年次要覧
第70号 2021年度 III. 研究活動

4. 研究部・センターの各研究室における研究

4. 研究部・センターの各研究室における研究

構造物の静的および動的破壊に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 中埜 良昭

津波漂流船舶の衝突に対する鉄筋コンクリート造建築物の安全性評価手法に関する研究

教授 中埜 良昭,助教(中埜研) 松川 和人,助教(名古屋大) 浅井 竜也,大学院学生(中埜研) 肖 子旋
本研究では,津波避難ビルに影響を与える可能性の高い比較的大型の船舶を対象に,①津波波力作用下における津波漂流物の衝突によるRC造柱部材の局所損傷パターンを明らかにし,②柱の残存軸耐力に加えて梁等による軸力伝達効果を考慮しうる架構実験によりこれが建築物全体の崩壊危険性に与える影響を定量的に評価・分析することにより,③津波防災施設の設計や指定に要する荷重算定手法や架構の耐崩壊安全性評価手法ならびに関連する技術資料・データを具体的かつスピード感をもって提示すること,④これにより被災地の復旧・復興や南海トラフ地震による被害が危惧されている地域の津波災害の軽減に直接的に資すること,を目的としている.今年度は,昨年度に引き続き1層1スパン×1スパンの3次元架構に対して船舶を模擬した鋼棒を衝突させることにより,その反発係数に代表される力学特性や,安全性検討フローの適用性検証を行った.

無補強組積造壁を含むRC造脆弱架構の構造性能に関する実験的研究

教授 中埜 良昭,助教(中埜研) 松川 和人,シニア協力員(中埜研) 芳賀 勇治,大学院学生(中埜研) Adnan S.M. Naheed,大学院学生(中埜研) Monzurul Islam
途上国でみられる無補強組積造壁を含むRC造脆弱架構の破壊メカニズムと構造性能の検討を目的として,比較的知見が蓄積されているバングラデシュ国での事例を参考に,無補強組積造壁の有無をパラメータとした2層2スパンの骨組試験体を2体作製し加力実験を2018年度に行った.2019~2020年度には無補強組積造壁付き試験体の挙動を再現でき,さまざまな破壊モードに適用可能なマクロモデルの開発を実施してきた.今年度は,同種の架構の面外方向振動台実験を実施している.

都市の急激な高密度化に伴う災害脆弱性を克服する技術開発と都市政策への戦略的展開プロジェクト

教授 中埜 良昭,教授(東北大) 前田 匡樹,教授(大阪大) 真田 靖士,教授(東北大) 姥浦 道生,助教(中埜研) 松川 和人,シニア協力員(中埜研) 芳賀 勇治
本プロジェクトは,バングラデシュ国首都ダッカにおいて,地震や重力などの自然外力に対する建物の強靭化のために同国の材料特性や施工技術を踏まえて新たな建物補強技術を開発するとともに,これを実装することにより,同市の災害レジリエンス向上を実現しようとするものである.本年度は,本プロジェクトの成果をまとめた全4冊のマニュアル・ガイドラインを完成させ,計5回のセミナーを実施した.

鉄筋腐食を生じた鉄筋コンクリート造部材の構造性能に関する研究

教授 中埜 良昭,助教(中埜研) 松川 和人,大学院学生(中埜研) 宋 榮訓
鉄筋腐食を生じた鉄筋コンクリート造部材の耐震性に代表される構造性能を適切に評価することを目的として,本年度は,あらかじめ鉄筋腐食し3Dスキャンにより断面積分布をしておいた鉄筋を用いて鉄筋コンクリート造柱試験体を製作し,その変形能力評価実験を行った.また,部材の変形能力に腐食鉄筋の伸び能力が与える影響を検討し,断面積分布から簡易に伸び能力の減少を評価する手法を提案した.

地震による構造物の破壊機構解析(共同研究)

教授 川口 健一,教授 目黒 公郎,准教授 清田 隆,教授 桑野 玲子,教授 腰原 幹雄,助教(川口(健)研) 張 天昊,教授 中埜 良昭,准教授 沼田 宗純

CFRP製ジェットエンジンファンブレードの開発

教授 吉川 暢宏,大学院学生(吉川(暢)研) 阿部 雅史,大学院学生(吉川(暢)研) 佐原 由香
CFRP製ファンブレードの長期信頼性を確保するためCFRP材料の疲労強度評価手法を開発している.樹脂と炭素繊維を区分するミクロスケールシミュレーションにより,樹脂の局所的応力上昇を的確に評価することで疲労寿命が予測できることを,積層CFRP試験片を用いた疲労試験により確認した.

ミクロスケール強度基準に基づく短繊維熱可塑性CFRP部材の強度評価

教授 吉川 暢宏
短繊維熱可塑CFRP材料の強度評価手法を開発している.ランダムに配置された短炭素繊維の状況を把握するためX線CTにより撮像された画像から内部構造を構築するための画像処理技術を開発した.作成された内部構造の3次元モデルに基づく強度評価手法を樹脂の材料非線形強度モデルを導入して検討した.現実的なマクロ破壊モデルを構築するための統計的強度モデルを検討し,最弱リンクモデルではなく並列モデルで破壊強度が設定できることを確認した.成形時に樹脂に発生する残留応力を評価し,疲労寿命に与える影響を検討した.

機械学習を利用した高圧水素容器の最適設計

教授 吉川 暢宏
設計変数が膨大な炭素繊維強化プラスチック製の高圧水素容器について,最適設計を効率よく探索するための機械学習の活用法を検討している.炭素繊維強化プラスチック層の積層構成や容器の形状を適切にパラメータ表記し,パラメータをランダムに変動させて機械学習用の有限要素モデルデータを生成する.メゾスケール有限要素解析により,個々の設計の破裂圧力を正確に予測して機械学習データに加え,軽量最適設計を探索するアルゴリズムを開発した.

熱可塑複合材料の製造プロセスシミュレーターの研究開発

教授 吉川 暢宏,特任研究員(吉川(暢)研) 小笠原 朋隆
熱可塑炭素繊維強化複合材料の強度信頼性評価を,製造プロセス段階にまで立ち入って的確に評価するためのシミュレーションシステムを開発している.ミクロスケールでの炭素繊維と樹脂の複合システムとしての加工特性をシミュレーション可能なように,樹脂の温度依存非線形材料特性を直接的に導入した.マルチスケール展開によりマクロな加工特性を導出し,実部品の熱可塑プレス成形プロセス中に発生する不整を評価可能にした.ファイバステアリング技術への適用のため,Automated Tape Laying時の温度とひずみ計測結果を用いてバリデーションを行った.

高圧水素用タイプ3繊維強化プラスチック製蓄圧器の疲労寿命評価法の開発

教授 吉川 暢宏,技術専門職員(吉川(暢)研) 針谷 耕太,特任研究員(吉川(暢)研) キム サンウォン
水素社会を支える基盤インフラである水素スタンド用蓄圧器で活用されるタイプ3炭素繊維強化複合容器の最適設計のため,圧力サイクルに対する的確な寿命予測を行うための有限要素解析手法を開発している.フィラメントワィンディングされた炭素繊維強化プラスチックの積層構成を正確にモデル化するためのソフトウエアFrontCOMP_tankを開発した.詳細な有限要素解析によりアルミ合金ライナーの疲労強度予測の枠組みで寿命予測が可能であることを実証した.また自緊処理により発生する圧縮残留応力により延長される圧力サイクル寿命のメカニズムを検討している.

2次元物質による水素センシング

教授 福谷 克之,研究員(日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター) 寺澤 知潮,准教授(大阪大) Wilson Dino
グラフェンをはじめとする2次元原子層物質は水素貯蔵や水素センサーとしての応用が期待される.最近グラフェンには水素透過性があり,その際大きな同位体効果を示すことが示され,同位体分離への応用が期待されているが,その詳細な分離効率や透過機構は明らかではない.本研究では超低速イオンビームを開発し,高品質2次元物質におけるプロトン透過能を実験的に明らかにすることを目指している.昨年度までに,半球型分析器にイオン源を組み込み,ウインフィルターを導入することで,エネルギーと質量を選別した超低速イオンビーム源を開発した.このとき,水素分子イオンに対して水素原子イオンの量が二桁程度小さいことが問題となった.今年度は,イオン源のエミッション電圧の最適化,ガス導入系の改良,さらにパルス計測法の構築を行い,検出感度の向上をはかった.

スピン偏極水素源の開発と応用

教授 福谷 克之,准教授(東京電機大) 小倉 正平,大学院学生(福谷研) 中津 裕貴,研究員(日本原子力研究開発機構) 植田 寛和,助教(福谷研) 小澤 孝拓
水素原子はスピン1/2を持つ電子と陽子からなる複合ボゾンであり,超微細相互作用により全スピン1と0の2つの状態が存在する.本研究では,スピン状態が偏極した水素ビームを作成し,スピンダイナミクス解明と散乱を利用した表面磁性プローブを開発することを目的として研究を進めている.今年度は,これまでに開発した水素ビームのスピン偏極率の詳細な解析を行った.最適の速度で偏極率は95%であるのに対して,速度が早くなるにつれて偏極率が低下することがわかった.シミュレーションを利用して軌道計算を行うことで,センターストップにより偏極率を向上させられることが判明した.実際にセンターストップを導入することで偏極率の向上を観測した.このスピン偏極水素を用いて金属表面への吸着確率のスピン方向依存性評価を行った.

ミュオンスピン回転緩和法による氷中水素イオン構造の解析

教授 福谷 克之,技術専門職員(福谷研) 河内 泰三,研究員(日本原子力研究開発機構) 伊藤 孝,研究員(日本原子力研究開発機構) 髭本 亘,日本原子力研究開発機構 志賀 基之
氷中の水素イオンは,水素結合間に配置した構造を取るが,2つの酸素原子の中央に位置する場合と片側に偏った場合が考えられ,その詳細は環境に依存する.これまで,アモルファス氷および結晶氷中の水素イオンの構造を調べるため,水素の同位体とみなせるミュオンを用いたスピン回転緩和法による実験を行った.今年度は,複数スピンの時間発展を考慮してスピン緩和のシミュレーションを行い,実験結果と比較することで,アモルファス氷中の水素イオン構造を明らかにした.さらに核の量子効果を考慮した第一原理分子動力学計算を行ったところ,実験結果とよい一致を見ることがわかった.

