関する研究を進めている.

麻疹ウイルスベクターを用いた新型コロナウイルスワクチンの開発

特任教授 米田 美佐子,特任教授 甲斐 知惠子

マイクロ2相流の基礎研究

教授 鹿園 直毅
将来のエネルギー問題を解決する上で,エクセルギー損失の小さい低温度差の熱機関であるヒートポンプや蒸気エンジンへの期待は非常に大きい.一方で,競合技術である燃焼式の給湯器やエンジンに比べ大型・高価であることが課題である.極めて細い冷媒流路を用いることで,ヒートポンプや蒸気エンジン用熱交換器の大幅な小型軽量化が実現できるが,本研究では,そのために必要となる超薄液膜二相流の基礎的な現象理解を進めている.具体的には,共焦点レーザー変位計を用いたマイクロチャネル内の薄液膜厚さの測定およびそのモデリング,マイクロチャネルを利用した高性能蒸発器の限界熱流束の研究等を行っている.

固体酸化物形燃料電池(SOFC)の実験および数値シミュレーション

教授 鹿園 直毅
エクセルギー有効利用の重要性から,700~1000度で作動する固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)に注目が集まっている.SOFCは単体での高い発電効率に加え,様々な炭化水素燃料に対応できること,熱機関や内部改質による排熱利用が可能である等,様々なメリットを有する.しかしながら,SOFCの実用化のためにはコストや耐久性といった課題を克服する必要があり,そのためにはシステムとそれを構成するセルや電極の階層的な設計技術を高度化する必要がある.本研究では,SOFCの高信頼性,高効率化に向けて,実験および数値計算手法を開発し,発電システムから電極レベルに至る広い時空間スケールの現象を予測,制御するための研究を行っている.特に,電極微細構造が発電性能に与える影響に注目し,微細構造を制御したSOFCの性能を実験により計測するとともに,収束イオンビーム走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)を用いた3次元電極微細構造の直接計測,ミクロな実構造における拡散と電気化学反応を連成させた格子ボルツマン法による数値シミュレーションを行っている.

次世代熱機関用要素技術の研究

教授 鹿園 直毅
低温度差で作動するヒートポンプや蒸気エンジンはエクセルギー損失が非常に小さく,将来のエネルギー問題の解決に不可欠な技術である.一方で,競合する燃焼式給湯器等に比べ大型で高価であることが課題であり,従来の延長線上にない画期的な要素技術が求められている.本研究では,基礎的な研究に基づいて,より高性能,高信頼性,小型,安価を実現する新たな機構を提案し実証している.

スマートエネルギーネットワーク研究会RC-65

特任教授 岩船 由美子
低炭素社会の実現に向けて,従来型の大容量集中発電と再生可能エネルギー等の分散型電源,さらには蓄電池や電気自動車などの需要端の電力貯蔵機能との共存を可能とし,供給と需要の双方向通信による負荷の平準化や省エネルギーを実現する新しいエネルギーシステムの構築が求められている.また,これまで所与のものとされてきた需要を見直し,エネルギーサービスの質を維持しつつも,エネルギー消費量を抑制していく方策について取り組みが進められている.欧米では「スマートグリッド」,「インテリジェントグリッド」等の電力供給ネットワークや,「デマンドレスポンス(需要反応)」などの考え方が提案され,再生可能エネルギーの導入,送配電網の柔軟性・信頼性を向上するための諸技術およびそれらの技術基準の検討が始まっている.本研究会では,「エネルギーマネジメント」,「再生可能エネルギー」,「スマートメータ」,「デマンドレスポンス(需要反応)」,「電力貯蔵機能」,「スマートグリッド」,「熱電供給」,「電気自動車」,「IT活用」などをキーワードに,新しいエネルギーシステムを考えるための活動を進め,欧米における先進事例や国内外の研究状況に関する情報を共有し,我が国における新しいエネルギー供給システムの在り方について議論を深めて検討する.

デマンドレスポンスに関する研究

特任教授 岩船 由美子
持続可能な社会システム構築のためには,再生可能エネルギーの活用,さらなるエネルギー効率向上が重要である.再生可能エネルギーの中で大きな導入量が期待される太陽光発電と風力発電は,その発電出力が天候や時間によって出力が変動するため,これらの電源の導入割合の増加に伴い,電力システム全体の需給調整力をより一層確保する必要がある.需給調整力の一つが需要家サイドのデマンドレスポンス(DR)である.本研究室では,DRを評価するためのツールを構築し,系統全体への影響評価,需要家サイドの経済性評価を行っている.

消費者受容性を考慮した住宅エネルギー管理システム

特任教授 岩船 由美子
不安定な発電出力特性を有する再生可能エネルギーの大量導入を実現させるためには,電力システムにおけるエネルギー需給調整力を確保することが必要である.そのために,消費者の快適性・利便性を維持しつつ必要に応じて電力需要を調整できる機能を持つ住宅エネルギー管理システム(HEMS)の開発を目指す.また,HEMS普及促進のために,社会に受け入れられる仕組み・制度に関する検討や付加価値を高めるための研究も行う.

高齢世帯のエネルギー利用に関する研究

特任教授 岩船 由美子
我が国の高齢化率は2005年に世界最高水準となり,今後も高水準を維持していくことが見込まれている.近年の高齢世帯は,単身もしくは夫婦のみ世帯がほとんどで,世帯規模小さい,住宅は古く大きい,在宅率高い,家電が古く多い等,エネルギー多消費傾向が確認されている.増加を続ける高齢世帯の省エネは重要であるが,加齢に伴う身体の衰えや疾病などを抱える高齢者に,省エネのための我慢や努力を期待することは難しく,QOL高く快適かつ安全な生活が優先する.高齢世帯のエネルギー利用についてスマートメータデータなどを継続的に収集し実態把握を行うとともに,その対策について検討を行う.

DRにおけるミクロ─マクロ制御共存に関する研究

特任准教授 馬場 博幸,特任教授 荻本 和彦,特任助教(名古屋大) 今中 政輝,課長(東京電力ホールディングス(株)) 天津 孝之,副長(東京電力ホールディングス(株)) 増田 浩
人為的な出力増減がしづらい再エネの積極的活用には,供給側の制御だけでなく,需給状態に応じた能動的な需要増減も必要であり,この場合,需要側ではマクロな制御とミクロな制御の共存のように,複数の制御が共存する環境が想定される.本研究はこれらの協調について検討する.

複数アプリケーション共存環境下のDER操作に関する研究

特任准教授 馬場 博幸,特任教授 荻本 和彦,特任助教(名古屋大) 今中 政輝,課長(東京電力ホールディングス(株)) 天津 孝之,副長(東京電力ホールディングス(株)) 増田 浩,部長(IoT-EX(株)) 柳川 大直
分散エネルギー資源(DER)を活用して,太陽光などの人為的に出力調整が困難な電源を大量に含む電力システムの安定化を確保する研究を推進.個々のDERは,複数のアプリから制御されることになると想定され,このような環境下でアグリゲーターの需給調整市場への入札商品づくりに寄与する機能の実装を考案し,実験結果を論文化した.論文は2022年5月にエネルギー・資源学会誌に掲載(査読あり).

未来志向射出成形技術

准教授 梶原 優介,特任講師 龍野 道宏,助教(梶原研) 木村 文信,特任研究員(梶原研) 加藤 秀昭,特任研究員(梶原研) 佐藤 滉
主要なプラスチック成形加工技術の射出成形は,広範な成形工業界を擁し国民生活および産業界の発展を下支えしている.近年では,炭素長繊維等の難成形性・難制御性の材料が出現し,超臨界流体応用微細転写・発泡成形,型内異材成形・接合・組み立て等が求められ,複雑化する成形現象の解明が追い付かず材料特性を十分に引き出せなくなっている.本部門では,技術的にも学問的にも未開拓なこれら領域に道筋をつけ,来るべき射出成形技術を先導することを目指し研究を進めている.

デジタルスマートシティイニシアティブ

教授 野城 智也,特任教授 関本 義秀,教授 腰原 幹雄
近年のビッグデータ,オープンデータ,AI等,多くの情報関係の技術が加速して進む中で,世界最先端の都市管理に関する様々な情報技術を磨きつつも,各地域が特定の主体等に依存し過ぎないデータ管理技術や,草の根の人的ネットワークの構築等,自律したスマートシティの技術基盤の涵養を行っていく事も重要である.そうした活動をより体系的に行っていくために,防災,交通,建物,インフラ構造物,地域経済等,都市運営の各分野を見据えつつ,都市情報基盤のグランドデザイン・コンセプトを描き,そのためのデータやソフトウェア等から構成されるデジタルシティを構築し,社会実証を行っていく.

着霜制御サイエンス─ 霜のつかない表面を設計する物理的指針

特任教授 ビルデ マーカス,教授 福谷 克之,特任講師 高江 恭平
水蒸気が氷となって凝結する着霜現象は,工学的・社会的に極めて重要な現象である.例えば,透明なガラスの光学的な透過度の低下を招く,熱交換機の熱効率の著しい低下をもたらす,コンクリートにダメージを与える,航空機の安定な飛行を困難にするなど,着霜は様々な深刻な問題を引き起こすことが知られている.しかしながら,着霜現象に対する物理的な理解は十分とは言えず,これまで着霜の阻害のための明確な物理的指針は存在していなかった. そこで,本社会連携研究部門では,この状況を打破すべく,理論・シミュレーション・実験を融合することにより,ミクロからマクロにわたる新たな階層的な視点から,着霜という非平衡現象の物理的な機構に迫ることで,この現象の基礎的な解明をはかるとともに,上記のような深刻な社会的問題の解決のための基本的な物理的指針を確立することを目指す.

着霜制御の物理的指針を得るための理論・数値シミュレーション

特任講師 高江 恭平

自己回転粒子の相分離

PhD. student (Indian Institute of Technology, Madras) Bhadra HRISHIKESH,客員共同研究員(東大) 田中 肇,特任講師 高江 恭平

定置網漁業の自動魚群誘導システム

教授 北澤 大輔,助教(北澤研) 李 僑,特任研究員(北澤研) 董 書闖,シニア協力員(北澤研) 水上 洋一
定置網漁業において,箱網に入った魚を収穫する作業は揚網作業と呼ばれるが,多くの作業員を必要とし,早朝の危険を伴う作業である.そこで,この作業を自動化するため,可撓性ホースを結合して作成された自動魚群誘導システムについて,これまでの成果を取りまとめて学会発表を行った.

炭電極を用いた汚水の電気化学的処理技術の開発

教授 北澤 大輔,シニア協力員(北澤研) 岡本 強一
汚水処理技術の一つとして,電気分解が注目されている.電気分解では,一般に金属製の電極が用いられるが,使用中にイオン化し,水生生物に影響を及ぼす可能性があるため,当研究室では炭電極を用いた電気分解による汚水処理技術の開発を行っている.これまでに実施した実験結果を整理して,論文を執筆して投稿した.

琵琶湖全循環の長期数値シミュレーション

教授 北澤 大輔,特任研究員(北澤研) 周 金鑫
気候変動に伴い,琵琶湖では全循環の欠損が懸念されている.将来の気象シナリオの与え方を改善して,琵琶湖での全循環欠損のリスクの予測シミュレーションを行い,間欠的に全循環の欠損が起こる可能性があることを示した.

統計的手法による沿岸生態系モデルのパラメータ推定に関する研究

教授 北澤 大輔,特任研究員(北澤研) 周 金鑫,大学院学生(北澤研) 屠 騰,准教授(東北大) 藤井 豊展
生態系モデルを社会実装するためには,モデルに含まれる不確かなパラメータを客観的にチューニングする必要がある.そこで,ベイズ最適化を活用したパラメータ推定法を提案し,女川湾の生態系シミュレーションに適用した.

複合養殖による養殖場の環境保全に関する研究

教授 北澤 大輔,リサーチフェロー(北澤研) 吉田 毅郎,特任研究員(北澤研) 周 金鑫
養殖種の排泄物を他の生物に吸収させる複合養殖によって,養殖場の環境を保全する方法について実海域実験を行った.魚類養殖場直下の海底上でいくつかの箱網内にナマコを格納して飼育し,タイムラプスカメラによって成長を把握した.

養殖の持続可能性の評価に向けた指標の開発

教授 北澤 大輔,大学院学生(北澤研) 高 紅霞,特任研究員(北澤研) 董 書闖,特任研究員(北澤研) 周 金鑫
国内外の養殖場では,養殖魚からの排泄物や陸域からの栄養塩負荷による環境汚染が頻発している.海域の養殖の環境収容力を判断するため,排泄物と陸域からの負荷を考慮した指標を開発するとともに,赤潮の発生状況などとの相関を調べた.

航空機用ものづくりの研究【柏地区利用研究課題】

教授 臼杵 年

航空機製造におけるものづくりに関する技術開発

教授 臼杵 年,教授 岡部 徹,教授 岡部 洋二,准教授 土屋 健介,特任教授 橋本 彰,元特任講師 馬渡 正道,教授(東大) 柳本 潤,准教授 山川 雄司
次世代の航空機製造技術に関して,複数のテーマを同時進行でその課題解決に取り組んでいる.

難削材切削加工の研究【柏地区利用研究課題】

教授 臼杵 年

光力学における共鳴優位なエンタングルメントの研究

大学院学生(羽田野研) 尚 程
開放量子システムでは共振状態を利用して最大二重エンタングルメントの保護を実現する.

複雑ネットワークの理論研究【柏地区利用研究課題】

教授 羽田野 直道

量子熱力学・統計力学の理論研究【柏地区利用研究課題】

教授 羽田野 直道

量子相関および情報を考慮した量子熱力学の構築に関する研究

大学院学生(羽田野研) 石崎 未来,教授 羽田野 直道,協力研究員(羽田野研) 田島 裕康,助教(羽田野研) 李 宰河
近年,半導体において,投入された電力に対する膨大な廃熱が技術的課題として注目されており,廃熱を電気信号に再利用するような研究が行われている.この動向を踏まえ,半導体のような量子系への応用を視野に入れた量子熱力学の研究を行う.本研究のテーマである量子熱力学は,熱力学を量子力学のスケールまで拡張し,量子的効果を取り入れた研究分野である.現状の量子熱力学では揺らぎや乱雑さといった観点での量子的性質は考慮されているが,量子相関や,測定により得られた情報のフィードバックによるエントロピーは体系的に考慮されていない.そこで本研究では,量子的性質を利用するというリソース理論の観点から,量子相関と情報に着目して情報量子熱力学を構築する.また,現状では量子系が行う仕事の定量化はマルコフ的な近似手法を用いたままとなっている.より現実に沿った形での記述をするため,このような近似手法を用いずに,仕事をする量子ビットと仕事を受け取る量子系の相互作用の結果として仕事の定量化を行う.

非エルミート科学の創成【柏地区利用研究課題】

教授 羽田野 直道

弱測定の精密測定への応用に向けた理論解析

助教(羽田野研) 李 宰河,准教授(高エネルギー加速器研究機構) 筒井 泉
量子測定において有用な測定値を選別する手法としての弱測定法が,測定精度の向上をもたらし得る機構を解析し,既存の実験のデータの分析・検証を通したその有用性の実証や,今後の幅広い応用へ向けた検討を行う.

量子論における不確定性原理の普遍的定式化

助教(羽田野研) 李 宰河
不確定性原理の普遍的な定式化を通して,量子論における不確定性の多彩な顕現様式を融合し,またこれに起因する各種の量子現象を解析することで,その包括的理解に資することを目的とする.

GKSL方程式の有効性に関する研究

大学院学生(羽田野研) 金川 隼人,教授 羽田野 直道
GKSL方程式の導出過程で用いられる諸近似の正当性についての研究を行った.特にFriedrichs模型を題材に近似の有効性を注目系と環境系の性質まで還元することを試みた.

孤立した量子多体系の熱平衡化現象

大学院学生(羽田野研) 吉永 敦紀,教授 羽田野 直道
孤立した量子多体系における熱平衡化現象に関して熱化を阻害する新たな機構を発見した.

有向ネットワークレゾルベントの摂動解析

大学院学生(羽田野研) 越智 昌毅,教授(ハイファ大) Joshua Feinberg,教授 羽田野 直道
有向ネットワークにおいてある有向辺を除去・付加した際の隣接行列レゾルベントの変化量を計算する公式を見出し,それを用いて向きを加味した新たな辺の中心性の提案や,重要な辺のみを抽出する backboning への応用を考えている.

精度の熱力学:線形的にカップリングされる輸送チャンネルの場合

大学院学生(羽田野研) 王 鑫,教授 羽田野 直道
古典確率熱力学の枠組みの中で,二つの線形的にカップリングされる輸送チャンネルにおける熱力学不確定関係の下限はいかに環境温度やカップリング係数に影響されるかを議論する.

量子アクティブ粒子・非エルミート量子ウォーク・Dirac粒子への変換

大学院学生(羽田野研) 山岸 愛,教授 羽田野 直道
古典系において研究が進められているアクティブマターを,非エルミート量子ウォークを用いて一次元・二次元量子系で定義し,古典系での先行研究と同様の,エネルギー取り込みがあるとその分運動が活発になりポテンシャル障壁を登るという振る舞いを確認した. また,二次元系への拡張に伴い新たな高次元量子ウォークのモデルを提案し,そのダイナミクスやトポロジカルな性質を調べた.

非エルミート多体系における量子もつれのダイナミクスの研究

PD(東大) 折戸 隆寛,特任研究員(羽田野研) 井村 健一郎
非エルミート量子力学系では固有状態の性質が通常のエンタングルと大きく異なることが盛んに議論されているが,波束のダイナミクスもまたエルミート系の場合と定性的に異なる.羽田野−ネルソン模型のような非対称ホッピングの非エルミート系では清浄極限では量子干渉が抑えられて古典的な拡散現象が見られ,不純物強度の増加と共に量子干渉が回復する.本研究では多体効果も取り入れて,量子もつれのダイナミクスを調べ,エンタングルメント・エントロピーが時間的に非単調なふるまいをすることを見出した.

非エルミート系における散乱問題の研究

教授(広島大) 高根 美武,特任研究員(羽田野研) 井村 健一郎,大学院学生(広島大) 小林 志遠
非エルミート系における散乱問題では,反射率・透過率等の解釈に困難が生じる.本研究では,複素ポテンシャルも入った羽田野−ネルソン型の非エルミート1次元系における具体的な反射・透過の問題を考え,反射率・透過率等の解釈について再検討した.確率流とその保存について新解釈を提案し,その局所的な保存則を導いた.電気伝導度に対するランダウアー公式の非エルミート系への拡張について議論する.

非エルミート重い電子系超伝導体の例外点の物理

東京大学特別研究員(羽田野研) 平良 敬信,教授 羽田野 直道
重い電子系に現れる非エルミートな有効模型に特有の例外点付近での超伝導状態の変化を明らかにする.

頂点順序推定によるコミュニティ検出

大学院学生(羽田野研) 越智 昌毅,研究員((国研)産業技術総合研究所) 川本 達郎
ネットワークにおけるコミュニティ構造は隣接行列のプロットによって視覚的に検出可能だが,そのためには頂点を適切な順序で並べる必要がある.我々は ordered random graph model を用いた最尤推定による頂点順序推定法を提案した.

水同位体情報を用いた気候と水循環に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 芳村 圭
柏地区において,降水や水蒸気などの同位体比の情報を質量分析計等で分析した結果と,シミュレーションモデルで推定した結果を組み合わせ,地球規模の水循環や気候変動のメカニズムを解明する.

統合陸域シミュレータの開発及び検証

教授 芳村 圭,特任講師 新田 友子,准教授 山崎 大
これまで大気モデルに従属して開発されてきた陸面モデルをベースにして,土地利用や植生変化・人間活動・湖沼や河川の水動態や水温変化・斜面水文過程と地表水−地下水相互作用など多様な時空間スケールの陸域水文過程を包括的に表現可能な次世代陸域モデルである統合陸域シミュレータ(ILS)の開発を行っている.

