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荒川 泰彦 名誉教授が文化功労者に選出

 このたび、本学名誉教授の荒川 泰彦 先生が、令和5年(2023年度)の文化功労者に選出されました。
 
 荒川先生は、1980年に本学大学院工学系研究科博士課程を修了された後、直ちに本所に講師として着任されました。翌年には同・助教授、1993年には教授に昇任されました。また、先端科学技術研究センター教授、ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構長等もお務めになられました。現在は、ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構の特任教授として研究活動を推進していらっしゃいます。
 
 荒川先生は、1982年に半導体中の電子を完全に閉じ込める「量子ドット」の概念とそのレーザへの応用を提案されました。その後、半導体量子ドット形成技術の開発を進め、量子ドットレーザを実現するとともに、産学連携研究を通じその実用化に多大な貢献をされました。さらに、光電子融合技術における量子ドットレーザの優位性も明らかにされました。この成果をきっかけに、量子ドット搭載の光集積回路チップの開発などが進んでいます。また、単一の量子ドットを用いた極限光源の開拓も推進され、単一量子ドットレーザの実現、光通信波長帯単一光子発生器の実現とその長距離量子暗号通信への応用など、ナノ量子フォトニクス分野における革新的成果を数多く挙げられました。一方、量子井戸や量子ドットなど半導体低次元構造における光電子物性の基礎研究も広く展開されました。特に、半導体微小共振器における共振器励起子ポラリトン効果の観測は、固体共振器量子電気力学という量子エレクトロニクスの一大分野の端緒となりました。
 
 これらの研究業績は極めて高く評価されており、日本学士院賞、紫綬褒章、Heinrich Welker賞、URSI Balthasar Van der Pol Goldメダル等、国内外の著名な賞を受けられるとともに、全米工学アカデミー外国人会員にも選出されていらっしゃいます。また、荒川先生は、数々の国家プロジェクトのリーダーとして関係分野の発展を牽引され、その活動を通して多くの後進研究者を育成されました。
 
 日頃よりご指導をいただく者の一人として、このたびの荒川先生のご顕彰を心よりお慶び申し上げるとともに、先生のご健康とますますのご活躍を祈念いたします。

(情報・エレクトロニクス系部門 教授 岩本 敏)

荒川 泰彦 名誉教授のコメント

荒川泰彦_東京大学.jpg 約40年間の研究生活を通して、量子ドット研究の黎明期から実用化まで、一貫して取り組むことができましたことは、工学者としての大きな喜びであり、また大変幸運なことでした。これもひとえに、恩師や同僚の先生方のご支援、そして若い大学院生や産業界を含む多くの共同研究者の方々の情熱と力量の賜物であります。改めて皆様に深く感謝申し上げます。
 今後も我が国の量子技術の発展に微力ながら貢献していく所存ですので、どうぞよろしくお願いいたします。

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