水素の物理吸着とオルト─パラ転換・分離

教授 福谷 克之,研究員(日本原子力研究開発機構) 植田 寛和,助教(学習院大) 山川 紘一郎
水素分子には核スピン3重項のオルト水素と1重項のパラ水素が存在し,固体の表面でオルト−パラ転換が生じることが知られている.水素の液化貯蔵には,オルト−パラ転換が不可欠なことから,転換の物理的機構解明と高効率転換触媒の開発が必要とされている.本研究では,パルス分子線とレーザー共鳴イオン化の手法を用いて,微視的な機構解明と転換に効果的な新たな表面系の構築を目指して研究を進めている.昨年度は,水素分子の分子状化学吸着状態が生じるPd(210)表面で早いオルト−パラ転換が生じることを実証した.今年度は,オルト−パラ転換速度の詳細な試料温度依存性を測定し回転エネルギー散逸の機構に関する考察を行った.また純パラ水素を作製し,パラ水素からオルト水素への逆転換速度の測定に成功した.

遷移金属酸化物表面の電子状態・表面伝導

教授 福谷 克之,助教(福谷研) 小澤 孝拓,特任研究員(福谷研) 加藤 弘一,准教授(東京学芸大) 松本 益明,大学院学生(福谷研) 松澤 郁也,教授(大阪大) 田中 秀和
金属酸化物は光触媒や新規電子・磁気デバイスとして注目される.今年度は,高温での水素処理を利用して作成した黒化TiO2の表面構造と光触媒活性を調べた.表面には,傾いたテラス構造をもつ島状構造が形成され,光触媒活性も向上することがわかった.またペロブスカイト型希土類ニッケル酸化物の水素吸蔵に伴う金属絶縁体転移を調べた.希土類元素として3種類の試料を作製し,水素吸蔵に伴う電気抵抗変化を測定したところ,いずれの試料でも金属絶縁体転移が生じることがわかった.抵抗の温度変化を調べ,電子状態に関する考察を行った.また光吸収スペクトルをその場測定する装置の開発を進めた.

金属表面への水素吸着・吸蔵と伝導特性,表面反応

教授 福谷 克之,大学院学生(福谷研) 小澤 孝拓,特任研究員(福谷研) 加藤 弘一,講師(筑波大) 関場 大一郎,大学院学生(福谷研) 石崎 雄士
金属には水素を自発的に解離吸着し,さらに吸蔵する金属があり,触媒活性や吸蔵金属として注目される.本研究では,水素吸着・吸蔵における表面効果と表面触媒反応,伝導特性に関する研究を行っている.今年度は,これまで開発してきたチャネリング核反応法を用いて,チタン水素化物の解析を行った.2方向でのチャネリング核反応の2次元マップの測定を行ったところ,軸チャネリングに加えて面チャネリングパターンが観測された.シミュレーションを用いてTiおよびHへの核接近確率を計算し実験結果との比較を行うことで,水素が4面体サイトを占有することを明らかにした.さらに,スピン軌道相互作用のために巨大ラシュバ分裂が報告されているBi-Ag表面に関する研究に着手した.この表面に水素を吸着させ,熱脱離分光と低速電子回折で評価を行ったところ,水素の吸着エネルギーが低下することがわかった.さらに被覆率が高い領域で超周期構造の消失が観察された.水素吸着によりBi原子が移動したと考察した.

ナノ・マイクロ流体ダイナミクスの研究

教授 酒井 啓司,助教(酒井(啓)研) 美谷 周二朗
近年,直径数μm程度の微小流体粒を用いた新たなデバイス作製技術の研究が盛んに行われている.この程度の微粒子では,表面エネルギーや表面粘弾性,あるいは流体内イオンによる静電相互作用により,そのダイナミクスがマクロな液滴とは極めて異なったものとなることが予想される.本研究では,これまで精密な測定が困難であった微小複雑流体粒子の静的構造や粒子運動を観測する新たな手法の開発を行っている.本年度は液体粘度が従来比200倍の試料を微小粒子化可能なデバイスの開発に取り組み,マイクロ液体物理的研究における研究対象を拡張することに成功した.

多自由度が競合する複雑流体における分子緩和現象の研究

教授 酒井 啓司,助教(酒井(啓)研) 美谷 周二朗,リサーチフェロー(酒井(啓)研) 平野 太一,リサーチフェロー(酒井(啓)研) 細田 真妃子
流れ場に加えて濃度場や分子配向,温度勾配などの自由度が相互にカップルする複雑流体においては,各自由度の緩和過程が他の自由度からの影響を受けて特異なスペクトルを示す.この緩和スペクトルを精密に測定することにより,各自由度間の結合の起源を分子レベルで明らかにする試みを行っている.本年度は引き続き,異種液体微粒子の生成によりカプセル構造をもつ微粒子分散溶液と生体細胞分散溶液の粘弾性特性の比較をコントロールされた温度条件のもとで行うことで,疑似生体材料としての微粒子のレオロジー特性の検討を行った.

液体表・界面構造と動的分子物性

教授 酒井 啓司,リサーチフェロー(酒井(啓)研) 平野 太一,リサーチフェロー(酒井(啓)研) 細田 真妃子,大学院学生(酒井(啓)研) 竹内 晴哉
液体表面や液液界面など異なる相が接する境界領域での,特異的な分子集合体の構造や現象に関する研究を行っており,ゲル表面における振動モードの顕微直接観察手法を利用した,表面張力及びずり弾性率を復元力として伝搬する複雑流体上の表面振動モードの定量的解析などの研究を行っている.本年度は当研究室で開発したEMSレオメータの測定限界を広げるために新たな検出手法の検討などを行い,微粒子分散系や液体混合系などのレオロジー測定や高分子系のレオロジー計測を進めた.

複雑流体表面の超高分解能マイクロスペクトロスコピー

教授 酒井 啓司,助教(酒井(啓)研) 美谷 周二朗,リサーチフェロー(酒井(啓)研) 平野 太一
液体表面の力学的物性,特に分子吸着に伴う表面エネルギーと表面粘弾性の動的変化を調べる新しい手法の開発を行っている.本年度は局所的な電場印加によって液体表面の変形を励起し,その応答から表面の力学物性を調べる電界ピンセット技術を応用した,空中を飛翔する微小液滴のレオロジー計測および液体表面・界面物性計測が可能な新たな材料評価技術の開発を進めた.また,電解ピンセット技術による液体薄膜のレオロジー計測の新たな可能性を探るための技術開発を進めた.

乱流の非局所的な輸送拡散現象

教授 半場 藤弘
乱流モデルで良く用いられる渦粘性近似・渦拡散近似は,レイノルズ応力やスカラーフラックスがその場の平均量の勾配に比例するという局所近似を仮定している.しかし熱対流乱流など大規模な対流渦を含む流れ場では局所近似が良くないことが知られている.本研究では乱流の非局所性を解析し,その機構の解明とモデルの改良を行っている.特にフィルター平均速度を用いてスケール空間のエネルギー密度を定義し,乱流のエネルギー輸送を考察した.

回転・熱対流乱流の解析とLESのモデリング

教授 半場 藤弘,助教(半場研) 横井 喜充,技術専門職員(半場研) 小山 省司,大学院学生(半場研) 堀江 真惟人
円管内の流れに旋回を加えると中心軸付近で主流分布が凹んだり逆流が生じる,また浮力の効果により乱流の乱れや主流が駆動されるなど,回転や浮力の効果を受けた乱流は興味深い性質を示す.本研究では乱流エクマン層や回転チャネル乱流のヘリシティーの生成と輸送を解析した.特に回転チャネル乱流のLESを行い,ヘリシティーの各成分の輸送について考察した.

圧縮性乱流の解析とモデリング

教授 半場 藤弘,助教(半場研) 横井 喜充,大学院学生(半場研) 中村 元紀
流体の速度が音速と同程度になると圧縮性効果が重要となり,その効果を適切に取り入れて乱流モデルを拡張する必要がある.本研究では乱流と衝撃波の相互作用に着目し,直接数値計算データを用いて乱流エネルギーの増幅の機構を考察し,増幅を適切に再現するために乱流モデルを改良した.

電磁流体乱流のダイナモ機構とその応用

教授 半場 藤弘,助教(半場研) 横井 喜充
地球や太陽などの天体で見られる磁場はダイナモ機構すなわち天体内部の電導性流体の運動によって駆動され維持されると考えられる.また磁力線がつなぎかわる現象である磁気リコネクションは,宇宙・天体・実験室のプラズマ現象で重要な役割を果たす.本研究では乱流の統計理論を用いて非圧縮性および圧縮性の電磁流体のクロスヘリシティーの乱流モデルを導き,太陽ダイナモ現象や乱流磁気リコネクションなどに適用した.また圧縮性電磁流体乱流の傾磁場効果や超新星爆発の輸送現象について考察した.

時間ー空間領域での二重平均操作でとらえた乱流の非平衡効果を用いた恒星対流輸送の理論的定式化とモデリング

助教(半場研) 横井 喜充
恒星対流の輸送では,表面の放射冷却で生成される下降プリュームが大きな役割を果たす.時間領域と空間領域での二重平均操作によってプリュームをコヒーレントゆらぎとして捉え,その運動に沿った非平衡効果を乱流輸送の表式に組み入れる.それによって,恒星での質量輸送や熱輸送を理論的に定式化する.

fccおよびbcc構造を持つ微小な結晶の塑性変形に関する転位弦張力モデルを通した理解

助教(枝川研) 上村 祥史,教授 枝川 圭一,名誉教授(東京理科大) 竹内 伸
近年,集束イオンビームによる微細加工を用いた微小な金属結晶の塑性変形研究が広く行われ,結晶サイズが小さくなると急激に変形応力が高くなることが実験的に示されている.昨年のfcc構造結晶に続き,本研究では体心立方金属について,理論的なアプローチとして単純な転位弦の線張力モデルを用い,この現象を定量的に説明することに成功した.

ファンデルワールスヘテロ構造の作製と量子輸送現象

教授 町田 友樹
様々な二次元結晶のファンデルワールスヘテロ構造を作製して量子輸送現象を調べる.