次世代陸域水文モデルの開発

特任准教授 金 炯俊,准教授 山崎 大,教授 芳村 圭,教授(東京工業大) 鼎 信次郎,室長(国立環境研究所) 花崎 直太,室長(気象研究所) 仲江川 敏之,特任研究員(芳村研) 大沼 友貴彦
これまで大気モデルに従属して開発されてきた陸面モデルをベースにして,土地利用や植生変化・人間活動・湖沼や河川の水動態や水温変化・斜面水文過程と地表水−地下水相互作用など多様な時空間スケールの陸域水文過程を包括的に表現可能な次世代陸域モデルの開発を行っている.陸域の水・エネルギー収支と水循環とを大陸規模・日単位のスケールで精度良く推計でき,大気・海洋・生物圏などからなる地球システムモデルとも結合可能な陸域水循環の物理的側面に関する高精度で高計算効率の陸域水文シミュレーションを実施する.また,超高解像度の水文地理データや水利用データの整備,一貫性の長期気象外力データの整備を行い,全球1km 解像度での高解像度陸域水循環シミュレーションや全大陸50km 解像度での250 年分の長期アンサンブルシミュレーションの実現を目指している.

環境評価AIの構築に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 井上 純哉

鉄鋼冶金インフォマティクスに関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 井上 純哉

鉄鋼材料の疲労挙動に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 井上 純哉

高強度アルミニウム合金の再結晶挙動に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 井上 純哉

地震による構造物の破壊機構解析(共同研究)

教授 川口 健一,教授 目黒 公郎,准教授 清田 隆,教授 桑野 玲子,教授 腰原 幹雄,助教(川口(健)研) 張 天昊,教授 中埜 良昭,准教授 沼田 宗純

実大テンセグリティ構造物の応力測定システム【柏地区利用研究課題】

教授 川口 健一,元特任講師 中楚 洋介,助教(川口(健)研) 張 天昊,技術専門員(川口(健)研) 大矢 俊治,大学院学生(川口(健)研) 佐野 匠,教授 今井 公太郎,准教授 本間 健太郎
2017年に完成した柏の葉キャンパスにあるWhiteRhinoIIの応力状態の継続的モニタリングを行っている.また数値解析などによりテンセグリティ構造が最適構造となるための条件の探索などを行っている.2001年に竣工した旧西千葉実験所の White Rhino I の撤去作業時の実大モニタリング実験も行った.

SARS-CoV-2タンパク質の電子状態解析

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
SARS-CoV-2ウイルスの感染は,ACE2にスパイクタンパク質が結合することで始まる.そのため,スパイクタンパク質の阻害剤はCOVID-19の治療薬やウイルス検出剤の候補となりうる.本研究では,ACE2タンパク質のスパイクタンパク質に隣接する領域において正準分子軌道(CMO)計算を行った.60個のアミノ酸残基からなるACE2の計算モデルでCMO計算に基づき,正確な静電ポテンシャルを得ることができた.

密度汎関数法に基づく第3世代カノニカル分子軌道法とQCLO法の開発

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
グリッドフリー法とコレスキー分解法を組み合わせて,スパコンで十分な性能を引き出すことができる第3世代法を開発した.今年度は特に重なりによる分子軌道の解析法を開発した.

アミロイド線維状と細胞固有プリオンとの電子構造研究

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行,大学院学生(佐藤(文)研) 張 雄
正準分子軌道計算により正常PrPCとアミロイドフィブリルの前半部の電子構造を求めた.Lys111とAsp144付近の原子電荷が重要な変化を示していた.ESPを比較したところ,124-130残基がフィブリルの構造維持に重要な役割を果たしている可能性があることが示唆された.

インターフェロンα2の電子構造研究

大学院学生(佐藤(文)研) 中岡 亮太,教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
インターフェロン(IFN)は,ウィルスなどの侵入に対して細胞が分泌するサイトカインである.IFNα2はI型インターフェロンでヒトでIFNα2b変異体が市販されており,天然と活性に有意な差がある.IFNα2とIFNα2bのアミノ酸配列の変異は1か所だけであり(Lys23Arg),電荷に変化はなく,23番目のアミノ酸残基はIFN受容体の結合部位には存在しない.本研究では,変異体による電子状態の変化が遠方にまで及び活性の違いを与えていると仮説を立てIFNα2の作用機序を電子レベルで解析した.

インターフェロンα2の電子状態に基づく作用機序の研究

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行,大学院学生(佐藤(文)研) 中岡 亮太
インターフェロン(IFN)α2 は 165 残基からなるタンパク質で,アミノ酸配列の 23 番目のみが野生株(IFNα2a)と異なる(Lys23Arg)遺伝子組み換えの IFNα2b が存在する.IFNα2a はインターフェロン受容体(IFNAR2)に結合する.23 番目のアミノ酸は IFNAR2 と直に接しないが,IFNα2b の方がより活性が高いことが知られている.本研究ではこの原因を探るために正準分子軌道計算を行い,変異に伴う電子状態の差異を調べた.静電ポテンシャルや Mulliken 電荷の結果から,Lys23Arg の差異によってクーロン力に利得が生まれる可能性が示唆された.

正準分子軌道法による PETase の活性部位の触媒反応発生における役割に関する研究

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行,大学院学生(佐藤(文)研) 王 天宇
ポリエチレンテレフタラート(PET)を分解できる酵素の一つとしてPETase が知られている.本研究では,PETase の基質特異性と PET 分解反応機構を解明するために,正準分子軌道計算による PETase の電子構造計算を試みた.その結果,PETase の触媒三残基が形成する電子構造を維持し,Serine のヒドロキシル酸素はその求核性を示した.周辺アミノ酸残基は触媒三残基の特徴的な立体構造と電子構造を保護している可能性が示唆された.

海洋センシング

准教授 ソーントン ブレア
Underwater sensing is the raw material of how we perceive the ocean. We aim to improve how the ocean can be observed by investigating the interactions of photons in underwater environments, integrating advanced instrumentation on robotic platforms, and combining this with methods for automated data interpretation. Our group collaborates closely with institutes in the UK, Australia and the USA, and participates in international programs to maximise the global impact of our research and ensure our members can conduct research effectively in an international environment.

CFRP用工具ベンチマーク

准教授 土屋 健介
CFRP用工具について,市場調査と過去の切削試験の知見に基づいて切削試験の評価基準を提案する.

高難易度部材加工プログラムのアルゴリズム提案

准教授 土屋 健介
航空機製造は,ローコストオペレーションとして工程自動化と労働人口減少への代替化技術が日本のモノづくり力として求められている.従来,エキスパートシステムなど熟練作業者の技能の取り込みや過去のデータベース化で最適切削条件等を見出すなどの取り組みがあるが実績を超えるような成果を得られず,製造現場では未だに最適化の切削条件の決定には熟練者の経験に頼っている.そのため切削難度判定に関する要素を抽出し,最適切削条件を選定する手法の確立を目指す.

無補強組積造壁を含むRC造脆弱架構の構造性能に関する実験的研究

教授 中埜 良昭,助教(中埜研) 松川 和人,シニア協力員(中埜研) 芳賀 勇治,大学院学生(中埜研) Adnan S.M. Naheed
途上国でみられる無補強組積造壁を含むRC造脆弱架構の破壊メカニズムと構造性能の検討を目的として,比較的知見が蓄積されているバングラデシュ国での事例を参考に,無補強組積造壁の有無をパラメータとした2層2スパンの骨組試験体を2体作製し加力実験を2018年度に行った.2019~2020年度には無補強組積造壁付き試験体の挙動を再現でき,さまざまな破壊モードに適用可能なマクロモデルの開発を実施してきた.2022年度は,面外挙動を再現できるモデルの開発と,面外方向振動台実験の計画を行った.

Is値が著しく低い旧基準鉄骨造建築物の耐震性能の実力評価と耐震診断への展開

助教(中埜研) 松川 和人,教授 中埜 良昭
旧基準で建設された建築物が地震に対してより脆弱であることは一般にも知られてきているが,なかでも民間の鉄骨造(S造)建築物について,学術的な検討はほとんど行われてきていない.こうした建築物を耐震診断すると,多くの場合,非常に低い数字が算定されるが,地震を受けて崩壊したという報告は少ない.本研究は,そうした「脆弱」と評価される旧基準S造建築物の「実力」を実験実測的に明らかにし,木造やRC造と同様,被害や実性能と対応する性能評価の実現を最終目標としている.

建築・都市計画におけるデザインとエンジニアリングの融合【柏地区利用研究課題】

准教授 本間 健太郎
建築設計や都市計画に役立つ新たなツールを開発するとともに,それを用いた計画と設計を行っている.今年度は,「出発地から目的地までのシームレスな移動を可能にする統合的なバリアフリールート」の計画ツールを開発して,SP調査と経路選択行動モデルに基づいた最大効用をもたらすエレベータ最適配置案を導出した.またVRアイトラッカーによって収集した注視データと建築空間の可視性分析とを組み合わせ,建築空間が歩行者の視覚体験プロセスに与える影響を分析している.

自律システムの連携による海中観測手法【柏地区利用研究課題】

准教授 巻 俊宏
AUV(自律型海中ロボット)と海底ステーション,AUV同士など,複数の自律プラットフォームの連携により新たな海中海底探査用システムを提案する.試作海底ステーション,3台のホバリング型AUV(Tri-Dog 1, Tri-TON, Tri-TON 2)等のテストベッドを用いて,水槽試験,海域試験等により研究開発を進めている.

マイクロ波レーダを用いた海面観測に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 林 昌奎
マイクロ波パルスドップラーレーダを用いる海面観測システムの開発を行っている.海面から散乱するマイクロ波は,海面付近水粒子の運動特性によって周波数が変化し,海面から散乱するマイクロ波の強度には使用するアンテナの特性が含まれる.その特性を解析することで,海洋波浪の進行方向,波高,周期及び位相,海上風の風速と風向,海面高さの情報を得ることができる.相模湾平塚沖での海面観測を行っている.

再生可能エネルギー開発に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 林 昌奎
波力及び潮流のエネルギーを利用する発電システムの開発を行っている.宮城県・松島湾の浦戸諸島において垂直軸型の潮流発電装置のプロトタイプ(5kW)を,岩手県久慈市において振り子式の波力発電装置のプロトタイプ(43kW)を,神奈川県平塚市において高効率波力発電装置(45kW)を開発し,海域実証試験(試験送電)を実施した.実用化を目指した研究開発を続けている.

大型浮体構造物の挙動に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 林 昌奎,教授(日本大) 居駒 知樹,准教授(日本大) 惠藤 浩朗
波浪に起因する浮体式海洋構造物の動揺,弾性変形,波漂流力などを,海洋波浪レーダによるリアルタイム波浪観測技術とエアクッションを用いた浮力制御技術により,制御する方法について研究を行っている.

水槽設備を利用した研究開発【柏地区利用研究課題】

教授 林 昌奎,教授 北澤 大輔,准教授 巻 俊宏,准教授 横田 裕輔
海洋工学水槽及び風路付き造波回流水槽において,海洋環境計測,海洋空間利用,海洋再生可能エネルギー開発,海底資源開発などに必要な要素技術の開発に関連する実験・観測を行っている.

流れ中で回転する水中線状構造物の挙動に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 林 昌奎,教授(日本大) 居駒 知樹,准教授(日本大) 惠藤 浩朗
海洋掘削用ドリルパイプは比較的単純な構造物であるにもかかわらず,作用する流体外力,構造自体の応答特性も一般に非線形である.また,海流など流れを有する海域で作業するドリルパイプには,回転による振動に流れによる振動が加わり,より複雑な応答を示す.これらの問題は,対象となる水深が深くなりパイプが長大になるに従い,強度が相対的に低下したり,水深ごとの流れの流速が変化したりすると,強度設計,安全性確保の観点からより重要になる.

3Dプリンタ等の次世代技術を用いたローコスト住宅のプロトタイピング【柏地区利用研究課題】

教授 今井 公太郎,特任助教(今井研) 久保田 愛,特任研究員(今井研) 伊東 優,特任研究員(今井研) 国枝 歓,大学院学生(今井研) 山口 大翔
近年普及が目覚しい 3D プリント(付加製造技術)と建築デザインの融合による新たな可能性を探求している.具体的には 3D プリンタを用いて仕口(ジョイント)を製作し,大部分の工程をセルフビルド可能な住宅のプロトタイピングを行う.今年度は建造したプロトタイピングを元に,構造的な観点から加速度センサーを用いて計測を行った.

イノベーションのための空間に関する実践的研究

教授 今井 公太郎,准教授 本間 健太郎,特任研究員(今井研) 伊東 優,特任研究員(今井研) 国枝 歓
新たなアイデアを生み出し新たな価値を創造するための空間はどうあるべきかを構想する研究である.今年度は新しい公衆トイレの新たな可能性について実践的に研究しプロトタイプをデザインしている.今年度は設計完了し,工事も完了して,社会実装している.

空間システムの計画手法の研究と建築設計

教授 今井 公太郎,教授 加藤 孝明,特任研究員(今井研) 国枝 歓
新しい空間のシステムを効果的に計画するための手法を考案・研究している.本年度は,防災施設と観光施設の融合した新たな建築タイプとして,伊豆市において地域の防災計画の主幹をなす津波避難複合施設の実施設計監修を行った.

建築・都市計画におけるデザインとエンジニアリングの融合【柏地区利用研究課題】

准教授 本間 健太郎
建築設計や都市計画に役立つ新たなツールを開発するとともに,それを用いた計画と設計を行っている.今年度は,「出発地から目的地までのシームレスな移動を可能にする統合的なバリアフリールート」の計画ツールを開発して,SP調査と経路選択行動モデルに基づいた最大効用をもたらすエレベータ最適配置案を導出した.またVRアイトラッカーによって収集した注視データと建築空間の可視性分析とを組み合わせ,建築空間が歩行者の視覚体験プロセスに与える影響を分析している.

1次元型表面ホログラフィックメモリーの研究

教授 志村 努,大学院学生(志村研) 古山 昂樹,特任研究員(志村研) 平山 颯紀,客員准教授 藤村 隆史,助教(志村研) 田中 嘉人
ホログラフィックメモリーでは,通常は厚い記録媒体を用いる体積型ホログラムを用いるが,これはBragg回折を用いているため,温度変化による膨張収縮に弱い,ディスクへの一括書き込みができないなどの欠点を持っている.これに対し表面型ホログラフィックメモリーは,Raman-Nath回折であるため,ホログラムの膨張収縮があっても読み書きが可能であり,また射出成型やナノインプリントなどによるディスクの一括複製が可能である.我々は1次元ホログラムをディスク表面に記録し,やはり1次元の像を再生することにより,多チャンネルの時系列信号の同時再生を行い,データ転送レートをこれまでの光ディスクに比べ大きく向上することを狙ったシステムの基本原理の解明を行っている.

Decoding of reproduced images of complex-encoded holographic memory using convolutional neural networks

教授 志村 努,研究実習生(志村研) Jianying Hao,客員准教授 藤村 隆史,特任研究員(志村研) 平山 颯紀,助教(志村研) 田中 嘉人
Holographic memory has a higher storage capacity and data transfer rate than conventional bit-by-bit storage techniques due to its 2-dimensional recording and 3-dimensional volume storage. However, conventional holographic memory only uses amplitude to encode information and does not take advantage of the high capacity of holographic memory. With the progress of research, it has become possible to realize complex-encoded holographic memory using both amplitude and phase encoding. Introducing phase to encode information enables higher encoding efficiency and signal-to-noise ratio than traditional amplitude modulation. However, since the phase cannot be detected directly, it must be demodulated from the intensity image. A direct complex amplitude demodulation method from a near-field diffraction image based on deep learning is proposed. By propagating the reconstructed beam for a short distance, the intensity image containing diffraction features related to both amplitude and phase can be obtained. The inverse process from the near-field diffraction intensity image to the complex amplitude light field is divided into intensity-amplitude and intensity-phase inverse problems separately and represented by two convolutional neural networks (CNNs). After training the CNNs with the training dataset (intensity as input and amplitude/phase as outputs), both the amplitude and phase data pages can be retrieved directly from a single diffraction intensity image simultaneously. The verification of the experiment involving the demodulation of 16-level complex amplitude from a single diffraction image during the decoding process of holographic memory has been conducted.

キラルナノ構造の光渦二色性の顕微分光イメージングシステムの開発

教授 志村 努,大学院学生(志村研) 宇都 隆宏,助教(志村研) 田中 嘉人
軌道角運動量(以下OAMと省略する)を持つ光は,スピン角運動量を持つ光(円偏光)に加わる新たな光の角運動量の自由度として,その物理的性質や応用などから近年注目を集めている.特にキラルな物質との相互作用により,OAMのハンドネスに依存した光学的応答,つまり光渦二色性が盛んに研究されている.本研究では,OAMを持つ光の一種であるラゲールガウスビームを導入した顕微分光イメージングシステムを新たに開発し,光との相互作用断面積が大きく,かつシンプルなモードで解析できるプラズモニックナノ構造を対象とした光渦二色性の解明に取り組んでいる.

シリコンメタサーフェスにおける第二高調波発生の研究

教授 志村 努,大学院学生(志村研) 上田 康太郎,助教(志村研) 田中 嘉人,客員准教授 藤村 隆史,特任研究員(志村研) 平山 颯紀
シリコンは通常,その結晶構造の空間対称性のために二次非線形感受率がゼロとなり,したがってシリコン内部で二次非線形光学効果を起こすことはできない.しかしシリコンであっても,表面においては鉛直方向に空間反転対称性が破れ,表面に局在する二次非線形分極が誘起される.その分極による第二高調波発生(SHG)は表面SHGと呼ばれている.本研究では,この表面SHGを利用し,非線形光学材料を用いずシリコンだけでSHGを起こすことを目標にしている.そのために,本来非常に弱い表面SHGを増強する工夫が必要となり,そこでメタサーフェスを利用する.メタサーフェスはメタアトムと呼ばれる光の波長以下の構造を周期的に表面に配列したものである.メタサーフェスにおける表面SHGは配列された各メタアトム表面で発生し,いくつかのメリットがある.まず,微細な凹凸を表面に作るため表面積が増大し,表面でのみ発生する表面SHGも増加すると考えられる.また,メタアトムの構造と配列を設計できるため,表面SHGが増強されるメタサーフェスを人工的に作ることができる.最適な構造を見つけるため,表面SHGをシミュレーションして構造ごとの表面SHGのふるまいを調べている.

フォトポリマーフィルムを用いたホログラフィー応用デバイスの研究【柏地区利用研究課題】

教授 志村 努,リサーチフェロー(志村研) 堀米 秀嘉
フォトポリマーを用いたホログラフィーを応用したシステムの研究を行っている.窓ガラスに貼り付けたホログラムにより,太陽光を窓ガラス内に導光し,ガラス端面に設置した太陽光発電セルに導くことにより,既存の窓ガラスを用いた太陽光発電システム,ホログラフィーの照明光を発生させる光導波型薄型ホログラム素子,等の研究を行っている.また,フォトポリマーの性能評価を行う光学計測システムの構築も行っている.

プラズモニックナノ構造からの第二高調波放射制御

教授 志村 努,大学院学生(志村研) 木村 友哉,助教(志村研) 田中 嘉人
プラズモニックナノ構造による波長変換は,光の回折限界を超えたナノ領域で発生する新奇な非線形光学効果として注目されている.特に第二高調波発生は,線形過程とは全く異なる興味深い放射特性を持つが,ナノ構造表面の粗さに敏感に依存するためその制御は困難だとされてきた.我々は,二次非線形分極とプラズモンモードが空間的に結合可能なナノ構造を用いることで第二高調波の放射パターンが制御可能であることを見出し,この結合プロセスが存在することの実験的な検証を行った.また第二高調波制御の実例として,放射方向を一方向に制限する構造やベクトルビームを生じる構造,さらに円偏光を生じるナノ構造を数値シミュレーションにより設計し,それらの実験的な観測に成功した.また,三回回転対称性を持つ構造を,向きを変えて重ねることで非線形キラル特性という新奇な性質がうまれることを見出し,その検証実験を行った.

メタサーフェスを記録媒体とする多次元光変調ホログラフィックメモリー

教授 志村 努,特任研究員(志村研) 平山 颯紀,客員准教授 藤村 隆史,助教(志村研) 田中 嘉人
表面型ホログラムを記録媒体として利用すると,情報の「高速読み出し・超長期保存・容易な複製」といった特徴をもつユニークな光メモリーが実現できる.サブ波長スケールで適切に微細加工された人工表面構造(メタサーフェス)は,光の位相・振幅・偏光などのさまざまな特性の空間変調が可能であることが知られており,この多次元的な光変調自由度を利用することで記録密度の向上が期待できる.本研究ではシステムの検討・設計理論の構築・メモリー特性の評価を目指して研究を行っており,現段階ではメタサーフェスの光変調特性を定量的に評価可能なシステムの構築を目指している.

