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谷口 維紹 名誉教授が文化勲章を受章

 本学名誉教授であり、元 本所 特任教授・本学Max Planck統合炎症学国際連携研究センター長の谷口 維紹 先生が令和5年度に文化勲章を受章されました。文化勲章は、文化の発達に関して顕著な功績のあった方に対して授与される勲章です。

 谷口先生は、チューリッヒ大学大学院修了後、がん研究会がん研究所、大阪大学細胞工学センターを経て本学医学系研究科・免疫学講座教授に就任されました。医学系研究科を定年退職後、2012年から2018年まで本所 特任教授(物質・環境系部門)、そして本学Max Planck統合炎症学国際連携研究センター長としてご活躍されました。現在は本学 先端科学技術研究センターのフェローとして活動されています。

 これまでのキャリアを通じて、谷口先生は免疫系の分子機構の根幹に関わる多くの重要な発見をされました。特に、免疫を司る多様な細胞同士が「会話」するための分子(サイトカイン)の作用メカニズムに関する先導的な研究成果を数多く挙げられました。世界に先駆けてヒトインターフェロンβの配列の解明や遺伝子組換え実験に成功されました。さらに、インターロイキン2を同定して生産可能にしたことで、近代的ながんの免疫療法の礎を築く大きな貢献をされました。これらの発現機構の解析などを通して、IRF (IFN regulatory factor)ファミリー転写因子を見いだされました。サイトカインを中心とした免疫系の制御機構の研究を長年、世界的に牽引されたご功績は、医学・生物学の幅広い分野に多大な影響力をもつものです。

 本所では、傷ついた細胞などから放出される免疫制御分子群の一つであるHMGB1による炎症・免疫・がんを繋ぐ分子制御メカニズムの解明や、自然免疫応答を活性化する新たな自己RNAであるU11snRNAの同定など、先進的な成果を挙げられ、さらに研究を発展されています。

 谷口先生は、ロベルト・コッホ賞、日本学士院賞など多くの賞を受賞されています。2009年には文化功労者として顕彰され、2021年には瑞宝重光章を受章されました。また、米国科学アカデミー、EMBOの外国人会員等に選出されておられます。本所ご在籍中の2016年には米国医学アカデミー(National Academy of Medicine: NAM)に国際会員として選出されました。

 私個人の視点から申し上げますと、谷口先生と同じ物質・環境系部門でご一緒できたことが大変光栄でした。また、当時本所と医科学研究所で運営されていた東京大学ニューヨークオフィスのイベントなどについても多大なご助力をいただきまして、大変感謝しております。谷口先生の優しく、かつ真剣な口調で研究や教育に関するご意見やアドバイスをいただくと、背筋が伸びるとともにやる気がみなぎりました。

 この度の谷口先生のご受章を心からお喜び申し上げますとともに、先生のご健康とますますのご活躍を祈念いたします。

(物質・環境系部門 准教授 池内 与志穂)

谷口 維紹 名誉教授のコメント

谷口維紹resize1.png 文化勲章を受章することを知らされ、驚いております。これまで私が所属したがん研究会がん研究所、大阪大学、東京大学で多くの皆さんにご支援をいただいたおかげです。素晴らしい場所と素晴らしい人たちのおかげで今回の受章につながったと感じており、改めて深く感謝致しております。
 特に生産技術研究所では、本学とマックスプランク協会との協定に基づいた統合炎症学センターの設置・運営にあたり皆様に多大のご支援を頂戴いたしました。このセンターは組織的には終了しましたが、そこから生まれた新たな共同研究や人材交流は今日も続いております。所属させて頂きました物質・環境系部門をはじめ、お世話になりました研究所の皆様に重ねまして深くお礼を申し上げます。
 これを契機に日本の科学の更なる発展と次世代を担う人たちを支援しながら尽力することが、今までお世話になった皆様へのご恩返しだと思って一層尽力したいと存じております。
 歴史と伝統のある生産技術研究所の益々の発展を祈念申し上げますとともに、今後ともどうかよろしくお願い申し上げます。

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