二次元物質ファンデルワールスヘテロ構造における光電気物性の研究

助教(町田研) 張 奕勁

フォノン流体力学に基づく熱伝導

准教授 野村 政宏,日本学術振興会特別研究員(野村研) Yangyu Guo,国際研究員(野村研) Sebastian Volz,大学院学生(野村研) Xin Huang,教授 町田 友樹,特任准教授 増渕 覚

開放量子系の非マルコフ的ダイナミクス

教授 羽田野 直道
周囲と粒子やエネルギーをやりとりしている量子系を開放量子系と呼ぶ.近年,様々な観点からの理論研究が進められている.量子系の実験では,観測機器を接続するために常に開放量子系になっていると言える.周囲と強く相互作用するような開放量子系のダイナミクスを理論的に明らかにすることは,実験における測定で系を乱すときに初めて起こる現象の探索など,幅広い意義がある.これまでの多くの研究ではメモリー効果を無視したマルコフ近似を行った解析がほとんどであった.本研究では,非マルコフ的ダイナミクスを非線形固有値問題として直接的に解析する手法を検討している.

弱測定の精密測定への応用に向けた理論解析

助教(羽田野研) 李 宰河,准教授(高エネルギー加速器研究機構) 筒井 泉
量子測定において有用な測定値を選別する手法としての弱測定法が,測定精度の向上をもたらし得る機構を解析し,既存の実験のデータの分析・検証を通したその有用性の実証や,今後の幅広い応用へ向けた検討を行う.

量子化・擬確率の随伴理論に基づく量子現象の解析

助教(羽田野研) 李 宰河
量子化・擬測定の双対構造に着目して,量子論における諸現象を解析する.

量子論における不確定性原理の普遍的定式化

助教(羽田野研) 李 宰河
不確定性原理の普遍的な定式化を通して,量子論における不確定性の多彩な顕現様式を融合し,その包括的理解に資することを目的とする.

カーパラメトリック発振器のデコヒーレンス解析

大学院学生(羽田野研) 青木 隆明,主任研究員((国研)産業技術総合研究所) 松崎 雄一郎
カーパラメトリック発振器のGKSL方程式のミクロな導出と解析

情報エントロピーを用いる熱力学不確定関係

大学院学生(羽田野研) 王 鑫
クレーマー―ラオ不等式に基づいて,フィッシャー情報量はどのような条件の下に情報エントロピーに結びつくかを解明し,情報エントロピーを含んだ熱力学不確定関係を導出する.またそれをいくつかのモデルで検証を行う.

結合量子調和振動子系の非平衡熱力学

大学院学生(羽田野研) 青木 隆明,主任研究員((国研)産業技術総合研究所) 松崎 雄一郎
結合量子調和振動子系のエントロピーや温度の定義と解析

製御可能なキャビティ光力学に基づく開放量子システムの研究

大学院学生(羽田野研) 尚 程,教授 羽田野 直道
コール非線形性を利用して光力学システムの放射圧非線形性の製御可能な強化を実現し,それによって光力学システムの固有の非線形性による物理特性を研究する.

量子Ising系の非平衡ダイナミクスとその応用

大学院学生(羽田野研) 吉永 敦紀
量子多体系の基本モデルであるIsing系における特異な非平衡現象とその技術応用についての理論研究を行っている.

量子アクティブ粒子の非エルミート量子ウォークを用いた定義

大学院学生(羽田野研) 山岸 愛,教授 羽田野 直道,助教(北海道大) 小布施 秀明
古典系において研究が進められているアクティブマターを,非エルミート量子ウォークを用いて量子系で定義することを試みている. これまでに一次元では成功し,古典系での先行研究と同様の,エネルギー取り込みがあるとその分運動が活発になりポテンシャル障壁を登るという様子がみられた.今後,先行研究との対応を見やすくするために二次元への拡張を目指している.

量子相関および情報を考慮した量子熱力学の構築に関する研究

大学院学生(羽田野研) 石崎 未来,助教(羽田野研) 李 宰河,教授 羽田野 直道,協力研究員(羽田野研) 田島 裕康
量子相関及び量子情報の観点から,熱力学を量子的に拡張した量子熱力学の理論的構築を行う.

赤外パルスを用いた気相分子の振動回転励起に関する研究

教授 芦原 聡,助教(芦原研) 森近 一貴,大学院学生(芦原研) 津坂 裕己
赤外超短パルスレーザーにより分子の振動を強く励起することで,化学結合の選択的な切断・生成が可能になることが知られており,化学反応を分子レベルで制御する手法の一つとして注目されている.これまで,気相分子に対して分子種や同位体を選択してその解離反応を制御した例が報告されているが,その振動励起過程の詳細は明らかにされていない.そこで本研究では,赤外ポンプ・プローブ分光法による気相分子の振動・回転励起ダイナミクスの観測に取り組んだ.今年度は,気相分子の第1振動励起状態への励起に伴う吸収変化スペクトルを観測することに成功し,理論計算による結果とも良い一致を示した.

赤外プラズモニクスを活用した電気化学反応の新規振動分光法の開発

教授 芦原 聡,助教(芦原研) 森近 一貴
近年の環境・エネルギー問題への関心の高まりとともに,電気化学反応などのエネルギー変換技術に関する研究の重要性が増している.これらの電気化学反応を深く理解するためには,電極表面における反応物・中間体・生成物の構造を分子レベルで理解することが必要不可欠である.赤外分光法は,こうした分子レベルの知見を非破壊的かつその場で測定できる強力なツールであるが,本質的に測定感度に乏しいという欠点がある.そこで本研究では,金属ナノ構造の表面プラズモン励起に伴う電場増強効果を利用した,電気化学反応を高感度に計測できる新規赤外分光法の開発に取り組んだ.

赤外モード同期レーザーを活用した微量分子検知手法の創出

教授 芦原 聡,助教(芦原研) 森近 一貴,大学院学生(芦原研) 宋 清文,大学院学生(芦原研) 岡崎 大樹,大学院学生(芦原研) 藤原 心
赤外波長域は「分子の指紋領域」と呼ばれるように,分子振動モードの共鳴線が多数存在する.そのため,赤外域の吸収・散乱計測により,分子構造解析,化学種の同定・定量分析が可能となる(振動分光法).本研究では,指向性・広帯域性・短パルス性をあわせもつ赤外モード同期レーザーを活用した新しい振動分光法の創出を目指している.具体的には,信号強度が光源の輝度に比例して増大するバックグラウンドフリー分光法を開発し,気相分子を対象として高感度検知の原理実証に成功した.

赤外モード同期固体レーザーの開発

教授 芦原 聡,特任研究員(芦原研) 卜 祥宝,大学院学生(芦原研) 岡崎 大樹
振動分光法に革新をもたらすキーデバイスの一つが赤外波長域のモード同期レーザーである.赤外モード同期レーザーによって分子を高感度に検出し,あるいは,分子反応を制御するためには,その強度雑音を可能な限り低減する必要がある.本研究では,赤外波長域で広帯域な蛍光スペクトルを示すクロム添加硫化亜鉛結晶を利得媒質とするレーザー共振器において,結晶内で生じる第二高調波発生を活用すると,固体レーザーに特有の緩和発振に起因する雑音を大幅に低減できることを見出した.これにより,堅牢で低雑音な赤外モード同期固体レーザーを実現した.

金属─誘電体ハイブリッド構造における電子放出を利用した光電場計測素子の開発

教授 芦原 聡,助教(芦原研) 森近 一貴,大学院学生(芦原研) 岡崎 大樹,大学院学生(芦原研) 新井 滉
通常,光検出器といえば光の時間平均的な強度を測るものであり,光の瞬時電場を計測できるものではない.これは,電波の場合と異なり,光の電場振動がペタヘルツという極めて高い周波数領域にあり,電気回路が追従できないためである.ところが,光電場が物質中のクーロン電場に匹敵するほど強くなると,物質中の電子が光の瞬時電場に追随して応答するようになる.本研究では,このような電子の瞬時応答を利用して,光の電場を直接的に計測する手法の開発を行った.特に,金属と誘電体のハイブリッド構造を採用することにより,光電場の計測感度と素子の光損傷耐性をそれぞれ大幅に向上させることができた.

岩の風化と斜面災害に関する研究

准教授 清田 隆
極端な干ばつと豪雨の繰り返しが地盤の風化や斜面の安定性に及ぼす影響を,原位置試料を用いた改良型一面せん断試験により検討している.本試験機では,せん断クリープ状態において供試体の乾燥・湿潤および温度調節が可能である.

液状化地盤の強度変形特性に及ぼす土粒子構造の影響

准教授 清田 隆
砂地盤の液状化特性は密度や粒度特性だけでなく,その微視的構造の影響を受ける.これらの関係を総合的に理解することは,年代効果も考慮できる合理的な液状化予測手法の確立,液状化試験用の不撹乱試料の品質評価にもつながる.本研究では室内試験における微小せん断剛性率の計測を併用した三軸・中空ねじりせん断試験,および様々な現場調査により,この課題に取り組んでいる.

雨による急速かつ長時間にわたる地すべり早期警報技術の開発【柏地区利用研究課題】

准教授 清田 隆

間隙水流量と細粒分流出の同時計測を可能とする一次元圧密試験装置の開発

助教(清田研) 志賀 正崇

非排水繰り返しせん断中の砂質土のエネルギー特性に関する基礎的研究

助教(清田研) 志賀 正崇

複雑流体物理学

准教授 古川 亮
複雑流体の動的問題について幅広く研究を行った.ガラス転移の物理機構及びその周辺の課題に対する理論的な解明に向けた努力を主に展開しているが,今年度の主な成果として,以下を列記する. (i)ガラス形成液体のような構成要素の運動が極めて遅くなる液体の短時間挙動は固体的である.このような状態に固有な運動量輸送のメカニズムと特徴的な非局所粘性の由来を明らかにした.(ii)剪断下でのガラス液体の問題に対して自由体積描像に基づいたアプローチは一つの大きな潮流をなしている.しかしながら,自由体積の物理的実体が明らかでないため,抽象的な理解を超えるものではなかった.これに対し,自由体積(密度)の剪断下での変化の実体を明確にし,これを定量化するアプローチを確立した.このようにして見積もられた自由体積を緩和時間のDoolittle則と組み合わせることで,非線形領域まで統一的に記述しうる構成方程式を提案した.(iii)非ブラウニアン粒子分散系のシアシニング現象と溶媒散逸の空間相関の低減が本質的に結びついていることを見出した.(iv)大腸菌のような微生物が分散した液体では,粘性が異常に減少し,ついには超流動的な振舞いに至ることが観測されていたが,この問題について明確な理解が得られていなかった.これに対し,直接流体シミュレーションによる系統的解析に基づき,アクティブマター系で見られる異常レオロジーは,流体力学的相互作用により構成要素の泳動状態がある特定軸方向に(弱く)自己組織化されるために発生するという全く新たなメカニズムを見出した.