体積型ホログラムを用いた小型・広視野角・広アイボックススマートグラス

教授 志村 努,大学院学生(志村研) 中西 美木子
ホログラフィック光学素子を用いて,小型,広視野角,広アイボックス,の3つの条件を全て満たすスマートグラスの実現に向けた研究を行っている.基本となる光学系の考案,設計,多重化ホログラムの露光装置の開発,ホログラムの書き込み条件の最適化,ホログラム材料の特性に合わせた書き込み方法の開発,等を行っている.多重露光したホログラム2枚とスキャンディスプレイを用いて実際のスマートグラスの光学系を製作し,評価を行った.

室温大気中における高速カシミール力計測システムの開発

教授 志村 努,大学院学生(志村研) 紫垣 政信,助教(志村研) 田中 嘉人
1948年にCasimirが存在を予言したカシミール力は,平行に置かれた2枚の導体板間に引力が働く現象として知られている.これまで真空環境下では,高速・高感度でドリフトの影響を受けにくいPLL(Phase Locked Loop)を用いた周波数シフト方式によるカシミール力計測例が多数報告されている.一方,大気中では,空気の流体的なふるまいに起因した流体力学的相互作用力がカシミール力測定のノイズとなるため,PLLを用いた周波数シフト方式ではなく,2つの導体板の振動の位相差からカシミール力と流体力学的相互作用力を分離し計測する方法が用いられてきた.この位相差計測法を用いた高精度な力計測にはロックインアンプの信号積算時間を長くすることが必要不可欠なため,PLLを用いた方式に比べドリフトの影響が大きい.しかし大気中では,空気を介した熱の授受によって真空中よりもドリフトが発生しやすいため,高速なカシミール力計測法の開発が強く望まれている.そこで本研究では,大気中でもドリフトの影響を受けにくいカシミール力計測を実現するため,力変化に対する応答が高速なPLLと,流体力学的相互作用力の低減にむけて導体球のサイズを最適化した球カンチレバーを組み合わせたカシミール力計測システムを開発した.

誘電体メタサーフェスを用いた新規光学デバイスの開発

教授 志村 努,大学院学生(志村研) 元 志喜
近年,独立して再構成可能なユニットセルを持つ動的にプログラム可能なメタサーフェスの実現に向けた取り組みが行われている.動的かつ高速に書き換え可能なメタサーフェスが実現すれば,光の散乱特性をリアルタイムに制御することが可能になる.それらに,人工知能を用いたフィードバックシステムを統合することで,人間の監督や介入なしに光情報物質の制御を行うことが実現できると期待される. 本研究では動的にプログラム可能なメタサーフェスの実装方法を研究し,適用できる波長範囲や変調可能範囲などの性能と限界をシミュレーション及び実験的に調べ,次世代新規光学デバイスとしての応用可能性を検討する.

半導体ナノ構造とテラヘルツ電磁波の相互作用の制御と応用

教授 平川 一彦,助教(平川研) 黒山 和幸,特任研究員(平川研) 長井 奈緒美
半導体量子ナノ構造とテラヘルツ電磁波の相互作用とその応用に関する研究を行っている.特にスプリットリング共振器と呼ばれるテラヘルツ電磁波に対する共振器に近接させた量子ポイントコンタクト構造や量子ドットの電気伝導特性を調べ,テラヘルツ電磁波とナノ構造とが強く結合した系において発現する新しい物理を探索している.

半導体量子構造を用いたテラヘルツ光源・検出器の開発

教授 平川 一彦,大学院学生(平川研) 牛 天野,大学院学生(平川研) 小田嶋 修,民間等共同研究員(平川研) 高橋 和宏,准教授(東京農工大) 張 亜,特任研究員(平川研) 渡辺 宣朗,特任研究員(平川研) 長井 奈緒美
半導体量子構造を用いて,これまで未開拓であったテラヘルツ領域で動作する新規光源,検出器の開拓を行っている.本年度は,MEMSを用いたボロメータについて,(1)p型ヘテロ構造を用いることにより,MEMS共振信号をピエゾ抵抗効果により読み出すことができた.さらにバッファートランジスタを用いなくても,mVオーダーのrf信号を得ることができた.(2)大振幅非線形駆動時に梁内部で起こるモード間結合効果について実験と考察を行い,モード間結合が起きるとモードの振動線幅が大きく減少することを見出すとともに,非線形光学効果における4光波混合のようにパラメトリックな効果が観測されるなど,成果が挙がった.

半導体量子構造を用いた固体冷却素子の開発

教授 平川 一彦,研究員(LIMMS) BESCOND MARC,東京大学特別研究員(平川研) SALHANI Chloe,大学院学生(平川研) 朱 翔宇,特任研究員(平川研) 長井 奈緒美
現代のLSIに代表されるエレクトロニクスの進歩を大きく阻んでいるのが発熱による問題であり,冷却技術は将来のエレクトロニクスの発展の鍵を握る技術と言っても過言ではない.我々は半導体へテロ構造のバンドを適切に設計し,熱電子放出と共鳴トンネル効果を同時に制御して実現できるサーミオニッククーリング技術に注目している.本サーミオニッククーリングにおいては,トンネル障壁を介して量子井戸に低エネルギーの電子が共鳴的に注入され,量子井戸を出るときには低くて厚い障壁を高エネルギーの熱電子が熱的に越えていく過程を用いる素子であり,電流を流すにつれて量子井戸層が冷却されていくデバイスである. 本年度は,(1)非平衡グリーン関数法による数値計算により,構造パラメータと電子温度の関係に関する議論を行っている.(2)量子井戸を複数個直列に接合したより高効率な冷却素子構造を提案し,電子温度を評価した.その結果,バイアス電圧によっては,電子温度の上昇も観測されることがわかった.その機構などは,現在検討中である.

単一原子レベルの超微細加工プロセスと単一分子トランジスタ

教授 平川 一彦,協力研究員(平川研) 杜 少卿,大学院学生(平川研) 田 玥,特任助教(平川研) 相場 諒,教授(東北大) 平山 祥郎,助教(東北大) 橋本 克之,教授(京都大) 村田 靖次郎,助教(京都大) 橋川 祥史
我々は,原子レベルでの金属超微細電極の加工プロセスおよびそれを用いて作製した単一分子トランジスタの伝導の研究を行っている.本年度は,(1)単一水分子を内包したフラーレン分子の伝導特性とテラヘルツ分光の実験に着手し,フラーレン分子に内包された水分子の回転モード・振動モードの観測を行った.その結果,C60分子の中では水分子がオルソとパラ状態間を揺らいでいることが明らかになった.また,強磁場下での伝導も評価したところ,B < 2Tで分子のコンダクタンスがヒステリシスを示すことを見出した.(2)通電断線における臨界電圧の振る舞いから,1個の伝導電子から1個の原子へのエネルギー移動が原子を移動させる主な原因であり,ジュール熱はマイナーな効果しか果たしていないことがわかった.

プラズモン共鳴の応用

教授 立間 徹,特任助教(立間研) 石田 拓也,技術専門職員(立間研) 黒岩 善徳,特任研究員(立間研) イ スンヒョク,大学院学生(立間研) 大場 友貴
局在表面プラズモン共鳴による光応答増強や,光学材料,色材,スマートウィンドウ,センサ等への応用を図る.

プラズモン誘起電荷分離の応用

教授 立間 徹,特任助教(立間研) 石田 拓也,特任研究員(立間研) イ スンヒョク,大学院学生(立間研) 大木 崚我,大学院学生(立間研) 孫 瑞卓,大学院学生(立間研) 薮野 真弥,大学院学生(立間研) 黒木 秀起,大学院学生(立間研) 澤田 直樹
金属ナノ粒子と半導体の界面において,プラズモン共鳴に基づいて電荷分離が誘起される.この現象の光電変換,光触媒,フォトクロミズム,バイオセンサ,ナノファブリケーション等への応用に関する研究を行う.

プラズモン誘起電荷分離の機構解明

教授 立間 徹,助教(立間研) 西 弘泰,特任助教(立間研) 石田 拓也,特任研究員(立間研) イ スンヒョク,大学院学生(立間研) 左 袁,大学院学生(立間研) 亀岡 ゆり
金属ナノ粒子と半導体の界面において,プラズモン共鳴に基づいて電荷分離が誘起される.この現象の機構を解明する.

光機能ナノ材料の開発

教授 立間 徹,助教(立間研) 西 弘泰,特任研究員(立間研) イ スンヒョク,技術専門職員(立間研) 黒岩 善徳,東大研究員(立間研) 長川 遥輝,大学院学生(立間研) 秋山 倫輝
発光デバイス用量子ドット,抗菌・抗ウイルス性光触媒,水素生成光触媒などの開発を行う.

SARS-CoV-2タンパク質の電子状態解析

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
SARS-CoV-2ウイルスの感染は,ACE2にスパイクタンパク質が結合することで始まる.そのため,スパイクタンパク質の阻害剤はCOVID-19の治療薬やウイルス検出剤の候補となりうる.本研究では,ACE2タンパク質のスパイクタンパク質に隣接する領域において正準分子軌道(CMO)計算を行った.60個のアミノ酸残基からなるACE2の計算モデルでCMO計算に基づき,正確な静電ポテンシャルを得ることができた.

密度汎関数法に基づく第3世代カノニカル分子軌道法とQCLO法の開発

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
グリッドフリー法とコレスキー分解法を組み合わせて,スパコンで十分な性能を引き出すことができる第3世代法を開発した.今年度は特に重なりによる分子軌道の解析法を開発した.

アミロイド線維状と細胞固有プリオンとの電子構造研究

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行,大学院学生(佐藤(文)研) 張 雄
正準分子軌道計算により正常PrPCとアミロイドフィブリルの前半部の電子構造を求めた.Lys111とAsp144付近の原子電荷が重要な変化を示していた.ESPを比較したところ,124-130残基がフィブリルの構造維持に重要な役割を果たしている可能性があることが示唆された.

インターフェロンα2の電子状態に基づく作用機序の研究

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行,大学院学生(佐藤(文)研) 中岡 亮太
インターフェロン(IFN)α2 は 165 残基からなるタンパク質で,アミノ酸配列の 23 番目のみが野生株(IFNα2a)と異なる(Lys23Arg)遺伝子組み換えの IFNα2b が存在する.IFNα2a はインターフェロン受容体(IFNAR2)に結合する.23 番目のアミノ酸は IFNAR2 と直に接しないが,IFNα2b の方がより活性が高いことが知られている.本研究ではこの原因を探るために正準分子軌道計算を行い,変異に伴う電子状態の差異を調べた.静電ポテンシャルや Mulliken 電荷の結果から,Lys23Arg の差異によってクーロン力に利得が生まれる可能性が示唆された.

正準分子軌道法による PETase の活性部位の触媒反応発生における役割に関する研究

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行,大学院学生(佐藤(文)研) 王 天宇
ポリエチレンテレフタラート(PET)を分解できる酵素の一つとしてPETase が知られている.本研究では,PETase の基質特異性と PET 分解反応機構を解明するために,正準分子軌道計算による PETase の電子構造計算を試みた.その結果,PETase の触媒三残基が形成する電子構造を維持し,Serine のヒドロキシル酸素はその求核性を示した.周辺アミノ酸残基は触媒三残基の特徴的な立体構造と電子構造を保護している可能性が示唆された.

キラル物質の分光学的性質に関する研究

教授 石井 和之

クロロフィル集合体の磁気光学分光

教授 石井 和之

ソフトクリスタルの光機能に関する研究

教授 石井 和之

ビタミンCバイオイメージング用蛍光プローブの開発

教授 石井 和之

ホモキラリティの起源に関する研究

教授 石井 和之

ポルフィリン・フタロシアニンの光機能化に関する研究

教授 石井 和之

二酸化炭素の電気化学的及び光化学的還元に関する研究

教授 石井 和之

光機能性錯体とナノファイバーの複合化研究

教授 石井 和之

光線力学的癌治療を志向した光増感剤の研究

教授 石井 和之

分子性光触媒の研究

教授 石井 和之

分子性結晶の準安定状態に関する研究

教授 石井 和之

刺激応答性クロミック材料の開発

教授 石井 和之

金属錯体の分光測定研究

教授 石井 和之

半導体量子ナノ構造の制御技術および電子スピンの操作・長距離輸送

客員教授 寒川 哲臣
本研究では,VLS法による半導体ナノワイヤの形状・組成・界面の精密制御ならびに発光波長の制御を行っている.また量子井戸構造における電界または表面弾性波による電子スピンの輸送現象に着目し,特にスピン軌道相互作用に起因する有効磁場の効果の解明を進めている.

トポロジカルフォトニクス

教授 岩本 敏,准教授(慶應義塾大) 太田 泰友,准教授(京都工芸繊維大) 高橋 駿,教授(関西学院大) 若林 克法,教授(筑波大) 初貝 安弘,教授(横浜国立大) 馬場 俊彦,准教授(東北大) 小澤 知己,部門長(電磁材料研究所) 小林 伸聖,主任研究員(電磁材料研究所) 池田 賢司
物性物理学の分野で発展してきたバンドトポロジーの概念を,光の制御に適用することで,新たな現象の発現やそれを活かしたデバイスの実現を目指すトポロジカルフォトニクスの研究を進めている.我々の研究室では,特に集積フォトニクスへの展開を視野に,フォトニックナノ構造を基礎に研究を展開している.バレーフォトニック結晶と呼ばれる構造を用いて急峻な曲げがあっても高効率に伝搬する光導波路や,トポロジーの概念を用いて設計したナノ共振器レーザなどを実現するとともに,トポロジカルフォトニック結晶を用いたスローライトデバイスの提案などの成果を挙げている.また,3次元フォトニック結晶を用いたトポロジカルフォトニクスや,新たな磁気光学材料を用いた一方向性導波路,周波数次元も活用した人工次元トポロジカルフォトニクスに関する研究なども進めている.これらの内容の一部について,筑波大学,関西学院大学,京都工芸繊維大学,横浜国立大学,東北大学,電磁材料研究所との共同研究を進めている.

バンドトポロジー制御による弾性波制御

教授 岩本 敏,教授(筑波大) 初貝 安弘
バンドトポロジーの制御による波動制御は,光だけでなく音波や弾性波,機械振動などにも利用できる.我々の研究室では,バンドトポロジーの概念を活用して固体中を伝搬する弾性波の制御とその応用を目指した研究を進めており,完全フォトニックバンドギャップを有する一次元フォトニック結晶で弾性波のトポロジカル局在状態の実現に初めて成功している.最近では,GHz帯弾性波のオンチップ生成と制御が可能なバレーフォトニック結晶の設計を進めるとともに,その実現を目指し研究を進めている.

フォトニックナノ構造における光のスピン軌道相互作用とその応用

教授 岩本 敏,准教授(慶應義塾大) 太田 泰友
強い光閉じ込めが生じる細線導波路やフォトニック結晶導波路,ナノ共振器などでは,光のスピン軌道相互作用と呼ばれる現象が生じ,局所的な光の偏光状態と光の進行方向や回転方向との相関が生まれる.この効果を用いた光渦やフルポアンカレビームなどのトポロジカル光波を生成するオンチップデバイスや,物質との相互作用も活用した一方向性発光デバイスなどの研究を進めている.

電界制御型量子ドット─フォトニック結晶ナノ共振器融合技術の開発

教授 岩本 敏,教授(大阪大) 大岩 顕,研究員(ルール大ボーフム) Arrne Ludwig,教授(ルール大ボーフム) Andreas D. Wieck,特任研究員(岩本研) Sangmin Ji
電子スピン状態と光子の偏光状態は一対一に対応するため,スピンの持つ量子状態と光子の偏光状態の相互変換は,量子情報の転写・転送を可能にする技術として実現が期待されている技術である.電界制御型量子ドットは電子のスピン状態の高度な制御が可能であり,固体量子ビットを実現し得る系の一つである.本研究では,大阪大学との共同研究により,フォトニック結晶ナノ共振器を用いて電界制御型量子ドットと光の相互作用を増強することで,光子からスピンへの高効率変換を実現することを目指している.これまでに電界制御型量子ドットを導入できるフォトニック結晶共振器を初めて実現するとともに,共振器モードに起因する吸収増強効果の実証に成功している.量子状態の転写に必要な縮退型共振器の検討なども進めている.

高品質フォトニックナノ構造の作製技術開発とその応用

特任教授(東大) 荒川 泰彦,准教授(慶應義塾大) 太田 泰友,教授 岩本 敏
フォトニック結晶を中心とするフォトニックナノ構造の作製技術の深化を図るとともに,それを活用した固体共振器量子電気力学の基礎研究や,ナノ共振器レーザや量子光学デバイスへの応用を目指した研究を進めている.特にGaAs系フォトニック結晶ナノ共振器の高Q値化を目指した技術開発を進めており.世界最高品質の量子ドット−フォトニック結晶ナノ共振器強結合系の実現,時間分解発光測定による真空ラビ振動の観測などの成果を挙げている.その他転写プリント法を用いた量子ドット単一光子源のシリコンフォトニクス光回路等への集積化など,集積量子フォトニクスへの展開を目指した研究も推進している.

量子中継応用にむけたダイヤモンドオプトメカニクス系のシミュレーション

教授 野村 政宏,教授(横浜国立大) 小坂 英男,教授 岩本 敏,特任助教(野村研) キム ビョンギ,特任研究員(野村研) Michele Diego

Ego4D First-Person Video Collection Project

教授 佐藤 洋一,助教(佐藤(洋)研) 古田 諒佑,大学院学生(佐藤(洋)研) 八木 拓真,特任研究員(佐藤(洋)研) Yifei Huang,大学院学生(佐藤(洋)研) 西保 匠,大学院学生(佐藤(洋)研) Zecheng Yu,大学院学生(佐藤(洋)研) 舘野 将寿
ウェアラブルカメラにより得られる一人称視点映像を用いた人物行動のセンシング・理解技術はFirst-Person VisionやEgocentric Visionと呼ばれ,コンピュータビジョンの分野において近年注目を集めている.本プロジェクトは,First-Person Visionの研究開発に広く資することを目指し,Meta AI Labを幹事機関として世界各国の13大学が連携して大規模な一人称視点映像データセットの構築に取り組むものである.

一人称視点映像を対象とした few-shot アクティビティ認識

教授 佐藤 洋一,准教授 菅野 裕介,助教(佐藤(洋)研) 古田 諒佑,研究員(NTT人間情報研究所) 高木 基宏,大学院学生(佐藤(洋)研) 佐藤 禎哉
アクティビティ認識では,データ収集の難しさやアノテーションコストの問題を解決するために few-shot 学習モデルが研究されている.我々は,特に一人称視点映像を対象とした新たな few-shot アクティビティ認識手法の研究開発を目指す.

MaaS時代における安心・安全なモビリティ環境実現に向けた利用状況分析・コンテキスト推定基盤

教授 瀬崎 薫,講師(東大) 西山 勇毅,助教(瀬崎研) 田谷 昭仁,大学院学生(瀬崎研) 笠原 有貴,大学院学生(瀬崎研) 鈴木 凌斗,大学院学生(瀬崎研) 唐 奥,大学院学生(瀬崎研) 董 学甫,大学院学生(瀬崎研) 彭 何林訳,大学院学生(瀬崎研) 牛島 秀暢,大学院学生(瀬崎研) 徐 立強,大学院学生(瀬崎研) 小野 翔多,大学院学生(瀬崎研) 韓 増易,大学院学生(瀬崎研) 松野 有弥,大学院学生(瀬崎研) 大塚 理恵子,大学院学生(瀬崎研) 呂 蘇幸,大学院学生(瀬崎研) 細沼 恵里,大学院学生(瀬崎研) 諸 震,大学院学生(瀬崎研) 荘 昊昱,大学院学生(瀬崎研) 石岡 陸,大学院学生(瀬崎研) 小野寺 文香
MaaSにおいてはサービスの利用者属性,目的地のような従来用いられてきた利用状況に加え,利用者の身体状況など高度のコンテキストを考慮した最適化が求められている.本研究ではセンサを利用し,高度のコンテキストを推定する手法を開発すると共にその応用手法についても包括的に検討を行った.