原子分解能その場機械試験による酸化物結晶の変形・破壊挙動解析

准教授 栃木 栄太

キラル分子からなる結晶のトポロジカル相転移における創発弾性場の役割

特任講師 高江 恭平,講師(名古屋大) 川﨑 猛史
らせん状や渦巻き状など鏡像と重ならない複数の構造を示す「トポロジカル材料」の相転移を制御するモデルを新たに提案し,トポロジカル材料の相転移で力を生み出せること,力で相転移を制御できることを明らかにした.この成果は,電気・磁気のみならず,力学的にも機能を発揮するトポロジカル材料を設計する基礎的な物理原理を提供するものであり,アクチュエータや圧電素子などへの応用が期待される.

粘弾性流体におけるシアバンディングのメカニズム解明

特任講師 高江 恭平,客員共同研究員(東大) 田中 肇
高分子系に代表される粘弾性流体は特異な力学特性を示し,中には流動化で自発的に不均一流動が生ずるレオロジー不安定性を有するものがある.とくにシアバンディングと呼ばれる現象では,均一なシア流動に対して,シア勾配の大きい領域と小さい領域とに自発的に分離する.我々はそのメカニズムを解明すべく,体積粘弾性緩和を取り入れた理論を構築し,流体力学シミュレーションによりシアバンディングが説明可能であることを示した.さらに分子動力学シミュレーションにより,本モデルの分子論的起源にも迫ることに成功した.

自己回転粒子の相分離

PhD. student (Indian Institute of Technology, Madras) Bhadra HRISHIKESH,客員共同研究員(東大) 田中 肇,特任講師 高江 恭平

荷電コロイドの流体力学における電荷の不均一性

特任講師 高江 恭平,客員共同研究員(東大) 田中 肇,特任研究員(東大) Jiaxing YUAN
コロイド粒子とは目では見えないほど小さく,しかし原子分子よりはるかに大きな大きさを持つ粒子の総称であり,相互作用が多彩であること,熱ゆらぎの影響を強く受けることなどから,多様な構造形成,ダイナミクスを示す.多くのコロイド粒子は,表面に電荷を持ち,水などの溶媒中に分散したイオンと相互作用することで複雑な挙動を示すが,そこでは,コロイド表面の電荷が不均一になることが重要であり,コロイドの凝集過程や,水と油の混合溶液における運動を支配している.そのような複雑なふるまいを,電荷の不均一性と流体力学の結合に着目して,統一的に理解することを目的としている.それにより,コロイド溶液のダイナミクスに普遍的な物理的描像を与えること,またコロイドを構成要素とした高次の構造形成に対する,指針を与えることが可能になると期待している.

AM(Additive Manufacturing)を用いた新しいものづくりの研究

教授 山中 俊治
近年,3Dプリンタの普及によって生産技術の現場は大きく変革しているが,その反面で,AMの効果を最大限活かしたコンテンツの発見にはまだ至っていない.本研究では,AMの製造技術を理解したうえで可能となるものづくりの方向性を示すことを目的としている.

AM技術を用いた義足のデザイン

教授 山中 俊治
現在,義肢装具士の手づくりで行われている義足のソケット製作のプロセスにAM技術を導入することで,美しい外観を持ち且つひとりひとりにフィットするソケットをデザインする.3次元計測による義肢装具士が行っているソケット製作のノウハウを定量化,積層造形技術の特性を活かした美しい外観と機械特性を両立するデザイン手法の開発を行う.

Bio-Likenessロボットの研究

教授 山中 俊治
本研究では人に生命感を想起させるロボットを制作する.一般的にロボットは産業用ロボットを除くと生体模倣を基軸とした設計が主であるが,特にそれらにおいては構造と外装の設計を分けて考えがちである.制御部品やモータは覆い隠される傾向にあるが,構造によるふるまいと外観は同時にデザインされるべきであると考えている.このようなデザイン・エンジニアリング手法を取り入れた設計は,ブラックボックス化を防ぐだけでなく,メンテナンス性の向上にもつながる.

アスリート用義足のデザイン

教授 山中 俊治
主に陸上競技用の義足の開発を行う.2008年から始まったプロジェクトの一環として,身体のラインに沿うデザインの機能的かつ美しい義足の開発を行っている.断端に合わせて作成するソケットは,従来義肢装具士の手作業で作られており,重量の最適化や外観のデザインは十分になされていなかった.本研究では,3次元計測とドライカーボンの製造技術を用い,軽く,強度に優れ且つ美しい義足を開発する.

グラフェンを利用した熱拡散型工具の開発

教授 臼杵 年,特任研究員(臼杵研) 萩野 将広,大学院学生(臼杵研) 黄 穂生
工具刃先温度の低減による凝着(原子整合による付着)の軽減を行うために,グラフェンの高熱伝導特性(理想値5800W/mK)を利用した工具開発を行っている.また冷却効果を上げるため超高圧クーラントの併用とその効果も検討している.

タングステンの切削およびねじ切り加工

教授 臼杵 年,特任研究員(臼杵研) 森田 翔,大学院学生(臼杵研) 関 紘也
純タングステンの切削特性とねじ切り特性について調査している.

工作機械のスピンドルおよび回転軸の冷却手法に関する研究

教授 臼杵 年,特任研究員(臼杵研) 森田 翔,大学院学生(臼杵研) 梶川 真吾
工作機械の高速化に対応するため,高速回転時に発生する熱を効率よく逃がし冷却する手段として,高熱伝導材料を利用したスピンドルを考案し,その効果を検証している.またターニング機能を持たせたマシニングセンターのテーブル軸の冷却についても検討している.

航空機製造におけるものづくりに関する技術開発

教授 臼杵 年,教授 岡部 徹,教授 岡部 洋二,准教授 土屋 健介,特任教授 橋本 彰,特任講師 馬渡 正道,教授(東大) 柳本 潤,准教授 山川 雄司
次世代の航空機製造技術に関して,複数のテーマを同時進行でその課題解決に取り組んでいる.

超高圧クーラント給油の効果に関する研究

教授 臼杵 年,特任研究員(臼杵研) 森田 翔,大学院学生(臼杵研) 毛 経天
超高圧クーラント給油の効果について,旋削およびエンドミル加工において逃げ面給油を追加した効果について検証している.さらに冷却作用だけでなく切削界面を含む切削領域周辺での潤滑作用についても見直しを行っている.主対象被削材は,チタン合金,超耐熱合金である.

難削材切削加工の研究【柏地区利用研究課題】

教授 臼杵 年,特任研究員(臼杵研) 森田 翔
チタン合金,超耐熱合金等の難削材料の切削加工を中心に,加工法,切削現象,切削工具開発や切削油剤給油法等の研究を行っている.

LESのための壁面モデルに関する研究

教授 加藤 千幸
LESは,流れの支配的な渦を解像することで高精度な乱流解析が可能である.工学的に扱われるレイノルズ数を基に具体的に見積もると,自動車で約3兆,水力機械で約500兆,旅客機で約600兆,船舶で約11京の格子数が必要になる.将来の計算機の発展を考慮したとしても,現実的な乱流解析を行うためには壁面モデルなどを導入し,格子数を減少させる工夫が必要である.そこで,本研究では,信頼性のある壁面モデルの提案のための基礎的な知見を得るために,流れの支配的な渦を解像する高精度なLES解析を行い,壁面せん断応力と流れ場から予測した壁面せん断応力の相関を調べた.

ITS(高度道路交通システム)における自動車の運動制御に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大

「柏の葉地区における自動運転バス実証実験運行事業」に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大,教授 中野 公彦,教授 大口 敬

ビークルにおけるマルチボディ・ダイナミクスに関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大

モビリティ・イノベーション連携に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大,教授 中野 公彦,教授 大口 敬

人間行動指標による公共交通システムの快適性評価【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大

小型モビリティの自動運転システムにおけるHMIおよび車両・インフラ側のセンサーフュージョンに関する基礎検証【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大

新たな鉄道技術の開発と推進及び自動交通のインタラクティブなシステムに関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大,教授 中野 公彦

次世代モビリティ評価シミュレーションに関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大

自動運転による社会・経済インパクトに関する研究 (NEDO SIP)【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大,教授 大口 敬,教授 中野 公彦,准教授 鈴木 彰一,特任研究員(大口研) 長谷川 悠,同志社大 三好 博昭,同志社大 渡辺 昭次
消費者の購入意向調査に基づき,将来,導入されると期待される自動運転技術に応じて,その自動運転車の普及推定モデルと,これを利用した自動運転車の導入・普及により,交通事故低減や,交通渋滞削減とこれに伴うCO2削減がもたらす社会・経済効果評価などに関する研究開発に取組んでいる.

自動運転に係る海外研究機関との共同研究の推進に向けた連携体制の構築 (NEDO SIP)【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大,教授 中野 公彦,教授 大口 敬

超低速移動体の自立移動モビリティ評価【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大

車両空間の最適利用に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大

車載カメラを用いたカーブミラーに映る危険事象の認識

教授 須田 義大,特任准教授 小野 晋太郎

車輪・レール系の知能化に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大

通信型ITSによる公共交通優先型スマートシティの構築

教授 須田 義大,特任准教授 小野 晋太郎,准教授 鈴木 彰一,リサーチフェロー(須田研) 杉町 敏之

ITS(高度道路交通システム)に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大,教授 中野 公彦,教授 大口 敬,准教授 鈴木 彰一,准教授 山川 雄司,特任准教授 小野 晋太郎,客員教授 天野 肇,客員教授 鎌田 実,助教(大口研) 鳥海 梓,助教(山川研) 平野 正浩,助教(中野研) 楊 波,特任助教(須田研) 郭 鐘聲,特任助教(須田研) 霜野 慧亮,特任助教(須田研) 林 世彬,特任研究員(須田研) 内村 孝彦,特任研究員(須田研) 梅田 学,特任研究員(須田研) 河野 賢司,特任研究員(大口研) 長谷川 悠

オペランド環境走査型プローブ顕微鏡

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
探針や表面の修飾や改変のインプロセス観察を目的とした,環境可変,雰囲気可変走査型プローブ顕微鏡の開発を行なっている.

カラー原子間力顕微鏡の理論考察

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
カラー原子間力の像解釈と理想的探針についての理想的考察

コンタクトモード原子分解能走査型力顕微鏡

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
単原子架橋時に得られる可能性のある接触モード原子分解能撮像の研究.ナノトライボロジー応用と試料観察新手法の実現を目指している.

導電性ポリマーによる吸湿過程の微視的考察

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大,准教授(東北大) 小林 光
導電性ポリマーによる吸湿性を,微小質量計測,顕微鏡観察,微視的粘弾性計測などを用いて明らかにする.社会実装の空調装置としては,東北大学小林光准教授が研究代表者を務めている.

探針のフォーススペクトロスコピー

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大,教授(三重大) 北川 敏一,教授(電気通信大) 佐々木 成朗
分子修飾法,背景力評価等をFIMAFMFIMAFM等で評価.小型の走査型プローブ顕微鏡で,修飾分子を含む気体を還流し表面や探針の修飾の可能なものの研究を行なっている.

生殖細胞の力学的計測

教授 川勝 英樹
配偶子の力学的計測を行うために,力や水中の音に対して感度の高い検出方法を開発している.

空調パイプを用いた除湿・湿度制御に関する研究

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大,准教授(東北大) 小林 光
空調に広く用いられているパイプやダクトを湿度制御のために用いる研究

踏力のリアルタイム計測

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
スポーツにおけるトレーニングや戦略への応用として,IOT技術や通信技術を応用して,多チャンネルの情報取得を構築している.

CT画像からの3次元血管形状自動抽出手法,血管形状編集手法の開発

教授 大島 まり,受託研究員(大島研) 小林 匡治,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹,リサーチフェロー(大島研) 早川 基治,リサーチフェロー(大島研) 庄島 正明,講師(東大) 保科 克行,大学院学生(大島研) 陳 琰
CTのスライス画像を重ねて3次元血管形状を構築する際には,近接血管がくっついて認識してしまうことがあるほか,CT解像度程度の細い血管が分岐することに起因する血管の突起など,セグメンテーション処理において医学的知見に基づいて手動で補正しなければならない.また,動脈瘤が出現する過程を考察するため,動脈瘤を除去した血管形状をセグメンテーション領域に対して手動で編集する必要がある.本研究ではそれらの作業を自動で行うことのできるアルゴリズムの開発を目指す.

Image-Based Simulationにおける脳血管形状の血行力学に与える影響の考察

教授 大島 まり,大学院学生(大島研) 陳 琰,受託研究員(大島研) 小林 匡治,リサーチフェロー(大島研) 庄島 正明,リサーチフェロー(大島研) 高木 清,リサーチフェロー(大島研) 早川 基治,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹
重大な脳血管疾患であるくも膜下出血に対して,その主要因の脳動脈瘤の破裂に関連する手術ガイドライン作成が求められている.そこで,本研究では脳血管の血流を数値シミュレーションし,動脈瘤の発生,破裂のメカニズムの解明を目指している.シミュレーションに用いる3次元血管モデルについて,医用画像から血管抽出および,3次元構築の手法の問題点と解決法を検討する.さらに,モデルの中心線を抽出することにより形状をパラメータ化し,モデルをパラメトリックに変形して血管形状の血行力学に与える影響を考察する.

Willis動脈輪における血管形状のパラメータ化と形状分析

教授 大島 まり,大学院学生(大島研) 陳 琰
血管内の壁面剪断応力(WSS)は,血管内皮細胞に直接作用を及ぼし,血管疾患の発生に関係する血行力的因子である.WSSは,血管形状に大きく影響される.本研究は,61例のMRA画像(Brain Vasculature database, BraVa)と9例のCT画像から抽出した脳部動脈血管スケルトンデータを対象とし,曲率とねじれ率からなる三次元形状パラメータを用いて血管形状の特徴を分析する.また,データ駆動型のアプローチにより,動脈瘤・狭窄症が起こりやすい脳主幹動脈形状の主成分分析を行う.

デジタルホログラフィック計測によるマイクロ混相流動現象の3次元計測

教授 大島 まり,技術専門職員(大島研) 大石 正道
血液診断チップに代表されるマイクロ流体デバイスは,多くの利点から普及が期待されているものの,デバイス内で起きている3次元的で複数の物理現象が重複した流れを定量的に計測する手法が確立されていないことが,実用化に向けた障害となっている.本研究では,対象の3次元情報を2次元のホログラム画像に記録できるデジタルホログラフィック顕微鏡(DHM)を用いて,これらマイクロスケールにおけるマルチフィジックス現象の定量的な計測を目指す.特に,本計測手法を用いて,マイクロ流体デバイスで頻繁に用いられるマイクロ液滴の生成・流動挙動計測を行う.

マイクロ3次元光造形法の開発

教授 大島 まり,技術専門職員(大島研) 大石 正道
本研究では,赤血球のマイクロ挙動解明に向けたモデル実験に用いる,3次元特殊形状マイクロビーズの造形を念頭においた,マイクロ流路内に複雑な3次元形状の構造物を高速造形する手法の開発を目的とする.本手法で作成する赤血球モデルの混相流計測を行うとともに,本手法が持つ高速性,製作精度,生産性,造形できる形状および機能の自由度の高さといったアドバンテージを生かし,マイクロ流体デバイスの開発手法に強力な造形ツールとして提案する.

モデリング及び可視化機能のある統合的血流1D-0Dシミュレーションシステムの開発

教授 大島 まり,受託研究員(大島研) 小林 匡治,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹,リサーチフェロー(大島研) 早川 基治,大学院学生(大島研) 陳 琰
血流1D-0Dシミュレーションは,手術効果予測・評価のために行われる.全身動脈の血流状態を直感的に把握するには,シミュレーション計算に使われる患者固有医療画像データだけでなく,統計データも取り入れて,人体の全身循環網を3次元に構築し,可視化する必要性がある.本研究は,統計データに基づいて全身の主な動脈の3次元モデルを構築し,deformable modelの手法により患者固有形状モデルと連結させて,その上にシミュレーション結果を可視化する.また,仮想手術と想定する,システム上でインタラクティブに血管径を調整し,1D-0Dシミュレーションに使うインプットファイルを作成する機能もモジュールに取り入れる.

上顎骨の後上方移動術前後における鼻呼吸機能の流体解析

教授 大島 まり,研究実習生(大島研) 青柳 美咲
不正咬合や咀嚼機能の改善に顎顔面領域の外科治療が多く行われており,主として咬合関係や顔貌形態を基準に手術計画が作られる.しかし,術後に気道形態が変化することが指摘され,睡眠時無呼吸症候群などの呼吸障害が生じるおそれがある.上顎骨の移動が呼吸に与える影響は大きく機能的評価が必要であるが,上顎骨後上方移動に伴う鼻腔,咽頭部の変化に関する報告は認められない.そこで,医用画像から気道の3次元モデルを構築し,上顎骨後上方移動を伴う顎矯正手術が鼻呼吸機能に与える影響を機能的に明らかにすることを目的に解析を行っている.

下肢動脈の血管ステント挿入時の血流解析

教授 大島 まり,リサーチフェロー(大島研) 早川 基治,大学院学生(大島研) Chen Wang
Unlike the straight model, the curved helix model will occur secondary flow performance at the curved part of the vessel, which will affect the local wall shear stress and oscillatory shear index distribution, to further investigate on how the shape of the curved helix would affect the flow performance inside the targeted artery, we try to design helix models with different combinations of curvature and torsion and simulate cases using Openfoam and compare the results to the reference straight model.

多波長共焦点マイクロPIVによるマイクロ混相流の可視化計測

教授 大島 まり,技術専門職員(大島研) 大石 正道
近年,発展の目覚しいマイクロTASの分野においては,混合や分離,化学反応,運搬といった様々な機能を,微少流体の正確な操作により実現することを目的としている.主なアプリケーションとして,マイクロ液滴を用いたデッドボリュームの少なさによる混合や反応の高速化,生体細胞やDNAを内包しての運搬などが開発されている.これら主な機能を果たすのは液滴や固体粒子が混在する液液混相流もしくは固液混相流である.そのため,マイクロスケールにおける各相の相互作用の解明が重要である.本研究では本研究室で開発された共焦点マイクロPIVの技術を応用し,マイクロ混相流の計測が可能な2波長分離ユニットを組み込んだ.これにより,マイクロ液滴の内部および外部流速の同時計測や,マイクロジャンクションにおけるwater in oil液滴生成機構の計測,マイクロビーズを含む固液混相流の計測を行なっている.

大動脈瘤への形状パラメータの影響

教授 大島 まり,研究実習生(大島研) 中島 嘉春
曲率・捩率を基本とした形状パラメータのWSSへの影響を調べることで動脈瘤形成部位の予測を目指す.

機械学習による代理モデルを用いた脳循環シミュレーションの不確かさ解析

教授 大島 まり,リサーチフェロー(大島研) 早川 基治,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹,大学院学生(大島研) 大囿 勇也
血流シミュレーションによる予測結果の信頼性を評価するには,医用計測データに基づいて設定したモデルパラメータの不確かさが,予測結果に及ぼす影響を定量化する必要がある.そのためには,不確かさ範囲内の異なる条件でシミュレーションを繰り返し,結果の統計量を得る必要があるが,計算規模が必然的に大きくなることから,医療現場での実施が難しいという問題点がある.そこで本研究では,深層学習を活用し,従来の血流シミュレーションと同等な予測を高速で行う代理モデルを作成した.これにより,不確かさ解析をデスクトップPCにて数分で実施可能にした.