モバイル・ウェアラブルデバイスを用いたコンテキスト認識と人・集団の行動変容促進

講師(東大) 西山 勇毅,教授 瀬崎 薫,大学院学生(瀬崎研) 韓 増易,大学院学生(瀬崎研) 小野 翔多,大学院学生(瀬崎研) 徐 立強,大学院学生(瀬崎研) 牛島 秀暢,大学院学生(瀬崎研) 董 学甫,大学院学生(瀬崎研) 下条 和暉,大学院学生(瀬崎研) 鈴木 凌斗,大学院学生(瀬崎研) 笠原 有貴,大学院学生(瀬崎研) 小野寺 文香,大学院学生(瀬崎研) 荘 昊昱,大学院学生(瀬崎研) 諸 震
最新のモバイル・ウェアラブルデバイスには複数のハード・ソフトウェアセンサが搭載されている.本研究では,それら複数センサデータの収集・分析基盤の開発と,機械学習等を用いた人・環境のコンテキスト認識技術の研究・開発を行う.さらに,人々のWell-Being実現に向けた,抽出コンテキストの人・集団への情報還元基盤に関する研究も行う.

Tor Hidden Serviceに対するTraffic Confirmation攻撃のためのオーバーレイ通信システム

助教授(警察大学校) 島田 要,教授 松浦 幹太
Tor Hidden Serviceは,匿名通信システムTorを使用したいわゆるダークネットの一部である.具体的には,Torネットワーク上でサーバのIPアドレスを秘匿しながら,そのサーバをホストとするサービスが提供される.一般に,Torやその応用システムで匿名性を低下させる攻撃の種類の一つとして,ある特徴を持つ通信(信号)が攻撃者の観測点で検出されたことを確認することによって通信経路を特定する攻撃(Traffic confirmation攻撃)がある.本研究では,Tor Hidden Serviceに対するTraffic confirmation攻撃において信号の発信者を確認可能とする技術を提案し,同攻撃の強度を高めることに成功した.

ブロックチェーンの安全性を強化し環境負荷を低減する検証証明技術

教授 松浦 幹太,技術専門職員(松浦研) 細井 琢朗
ブロックチェーンのネットワークでは,追記する取引情報の正しさを検証する同じ作業を,多くのノードが様々なフェーズで繰り返し実施する.検証を省略することによって利益を得る確率が高まるため,ノードが検証を省略するインセンティブが生じる.省略を許さない制約を加えると,全体として極めて環境負荷が高くなり,ビットコイン型の実装では欧州の中規模国1国に相当する電力消費にまでなるという試算もあるほどである.本研究では,各取引情報を少なくとも一つのノードが必ず検証し,しかも他のノードが低消費電力でその事実を確認できるメカニズムを提案している.これにより,ブロックチェーンの安全性強化と環境負荷低減を両立することができる.これまでに,実験的評価では,隔離されたノードでの有効性検証に成功した.また,理論的評価では,とくに電子署名の安全性強化に関する新たな知見を得た.

ブロックチェーン匿名通貨のプライバシー解析

大学院学生(松浦研) 宮前 剛,教授 松浦 幹太
ブロックチェーンを用いて構成する暗号通貨では,公開鍵のハッシュ値をID代わりとすることにより,ある程度の匿名性を確保できる.ゼロ知識証明技術を活用してさらに匿名性を高める方法が知られているが,厳密なプライバシーモデルは確立されておらず評価が難しかった.本研究では,送金者や受領者もプライバシーの攻撃者と見なす新しい攻撃体系を定式化した上で,ゼロ知識性の概念を匿名性のモデル化自体に応用して,送金プロトコルの関連付け困難性を容易に証明する手法を提案した.

効率的な紛失評価プロトコルと条件付き秘密開示技術

大学院学生(松浦研) Kittiphop Phalakarn,(国研)産業技術総合研究所 Nuttapong Attrapadung,教授 松浦 幹太
In oblivious finite automata evaluation, one party holds a private automaton, and the other party holds a private string of characters. The objective is to let the parties know whether the string is accepted by the automaton or not, while keeping their inputs secret. The applications include DNA searching, pattern matching, and more. Most of the previous works are based on asymmetric cryptographic primitives, such as homomorphic encryption and oblivious transfer. These primitives are significantly slower than symmetric ones. Moreover, some protocols also require several rounds of interaction. As our main contribution, we propose an oblivious finite automata evaluation protocol via conditional disclosure of secrets (CDS), using one (potentially malicious) outsourcing server. This results in a constant-round protocol, and no heavy asymmetric-key primitives are needed.

動的に不正署名を生成するデバイスを追跡可能な集約署名とその応用

大学院学生(松浦研) 石井 龍,(国研)産業技術総合研究所 照屋 唯紀,(国研)産業技術総合研究所 坂井 祐介,(国研)産業技術総合研究所 松田 隆宏,研究グループ長((国研)産業技術総合研究所) 花岡 悟一郎,教授 松浦 幹太,(国研)産業技術総合研究所/横浜国立大 松本 勉
集約署名は,複数の署名を1 つの署名に集約でき,全体署名長および署名検証時間の短縮という効率性を持つため,センサーネットワークなど多数のユーザやデバイスが署名を送信するシステムでの活用が期待されている.しかし,不正署名を1 つでも含んで集約すると集約署名は不正となり,検証者はどのユーザやデバイスが不正署名を生成したかを特定できない.さらに,上記のセンサーネットワーク等の応用では,多数のデバイスが定期的にデータと署名を送信し,かつ(故障などにより) 不正署名を生成するデバイスが時々刻々と変わることが自然に想定される.本研究では,そのような状況を捉えた追跡可能集約署名のモデルを導入し,その機能的要件と安全性要件の定義を行う.さらに,通常の集約署名とDynamic Traitor Tracing を用いた一般的構成を提案した.また,実応用のパフォーマンス評価を実験的に行い,典型的なIOTシステムで活用するための条件を明らかにした.

匿名レビューシステムの簡潔で自然な構成とその効率的な一般的構成法

大学院学生(松浦研) 林 リウヤ,(国研)産業技術総合研究所 勝又 秀一,(国研)産業技術総合研究所 坂井 祐介,教授 松浦 幹太
匿名レビューシステム(ARS: Anonymous Reputation System) は,電子商取引サイトにおいてユーザが購入した商品に対して匿名でレビューを付けられるシステムである.Blomer らによりグループ署名ベースのモデルで初めて定義され(2015年),その後 El Kaafarani らにより安全性の強化が行われた(2018年).本研究では,以下の3つの貢献により,さらに完成度の高いARSの理論を構成した.1つ目は,ARS の簡潔で自然なモデルの提案である.Blomer らのモデルは,管理者が2種類存在するモデルであったが,彼らのモデルではなりすましや偽造に対する安全性の考慮が不足していた.また,El Kaafaraniらは1つの管理者のみを考えるモデルを提案したが,売買を管理者に委託するため信頼の一極化が生じ,管理者がユーザの購入情報を見られるという問題があった.我々は,これらを防ぐ新たなモデルを提案した.2つ目は,ARS の新たな安全性として Purchase Privacyを定義したことである.3つ目は,ARSの効率的な一般的構成法を示したことである.これにより,アジャイル開発と親和性の高いARSが可能となった.

悪性なスマート契約の分類とその応用に関する研究

大学院学生(松浦研) 五十嵐 太一,教授 松浦 幹太
ブロックチェーンシステムの中で実行されるコンピュータプログラムであるスマート契約は,暗号資産に関する取引を行う際に重要な役割を担うだけでなく,ブロックチェーンの応用を広げる際の安全性維持に大きな影響を与える技術となっている.だからこそ,スマート契約は,しばしば不正なユーザによる攻撃の対象となり,犯罪に利用される事例が発生している.本研究では,攻撃や犯罪に利用される悪性なスマート契約を体系的に分析した.そして,従来知られていた二種類ではなく,新たに詐欺行為を含む三種類に分類すれば攻撃の検知や対策技術の評価に有益であることを示した.

ポジショニングとナビゲーション

准教授 上條 俊介
GNSSのNLOSやマルチパスの問題を解決することで,いわゆるurban canyonにおけるポジショニング精度の改善に関する研究を行っている.また,スマートフォンのジャイロ,磁気センサとの融合により,さらなる精度改善が可能となる.GNSSの精度向上は,カーナビにも応用可能で,自動運転におけるレーンポジショニングにとって重要な要素技術となる. Solving the NLOS and multiple paths problem, positioning accuracy in urban canyon can be drastically improved. Fusion of the information from gyro and magnetic sensors in smart phone can improve the positioning accuracy more. Our GNSS technology is applicable to car navigation systems, and it would be a key technology of lane positioning for autonomous driving.

ロケーションサービスとマーケティングの研究

准教授 上條 俊介
スマートフォンを活用してロケーションに応じた情報を提供するサービスの研究を行っている.また,ロケーションサービスのユーザー行動履歴,操作履歴,SNSを活用することでユーザーの関心を推定するための技術の研究を行っている. The system provides information based on the location which is obtained from smartphone. Also the system analyses the history of user location and manipulation of the smartphone to detect user's interests and intentions.

深層学習を活用した複合的研究

准教授 上條 俊介
深層学習を用いて,スポーツ映像理解や漫画画像変換,シーン理解のための認知フレームワークの研究を行っている.また深層学習の自動ネットワーク生成の研究を行っている. Some researches related to Deep Learning are performed such as sport movie understanding, comic drawing transformation, and cognitive framework for scene understanding. Also, a research on DL network synthesis is performed.

自動運転に関する統合的研究

准教授 上條 俊介
レベル3からレベル5を目指して,物体認識,シーン理解,自車位置推定,デジタル地図の研究を統合的に行っている. Researches are performed tightly coupled and inregrated way among the topics of object detection, scene understanding, self-localization, and High Definition Digital Map toward level3-5 automation.

実社会ビッグデータ利活用のためのデータ統合・解析技術の研究開発

教授 豊田 正史,准教授 吉永 直樹,准教授 合田 和生,大学院学生(豊田(正)研) 金 洪善,特任研究員(吉永研) 佐藤 翔悦,大学院学生(豊田(正)研) 石田 展雅
実社会ビッグデータの様々な利活用を図るべく,実社会から生成されるリアルタイムデータを含む異種データを連携利用するための共通的なデータ統合・解析技術として,インタラクティブな大規模情報の可視化技術と大容量データ格納手法を高度に連携させたデータ格納・可視化技術の研究開発を実施する.

Webマイニングに関する研究

教授 豊田 正史,准教授 吉永 直樹,大学院学生(豊田(正)研) 金 洪善,特任研究員(吉永研) 佐藤 翔悦,大学院学生(豊田(正)研) 赤崎 智,大学院学生(吉永研) 根石 将人,大学院学生(豊田(正)研) 張 翔,大学院学生(豊田(正)研) 清水 洸希,大学院学生(豊田(正)研) 久光 祥平,大学院学生(豊田(正)研) 廖 芸謀
Web情報は大規模かつ多様な情報源であり,ネットワーク分析,自然言語処理を用いた多様なアプリケーションのための解析手法の研究開発を行っている.本研究では,ソーシャルネットワークサービス等のWebメディアにおける情報伝搬分析,新固有表現抽出,対話分析,ソーシャルネットワークにおけるA/Bテスト手法など,様々なWebメディア解析手法を提案した.

自然言語処理による,ことばを介した情報の高度利活用

准教授 吉永 直樹,教授 豊田 正史,大学院学生(吉永研) 根石 将人,大学院学生(豊田(正)研) 大葉 大輔,大学院学生(豊田(正)研) 土屋 潤一郎,大学院学生(吉永研) 蔦 侑磨,大学院学生(吉永研) 王 子晗,大学院学生(吉永研) 中村 朝陽,大学院学生(吉永研) 姚 望,大学院学生(吉永研) 京野 長彦,大学院学生(吉永研) ティヤジャーモン ナッタポン,大学院学生(吉永研) 髙﨑 環,大学院学生(吉永研) 余 练昊,大学院学生(吉永研) 田村 鴻希,大学院学生(吉永研) 李 聖民,大学院学生(豊田(正)研) 苏 为文
ソーシャルメディアとスマートフォンの普及により,誰もがいつでもどこでも情報を発信し共有する時代が訪れている.人々が発信する情報には,これまで記録・公開されることが少なかった個人的な体験や,直接観測することが難しい個人の内面の表出(意見)が含まれ,社会把握や世論分析等への利活用が期待されている.しかしことばで書かれた情報は構造化されておらず,同じ意味内容を記述するのに多様な表現が可能であることから,多くの価値ある情報はテキスト中に「隠れた」状態にある.そこで本研究室では,テキストの内容を理解するための基礎技術や,書かれた情報を実世界と紐付けて構造化する方法論を研究し,その成果を元に文字通り「社会の動きを読む」システムの構築を進めている.

ストレージデバイスの信頼性モデルの構築に関する研究

准教授 合田 和生
磁気ディスクドライブをはじめとするストレージデバイスの信頼性モデルを構築する.

レセプト情報・特定健診等情報データベースを利用した医療需要の把握・整理・予測分析および超高速レセプトビッグデータ解析基盤の整備

准教授 合田 和生,協力研究員(合田研) 佐藤 淳平,特任研究員(合田研) 服部 純子,特任研究員(合田研) 賀好 昭仁,特任研究員(合田研) 山田 浩之
これまで構築してきた高速レセプト・ビッグデータ解析基盤を更に発展させることにより,医療の需要・供給,質,コストが国・地域・医療機関レベルで即座に解析・可視化できる技術を開発する.

動的対故障性を備えたデータベースシステムの構成法に関する研究

准教授 合田 和生,特任助教(合田研) 早水 悠登
問合せ実行時に一部のハードウェアに於いて故障が生じた場合に,それまでの実行結果と新たな実行計画に基づき,当該問合せ実行を継続することを可能とする動的対故障性を備えたデータベースシステムを実現する.

非順序型実行原理に基づく高速データベースエンジンの構成法に関する研究

准教授 合田 和生,特任助教(合田研) 早水 悠登,特任研究員(合田研) 川道 亮治,特任研究員(合田研) 小沢 健史

高エネルギー効率型データベースエンジンの研究開発

准教授 合田 和生,特任助教(合田研) 早水 悠登

高機能ストレージシステムの研究

准教授 合田 和生
ストレージシステムに於いて従来の入出力処理に留まらない高水準のデータ管理機能を実行するためのソフトウェア構成法とその有効性を明らかにする.

健康・医療情報等ビッグデータのための解析基盤の開発と当該基盤を用いた調査分析

准教授 合田 和生
多種多様な医療ビッグデータを集約し解析可能とするデータプラットフォームを開発する.

Faster-than-Nyquist信号処理技術

准教授 杉浦 慎哉
ナイキスト基準で表されるシンボルインターバルの限界を超える高速信号伝送技術であるFaster-than-Nyquist (FTN) 伝送について取り組んでいる.特に,受信機でのシンボル間干渉を許容することにより,周波数帯域を増加させることなく,シンボルレートを向上させることを特徴とする.これまで開発を進めてきたFTN伝送技術を海中音響通信に応用することで,海中音響通信特有の課題である二重選択性の影響を低減できることを明らかにした.また,提案方式のシステムパラメータの設計手法を示した.

知的反射板制御アルゴリズムの開発

准教授 杉浦 慎哉
ミリ波やテラヘルツ波などによるワイヤレス通信では広帯域が利用可能である一方,電波の距離減衰や直進性が高く障害物による遮蔽に弱いため,見通し外通信に不向きであるという欠点がある.反射波の特性を柔軟に制御可能な知的反射板によりこの欠点を克服することが期待されている.本研究では,QoSを保証しながら低消費電力を実現するための制御アルゴリズムを提案した.また,グラフェンを利用した高自由度の知的反射板を開発した.

ユーザに開かれたAI設計のためのインタラクティブ機械学習

准教授 菅野 裕介,大学院学生(菅野(裕)研) 川邊 航,大学院学生(菅野(裕)研) 髙田 篤志,元研究生(菅野(裕)研) 劉 天毅
ユーザが実際に必要とする認識タスクは多種多様であり,事前に学習した認識モデルを適用するだけでは不十分な場合が多い.ユーザ自身が自らの認識タスクを定義・学習し,ユーザに適応したモデルを利用できるようなアプリケーション設計は重要な課題となる.本研究ではこのようなユーザ参加型インタラクティブ機械学習のためのGUI・可視化手法設計,およびアルゴリズム開発を行う.さらに,非専門家向けのワークショップ等の機会を通して,AI技術や機械学習応用研究そのものをより開かれたものにすることを目指す.

市民参加型人工知能研究のためのゲーム化データ収集システム開発

准教授 菅野 裕介,教授 ペニントン マイルス,特任研究員(ペニントン研) 左右田 智美
近年の機械学習・人工知能研究において,多様な訓練データの獲得はモデルの性能や評価の本質に関わる重要な課題になっている.しかしながら,研究コミュニティ外の様々な人々からデータを収集し,より社会にひらかれた人工知能開発を行うのは容易な課題ではない.本研究ではアピアランスベース視線推定を例に取りながら,非専門家である一般の参加者が楽しみながら訓練データの収集に参加し,機械学習・視線推定技術の基礎的なコンセプトに触れる機会を創出するためのゲーム化システムの設計に取り組む.

未知の環境に適応するためのアピアランスベース視線推定モデル学習

准教授 菅野 裕介,大学院学生(菅野(裕)研) 秦 嘉偉,大学院学生(菅野(裕)研) 久留 陽一郎,大学院学生(菅野(裕)研) 呉 天一,元大学院学生(菅野(裕)研) 下山 拓流
機械学習アプローチに基づくアピアランスベース視線手法には,特殊なデバイスを利用する従来手法とは異なり,通常のカメラ画像のみを用いた推定が可能になるという大きな利点がある.本研究では,学習データに含まれない未知の頭部姿勢に対応するための学習手法やデータ生成手法,ドメイン適応手法の開発を通して,多様な環境下で頑健に動作する視線推定モデル学習手法の確立を目指す.

FrontFlow/X(FFX)の開発

教授 加藤 千幸,みずほリサーチ&テクノロジーズ(株) 山出 吉伸,教授(豊橋技術科学大) 飯田 明由,教授(日本大) 鈴木 康方,大学院学生(加藤(千)研) 小幡 研治,大学院学生(加藤(千)研) 毛 興翔
FrontFlow/X(FFX)はLattice Boltzmann法(LBM)による汎用LES解析プログラムであり,複雑形状の流れ場に対して計算格子を完全に自動生成できることに加えて,空力音の直接計算も可能なプログラムである.令和4年度は,平板乱流境界層,および角柱まわりの流れや音の計算を実施し,FFXが十分高い解析精度を有していることを確認した.また,自動車まわりの空力・音響計算を実施し,風洞実験やFFBによる計算結果と同程度の精度で空力特性を予測できることを確認し,音圧スペクトルも定量的に予測できる見通しを得た.

FrontFlow/blue(FFB)の開発

教授 加藤 千幸,みずほリサーチ&テクノロジーズ(株) 山出 吉伸,教授(豊橋技術科学大) 飯田 明由,教授(日本大) 鈴木 康方
FrontFlow/blue(FFB)は有限要素法による,汎用LES解析プログラムであり,実行時の計算メッシュの自動分割機能,および,オーバーセット計算機能を具備しており,FFBによって,ターボ機械をはじめとして,種々の工学的な流れ場の大規模なLES解析が可能となっている.令和4年度は理化学研究所の運用技術部門と連携し,スーパーコンピュータ「富岳」による実用計算における通信時間を短縮し,並列化効率を向上させるための調査研究を実施した.具体的には,「富岳」上の通信経路を決定するランクマップを最適化するアルゴリズムを検討した.

前方ステップまわりの流れと音に関する基礎研究

教授 加藤 千幸,大学院学生(加藤(千)研) 廣瀬 健一,日本大 白須 雄大,教授(日本大) 鈴木 康方,教授(豊橋技術科学大) 飯田 明由
前方ステップまわりの流れは,自動車のAピラーまわりの流れや流れから発生する空力音をモデルしたものであり,風洞実験および数値解析によって,音の発生メカニズムを調査した.風洞実験では,ステップ後方流れの積分長長さスケールを計測するとともに,ステップ高さと主流速度によって定義される無次元周波数で5以上の周波数帯域の音に,主流速度には依存しないモード(ピーク)が現れることを明らかにした.一方,数値解析ではステップまわりの流れを高格子解像度のLES(WR-LES)によって計算し,ステップ角における縦渦の加速(引き伸ばし)とステップ下流の再付着点における渦の変動が主要な音源とであることを明らかにした.さらに,音響計算によって,これらの音源から発生する音を定性的に予測できることを示すとともに,ステップ角における音の散乱効果によって,主流速度に依存しないピーク性の音が発生することを明らかにした.

圧縮性ターボ機械のLES解析

教授 加藤 千幸,大学院学生(加藤(千)研) 塚本 和寛,みずほリサーチ&テクノロジーズ(株) 山出 吉伸
昨年度までに開発したFFBの圧縮性流れ解析ソルバーを用いて,小型ブロアー内部流れの高格子解像度のLES(WR-LES)を実施するとともに,試験モデルを製作し,性能や圧力変動などの,LES計算のための検証データを取得し,計算結果と比較した.その結果,WR-LESによってブロアー性能を定量的に予測できることを示すとともに,計算結果を詳細に分析することによって,主要な損失発生要因を同定した.さらに,低流量時にディフューザに発生する旋回失速も定量的に予測できることを示し,失速セルの構造や失速セルがスクロールケーシングの舌部と干渉したときに大きな圧力変動が発生することを明らかにした.

均質媒体モデルによるキャビテーション流れの数値解析

教授 加藤 千幸,協力研究員(加藤(千)研) 三木 悠也
ポンプや水車などの水力機械においてキャビテーションが発生すると性能が大幅に低下するため,その予測は重要な課題である.本研究では最大24億格子を用いて,翼まわりのキャビテーション流れの大規模なLESを実施し,乱流解析に起因する誤差を最大限排除することによって,従来のキャビテーションモデルの予測精度の限界を明らかにした.さらに,従来のキャビテーションモデルによる数値解析では,キャビテーションが発生している領域において,運動エネルギーの欠損が発生することを示し,それを補償するモデルを提案した.提案したモデルは,キャビテーションの非定常性が高い場合の予測精度には課題が残る.

小型ファンの性能および騒音試験【柏地区利用研究課題】

教授 加藤 千幸,教授(日本大) 鈴木 康方,大学院学生(加藤(千)研) 下河辺 太一
本研究は,小型ファンから発生する空力騒音の予測手法を研究開発し,低騒音ファンの設計指針を確立することを最終的な目標としている.柏地区に設置している試験装置を用いて,検証データを取得するためファンから発生する空力騒音を計測した.また,LES計算によって,自動車のHVACシステムに用いられる多翼遠心ファンの内部流れと発生する音を予測し,実験結果と比較することによって,ファンの性能は定量的に予測できるが,音の予測には音響解析の高度化が必要であるなど,課題が残ることを示した.

細隙部を含んだ遠心ポンプ内部流れのLES解析

教授 加藤 千幸,(株)日立製作所 Romain Prunieres,みずほリサーチ&テクノロジーズ(株) 山出 吉伸,(株)荏原製作所 渡邉 啓悦
WR-LESによって性能試験の代替えができることを実証することを目的として,バランスピストンやウエアリングなどの細隙部流路も含めた,遠心ポンプのLES計算を実施している.これまでの調査研究によって,細隙部流路の計算メッシュのアスペクト比を適切な値に保つことが,LES計算の精度ならびに安定性の確保のために重要であることを明らかにした.これらの知見に基づき計算メッシュを改良し,LES計算を実施した.その結果,設計点におけるポンプの全揚程は約4%過大評価されるが,漏れ流量や軸スラストも含めて,ポンプの水力性能を定量的に予測できることを示した.

CFRP製ジェットエンジンファンブレードの開発

教授 吉川 暢宏,大学院学生(吉川(暢)研) 佐原 由香
CFRP製ファンブレードの長期信頼性を確保するためCFRP材料の疲労強度評価手法を開発している.樹脂と炭素繊維を区分するミクロスケールシミュレーションにより,樹脂の局所的応力上昇を的確に評価することで疲労寿命が予測できることを,積層CFRP試験片を用いた疲労試験により確認した.本年度は特に低サイクル疲労に関する検討を行った.

ミクロスケール強度基準に基づく短繊維熱可塑性CFRP部材の強度評価

教授 吉川 暢宏,特任研究員(吉川(暢)研) 小笠原 朋隆
短繊維熱可塑CFRP材料の強度評価手法を開発している.ランダムに配置された短炭素繊維の状況を把握するためX線CTにより撮像された画像から内部構造を構築するための画像処理技術を開発した.作成された内部構造の3次元モデルに基づく強度評価手法を樹脂の材料非線形強度モデルを導入して検討した.現実的なマクロ破壊モデルを構築するための統計的強度モデルを検討し,最弱リンクモデルではなく並列モデルで破壊強度が設定できることを確認した.成形時に樹脂に発生する残留応力を評価し,疲労寿命に与える影響を検討した.

宇宙輸送機用低温液化燃料タンクの開発

教授 吉川 暢宏,特任研究員(吉川(暢)研) 小笠原 朋隆
CFRP製極低温液化燃料タンクの実用化のため,マイクロクラック発生メカニズムをミクロスケール有限要素解析により解明する.正確な樹脂物性を入力して極低温により発生する熱負荷を与えて,炭素繊維間の樹脂に発生する力学場を解析する.実験との照合によりシミュレーションの妥当性を検証する.

機械学習を利用した高圧水素容器の最適設計

教授 吉川 暢宏,特任教授 竹本 真一郎
設計変数が膨大な炭素繊維強化プラスチック製の高圧水素容器について,最適設計を効率よく探索するための機械学習の活用法を検討している.炭素繊維強化プラスチック層の積層構成や容器の形状を適切にパラメータ表記し,パラメータをランダムに変動させて機械学習用の有限要素モデルデータを生成する.メゾスケール有限要素解析により,個々の設計の破裂圧力を正確に予測して機械学習データに加え,軽量最適設計を探索するアルゴリズムを開発した.

熱可塑複合材料の製造プロセスシミュレーターの研究開発

教授 吉川 暢宏,特任研究員(吉川(暢)研) 小笠原 朋隆
熱可塑炭素繊維強化複合材料の強度信頼性評価を,製造プロセス段階にまで立ち入って的確に評価するためのシミュレーションシステムを開発している.ミクロスケールでの炭素繊維と樹脂の複合システムとしての加工特性をシミュレーション可能なように,樹脂の温度依存非線形材料特性を直接的に導入した.マルチスケール展開によりマクロな加工特性を導出し,実部品の熱可塑プレス成形プロセス中に発生する不整を評価可能にした.ファイバステアリング技術への適用のため,Automated Tape Laying時の温度とひずみ計測結果を用いてバリデーションを行った.

高圧水素用タイプ3繊維強化プラスチック製蓄圧器の疲労寿命評価法の開発

教授 吉川 暢宏,技術専門職員(吉川(暢)研) 針谷 耕太,特任研究員(吉川(暢)研) キム サンウォン
水素社会を支える基盤インフラである水素スタンド用蓄圧器で活用されるタイプ3炭素繊維強化複合容器の最適設計のため,圧力サイクルに対する的確な寿命予測を行うための有限要素解析手法を開発している.フィラメントワィンディングされた炭素繊維強化プラスチックの積層構成を正確にモデル化するためのソフトウエアFrontCOMP_tankを開発した.詳細な有限要素解析によりアルミ合金ライナーの疲労強度予測の枠組みで寿命予測が可能であることを実証した.また自緊処理により発生する圧縮残留応力により延長される圧力サイクル寿命のメカニズムを検討している.

デバイス信頼性評価のための拡張型原子間ポテンシャルの開発

教授 梅野 宜崇
デバイス材料の信頼性評価のための高精度な原子モデリング手法の確立を目的として,電子状態の影響などを考慮し環境非依存性に優れた拡張型原子間ポテンシャルの開発に取り組んでいる.

ポリマー変形および破壊のマルチスケールモデリング

教授 梅野 宜崇
ポリマーの変形・破壊に及ぼす分子構造の影響を明らかにするための粗視化分子動力学モデリング,粘弾性体に特徴的な破壊挙動の解明のための有限要素モデリング法の研究を行っている.

固体結晶の理想強度に関する第一原理および原子モデル解析

教授 梅野 宜崇
材料強度の本質に迫るため,原子間結合の特性が支配する固体結晶の理想強度(理論強度)について密度汎関数理論第一原理計算および原子モデル解析(分子動力学法)による評価を行っている.

材料の原子レベル構造不安定性の研究

教授 梅野 宜崇
特にナノレベルにおける構造不安定現象を本質的に理解することを目的として,原子レベル構造不安定モード解析法を提唱し,様々なナノ構造体の変形・破壊現象の解明に取り組んでいる.

深層学習によるマルチフィジックス原子モデリング法の開発

教授 梅野 宜崇
深層学習を応用した,原子構造の変化による電子状態変化を高速に求めるためのシミュレーション法の開発を行っている.

CT画像からの3次元血管形状自動抽出手法,血管形状編集手法の開発

教授 大島 まり,受託研究員(大島研) 小林 匡治,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹,リサーチフェロー(大島研) 早川 基治,リサーチフェロー(大島研) 庄島 正明,講師(東大) 保科 克行,大学院学生(大島研) 陳 琰
CTのスライス画像を重ねて3次元血管形状を構築する際には,近接血管がくっついて認識してしまうことがあるほか,CT解像度程度の細い血管が分岐することに起因する血管の突起など,セグメンテーション処理において医学的知見に基づいて手動で補正しなければならない.また,動脈瘤が出現する過程を考察するため,動脈瘤を除去した血管形状をセグメンテーション領域に対して手動で編集する必要がある.本研究ではそれらの作業を自動で行うことのできるアルゴリズムの開発を目指す.

Image-Based Simulationにおける脳血管形状の血行力学に与える影響の考察

教授 大島 まり,大学院学生(大島研) 陳 琰,受託研究員(大島研) 小林 匡治,リサーチフェロー(大島研) 庄島 正明,リサーチフェロー(大島研) 高木 清,リサーチフェロー(大島研) 早川 基治,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹
重大な脳血管疾患であるクモ膜下出血に対して,その主要因の脳動脈瘤の破裂に関連する手術ガイドライン作成が求められている.そこで,本研究では脳血管の血流を数値シミュレーションし,動脈瘤の発生,破裂のメカニズムの解明を目指している.シミュレーションに用いる3次元血管モデルについて,医用画像から血管抽出および,3次元構築の手法の問題点と解決法を検討する.さらに,モデルの中心線を抽出することにより形状をパラメータ化し,モデルをパラメトリックに変形して血管形状の血行力学に与える影響を考察する.

Willis動脈輪における血管形状のパラメータ化と形状分析

教授 大島 まり,大学院学生(大島研) 陳 琰
血管内の壁面せん断応力(WSS)は,血管内皮細胞に直接作用を及ぼし,血管疾患の発生に関係する血行力的因子である.WSSは,血管形状に大きく影響される.本研究は,61例のMRA画像(Brain Vasculature database, BraVa)と9例のCT画像から抽出した脳部動脈血管スケルトンデータを対象とし,曲率とねじれ率からなる三次元形状パラメータを用いて血管形状の特徴を分析する.また,データ駆動型のアプローチにより,動脈瘤・狭窄症が起こりやすい脳主幹動脈形状の主成分分析を行う.

デジタルホログラフィック計測によるマイクロ混相流動現象の3次元計測

教授 大島 まり,技術専門職員(大島研) 大石 正道
血液診断チップに代表されるマイクロ流体デバイスは,多くの利点から普及が期待されているものの,デバイス内で起きている3次元的で複数の物理現象が重複した流れを定量的に計測する手法が確立されていないことが,実用化に向けた障害となっている.本研究では,対象の3次元情報を2次元のホログラム画像に記録できるデジタルホログラフィック顕微鏡(DHM)を用いて,これらマイクロスケールにおけるマルチフィジックス現象の定量的な計測を目指す.特に,本計測手法を用いて,マイクロ流体デバイスで頻繁に用いられるマイクロ液滴の生成・流動挙動計測を行う.

マイクロ3次元光造形法の開発

教授 大島 まり,技術専門職員(大島研) 大石 正道
本研究では,赤血球のマイクロ挙動解明に向けたモデル実験に用いる,3次元特殊形状マイクロビーズの造形を念頭においた,マイクロ流路内に複雑な3次元形状の構造物を高速造形する手法の開発を目的とする.本手法で作成する赤血球モデルの混相流計測を行うとともに,本手法が持つ高速性,製作精度,生産性,造形できる形状および機能の自由度の高さといったアドバンテージを生かし,マイクロ流体デバイスの開発手法に強力な造形ツールとして提案する.

モデリング及び可視化機能のある統合的血流1D-0Dシミュレーションシステムの開発

教授 大島 まり,受託研究員(大島研) 小林 匡治,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹,リサーチフェロー(大島研) 早川 基治,大学院学生(大島研) 陳 琰
血流1D-0Dシミュレーションは,手術効果予測・評価のために行われる.全身動脈の血流状態を直感的に把握するには,シミュレーション計算に使われる患者固有医療画像データだけでなく,統計データも取り入れて,人体の全身循環網を3次元に構築し,可視化する必要性がある.本研究は,統計データに基づいて全身の主な動脈の3次元モデルを構築し,deformable modelの手法により患者固有形状モデルと連結させて,その上にシミュレーション結果を可視化する.また,仮想手術と想定する,システム上でインタラクティブに血管径を調整し,1D-0Dシミュレーションに使うインプットファイルを作成する機能もモジュールに取り入れる.

上顎骨の後上方移動術前後における鼻呼吸機能の流体解析

教授 大島 まり,研究実習生(大島研) 青柳 美咲
不正咬合や咀嚼機能の改善に顎顔面領域の外科治療が多く行われており,主として咬合関係や顔貌形態を基準に手術計画が作られる.しかし,術後に気道形態が変化することが指摘され,睡眠時無呼吸症候群などの呼吸障害が生じるおそれがある.上顎骨の移動が呼吸に与える影響は大きく機能的評価が必要であるが,上顎骨後上方移動に伴う鼻腔,咽頭部の変化に関する報告は認められない.そこで,医用画像から気道の3次元モデルを構築し,上顎骨後上方移動を伴う顎矯正手術が鼻呼吸機能に与える影響を機能的に明らかにすることを目的に解析を行っている.

下肢動脈の血管ステント挿入時の血流解析

教授 大島 まり,リサーチフェロー(大島研) 早川 基治,大学院学生(大島研) Chen Wang
Unlike the straight model, the curved helix model will occur secondary flow performance at the curved part of the vessel, which will affect the local wall shear stress and oscillatory shear index distribution, to further investigate on how the shape of the curved helix would affect the flow performance inside the targeted artery, we try to design helix models with different combinations of curvature and torsion and simulate cases using Openfoam and compare the results to the reference straight model.

多波長共焦点マイクロPIVによるマイクロ混相流の可視化計測

教授 大島 まり,技術専門職員(大島研) 大石 正道
近年,発展の目覚しいマイクロTASの分野においては,混合や分離,化学反応,運搬といった様々な機能を,微少流体の正確な操作により実現することを目的としている.主なアプリケーションとして,マイクロ液滴を用いたデッドボリュームの少なさによる混合や反応の高速化,生体細胞やDNAを内包しての運搬などが開発されている.これら主な機能を果たすのは液滴や固体粒子が混在する液液混相流もしくは固液混相流である.そのため,マイクロスケールにおける各相の相互作用の解明が重要である.本研究では本研究室で開発された共焦点マイクロPIVの技術を応用し,マイクロ混相流の計測が可能な2波長分離ユニットを組み込んだ.これにより,マイクロ液滴の内部および外部流速の同時計測や,マイクロジャンクションにおけるwater in oil液滴生成機構の計測,マイクロビーズを含む固液混相流の計測を行っている.

大動脈瘤への形状パラメータの影響

教授 大島 まり,研究実習生(大島研) 中島 嘉春
曲率・捩率を基本とした形状パラメータのWSSへの影響を調べることで動脈瘤形成部位の予測を目指す.

機械学習による代理モデルを用いた脳循環シミュレーションの不確かさ解析

教授 大島 まり,リサーチフェロー(大島研) 早川 基治,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹,大学院学生(大島研) 大囿 勇也
血流シミュレーションによる予測結果の信頼性を評価するには,医用計測データに基づいて設定したモデルパラメータの不確かさが,予測結果に及ぼす影響を定量化する必要がある.そのためには,不確かさ範囲内の異なる条件でシミュレーションを繰り返し,結果の統計量を得る必要があるが,計算規模が必然的に大きくなることから,医療現場での実施が難しいという問題点がある.そこで本研究では,深層学習を活用し,従来の血流シミュレーションと同等な予測を高速で行う代理モデルを作成した.これにより,不確かさ解析をデスクトップPCにて数分で実施可能にした.

粒子法による液滴の滴下挙動再現と定量的評価

教授 大島 まり,技術専門職員(大島研) 大石 正道,リサーチフェロー(大島研) 向井 信彦,研究実習生(大島研) 夏目 拓也
脳動脈瘤の破裂によって引き起こされるクモ膜下出血への予防術式として,海外では液体を用いて瘤内を塞栓する液体塞栓術も用いられており,歪かつ巨大な脳動脈瘤に対応可能であることから今後は有力な術式と期待されている.しかしながら,液体塞栓術は塞栓材が瘤外へ流出して健常な血管も塞栓する危険性があるため,国内では未認可である.我々は,粒子法を用いて液体塞栓術への応用を目的とした塞栓材注入シミュレーションを開発し,物理実験と比較することで精度の検証を行ってきた.しかしながら,これまでのシミュレーションで形成された液滴は物理実験のような滴下の挙動を再現できていなかったため,物理実験との比較による定量的な精度検証はできていなかった.そこで,界面張力モデルとしてポテンシャルモデルを用いることで,シミュレーションでも液滴の滴下挙動を再現し,物理実験との比較により液滴挙動の定量的評価を行った.本手法の適用により,液滴の滴下挙動が再現でき,また,滴下時刻は若干異なるが形成過程は物理実験とほぼ一致していることを確認した.

脳循環の末梢血流を考慮した数理モデルの構築

教授 大島 まり,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹,大学院学生(大島研) 祇園 真志
末梢部の流れを考慮した脳循環のモデルを構築することを目的とし,末梢部の側副血行の影響を調べた.

脳血管モデルが血行動態に与える影響の評価

教授 大島 まり,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹,大学院学生(大島研) 大囿 勇也
医療計測データに基づく不確かさを含めた血流シミュレーションは,過灌流リスクを非侵襲的に評価することが可能であるが,医療現場での利用には多数の実症例で妥当性を検証することが必要である.本研究ではより多数の症例におけるシミュレーションを実施し,予測精度の検証と向上を図る.

腹部大動脈瘤におけるステントグラフトの3次元形状の経時変化の定量化

教授 大島 まり,受託研究員(大島研) 小林 匡治,教授(東大) 高木 周,大学院学生(東大) 根元 洋光,講師(東大) 保科 克行
腹部大動脈瘤におけるステントグラフトを用いた血管内治療は,開腹手術に比べて患者への負担が小さいため広まっている.一方で,ステントグラフトのマイグレーションに起因した有害事象が発生しており,原因調査や対策が研究されている.本研究は,医用画像から得られたステントグラフトの中心線を抽出し,曲率や捩れ率等の形状パラメータとして定量化することで,ステントグラフトのマイグレーションによる有害事象の予兆を定量的に把握するための手法を開発する.医用画像から得られた中心線は画像ノイズを持つため,ペナルティ項付のスプラインフィッティング手法を適用することで,曲線の特徴を消さない平滑化を行う.