粒子法による液滴の滴下挙動再現と定量的評価

教授 大島 まり,技術専門職員(大島研) 大石 正道,リサーチフェロー(大島研) 向井 信彦,研究実習生(大島研) 夏目 拓也
脳動脈瘤の破裂によって引き起こされるクモ膜下出血への予防術式として,海外では液体を用いて瘤内を塞栓する液体塞栓術も用いられており,歪かつ巨大な脳動脈瘤に対応可能であることから今後は有力な術式と期待されている.しかしながら,液体塞栓術は塞栓材が瘤外へ流出して健常な血管も塞栓する危険性があるため,国内では未認可である.我々は,粒子法を用いて液体塞栓術への応用を目的とした塞栓材注入シミュレーションを開発し,物理実験と比較することで精度の検証を行ってきた.しかしながら,これまでのシミュレーションで形成された液滴は物理実験のような滴下の挙動を再現できていなかったため,物理実験との比較による定量的な精度検証はできていなかった.そこで,界面張力モデルとしてポテンシャルモデルを用いることで,シミュレーションでも液滴の滴下挙動を再現し,物理実験との比較により液滴挙動の定量的評価を行った.本手法の適用により,液滴の滴下挙動が再現でき,また,滴下時刻は若干異なるが形成過程は物理実験とほぼ一致していることを確認した.

脳循環の末梢血流を考慮した数理モデルの構築

教授 大島 まり,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹,大学院学生(大島研) 祇園 真志
末梢部の流れを考慮した脳循環のモデルを構築することを目的とし,末梢部の側副血行の影響を調べた.

脳血管モデルが血行動態に与える影響の評価

教授 大島 まり,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹,大学院学生(大島研) 大囿 勇也
医療計測データに基づく不確かさを含めた血流シミュレーションは,過灌流リスクを非侵襲的に評価することが可能であるが,医療現場での利用には多数の実症例で妥当性を検証することが必要である.本研究ではより多数の症例におけるシミュレーションを実施し,予測精度の検証と向上を図る.

腹部大動脈瘤におけるステントグラフトの3次元形状の経時変化の定量化

教授 大島 まり,受託研究員(大島研) 小林 匡治,教授(東大) 高木 周,大学院学生(東大) 根元 洋光,講師(東大) 保科 克行
腹部大動脈瘤におけるステントグラフトを用いた血管内治療は,開腹手術に比べて患者への負担が小さいため広まっている.一方で,ステントグラフトのマイグレーションに起因した有害事象が発生しており,原因調査や対策が研究されている.本研究は,医用画像から得られたステントグラフトの中心線を抽出し,曲率や捩れ率等の形状パラメータとして定量化することで,ステントグラフトのマイグレーションによる有害事象の予兆を定量的に把握するための手法を開発する.医用画像から得られた中心線は画像ノイズを持つため,ペナルティ項付のスプラインフィッティング手法を適用することで,曲線の特徴を消さない平滑化を行う.

腹部大動脈瘤における薬剤内包ミセル挙動解析

教授 大島 まり,講師(東大) 保科 克行,リサーチフェロー(大島研) 向井 信彦,研究実習生(大島研) 夏目 拓也,大学院学生(東大) 福原 菜摘,大学院学生(大島研) 渕 将徳
腹部大動脈瘤に対する治療法として薬剤投与が有効であると考えられており,その臨床化に向けて薬剤ミセルの滞留メカニズムを明らかにする.

色収差を利用した3次元マイクロ速度場計測法の開発

教授 大島 まり,技術専門職員(大島研) 大石 正道,リサーチフェロー(大島研) 向井 信彦
本研究では,共焦点マイクロPIV(Particle Image Velocimetry:粒子画像流速測定法)の欠点であった3次元計測に向けて,クロマティック(色収差)レンズを利用した,3次元マイクロ速度場計測法の開発を行っている.本手法は面倒なキャリブレーション作業を必要とせず,シンプルな機器構成で実現できるアドバンテージがあり,従来の手法よりも高倍率・高解像な計測が可能である.本手法においては光学設計とともに高精度な画像処理技術と3次元速度算出アルゴリズムの開発が重要な要素である.

血管内皮細胞骨格の三次元画像再構築と骨格配向・密度の定量評価

教授 大島 まり,研究員(大島研) 山本 創太,技術専門職員(大島研) 大石 正道,研究実習生(大島研) 慶田 真弘
画像解析ソフトImageJによりアクチンフィラメントの画像の三次元再構築を行い,密度変化を測定した.また,繊維配向プログラムより骨格配向を測定し,壁面せん断応力の影響による配向の変化を考察した.

SARS-CoV-2タンパク質の電子状態解析

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)の2つのタンパク質の全電子計算を実行した.一つは,RNAが結合するヌクレオカプシドタンパク質のN末端ドメインであり,RNA結合まわりにはArgや酸性アミノ酸残基のGlu,芳香環を持つTyrなどが位置しており複雑な静電場を形成していることが明らかとなった.本研究は,UTokyoGSCプログラムの一環として実施した.もう一つは,ACE2と結合するスパイクタンパク質のACE2結合ドメインであり,この計算結果を用いてACE2との間の相互作用を解析した.

密度汎関数法に基づく第3世代カノニカル分子軌道法とQCLO法の開発

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
グリッドフリー法とコレスキー分解法を組み合わせて,スパコンで十分な性能を引き出すことができる第3世代法を開発した.今年度は特にコレスキーベクトルのI/Oの改善などを行った.また,QCLO法の新コードを整備した.今年度は特にPipek-Mezey法による局在化軌道の計算方法の改善を行った.

PETase活性中心の電子状態研究

大学院学生(佐藤(文)研) 王 天宇,教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
ポリエチレンテレフタラート(PET)を分解できる酵素PETaseはSerine proteaseの1種であり活性中心はSer-His-Aspである.これら3残基は水素結合が形成されるように空間的に配置されており,Ser側鎖のγ酸素が基質を求核攻撃するとみられる.本研究では,PETaseの基質特異性とPET分解反応機構を解明するために,正準分子軌道計算によるPETaseの活性中心とその周辺タンパク質の電子状態を解析した.

インターフェロンα2の電子構造研究

大学院学生(佐藤(文)研) 中岡 亮太,教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
インターフェロン(IFN)は,ウィルスなどの侵入に対して細胞が分泌するサイトカインである.IFNα2はI型インターフェロンでヒトでIFNα2b変異体が市販されており,天然と活性に有意な差がある.IFNα2とIFNα2bのアミノ酸配列の変異は1か所だけであり(Lys23Arg),電荷に変化はなく,23番目のアミノ酸残基はIFN受容体の結合部位には存在しない.本研究では,変異体による電子状態の変化が遠方にまで及び活性の違いを与えていると仮説を立てIFNα2の作用機序を電子レベルで解析した.

RNAポリメラーゼの電子状態解析

教授(岡山大) 田村 隆,教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
RNAポリメラーゼの効率を上げるためのミューテーション実験の解析のために,RNAP/DNA/mRNA複合体の電子構造計算を実施した.

CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業「反射波を活用した油圧シリンダ鉛直配置式波力発電装置(平塚波力発電所)の海域実証」 (環境省事業)

教授 林 昌奎
世界に先駆けて実用化のベースとなる新型波力発電装置「反射波を活用した油圧シリンダ鉛直配置式波力発電装置」を開発する.開発する波力発電装置は,日本初となる系統接続した久慈波力発電所の経験を活かし,大型で軽量な波受板を採用するもので,波高1.5m以上で45kW(発電端出力),変換効率50%,設備利用率35%以上(参考:洋上風力目標30%)を設計目標とする.なお,発電装置の試作機は,1年間の海域実証試験を神奈川県平塚漁港にて実施し,終了後,撤去する(1年間の延長).

平塚市・東大生研連携協力協定

教授 林 昌奎
この協定は,東京大学 生産技術研究所および平塚市の密接な連携と協力の下,海洋活用技術の研究開発を推進するとともに,新産業創出,人材育成等に寄与することを目的とする.

マイクロ2相流の基礎研究

教授 鹿園 直毅
将来のエネルギー問題を解決する上で,エクセルギー損失の小さい低温度差の熱機関であるヒートポンプや蒸気エンジンへの期待は非常に大きい.一方で,競合技術である燃焼式の給湯器やエンジンに比べ大型・高価であることが課題である.極めて細い冷媒流路を用いることで,ヒートポンプや蒸気エンジン用熱交換器の大幅な小型軽量化が実現できるが,本研究では,そのために必要となる超薄液膜二相流の基礎的な現象理解を進めている.具体的には,共焦点レーザー変位計を用いたマイクロチャネル内の薄液膜厚さの測定およびそのモデリング,マイクロチャネルを利用した高性能蒸発器の限界熱流束の研究等を行っている.

固体酸化物形燃料電池(SOFC)の実験および数値シミュレーション

教授 鹿園 直毅
エクセルギー有効利用の重要性から,700~1000度で作動する固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)に注目が集まっている.SOFCは単体での高い発電効率に加え,様々な炭化水素燃料に対応できること,熱機関や内部改質による排熱利用が可能である等,様々なメリットを有する.しかしながら,SOFCの実用化のためにはコストや耐久性といった課題を克服する必要があり,そのためにはシステムとそれを構成するセルや電極の階層的な設計技術を高度化する必要がある.本研究では,SOFCの高信頼性,高効率化に向けて,実験及び数値計算手法を開発し,発電システムから電極レベルに至る広い時空間スケールの現象を予測,制御するための研究を行っている.特に,電極微細構造が発電性能に与える影響に注目し,微細構造を制御したSOFCの性能を実験により計測するとともに,収束イオンビーム走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)を用いた3次元電極微細構造の直接計測,ミクロな実構造における拡散と電気化学反応を連成させた格子ボルツマン法による数値シミュレーションを行っている.

次世代熱機関用要素技術の研究

教授 鹿園 直毅
低温度差で作動するヒートポンプや蒸気エンジンはエクセルギー損失が非常に小さく,将来のエネルギー問題の解決に不可欠な技術である.一方で,競合する燃焼式給湯器等に比べ大型で高価であることが課題であり,従来の延長線上にない画期的な要素技術が求められている.本研究では,基礎的な研究に基づいて,より高性能,高信頼性,小型,安価を実現する新たな機構を提案し実証している.