腹部大動脈瘤に対する薬剤の挙動解析

教授 大島 まり,講師(東大) 保科 克行,リサーチフェロー(大島研) 向井 信彦,研究実習生(大島研) 夏目 拓也,大学院学生(東大) 福原 菜摘,大学院学生(大島研) 渕 将徳
腹部大動脈瘤に対する治療法として薬剤投与が有効であると考えられており,その臨床化に向けて薬剤ミセルの滞留メカニズムを明らかにする.

色収差を利用した3次元マイクロ速度場計測法の開発

教授 大島 まり,技術専門職員(大島研) 大石 正道,リサーチフェロー(大島研) 向井 信彦
本研究では,共焦点マイクロPIV(Particle Image Velocimetry:粒子画像流速測定法)の欠点であった3次元計測に向けて,クロマティック(色収差)レンズを利用した,3次元マイクロ速度場計測法の開発を行っている.本手法は面倒なキャリブレーション作業を必要とせず,シンプルな機器構成で実現できるアドバンテージがあり,従来の手法よりも高倍率・高解像な計測が可能である.本手法においては光学設計とともに高精度な画像処理技術と3次元速度算出アルゴリズムの開発が重要な要素である.

血管内皮細胞骨格の三次元画像再構築と骨格配向・密度の定量評価

教授 大島 まり,研究員(大島研) 山本 創太,技術専門職員(大島研) 大石 正道,研究実習生(大島研) 慶田 真弘
画像解析ソフトImageJによりアクチンフィラメントの画像の三次元再構築を行い,密度変化を測定した.また,繊維配向プログラムより骨格配向を測定し,壁面せん断応力の影響による配向の変化を考察した.

SARS-CoV-2タンパク質の電子状態解析

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
SARS-CoV-2ウイルスの感染は,ACE2にスパイクタンパク質が結合することで始まる.そのため,スパイクタンパク質の阻害剤はCOVID-19の治療薬やウイルス検出剤の候補となりうる.本研究では,ACE2タンパク質のスパイクタンパク質に隣接する領域において正準分子軌道(CMO)計算を行った.60個のアミノ酸残基からなるACE2の計算モデルでCMO計算に基づき,正確な静電ポテンシャルを得ることができた.

密度汎関数法に基づく第3世代カノニカル分子軌道法とQCLO法の開発

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
グリッドフリー法とコレスキー分解法を組み合わせて,スパコンで十分な性能を引き出すことができる第3世代法を開発した.今年度は特に重なりによる分子軌道の解析法を開発した.

アミロイド線維状と細胞固有プリオンとの電子構造研究

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行,大学院学生(佐藤(文)研) 張 雄
正準分子軌道計算により正常PrPCとアミロイドフィブリルの前半部の電子構造を求めた.Lys111とAsp144付近の原子電荷が重要な変化を示していた.ESPを比較したところ,124-130残基がフィブリルの構造維持に重要な役割を果たしている可能性があることが示唆された.

インターフェロンα2の電子構造研究

大学院学生(佐藤(文)研) 中岡 亮太,教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
インターフェロン(IFN)は,ウィルスなどの侵入に対して細胞が分泌するサイトカインである.IFNα2はI型インターフェロンでヒトでIFNα2b変異体が市販されており,天然と活性に有意な差がある.IFNα2とIFNα2bのアミノ酸配列の変異は1か所だけであり(Lys23Arg),電荷に変化はなく,23番目のアミノ酸残基はIFN受容体の結合部位には存在しない.本研究では,変異体による電子状態の変化が遠方にまで及び活性の違いを与えていると仮説を立てIFNα2の作用機序を電子レベルで解析した.

インターフェロンα2の電子状態に基づく作用機序の研究

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行,大学院学生(佐藤(文)研) 中岡 亮太
インターフェロン(IFN)α2 は 165 残基からなるタンパク質で,アミノ酸配列の 23 番目のみが野生株(IFNα2a)と異なる(Lys23Arg)遺伝子組み換えの IFNα2b が存在する.IFNα2a はインターフェロン受容体(IFNAR2)に結合する.23 番目のアミノ酸は IFNAR2 と直に接しないが,IFNα2b の方がより活性が高いことが知られている.本研究ではこの原因を探るために正準分子軌道計算を行い,変異に伴う電子状態の差異を調べた.静電ポテンシャルや Mulliken 電荷の結果から,Lys23Arg の差異によってクーロン力に利得が生まれる可能性が示唆された.

正準分子軌道法による PETase の活性部位の触媒反応発生における役割に関する研究

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行,大学院学生(佐藤(文)研) 王 天宇
ポリエチレンテレフタラート(PET)を分解できる酵素の一つとしてPETase が知られている.本研究では,PETase の基質特異性と PET 分解反応機構を解明するために,正準分子軌道計算による PETase の電子構造計算を試みた.その結果,PETase の触媒三残基が形成する電子構造を維持し,Serine のヒドロキシル酸素はその求核性を示した.周辺アミノ酸残基は触媒三残基の特徴的な立体構造と電子構造を保護している可能性が示唆された.

大規模計算機工学

客員教授 小野 謙二
大規模な計算機資源を利用して多数のシミュレーションを行い,それらの複数の計算結果から有用な設計情報を得るキャパシティコンピューティングにおいて,ロバスト設計,最適化,不確かさの定量化などに関する研究を行っている.

インクジェット印刷技術の最適化

准教授 長谷川 洋介

乱流輸送現象の最適制御

准教授 長谷川 洋介

太陽熱利用のためのふく射制御

准教授 長谷川 洋介

熱流体システムにおける形状/トポロジー最適化に関する研究

准教授 長谷川 洋介

血行力学因子に基づく生体内毛細血管網形成プロセスの数理モデル構築

准教授 長谷川 洋介

限られたセンサ情報に基づく熱流動場の推定

准教授 長谷川 洋介

鉄筋コンクリートの力学特性に関する研究

准教授 長井 宏平
鉄筋コンクリート構造物の耐力や疲労寿命,損傷部材の補修補強,付着定着など,主に構造特性の観点からの研究を実施している.

鉄筋コンクリートの微細構造解析

准教授 長井 宏平
三次元微細構造解析プログラムを独自に開発し,構造力学特性や腐食による損傷,コンクリートの体積変化によるひび割れの発生や進展のシミュレーションを実施している.

マイクロ2相流の基礎研究

教授 鹿園 直毅
将来のエネルギー問題を解決する上で,エクセルギー損失の小さい低温度差の熱機関であるヒートポンプや蒸気エンジンへの期待は非常に大きい.一方で,競合技術である燃焼式の給湯器やエンジンに比べ大型・高価であることが課題である.極めて細い冷媒流路を用いることで,ヒートポンプや蒸気エンジン用熱交換器の大幅な小型軽量化が実現できるが,本研究では,そのために必要となる超薄液膜二相流の基礎的な現象理解を進めている.具体的には,共焦点レーザー変位計を用いたマイクロチャネル内の薄液膜厚さの測定およびそのモデリング,マイクロチャネルを利用した高性能蒸発器の限界熱流束の研究等を行っている.

SiCの溶液成長界面のリアルタイム観察

准教授 吉川 健,助教(東北大) 川西 咲子,大学院学生(吉川(健)研) 金城 海音
高品質SiC結晶の育成へ向け,高温下で合金溶液から成長するSiCの成長界面のリアルタイム観察を行い,界面でのナノオーダーの結晶ステップの動的挙動を観測し,各種欠陥の挙動との相関性を調査する.

SiC溶液成長溶媒の最適化研究

准教授 吉川 健
高品質SiC結晶の高速溶液成長に用いる溶媒組成の最適化のため,熱力学的検討ならびに界面平滑性評価検討を実施する.

ナノ粒子─レーザー応用半導体結晶の高速液相エピタキシー

准教授 吉川 健,大学院学生(吉川(健)研) 岡本 和樹
ナノ粒子の有するGibbs-Thomson効果とレーザーの局所照射を応用し,ナノ粒子分散溶媒から半導体結晶Cのエピタキシャル層の高速成膜を検討する.

溶融含浸法によるSiC/SiCの製造プロセスに関する研究

准教授 吉川 健,特任研究員(吉川(健)研) 江阪 久雄
軽量・高温動作用構造材料として注目を集めるSiC繊維強化SiC基複合材料の,反応性溶融シリコン含浸による製造法について,その場観察と有限要素法解析により,高効率プロセス開発を行う.

Ta-Te系正12角形準結晶の作製

教授 枝川 圭一
2次元層状物質の一種であるTa-Te系正12角形準結晶は,現在のところ唯一の遷移金属−カルコゲン系の準結晶であり,単位層がファンデルワールス力を介して12回軸方向に積層した構造をもつ.この物質は機械的剥離による薄片化が可能で,純粋2次元系準結晶として興味深い研究対象となり得る. しかしながら,試料作製が比較的困難なため,物性測定が可能な単相かつ十分なサイズの試料の作製方法が確立されていない.本研究では物性測定を行うための良質なTa-Te系準結晶を得ることを目的に,焼結法によるTa-Te系準結晶の作製方法を探索している.

トポロジカル絶縁体中転位を利用した新規高性能熱電変換材料の開発

教授 枝川 圭一
近年,エネルギー問題解決のため,高性能熱電変換材料の開発に対する社会的要請は,益々強くなってきている.ここ数年来「トポロジカル絶縁体」とよばれる新しいタイプの物質が物性物理分野で大きな注目を集めている.これはバルク内部では絶縁体であるのに対し,表面が極めて高い伝導度の金属状態となるものである.最近,このような金属状態は表面だけではなく内部の転位に沿っても生じ得ることが理論的に示された.これを使えば熱電変換材料の性能指数(ZT値)を飛躍的に上げることができる可能性がある.本研究は,この理論を世界で初めて実験的に検証し,従来材料の性能をはるかに上回る性能指数ZT=4の熱電変換材料を実現することを目的としている.

準結晶のフォノンーフェイゾン結合

教授 枝川 圭一
準結晶には,その構造秩序の高次元性を反映して,通常の変位(フォノン変位)の自由度の他にフェイゾン変位の自由度が存在する.準結晶の弾性論はそれら両方の自由度を組み入れた形で定式化される.そこで導かれるフォノン−フェイゾン結合弾性については研究例が非常に少ない.以前,我々は近似結晶を用いて結合定数を見積もったが,その値が準結晶でも正しいという保証はなかった.本研究は,準結晶に圧縮応力を負荷してフォノン歪を与え,自発的に導入されるフェイゾン歪を測ることにより,結合弾性定数を評価することを試みた.

準結晶の特異な高温比熱

教授 枝川 圭一
結晶とは異なる特異な秩序構造をもった「準結晶」の比熱が高温域において通常の物質が従うデュロン=プティ則に従わないことが実験的に示されている.この事実が準結晶の高次元性を反映したものであるか否かについては議論が分かれている.我々は,実験・計算の両面から準結晶の特異な高温比熱の起源を解明することをめざしている.

再生可能エネルギーを活用した建築エネルギー設備の性能実験・制御実験【柏地区利用研究課題】

教授 大岡 龍三,准教授 菊本 英紀

建築室内熱環境・空気環境に関する実験【柏地区利用研究課題】

教授 大岡 龍三,准教授 菊本 英紀

チタン製品の革新的高効率製造技術の開発

教授 岡部 徹,講師 大内 隆成,助教(岡部(徹)研) 上村 源
最先端のチタンの脱酸技術である“極低酸素ポテンシャル(極低pO2)制御技術”をチタン粉末の焼結法に応用し,安価なチタン粉末から高品質なチタン製品を効率良く製造する革新的な手法を開発する.

物理選別を利用した貴金属の高効率回収法の開発

教授 岡部 徹,講師 大内 隆成,リサーチフェロー(岡部(徹)研) 谷ノ内 勇樹,大学院学生(岡部(徹)研) Sukho Kang
経済的価値の高い金属である貴金属(金,銀,白金族金属)は,その鉱石品位が非常に低い.したがって,触媒や電子機器などの各種スクラップから貴金属をリサイクルすることが重要となるが,現時点ではスクラップから貴金属を濃縮する効率の良いプロセスが開発されていない.本研究では,無電解めっきなどの表面処理と磁力選別などの物理選別を組み合わせ,貴金属を低コストかつ高効率で濃縮する新規プロセスの開発を行っている.

貴金属およびレアメタルの高効率回収法の開発【柏地区利用研究課題】

教授 岡部 徹

貴金属の新規な高効率溶解法の開発

教授 岡部 徹,講師 大内 隆成
自動車排ガスの世界的な規制強化により白金族金属を含む排ガス触媒の需要が急増している.白金族金属を含む貴金属は,原料となる鉱石の品位が非常に低いため,金属生産には大きなコストがかかるだけでなく,地球環境に多大な負荷を与える.このため,触媒などのスクラップから高い収率で貴金属を回収することは重要な課題であるが,現時点では効率の良いプロセスは開発されていない.本研究室では,合金化処理と塩化処理を組み合わせることにより,強力な酸化剤を含まない溶液を用いて貴金属を溶解・回収する環境調和型の新プロセスを開発している.

酸化チタンの直接還元法による金属チタン新規製造技術の開発

教授 岡部 徹,講師 大内 隆成
チタンは,軽量,高強度かつ高い耐腐食性を持つ金属材料として知られる.さらに,チタンは地殻存在率が全元素中9位と資源的には無尽蔵である.しかしながら,従来のチタン製造プロセスは非効率で高コストであるため,金属チタンは高価格である.そのため,チタンの利用は航空機や化学プラントなど高付加価値の特殊な用途に限られる.本研究では,鉱石の主成分である酸化チタンをそのまま原料として,化学熱還元および電気化学還元プロセスを用いて金属チタンを製造する,高効率の金属チタン製造プロセスに関する研究を行っている.

シリカ系メソ多孔空間内に固定された酵素による化学反応設計

教授 小倉 賢

ゼオライト触媒を用いたオレフィン合成において骨格構造がプロピレン選択性に及ぼす影響

助教(小倉研) 茂木 堯彦,教授 小倉 賢

マテリアル・インフォマティクスならびにマテリアル・デジタル・トランスフォーメーションのためのゼオライト・データセットの構築

教授 小倉 賢
DXおよびMXに関わる技術革新のためのデータセットを,ゼオライト系多孔質物質をきっかけとして無機物質や触媒材料へと応用展開する.その第一歩目のトライアル研究.

二酸化炭素からの有価物合成:炭化水素燃料への転換に資する触媒に関する研究

教授 小倉 賢
内燃機関から排出される二酸化炭素を原料に転換し,有価物を得る資源循環プロジェクトの一環.環境負荷のないプロセスで製造されたグリーン水素を利用し,MTOやFTにより燃料に資する高級炭化水素合成を目指す.

多成分炭化水素からの単相選択的吸着分離を目指したMOF/ゼオライト・コンポジットの創製

教授 小倉 賢

排ガス処理触媒系の探索,特にN2O,メタンの排出抑制に資するゼオライト系触媒の設計

教授 小倉 賢

燃焼排ガス中の一酸化窒素NOの吸着濃縮とマイクロ波急速加熱による直接分解の2ステップ非定常触媒システム開拓

教授 小倉 賢
燃焼排ガスに含まれる一酸化窒素NOを吸着阻害性物質共存下において選択的に吸着・濃縮する.この濃縮NO種を還元剤を用いず直接分解する.その反応に必要な熱エネルギーをマイクロ波加熱によって瞬時に行うことで,吸着濃縮されたNOをそのまま脱離させることなく窒素,酸素に直接分解させる.この一連の2ステップ非定常触媒反応システムを設計する.

燃焼排ガス中の一酸化窒素NOの選択吸着材の調製とアンモニアへの転換触媒システム開拓

教授 小倉 賢
燃焼排ガスに含まれる一酸化窒素NOを吸着阻害性物質共存下において選択的に吸着・濃縮する.この濃縮NO種を還元剤を用いてアンモニアへと転換する触媒システムの構築・設計研究.PdゼオライトおよびZIF, ZIF由来炭素系多孔質材が有効であることを見出し,そのNO吸着特性を評価することを目的とする.

多数の金属種の配列の精密制御と機能発現

教授 砂田 祐輔
多数の金属種を平面状や立方体状など構造を精密に規定しながら配列し,それらの特異な化学的・物理的機能を開拓する.

発光性金属クラスター材料の開発

教授 砂田 祐輔
複数の金属種を精緻に配列することで可視光吸収および発光特性を有する材料開発を行う.

省エネルギーで作動する安全性の高い化学的水素貯蔵・運搬法の開発

教授 砂田 祐輔
安全・低毒性な水素キャリアの開発,および高活性触媒の開発により,省エネルギー条件下で作動する化学的水素発生・貯蔵法の開発

遷移金属と典型元素の協働作用を活用した高機能性クラスター開発

教授 砂田 祐輔
遷移金属化合物において,典型元素化合物を配位子として導入することで,通常では実現困難な様々な触媒機能を付与できるなど,特異な機能を発現できることを最近当研究室では見出している.本研究では,多数の遷移金属と典型元素から構成されるクラスターを開発し,元素間協働作用に基づく特異な反応性や新規物性の発現を指向した研究を行う.

高機能性ベースメタル触媒開発

教授 砂田 祐輔
有機化合物の合成・変換における多くの場合において,貴金属化合物が触媒として用いられている.近年,貴金属の枯渇や価格の高騰から,貴金属を用いない触媒の開発が望まれており,当研究室では,鉄などの安価なベースメタル触媒の開発を行っている.

マグネシウム蓄電池用正極活物質の開発

准教授 八木 俊介
マグネシウム蓄電池用正極活物質としてスピネル型酸化物に注目し研究を行った.スピネル型酸化物の構成元素によって電解液の酸化分解反応に対する触媒活性が大きく異なることを発見し,電子状態に注目してそのメカニズムを明らかにした.

リチウムイオン電池用固体電解質の研究

准教授 八木 俊介
リチウムイオン電池用固体電解質LLZOについて,元素置換によるリチウムイオン伝導度の向上を試みた.

二酸化炭素の電解還元のための触媒と電極材料に関する研究

准教授 八木 俊介
二酸化炭素を電気化学的に還元するプロセスに適切な触媒と電極材料の探査のため,二酸化炭素の還元生成物を分析するためのセルの構築と分析手法の確立を進めた.

高活性な酸素の電気化学反応触媒の開発

准教授 八木 俊介
酸素の電気化学反応を促進する触媒として主に酸化物,硫化物に注目し,活性や安定性の起源に関する研究を行った.

チタン合金の新規リサイクルプロセスの開発

講師 大内 隆成,教授 岡部 徹,助教(岡部(徹)研) 上村 源,大学院学生(大内研) 山﨑 智揮,大学院学生(大内研) Cenyang Wu
チタン製品の製造過程で多量に発生するスクラップは主に鉄と酸素に汚染されている.鉄はスクラップ管理や表面洗浄により除去可能であるが,チタンやチタン合金のスクラップからスポンジチタン(バージン材料)と同程度の酸素濃度(500 mass ppm 以下)まで酸素を効率的に取り除く実用プロセスが存在していない.本研究では,希土類金属のオキシハライドの生成反応をチタン合金スクラップの脱酸に応用することで,チタン合金スクラップをスポンジチタンより低酸素濃度化してリサイクルする技術を開発している.希土類金属のオキシハライド生成反応,およびチタン合金中に含まれる酸素や鉄,アルミニウム,バナジウムなどの元素の脱酸反応中の挙動を解明することで,500 mass ppm 以下の低酸素濃度のチタン合金を製造可能なプロセスの実現を目標としている.

溶融塩電解を用いる革新的貴金属およびレアメタル回収プロセスの開発

講師 大内 隆成,教授 岡部 徹,大学院学生(大内研) 鯨岡 由夏,大学院学生(大内研) Chunhao Ding
溶融塩電解技術を用いて,ルテニウム(Ru),ロジウム(Rh),パラジウム(Pd),白金(Pt)といった白金族金属(Platinum group metals, PGMs)を含むスクラップの高効率リサイクルを可能とする,新規プロセスを開発する.

金属カルシウムの新製造法の開発に関する基礎研究

講師 大内 隆成
金属カルシウムは,希土類金属(レアアース)やチタンなどレアメタルの製錬・精錬プロセス,およびリサイクルプロセスにおいて重要な役割を果たしている.本研究では「高純度金属カルシウムの高効率・低環境負荷・低コスト製造」を可能とする技術の開発を行っている.

交通信号機および交通信号制御に係わる実証的研究【柏地区利用研究課題】

教授 大口 敬,助教(大口研) 鳥海 梓,シニア協力員(大口研) 新倉 聡,大学院学生(大口研) 白畑 健,大学院学生(大口研) 増井 啓太,大学院学生(大口研) 韓 天陽,大学院学生(大口研) サハチャイセーリー ソンポーン
交通安全上も円滑上も最も重要な平面交差点における交通信号制御について,多角的な研究を推進している.損失時間の実証評価手法の開発,単路部歩行者横断施設による歩行者・車両双方に最適な横断施設運用,左折車と直進車による混用車線によるランダム性の影響評価,信号灯器設置位置による運転挙動への影響分析,さらに最新のセンシング技術および通信技術を用いた自律分散型信号システムの開発などに,柏キャンパス ITS R&R フィールドも活用しながら,実証的に取組んでいる.また強化学習を信号制御に反映することで信号制御の高度化,維持管理の自動化へ向けた検討にも取組んでいる.

実映像ドライビングシミュレータに関する研究

特任准教授 小野 晋太郎,准教授(愛知県立大) 河中 治樹,教授(愛知県立大) 小栗 宏次

データ同化を用いた洪水予測シミュレーションの精度向上

准教授 山崎 大
従来の広域洪水予測シミュレーションでは,気象予測のみを外力としており,その誤差が洪水予測の精度に大きく影響していた.本研究では,衛星観測等による地表水の現状を河川モデルに同化することで,短期〜中期の洪水予測の大幅な精度向上を目指す.

衛星ビッグデータを用いた地球環境変動の解析とモニタリング

准教授 山崎 大,特任教授 沖 一雄
数ペタバイトにおよぶ長期間・高解像度の衛星観測データを用いて,地球規模での水域分布図の構築や,河川水温の長期トレンド検出など,大規模データ解析にもとづく地球環境変動の新たな知見を創出する.

次世代陸域水文モデルの開発

特任准教授 金 炯俊,准教授 山崎 大,教授 芳村 圭,教授(東京工業大) 鼎 信次郎,室長(国立環境研究所) 花崎 直太,室長(気象研究所) 仲江川 敏之,特任研究員(芳村研) 大沼 友貴彦
これまで大気モデルに従属して開発されてきた陸面モデルをベースにして,土地利用や植生変化・人間活動・湖沼や河川の水動態や水温変化・斜面水文過程と地表水−地下水相互作用など多様な時空間スケールの陸域水文過程を包括的に表現可能な次世代陸域モデルの開発を行っている.陸域の水・エネルギー収支と水循環とを大陸規模・日単位のスケールで精度良く推計でき,大気・海洋・生物圏などからなる地球システムモデルとも結合可能な陸域水循環の物理的側面に関する高精度で高計算効率の陸域水文シミュレーションを実施する.また,超高解像度の水文地理データや水利用データの整備,一貫性の長期気象外力データの整備を行い,全球1km 解像度での高解像度陸域水循環シミュレーションや全大陸50km 解像度での250 年分の長期アンサンブルシミュレーションの実現を目指している.

琵琶湖全循環の長期数値シミュレーション

教授 北澤 大輔,特任研究員(北澤研) 周 金鑫
気候変動に伴い,琵琶湖では全循環の欠損が懸念されている.将来の気象シナリオの与え方を改善して,琵琶湖での全循環欠損のリスクの予測シミュレーションを行い,間欠的に全循環の欠損が起こる可能性があることを示した.

統計的手法による沿岸生態系モデルのパラメータ推定に関する研究

教授 北澤 大輔,特任研究員(北澤研) 周 金鑫,大学院学生(北澤研) 屠 騰,准教授(東北大) 藤井 豊展
生態系モデルを社会実装するためには,モデルに含まれる不確かなパラメータを客観的にチューニングする必要がある.そこで,ベイズ最適化を活用したパラメータ推定法を提案し,女川湾の生態系シミュレーションに適用した.

養殖の持続可能性の評価に向けた指標の開発

教授 北澤 大輔,大学院学生(北澤研) 高 紅霞,特任研究員(北澤研) 董 書闖,特任研究員(北澤研) 周 金鑫
国内外の養殖場では,養殖魚からの排泄物や陸域からの栄養塩負荷による環境汚染が頻発している.海域の養殖の環境収容力を判断するため,排泄物と陸域からの負荷を考慮した指標を開発するとともに,赤潮の発生状況などとの相関を調べた.

二重バイアス印加モード静電引力顕微鏡(DEFM)の開発と表面空乏層容量の可変周波数計測への応用

教授 髙橋 琢二,教授(大阪市立大) 重川 直輝,大学院学生(髙橋研) 小林 大地,大学院学生(髙橋研) 文 思翰
可変周波数での表面空乏層容量計測を実現するための二重バイアス印加モード静電引力顕微鏡(DEFM)を提案し,MOS構造やp-n接合,CIGS系化合物半導体材料系等での容量計測を通じて,同手法の有効性に関する実証実験を進めた.

二重バイアス変調を利用した新しい走査トンネル分光法の開発

教授 髙橋 琢二,技術専門職員(髙橋研) 島田 祐二
走査トンネル顕微鏡によるトンネル分光計測において問題となるいくつかの不安定要素を効果的に取り除き,安定した計測を可能とする手法として,二重バイアス変調を用いた微分コンダクタンス分光法を新しく提案するとともに,自己形成InAs量子ドットに対する分光測定を行って,その有効性を確認している.

原子間力顕微鏡(AFM)を用いた光熱分光法の開発と太陽電池材料評価への応用

教授 髙橋 琢二,教授(立命館大) 峯元 高志,大学院学生(髙橋研) 山田 綾果,出光興産 加藤 拓也
原子間力顕微鏡(AFM)による光熱分光計測手法として,断続光励起時の試料熱膨張量を正確に検出できる二重サンプリング法を開発し,その実装実験を行っている.また,同手法を,多結晶SiやCIGS化合物半導体などの太陽電池材料に適用し,結晶粒界などにおける非発光再結合特性の解明に取り組んでいる.

時間分解光照射ケルビンプローブフォース顕微鏡の開発と同手法を用いた太陽電池材料上局所的光起電力特性の評価

教授 髙橋 琢二,教授(立命館大) 峯元 高志,大学院学生(髙橋研) 李 慎為
光照射下での動作が可能なケルビンプローブフォース顕微鏡に間欠バイアス印加法を導入するとともに,同バイアスパルスと励起光パルスとの時間差をスイープすることによって,光起電力の時間分解計測を行う手法を新たに開発している.また,同手法をCIGS系化合物半導体太陽電池材料に適用し,光励起キャリアのダイナミクスなどを明らかにすることを目指している.

間欠バイアス印加法を用いたケルビンプローブフォース顕微鏡による時間分解表面電位計測手法の開発

教授 髙橋 琢二,大学院学生(髙橋研) 佐藤 捷
間欠バイアス印加法を用いたケルビンプローブフォース顕微鏡(KFM)によって表面電位の時間分解計測を実現する手法を提案し,その実験系を構築するとともに基本性能を実証するための実験を進めている.

オペランド環境走査型プローブ顕微鏡

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
探針や表面の修飾や改変のインプロセス観察を目的とした,環境可変,雰囲気可変走査型プローブ顕微鏡の開発を行なっている.

カラー原子間力顕微鏡の理論考察

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
カラー原子間力の像解釈と理想的探針についての理想的考察

コンタクトモード原子分解能走査型力顕微鏡

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
単原子架橋時に得られる可能性のある接触モード原子分解能撮像の研究.ナノトライボロジー応用と試料観察新手法の実現を目指している.

導電性ポリマーによる吸湿過程の微視的考察

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大,准教授(東北大) 小林 光
導電性ポリマーによる吸湿性を,微小質量計測,顕微鏡観察,微視的粘弾性計測などを用いて明らかにする.社会実装の空調装置としては,東北大学小林光准教授が研究代表者を務めている.

探針のフォーススペクトロスコピー

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大,教授(三重大) 北川 敏一,教授(電気通信大) 佐々木 成朗
分子修飾法,背景力評価等をFIMAFMFIMAFM等で評価.小型の走査型プローブ顕微鏡で,修飾分子を含む気体を還流し表面や探針の修飾の可能なものの研究を行なっている.

生体シュリーレン顕微法

教授 川勝 英樹
濃度差のある溶液中での走流性,化走流等を可視化するためにシュリーレン顕微鏡で,配偶子の観察に適したものを実現している.

生殖細胞の力学的計測

教授 川勝 英樹
配偶子の力学的計測を行うために,力や水中の音に対して感度の高い検出方法を開発している.

空調パイプを用いた除湿・湿度制御に関する研究

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大,准教授(東北大) 小林 光
空調に広く用いられているパイプやダクトを湿度制御のために用いる研究

踏力のリアルタイム計測

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
スポーツにおけるトレーニングや戦略への応用として,IOT技術や通信技術を応用して,多チャンネルの情報取得を構築している.

溶解性マイクロニードル式低侵襲経皮ワクチンデリバリーパッチの新規開発

教授 金 範埈,助教(金(範)研) 朴 鍾淏
生体分解性マイクロニードルのパッチ型無痛ドラッグデリバリーシステムの実用化を目指す.近年の薬剤学・高分子材料工学・マイクロ加工技術のさらなる進歩に伴い,美容分野において既に実用化しているヒアルロン酸やコラーゲンなどのマイクロニードルパッチに関して,新たなマイクロモールド製造技術を開発し,より安価・迅速・安定的な加工プロセスで高機能性パッチの大量生産が実現できるシステムを開発する.一方,インスリンや経皮ワクチンパッチ,ペプチド・タンパク性医薬品を含む難吸収性薬物の経皮パッチ等の開発と臨床実験を進めて,近い将来,医療の現場で既存の注射製剤や経皮吸収製剤と並ぶような,マイクロニードルを用いた革新的ドラッグデリバリーシステムの実現を図る.

生体分解性・多孔質マイクロニードルとペーパーベースの無痛・迅速診断チップの開発

教授 金 範埈,助教(金(範)研) 朴 鍾淏,特任教授 甲斐 知惠子,特任教授 米田 美佐子
本研究は,“生体分解性多孔質マイクロニードルを用いた医療用パッチ”の新たな応用として,新型コロナウイルス感染症の低侵襲(無痛)自己診断チップの開発に関するものである. 専門的な医療従事者を要しないかつ簡便で迅速な感染症の診断を実現できるため,まず診断対象である血清又は間質液からの無痛かつ適量の抽出が可能な新規マイクロニードルの構造設計及び製作に関する研究を進めている.

エネルギーハーベスト用MEMSデバイス

教授 年吉 洋,教授(静岡大) 橋口 原,共同研究員(鷺宮製作所) 三屋 裕幸,主任研究員(電力中央研究所) 小野 新平
MEMS微細加工や高機能エレクトレットを利用した次世代エネルギーハーベスト(環境発電)用デバイスを研究している.

ゲートドライバICによるパワーデバイスの過電流検出

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
パワーデバイスの動作状態を監視する手法として,従来は温度センサを用いた接合温度測定や電流センサを用いた負荷電流測定などが行われるが,これらのセンサを使った手法はコストやサイズが増大してしまう.本研究では,ゲートドライバの出力電圧からパワーデバイスの動作状態を推定する手法を提案し,ゲートドライバICに集積可能にすることでコストやサイズの低減を実現する.

ゲート電圧波形の機械学習を用いたパワーデバイスの劣化推定

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
パワーデバイスのゲート電圧波形から機械学習を用いて,パワーデバイス故障の一要因であるボンディングワイヤ剥がれを検出する手法を提案する.従来のボンディングワイヤ剥がれ検出手法と比較して検出回路に絶縁の必要がなく,ゲート電圧波形から抽出されるパラメータを用いて,負荷電流変動と温度変動にロバストなボンディングワイヤ剥がれ検出手法を構築する.

パワーエレクトロニクスにおけるEMI問題を解決するデジタルゲート駆動技術

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
EMI規格を満たしつつスイッチング損失を最小化するデジタルゲート駆動技術を確立し,パワーエレクトロニクスにおけるEMI問題を簡単・迅速・低コストに解決することを目指す.EMI規格を満たしつつスイッチング損失を最小化するデジタルゲート駆動技術の提案およびデジタルゲートドライバICの設計・試作・評価を行う.

パワートランジスタ駆動用の波形制御プログラマブルゲートドライバIC

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
パワーエレクトロニクスとLSIの異分野連携により,パワートランジスタのゲート駆動電流をデジタルインターフェースで変えられるプログラマブルゲートドライバICを開発した.AIを使った自動最適制御によって,スイッチング時の損失低減とノイズ低減を両立するとともに,動作条件に応じた最適化手法の更なる高度化に取り組んでいる.

パワー半導体を省エネに操る自動波形変化ゲート駆動ICの開発

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
パワー半導体のゲート端子を駆動する電流波形を自動で制御するため,ゲート駆動回路・センサ回路・制御回路をまとめて1チップ化し,省スペースかつ低コストで誰でも使うことができるゲートドライバICを開発する.従来のゲート駆動ICチップと置き換えるだけで,パワー半導体のスイッチング損失を低減でき,パワーエレクトロニクス機器が大量普及した社会の脱炭素化に貢献する.

小型・高効率を実現するハイブリッドDC-DCコンバータの開発

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
従来の電源回路における効率と体積のトレードオフを克服するハイブリッドDC-DCコンバータの研究開発に取り組んでいる.特に,高入力電圧および高降圧比のアプリケーションに着目し,新しい回路トポロジーの提案と回路設計技術の開発に取り組んでいる.

絶縁型ハイブリッドDC-DCコンバータに関する研究開発

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
効率と体積のトレードオフを克服できる非絶縁型ハイブリッドDC-DCコンバータの回路トポロジーを参考にして,絶縁型DC-DCコンバータの同期整流回路に応用するための回路設計技術と新しい回路トポロジーの提案に向けた研究開発に取り組んでいる.

高エネルギー効率のピクセル近傍2次元CNNアクセラレータ

教授 高宮 真
画像認識を高エネルギー効率で行うことを目的として,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)アルゴリズムの本来の特徴である注目ピクセルの近傍に対してのみ畳み込み演算を行う点を利用し,ピクセル近傍に集積されたデジタル回路を用いて外部メモリへのデータ書き込みなしでCNN演算を2次元的に実現する.

高耐圧IGBT向けデジタルゲートドライバの開発

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
デジタルゲート駆動技術を高耐圧IGBTに利用するため,ゲート駆動の大電流化を実現するデジタルゲートドライバの開発・実証を行う.

3 omega法による超精密熱伝導計測法の開発

教授 野村 政宏,国際研究員(野村研) Jalabert Laurent,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

SiGe熱電変換デバイス開発

教授 野村 政宏,教授(東京都市大) 澤野 憲太郎,特任助教(野村研) 柳澤 亮人,大学院学生(野村研) 小池 壮太
社会に広く普及する実用的な熱電変換デバイスの実現には,低環境負荷で高効率な熱電変換材料の開発が不可欠である.本研究では,バルク材料でも高い熱電性能を示すSiGeを用いてウェハ型熱電変換デバイス開発を進める.

SiNおよびSiC薄膜における表面フォノンポラリトンによる熱伝導

教授 野村 政宏,国際研究員(野村研) Sebastian Volz,特任研究員(野村研) Yunhui Wu,国際研究員(野村研) Jose Ordonez-Miranda,特任准教授 アヌフリエフ ロマン

SiおよびSiGe薄膜ペルチェ素子を用いた局所冷却

教授 野村 政宏,教授 金 範埈,国際研究員(野村研) Sebastian Volz,特任准教授 アヌフリエフ ロマン,特任助教(野村研) 柳澤 亮人
本研究室では,シリコン薄膜を用いた熱電変換デバイス開発を進めているが,ゼーベック効果とペルチェ効果が表裏一体であるため,電流を流すことで局所冷却デバイスも実現できる.本研究では,シリコン薄膜にペルチェ素子を形成し,世界最小サイズのペルチェ素子を実現することを目指す.

サーモリフレクタンス法による温度イメージング系の開発

教授 野村 政宏,特任助教(野村研) キム ビョンギ,大学院学生(野村研) 小河原 陽平

ナノギャップ熱伝導に関する研究

教授 野村 政宏,協力研究員(野村研) 立川 冴子,国際研究員(野村研) Jalabert Laurent,国際研究員(野村研) Sebastian Volz,国際研究員(野村研) Jose Ordonez-Miranda
物体表面からの熱放射はプランクの法則に従うが,異なる二物体表面が近接すると,プランクの法則を遥かに超える熱伝導が生じる.本研究では,ナノ・マイクロ構造形成技術により,高い熱絶縁性を持ったマイクロ構造中にナノギャップを挟んで向かい合う二平面を形成し,ギャップ幅を変えながら熱輸送の変化を観測する.

ナノスケール熱伝導の物理

教授 野村 政宏,特任准教授 アヌフリエフ ロマン,特任助教(野村研) 柳澤 亮人,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

ハーフホイスラー合金薄膜を用いた超高性能熱電デバイス開発

教授 野村 政宏,グループ長((国研)物質・材料研究機構) 森 孝雄,大学院学生(野村研) 小池 壮太,特任助教(野村研) 柳澤 亮人

フォノニクスによる熱伝導制御

教授 野村 政宏,国際研究員(野村研) Sebastian Volz,特任准教授 アヌフリエフ ロマン
本研究では,周期が数百ナノメートルのシリコンフォノニック結晶ナノ構造を用いて,コヒーレントなフォノン伝導制御による熱伝導制御を目指し,理論・実験の両面から研究を進めている.エアブリッジ状のフォノニック結晶ナノ構造およびナノワイヤー構造を作製し,熱フォノンの波動性に基づいた熱伝導制御に成功している.

フォノニック結晶中の熱フォノン輸送シミュレーションに関する研究

教授 野村 政宏,特任准教授 アヌフリエフ ロマン
フォノンの平均自由行程よりも短い周期のフォノニック結晶中では,弾道的輸送特性およびバンドフォールディング効果により,バルクとは大きく異なるフォノン輸送が起こる.本研究では,モンテ・カルロ法によるフォノン輸送シミュレーションおよび有限要素法を用いた線形弾性論によるフォノンバンド解析を行い,フォノニック結晶中の熱輸送シミュレーションを行う.

フォノンのコヒーレンスを含む熱輸送理論

教授 野村 政宏,協力研究員(野村研) Zhongwei Zhang,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

フォノンの消滅生成過程に関するシミュレーション

教授 野村 政宏,協力研究員(野村研) Zhongwei Zhang,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

フォノン流体力学に基づく熱伝導

教授 野村 政宏,協力研究員(野村研) Yangyu Guo,国際研究員(野村研) Sebastian Volz,大学院学生(野村研) Xin Huang,教授 町田 友樹,特任准教授 増渕 覚

半導体薄膜における熱フォノン平均自由行程測定

教授 野村 政宏,特任准教授 アヌフリエフ ロマン,国際研究員(野村研) Jose Ordonez-Miranda,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

平面型熱電変換デバイスの開発

教授 野村 政宏,教授(フライブルク大) Oliver Paul,グループ長((国研)物質・材料研究機構) 森 孝雄,特任助教(野村研) 柳澤 亮人,大学院学生(野村研) 小池 壮太
社会に広く普及する実用的な熱電変換デバイスの実現には,低環境負荷で高効率な熱電変換材料の開発が不可欠である.本研究では,シリコンにナノ加工を行うことで,材料の電気伝導率を保ちつつ,熱伝導率を低減することで性能を飛躍的に高めることを目指している.本研究は,フライブルク大学(ドイツ)と共同で研究を進めており,マイクロマシン技術に基づいたオンチップ熱電変換能測定技術を用いて,様々な材料や構造の熱電特性の測定を進めている.