日本財団FSI基金による海洋ごみ対策プロジェクト(2019~)

教授 ペニントン マイルス
大気海洋研 道場 豊教授と行っている海洋プラスチックごみ対策に資する科学的試験充実プロジェクト
テーマ1 海洋マイクロプラスチックに関わる実態把握
テーマ2 マイクロプラスチックの生体影響評価
テーマ3 プラスチックごみ発生フロー解明と削減・管理方策の検討
・OMNIコンセプトに係るモニタリングブイプロトタイプ作成
・データー共有の為のプラットフォーム(ウェブサイト)構築.一般向け紹介動画を数本作成,公開.今後も継続的に作成.
・プラスチックごみ削減対策を含む自治体との連携について可能性を確保(逗子市)
大気海洋研 道場氏の周知とSTEAM教育プログラムの一環として,神奈川県逗子海岸にて地域の方々や子供に向け(黒門とびうおクラブ)ワークショップを開催.
テーマは“海洋マイクロプラスチックに関わる実態把握”誰もが参加出来る方法と仕組みをデザインする.

産総研(AIST)+S design school

教授 ペニントン マイルス
産総研でデザインスクールにおけるデザイン思考教育に関する研究
産総研主催のデザイン教育プログラムS design schoolに協力,ワークショップを年に3回実施

生体分解性・多孔質マイクロニードルとペーパーベースの無痛・迅速診断チップの開発

教授 金 範埈,助教(金(範)研) パク チョンホ,特任教授 甲斐 知惠子,特任教授 米田 美佐子
本研究は,“生体分解性多孔質マイクロニードルを用いた医療用パッチ”の新たな応用として,新型コロナウイルス感染症の低侵襲(無痛)自己診断チップの開発に関するものである. 専門的な医療従事者を要しないかつ簡便で迅速な感染症の診断を実現できるため,まず診断対象である血清又は間質液からの無痛かつ適量の抽出が可能な新規マイクロニードルの構造設計及び製作に関する研究.

SiおよびSiGe薄膜ペルチェ素子を用いた局所冷却

准教授 野村 政宏,教授 金 範埈,国際研究員(野村研) Sebastian Volz,特任助教(野村研) Roman Anufriev,大学院学生(野村研) 柳澤 亮人,大学院学生(野村研) Eldar Sido
本研究室では,シリコン薄膜を用いた熱電変換デバイス開発を進めているが,ゼーベック効果とペルチェ効果が表裏一体であるため,電流を流すことで局所冷却デバイスも実現できる.本研究では,シリコン薄膜にペルチェ素子を形成し,世界最小サイズのペルチェ素子を実現することを目指す.

バイオ薬剤の常温乾燥保存法の開発

教授 白樫 了,助教(白樫研) 高野 清
リポソーム薬剤やタンパク質を主成分とするバイオ薬剤の多くは,液状あるいは凍結状態で流通しており,長期間の高品位保存ができない場合が多い.本研究では,これらの薬剤を常温で品質を維持したまま保存するための保護物質の選定・調合,乾燥手法の開発を目的とする.

医療検体試料の高品位保存に関する研究

教授 白樫 了,DIRECTOR-AT-LARGE - Indo-Pacific. Rim (ISBER) 古田 耕,助教(白樫研) 高野 清
血液や組織等の臨床検体に含まれるバイオマーカ,DNA, RNA等には,検体を取り出した個体特有の生物学的状態を反映した情報が,多く含まれている.この様な生体分子の劣化を抑制して保存することは,個別医療で重要な生理状態の情報を保存することに他ならない.本研究では,これら臨床検体を高品位且つ簡便に凍結や常温乾燥することで保存する手法の開発を行う.

広帯域誘電分光によるパン生地粘弾性特性の予測

教授 白樫 了,准教授(埼玉大) 上野 茂明
パン生地の粘弾性は,製品の品質を左右することが知られているが,現状では経験的に製造条件・評価を行っている.本研究では,含水量と混錬時間が異なるパン生地の粘弾性特性を,広帯域誘電分光スペクトルの緩和時間解析より簡便に予測する手法の開発を目指す.

水分子ダイナミクス測定と分子計算によるタンパク質劣化と最適保護物質特性の予測

教授 白樫 了,東京大学特別研究員(白樫研) 松浦 弘明
ワクチンやタンパク質薬剤の多くは,液体であり薬効のある分子が水溶液中に存在している.この様な液体中の薬剤は,劣化が進みやすいため,保護物質を添加して有効期間を延ばしているが,その選択は経験的であり,保護物質分子の性質・構造から薬剤の劣化速度を予測し,適切にスクリーニング・設計する指針がない.本研究では,劣化の鍵とみられるタンパク質薬剤の溶媒である保護物質水溶液中の水の分子回転緩和時間を誘電分光により測定し,タンパク質薬剤の失活速度を予測する手法を開発する.さらに,保護物質分子周囲の水分子の回転緩和時間を左右する保護物質分子に由来する素現象を,分子動力学法により計算されるタンパク質や保護物質等の溶質分子周辺の分子運動を解析することにより見出し,保護物質の構造と水分子の回転緩和時間の相関を調べる.

生体由来物質内の結合水の定量化に関する研究

教授 白樫 了,教授 平川 一彦,助教(平川研) 大塚 由紀子,助教(白樫研) 高野 清,教授 工藤 一秋,東京大学特別研究員(白樫研) 松浦 弘明
生体をはじめとする様々な材料内に存在する結合水は,誘電分光や赤外分光等により検出することができるが,それらの測定値の相互の関係は必ずしも明らかではない.また,定量化された値が材料の物性に及ぼす影響も明確ではない.本研究では,特に生体由来物質や生体保護物質を対象材料として,内部の結合水を定量測定する測定・解析手法を開発すると共に,実験データを通じて上記の点を明らかにする理論の構築を目的としている.

ITS技術の鉄道車両への展開【柏地区利用研究課題】

教授 中野 公彦

フィールドロボティクス技術を活用した走行実験【柏地区利用研究課題】

教授 中野 公彦

ロボットビークルに関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 中野 公彦

自動運転技術に関する車両走行実験【柏地区利用研究課題】

教授 中野 公彦

自動運転技術,運転支援技術に関するドライビングシミュレータ実験【柏地区利用研究課題】

教授 中野 公彦

自動運転技術,運転支援技術に関する車両走行実験【柏地区利用研究課題】

教授 中野 公彦

電気自動車技術に関する車両走行実験【柏地区利用研究課題】

教授 中野 公彦

カーボンナノチューブ複合材料センサの開発

教授 岡部 洋二,特任研究員(岡部(洋)研) 于 豊銘,大学院学生(岡部(洋)研) 劉 桐楊
運用中の構造物における過剰ひずみの発生をモニタリングするため,カーボンナノチューブを用いた埋込型ナノ複合材料センサを開発する.

メタルデポジションによる大型成形治具の積層造形に関する研究

教授 岡部 洋二,大学院学生(岡部(洋)研) 馬田 啓佑,助教(岡部(洋)研) 齋藤 理,特任助教(東大) Sabrina Ahsan,特任研究員(臼杵研) 薄井 雅俊
航空機の大型複合材料構造部材を成形するための治具を,金属3Dプリンターによって高効率かつ低コストで製造する技術を構築する.

複合材におけるレーザー超音波励起挙動の数値シミュレーション

教授 岡部 洋二,助教(岡部(洋)研) 齋藤 理,大学院学生(岡部(洋)研) 張 澤平
レーザー超音波法による高効率な非破壊検査を実現するため,コーティング付きの複合材料積層板表面にレーザーを照射した場合の超音波の励起・伝搬挙動を,理論数値シミュレーションに基づいて明らかにする.

超音波ガイド波による複合材料構造の損傷モニタリング

教授 岡部 洋二,助教(岡部(洋)研) 齋藤 理,特任研究員(岡部(洋)研) 于 豊銘,大学院学生(岡部(洋)研) 譚 朗星
CFRP等の複合材料構造に対して超音波ガイド波を伝播させ,その伝播速度変化や散乱波の発生を利用することで,層間剝離やマトリックスクラック等の微視的な内部損傷の発生をモニタリングする手法の構築を試みている.

高温用光ファイバ超音波センサの開発

教授 岡部 洋二,特任研究員(岡部(洋)研) 于 豊銘,大学院学生(岡部(洋)研) 李 梓萱
1000度レべルの高温環境でも超音波受信およびAE計測を可能にするための,再生PSFBG光ファイバ超音波センサを開発する.

Coalition for Epidemic Preparedness Innovations ニパワクチン実用化プロジェクト

特任教授 甲斐 知惠子,特任教授 米田 美佐子,特任准教授 藤幸 知子,特任准教授 佐藤 宏樹,特任研究員(甲斐研) 森藤 可南子
麻疹ウイルスをベクターとしたニパウイルス感染症に対するワクチンの開発研究

(国研)日本医療研究開発機構 医療研究開発推進事業費補助金(革新的がん医療実用化研究事業) 遺伝子組換え麻疹ウイルスを用いた抗がんウイルス療法の臨床研究

特任教授 甲斐 知惠子,特任教授 米田 美佐子,特任准教授 藤幸 知子,特任准教授 佐藤 宏樹

SMMiL-Eにおける科学ディレクション

特任教授 興津 輝
SMMiL-E (Seeding Microsystems in Medicine in Lille -European Japanese Technologies against Cancer-) は,フランスから受け入れた研究者と共に生産技術研究所で開発している最先端のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術とbioMEMS技術をフランスにて癌医療に応用することをミッションとしている.国際的かつ学際的共同研究であるSMMiL-Eにおいて,研究者間の情報伝達を促進し,研究活動が生産的・効率的に進むよう支援する.加えて,工学医学連携によるプロジェクト遂行のための,プロセスと論理の構築を研究する.

人間機械系における新しいシステム設計論の構築

特任教授 平岡 敏洋
人間機械系を設計するうえで,従来のシステム設計論では,メインタスク達成に要するユーザの物理的労力ならびに心理的労力をいかに減らすかという視点で,自動化を導入することが殆どであった.しかしながら,1) ユーザの技能低下,2) ユーザの対象系理解度の低下,3) システム異常時(故障時)の対応力低下,4) システムに対する過信増大,といった弊害も生じている.本研究では,メインタスク達成のために,あえてユーザに労力をかけさせるような設計にすることで,上述する弊害を軽減もしくは解消することを目指して,新しいシステム設計論の体系化を行っている.