熱放射スペクトル制御による放射冷却構造開発

教授 野村 政宏,特任研究員(野村研) Yunhui Wu,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

量子中継応用にむけたダイヤモンドオプトメカニクス系のシミュレーション

教授 野村 政宏,教授(横浜国立大) 小坂 英男,教授 岩本 敏,特任助教(野村研) キム ビョンギ,特任研究員(野村研) Michele Diego

非平衡グリーン関数法を用いた熱伝導率シミュレーション

教授 野村 政宏,協力研究員(野村研) Yangyu Guo,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

Bio-Sensing platform for neuro-cardiac axis investigation

准教授 ティクシエ 三田 アニエス,共同研究員(年吉研) 井樋田 悟史,教授(The University of Bordeaux) Timothee Levi,特任准教授(東大) 藤生 克仁,准教授 池内 与志穂,教授 年吉 洋,博士(The University of Bordeaux) Pierre-Marie Faure
In the body, heart and brain interact continuously through various electrical and biomolecule signals to maintain heart homeostasis. But how equilibrium is maintained when a disequilibrium occurs, and how disruption happens in the case of disease, like heart stroke, it is still not well understood. If we can understand it, it will be possible to intervene artificially and reestablish homeostasis. For investigation, it is essential to study the neuro-cardiac axis outside of the body in in-vitro. In this research, a bio-sensing platform is developed to investigate the interactions between heart cells and neurons. This platform contains an array of a multitude of sensors for electrophysiology and bio-chemical sensing, and electrodes for stimulation and artificial control of the activity. In addition, neuromorphic devices providing sensing and biomimetic stimulation of heart cells or neurons, are also created to control the biological system, through the bio-sensing platform, in a close-loop, as it happens in the body. The technology for the bio-sensing platform is based on thin-film-transistor technology, and for the neuromorphic device on FPGA circuits.

Bio-sensing array platform for pancreatic Beta-cell investigation

准教授 ティクシエ 三田 アニエス,教授 年吉 洋,共同研究員(年吉研) 井樋田 悟史,博士(東大) Dongchen Zhu,教授(東大) 酒井 康行,准教授(近畿大) 小森 喜久夫,助教(東大) Mathieu Danoy
Diabetes is a chronic disease which can provoke blindness, heart attack, stroke and so on when not treated. It occurs when the pancreas does not use well enough or produces enough insulin hormone to regulate the concentration of glucose in blood. It is the Beta-cells which can be found in the islets of Langerhans that secrete insulin: a deficiency in the functioning of Beta-cells perturbs glucose homeostasis and can provoke diabetes. To elucidate the pathophysiology of islet-related diseases, a bio-sensing platform able to study islets at the level of Beta-cell have to be developed. The bio-sensing platform is made of an array of sensors to sense the electrophysiology activity of a Beta-cell culture during stimulation with glucose. Insulin sensor will be integrated too on the platform to monitor insulin secretion. Various experimental conditions are tested to reproduce disease in an in-vitro environment. The bio-sensing platform is based on thin-film-transistor technology thanks to which a large array with multiple sensors can be fabricated.

マイクロ波レーダを用いた海面観測に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 林 昌奎
マイクロ波パルスドップラーレーダを用いる海面観測システムの開発を行っている.海面から散乱するマイクロ波は,海面付近水粒子の運動特性によって周波数が変化し,海面から散乱するマイクロ波の強度には使用するアンテナの特性が含まれる.その特性を解析することで,海洋波浪の進行方向,波高,周期及び位相,海上風の風速と風向,海面高さの情報を得ることができる.相模湾平塚沖での海面観測を行っている.

再生可能エネルギー開発に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 林 昌奎
波力及び潮流のエネルギーを利用する発電システムの開発を行っている.宮城県・松島湾の浦戸諸島において垂直軸型の潮流発電装置のプロトタイプ(5kW)を,岩手県久慈市において振り子式の波力発電装置のプロトタイプ(43kW)を,神奈川県平塚市において高効率波力発電装置(45kW)を開発し,海域実証試験(試験送電)を実施した.実用化を目指した研究開発を続けている.

大型浮体構造物の挙動に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 林 昌奎,教授(日本大) 居駒 知樹,准教授(日本大) 惠藤 浩朗
波浪に起因する浮体式海洋構造物の動揺,弾性変形,波漂流力などを,海洋波浪レーダによるリアルタイム波浪観測技術とエアクッションを用いた浮力制御技術により,制御する方法について研究を行っている.

水槽設備を利用した研究開発【柏地区利用研究課題】

教授 林 昌奎,教授 北澤 大輔,准教授 巻 俊宏,准教授 横田 裕輔
海洋工学水槽及び風路付き造波回流水槽において,海洋環境計測,海洋空間利用,海洋再生可能エネルギー開発,海底資源開発などに必要な要素技術の開発に関連する実験・観測を行っている.

流れ中で回転する水中線状構造物の挙動に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 林 昌奎,教授(日本大) 居駒 知樹,准教授(日本大) 惠藤 浩朗
海洋掘削用ドリルパイプは比較的単純な構造物であるにもかかわらず,作用する流体外力,構造自体の応答特性も一般に非線形である.また,海流など流れを有する海域で作業するドリルパイプには,回転による振動に流れによる振動が加わり,より複雑な応答を示す.これらの問題は,対象となる水深が深くなりパイプが長大になるに従い,強度が相対的に低下したり,水深ごとの流れの流速が変化したりすると,強度設計,安全性確保の観点からより重要になる.

平塚市・東大生研連携協力協定

教授 林 昌奎
この協定は,東京大学 生産技術研究所および平塚市の密接な連携と協力の下,海洋活用技術の研究開発を推進するとともに,新産業創出,人材育成等に寄与することを目的とする.

定置網漁業の自動魚群誘導システム

教授 北澤 大輔,助教(北澤研) 李 僑,特任研究員(北澤研) 董 書闖,シニア協力員(北澤研) 水上 洋一
定置網漁業において,箱網に入った魚を収穫する作業は揚網作業と呼ばれるが,多くの作業員を必要とし,早朝の危険を伴う作業である.そこで,この作業を自動化するため,可撓性ホースを結合して作成された自動魚群誘導システムについて,これまでの成果を取りまとめて学会発表を行った.

炭電極を用いた汚水の電気化学的処理技術の開発

教授 北澤 大輔,シニア協力員(北澤研) 岡本 強一
汚水処理技術の一つとして,電気分解が注目されている.電気分解では,一般に金属製の電極が用いられるが,使用中にイオン化し,水生生物に影響を及ぼす可能性があるため,当研究室では炭電極を用いた電気分解による汚水処理技術の開発を行っている.これまでに実施した実験結果を整理して,論文を執筆して投稿した.

琵琶湖全循環の長期数値シミュレーション

教授 北澤 大輔,特任研究員(北澤研) 周 金鑫
気候変動に伴い,琵琶湖では全循環の欠損が懸念されている.将来の気象シナリオの与え方を改善して,琵琶湖での全循環欠損のリスクの予測シミュレーションを行い,間欠的に全循環の欠損が起こる可能性があることを示した.

統計的手法による沿岸生態系モデルのパラメータ推定に関する研究

教授 北澤 大輔,特任研究員(北澤研) 周 金鑫,大学院学生(北澤研) 屠 騰,准教授(東北大) 藤井 豊展
生態系モデルを社会実装するためには,モデルに含まれる不確かなパラメータを客観的にチューニングする必要がある.そこで,ベイズ最適化を活用したパラメータ推定法を提案し,女川湾の生態系シミュレーションに適用した.

複合養殖による養殖場の環境保全に関する研究

教授 北澤 大輔,リサーチフェロー(北澤研) 吉田 毅郎,特任研究員(北澤研) 周 金鑫
養殖種の排泄物を他の生物に吸収させる複合養殖によって,養殖場の環境を保全する方法について実海域実験を行った.魚類養殖場直下の海底上でいくつかの箱網内にナマコを格納して飼育し,タイムラプスカメラによって成長を把握した.

養殖の持続可能性の評価に向けた指標の開発

教授 北澤 大輔,大学院学生(北澤研) 高 紅霞,特任研究員(北澤研) 董 書闖,特任研究員(北澤研) 周 金鑫
国内外の養殖場では,養殖魚からの排泄物や陸域からの栄養塩負荷による環境汚染が頻発している.海域の養殖の環境収容力を判断するため,排泄物と陸域からの負荷を考慮した指標を開発するとともに,赤潮の発生状況などとの相関を調べた.

リアルタイム海底観測に関する研究

客員教授 川口 勝義
地震・津波観測監視システム(Dense Oceanfloor Network system for Earthquakes and Tsunamis; DONET)に展開された水圧計の高精度校正手法の開発,DONET1号機,2号機システムと海底下孔内観測システムの運用及び機能向上を中心とした研究を継続するとともに,当該技術の商用展開に係る技術検討,海底光ファイバセンシングに係る技術検討を実施している.また,海中観測実装工学研究センター主催のワークショップ:海底ケーブルの科学利用と関連技術に関する将来展望(https://seasat.iis.u-tokyo.ac.jp/WS20221208/index.html)を開催している.

AUVによる海中遊泳生物の探知追跡手法

准教授 巻 俊宏
ウミガメのような遊泳生物について調査を進めるため,ソーナーと機械学習によって全自動で探知,追跡するためのアルゴリズムを開発する.

自律システムの連携による海中観測手法【柏地区利用研究課題】

准教授 巻 俊宏
AUV(自律型海中ロボット)と海底ステーション,AUV同士など,複数の自律プラットフォームの連携により新たな海中海底探査用システムを提案する.試作海底ステーション,3台のホバリング型AUV(Tri-Dog 1, Tri-TON, Tri-TON 2)等のテストベッドを用いて,水槽試験,海域試験等により研究開発を進めている.

海洋センシング

准教授 ソーントン ブレア
Underwater sensing is the raw material of how we perceive the ocean. We aim to improve how the ocean can be observed by investigating the interactions of photons in underwater environments, integrating advanced instrumentation on robotic platforms, and combining this with methods for automated data interpretation. Our group collaborates closely with institutes in the UK, Australia and the USA, and participates in international programs to maximise the global impact of our research and ensure our members can conduct research effectively in an international environment.

海底測位・測量センサーの性能評価に関する研究【柏地区利用研究課題】

准教授 横田 裕輔

地震動と地盤ひずみの観測【柏地区利用研究課題】

教授 目黒 公郎

組積造構造物の地震被害に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 目黒 公郎

空間AIのスマートシティへの応用

特任教授 三宅 陽一郎
空間AIとは空間そのものにAIを内在させたものである.スマートシティの最小単位として空間AIを限定した領域に構築し,それらを接続することで,都市におけるカバレージを上げていく.現在は設計とシミュレーションの段階である.

複雑系社会システムとしての金融市場データ解析

准教授 本間 裕大,特任助教(本間(裕)研) 伊藤 真利子
社会システムを非線形の「複雑系」として捉え,背後にある数理的構造の解明と産官学共創の推進を狙いとしている.金融市場の構造解明は特に重点的な研究ターゲットである.市場が不安定化し混乱に陥る事態が頻発すると,あらゆる社会的プロジェクトへの影響が避けられない.時系列解析やネットワーク解析に関する最先端手法に基づき,金融危機に関する「予測と制御」を効果的に行うための科学的根拠を研究する.

CFRP用工具ベンチマーク

准教授 土屋 健介
CFRP用工具について,市場調査と過去の切削試験の知見に基づいて切削試験の評価基準を提案する.

高難易度部材加工プログラムのアルゴリズム提案

准教授 土屋 健介
航空機製造は,ローコストオペレーションとして工程自動化と労働人口減少への代替化技術が日本のモノづくり力として求められている.従来,エキスパートシステムなど熟練作業者の技能の取り込みや過去のデータベース化で最適切削条件等を見出すなどの取り組みがあるが実績を超えるような成果を得られず,製造現場では未だに最適化の切削条件の決定には熟練者の経験に頼っている.そのため切削難度判定に関する要素を抽出し,最適切削条件を選定する手法の確立を目指す.

3 omega法による超精密熱伝導計測法の開発

教授 野村 政宏,国際研究員(野村研) Jalabert Laurent,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

SiNおよびSiC薄膜における表面フォノンポラリトンによる熱伝導

教授 野村 政宏,国際研究員(野村研) Sebastian Volz,特任研究員(野村研) Yunhui Wu,国際研究員(野村研) Jose Ordonez-Miranda,特任准教授 アヌフリエフ ロマン

SiおよびSiGe薄膜ペルチェ素子を用いた局所冷却

教授 野村 政宏,教授 金 範埈,国際研究員(野村研) Sebastian Volz,特任准教授 アヌフリエフ ロマン,特任助教(野村研) 柳澤 亮人
本研究室では,シリコン薄膜を用いた熱電変換デバイス開発を進めているが,ゼーベック効果とペルチェ効果が表裏一体であるため,電流を流すことで局所冷却デバイスも実現できる.本研究では,シリコン薄膜にペルチェ素子を形成し,世界最小サイズのペルチェ素子を実現することを目指す.

ナノスケール熱伝導の物理

教授 野村 政宏,特任准教授 アヌフリエフ ロマン,特任助教(野村研) 柳澤 亮人,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

フォノニクスによる熱伝導制御

教授 野村 政宏,国際研究員(野村研) Sebastian Volz,特任准教授 アヌフリエフ ロマン
本研究では,周期が数百ナノメートルのシリコンフォノニック結晶ナノ構造を用いて,コヒーレントなフォノン伝導制御による熱伝導制御を目指し,理論・実験の両面から研究を進めている.エアブリッジ状のフォノニック結晶ナノ構造およびナノワイヤー構造を作製し,熱フォノンの波動性に基づいた熱伝導制御に成功している.

フォノンの消滅生成過程に関するシミュレーション

教授 野村 政宏,協力研究員(野村研) Zhongwei Zhang,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

フォノン流体力学に基づく熱伝導

教授 野村 政宏,協力研究員(野村研) Yangyu Guo,国際研究員(野村研) Sebastian Volz,大学院学生(野村研) Xin Huang,教授 町田 友樹,特任准教授 増渕 覚

半導体薄膜における熱フォノン平均自由行程測定

教授 野村 政宏,特任准教授 アヌフリエフ ロマン,国際研究員(野村研) Jose Ordonez-Miranda,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

熱放射スペクトル制御による放射冷却構造開発

教授 野村 政宏,特任研究員(野村研) Yunhui Wu,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

非平衡グリーン関数法を用いた熱伝導率シミュレーション

教授 野村 政宏,協力研究員(野村研) Yangyu Guo,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

半導体量子構造を用いた固体冷却素子の開発

教授 平川 一彦,研究員(LIMMS) BESCOND MARC,東京大学特別研究員(平川研) SALHANI Chloe,大学院学生(平川研) 朱 翔宇,特任研究員(平川研) 長井 奈緒美
現代のLSIに代表されるエレクトロニクスの進歩を大きく阻んでいるのが発熱による問題であり,冷却技術は将来のエレクトロニクスの発展の鍵を握る技術と言っても過言ではない.我々は半導体へテロ構造のバンドを適切に設計し,熱電子放出と共鳴トンネル効果を同時に制御して実現できるサーミオニッククーリング技術に注目している.本サーミオニッククーリングにおいては,トンネル障壁を介して量子井戸に低エネルギーの電子が共鳴的に注入され,量子井戸を出るときには低くて厚い障壁を高エネルギーの熱電子が熱的に越えていく過程を用いる素子であり,電流を流すにつれて量子井戸層が冷却されていくデバイスである. 本年度は,(1)非平衡グリーン関数法による数値計算により,構造パラメータと電子温度の関係に関する議論を行っている.(2)量子井戸を複数個直列に接合したより高効率な冷却素子構造を提案し,電子温度を評価した.その結果,バイアス電圧によっては,電子温度の上昇も観測されることがわかった.その機構などは,現在検討中である.

オペランド環境走査型プローブ顕微鏡

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
探針や表面の修飾や改変のインプロセス観察を目的とした,環境可変,雰囲気可変走査型プローブ顕微鏡の開発を行なっている.

カラー原子間力顕微鏡の理論考察

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
カラー原子間力の像解釈と理想的探針についての理想的考察

コンタクトモード原子分解能走査型力顕微鏡

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
単原子架橋時に得られる可能性のある接触モード原子分解能撮像の研究.ナノトライボロジー応用と試料観察新手法の実現を目指している.

導電性ポリマーによる吸湿過程の微視的考察

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大,准教授(東北大) 小林 光
導電性ポリマーによる吸湿性を,微小質量計測,顕微鏡観察,微視的粘弾性計測などを用いて明らかにする.社会実装の空調装置としては,東北大学小林光准教授が研究代表者を務めている.

探針のフォーススペクトロスコピー

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大,教授(三重大) 北川 敏一,教授(電気通信大) 佐々木 成朗
分子修飾法,背景力評価等をFIMAFMFIMAFM等で評価.小型の走査型プローブ顕微鏡で,修飾分子を含む気体を還流し表面や探針の修飾の可能なものの研究を行なっている.

踏力のリアルタイム計測

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
スポーツにおけるトレーニングや戦略への応用として,IOT技術や通信技術を応用して,多チャンネルの情報取得を構築している.

二重バイアス印加モード静電引力顕微鏡(DEFM)の開発と表面空乏層容量の可変周波数計測への応用

教授 髙橋 琢二,教授(大阪市立大) 重川 直輝,大学院学生(髙橋研) 小林 大地,大学院学生(髙橋研) 文 思翰
可変周波数での表面空乏層容量計測を実現するための二重バイアス印加モード静電引力顕微鏡(DEFM)を提案し,MOS構造やp-n接合,CIGS系化合物半導体材料系等での容量計測を通じて,同手法の有効性に関する実証実験を進めた.

原子間力顕微鏡(AFM)を用いた光熱分光法の開発と太陽電池材料評価への応用

教授 髙橋 琢二,教授(立命館大) 峯元 高志,大学院学生(髙橋研) 山田 綾果,出光興産 加藤 拓也
原子間力顕微鏡(AFM)による光熱分光計測手法として,断続光励起時の試料熱膨張量を正確に検出できる二重サンプリング法を開発し,その実装実験を行っている.また,同手法を,多結晶SiやCIGS化合物半導体などの太陽電池材料に適用し,結晶粒界などにおける非発光再結合特性の解明に取り組んでいる.

時間分解光照射ケルビンプローブフォース顕微鏡の開発と同手法を用いた太陽電池材料上局所的光起電力特性の評価

教授 髙橋 琢二,教授(立命館大) 峯元 高志,大学院学生(髙橋研) 李 慎為
光照射下での動作が可能なケルビンプローブフォース顕微鏡に間欠バイアス印加法を導入するとともに,同バイアスパルスと励起光パルスとの時間差をスイープすることによって,光起電力の時間分解計測を行う手法を新たに開発している.また,同手法をCIGS系化合物半導体太陽電池材料に適用し,光励起キャリアのダイナミクスなどを明らかにすることを目指している.

間欠バイアス印加法を用いたケルビンプローブフォース顕微鏡による時間分解表面電位計測手法の開発

教授 髙橋 琢二,大学院学生(髙橋研) 佐藤 捷
間欠バイアス印加法を用いたケルビンプローブフォース顕微鏡(KFM)によって表面電位の時間分解計測を実現する手法を提案し,その実験系を構築するとともに基本性能を実証するための実験を進めている.

Bio-Sensing platform for neuro-cardiac axis investigation

准教授 ティクシエ 三田 アニエス,共同研究員(年吉研) 井樋田 悟史,教授(The University of Bordeaux) Timothee Levi,特任准教授(東大) 藤生 克仁,准教授 池内 与志穂,教授 年吉 洋,博士(The University of Bordeaux) Pierre-Marie Faure
In the body, heart and brain interact continuously through various electrical and biomolecule signals to maintain heart homeostasis. But how equilibrium is maintained when a disequilibrium occurs, and how disruption happens in the case of disease, like heart stroke, it is still not well understood. If we can understand it, it will be possible to intervene artificially and reestablish homeostasis. For investigation, it is essential to study the neuro-cardiac axis outside of the body in in-vitro. In this research, a bio-sensing platform is developed to investigate the interactions between heart cells and neurons. This platform contains an array of a multitude of sensors for electrophysiology and bio-chemical sensing, and electrodes for stimulation and artificial control of the activity. In addition, neuromorphic devices providing sensing and biomimetic stimulation of heart cells or neurons, are also created to control the biological system, through the bio-sensing platform, in a close-loop, as it happens in the body. The technology for the bio-sensing platform is based on thin-film-transistor technology, and for the neuromorphic device on FPGA circuits.