無人移動サービス車両における乗客の車内転倒防止のための運動制御

特任教授 平岡 敏洋,特任助教(須田研) 霜野 慧亮,教授 須田 義大
車内における乗客の転倒は,加減速時に生じる慣性力の影響で発生する.床面と水平な方向に生じる慣性力を低減できれば,車内事故の軽減につながると期待される.加減速に合わせ意図的に車体を傾斜させることで慣性力の方向を床面方向に向けて水平方向の影響を減らせると考えられる.自動運転と合わせて注目される電気自動車では,前後輪にインホイールモータを内蔵するものもあり,前後輪の制駆動力を制御することでピッチ角を制御できる.この特徴を活かした先行研究では,車両運動の安定性向上を目的としたピッチ角抑制制御を行っている.それに対して本研究では,車内に立って乗車する乗客の転倒防止を目的として,車両が加減速する際に乗客に作用する慣性力の影響を打ち消すようなピッチ角制御を行う.

自動運転システム・運転支援システムのHMI設計

特任教授 平岡 敏洋
自動運転システムや運転支援システムにおけるよりよいヒューマン・マシン・インタフェースを実現するための基礎的検討として,ドライバの信頼状態がどのように醸成され,その信頼状態が運転行動に与える影響を分析した.さらに,ドライバの運転支援システムがステアリングホイールなどの操作端を介して操作を共有するHaptic Shared Control (HSC)について,直接型HSC (Direct HSC) と間接型HSC (Indirect HSC) の2種類があることを提案し,それぞれの長所と短所を整理した.

0.1µmの分解能を有する接触式工具長測定器の開発

准教授 土屋 健介
精密切削加工の精度を従来より1桁向上させるために,0.1µmの分解能を有する接触式工具長測定器を開発する.測定器はシーソー構造とエア圧によって接触子を微小な力で工具に接触させる.これにより,微小な工具を破損したり,回転する工具で接触子が摩耗したりせずに,工具長を測定することができる.この接触式工具長測定具の有用性を検証し,事業化可能性調査を実施する.

CFRP用工具ベンチマーク

准教授 土屋 健介
CFRP用工具について,市場調査と過去の切削試験の知見に基づいて切削試験の評価基準を提案する.

CMG(Chemo-Mechanical Grinding)砥石における反応機構の解明

准教授 土屋 健介
従来不明だった砥粒と被削材での化学的反応機構を明らかにすることで,様々な次世代半導体材料に応じた最適な砥粒(金属酸化物等)の選定を,総当たり的な実験ではなく理論的に行うことができるようにする.

ヘリカル切削における残留応力発生メカニズムに関する研究

准教授 土屋 健介
本研究の目的は,ヘリカル加工において残留応力が発生するメカニズムを解明することである.実験的および解析的な手法によって,加工中の抵抗,切削面の残留応力の変遷を明らかにし,工具と材料の界面,および材料内部の現象を解明する.この知見を用いて,工具形状や加工条件の最適化につなげる.

ロボットシーリング

准教授 土屋 健介
航空機の製造現場において,シーリング作業は高度熟練技能者による手作業で行われている.これをロボットで自動化することを目指し,ハードウェア・ソフトウェアの研究開発を行う.

刃物先端の微細形状が切断性能に及ぼす影響に関する研究

准教授 土屋 健介
包丁やカッターなどの刃物の切断性能は,それを使った感覚から曖昧かつ主観的にしか評価されず,研磨手法や条件は最適化されていない.本研究では,刃物の研磨条件と刃先形状,刃先形状と切れ味の関係をそれぞれ明らかにし,切れ味を高めるために適した研磨条件を提案する.具体的には,様々な条件で研磨を行える研磨装置と,切れ味を定量的に評価できる切断装置を用いて,研磨条件と切れ味との関係を明らかにする.また,刃物が材料を切断するときには,刃物先端の微細な凹部に材料が入り込むことによって切断されるというメカニズムに基づき,刃物の稜線形状から有効に作用する稜線の長さを算出し,断面の先端径と合わせて刃物形状の評価指標を新たに提案し,切断性能との相関関係があることを示す.

工具材料の金属組織最適化によるラッピング工具表面制御

准教授 土屋 健介
ハードディスクドライブの磁気スライダ製造プロセスのラッピングプレート材料としてスズ合金が使用されているが,不安定性の問題があり,それがラッピング特性とプレート寿命に影響を与えることが実験的に観察されている.本研究の目的は,スズ合金ラッピングプレートの既存の不安定現象を金属組織の観点から明らかにし,安定したプレート表面を得る方法を見出すことである.ラッピングプレートの金属組織の状態を制御し,工具製作条件を最適化することでプレート表面を安定化させ,工具寿命向上,製品品質を改善する.

応力下における切削面の残留応力分布に関する研究

准教授 土屋 健介
本研究は,切削加工と同時に圧縮残留応力を付与することを目的としている.試験片に荷重を加え,引っ張り応力を加えた状態で切削を行い,X線残留応力測定装置によって切削面の測定を行った.実験後の試験片には圧縮残留応力が付与されていることが確認できた.圧縮残留応力が付与された要因について,熱的要因,機械的要因から考察した.

樹脂材料の鏡面切削加工

准教授 土屋 健介
樹脂材料の機械加工において,工具と材料の接点で生じる加工現象に着目し,工具・工作機械・加工条件を最適化することによって高効率かつ高精度な加工を実現する.

海洋センシングに関する連携研究【柏地区利用研究課題】

准教授 土屋 健介

異方性熱伝導を実現するフレキシブル積層熱拡散シートの開発

准教授 土屋 健介
大型CFRP構造体の局部補修作業において大型対象物の一部を均一加熱するために,曲面に貼付可能な積層型熱拡散シートを用いて加熱する手法を提案し,その熱拡散性能を評価するとともに,熱解析ソフトを用いて温度分布予測の可能性を検証する.

研磨研削工程の加工点精密観察および制御

准教授 土屋 健介
ガラスと砥粒の界面で生じる加工現象の素過程を,力学的・化学的観点から解明する.そのために,顕微鏡観察下で,単一砥粒で材料を加工し,その時の微小な加工力および加工前後での砥粒・材料の変化を計測する.

粗面ガラスをワンプロセスで鏡面研磨する固定砥粒二層構造工具の開発

准教授 土屋 健介
ガラス等の機械的研磨における1つの問題は,様々な径の砥粒によるスクラッチの発生である.これらの傷には潜傷が含まれるため,このような砥粒径のバラツキの影響を抑制する必要がある.本研究では,粗面ガラスをワンプロセスで鏡面研磨するために,変形可能な砥粒層を有する二層構造の固定砥粒研磨工具を提案する.

高難易度部材加工プログラムのアルゴリズム提案

准教授 土屋 健介
航空機製造は,ローコストオペレーションとして工程自動化と労働人口減少への代替化技術が日本のモノづくり力として求められている.従来,エキスパートシステムなど熟練作業者の技能の取り込みや過去のデータベース化で最適切削条件等を見出すなどの取り組みがあるが実績を超えるような成果を得られず,製造現場では未だに最適化の切削条件の決定には熟練者の経験に頼っている.そのため切削難度判定に関する要素を抽出し,最適切削条件を選定する手法の確立を目指す.

パッシブTHz近接場顕微技術の開拓

准教授 梶原 優介,特任助教(梶原研) 林 冠廷,大学院学生(梶原研) 佐久間 涼子,大学院学生(梶原研) 劉 嘉軒,大学院学生(梶原研) 四宮 雅樹,大学院学生(梶原研) 長井 紀樹
テラヘルツ波(波長10 μm~1 mm)は,分子運動や格子振動など物質現象のモードがほとんど含まれる極めて重要なスペクトル領域である.本研究では試料自身の局所挙動にともなって僅かに生じるテラヘルツエバネッセント波を,外部から光を照射せずに「パッシブ」かつ「ナノスケール」で可視化する顕微鏡を開発している.使用する検出器は単一光子レベルの感度を持つCSIP(Charge Sensitive Infrared Phototransistor)であり,近接場光学系導入により空間分解能20 nm(検出波長: 14.5 μm)を達成している.最近では誘電体上の表面フォノン等の検出・解析や,グラフェン等の非平衡現象の観測,実デバイス上のエネルギー散逸観測などの応用展開のほか,極低温試料測定や近接場分光への拡張を進めている.

樹脂内部物性評価法の開拓

准教授 梶原 優介,助教(梶原研) 木村 文信,リサーチフェロー(梶原研) 吉田 一朗,大学院学生(梶原研) 田中 惇士
プラスチック成形品の非破壊的な内部残留応力評価法として,テラヘルツ(THz) 偏光に対する高分子配向の応答を利用する方法の妥当性を検証している.THz 偏光依存性と残留応力に起因する寸法変化との間に相関関係があることが示されたため,現在は差周波THz光源を導入した偏光特性評価光学系を構築し,本計測法の確立を目指している.

表面微細構造を利用した金属/樹脂直接接合技術の開拓

准教授 梶原 優介,助教(梶原研) 木村 文信,特任研究員(梶原研) 趙 帥捷,大学院学生(梶原研) 陳 偉彦,大学院学生(梶原研) 常 昊,大学院学生(梶原研) 王 鑠涵,大学院学生(梶原研) 竹本 有輝
金属表面にマイクロ微細構造を創製し,インサート射出成形を行うことによって強固な金属/樹脂接合について,表面処理や成形条件の最適化,および接合メカニズムの解明を進めている.現在は化学エッチングによって表面処理を行ったアルミニウムとPBTの直接接合に成功し,射出圧や保圧,アニール条件の最適化,および SEM, TEMによる断面観察を通した接合指導原理の解明を進めている.加えて,微細構造を応用したCFRPの接着技術に関する研究も行っている.

高周波電流による表皮効果を利用した接合に寄与する微細構造特徴量の検出

助教(梶原研) 木村 文信
金属等の導体に高周波数の交流電流が流れる際,周波数が高くなるにつれて電流経路が導体表面近傍に偏るようになる表皮効果と呼ばれる現象がある.導体の表面に微細な構造が存在する場合,電流経路が表面近傍に偏っていくにつれて導体のインピーダンスが変化する.このため,電流の周波数−インピーダンスの関係から導体表面の微細構造の特徴が抽出できることが予想できる.本研究では,この予想に基づいて,表皮効果を利用した微細構造の特徴を抽出する手法の開発を行っている.

STEAM教育に向けたオンライン教材開発

准教授 川越 至桜,教授 北澤 大輔,教授 大島 まり,准教授 八木 俊介,准教授 ヘイチク パヴェル,准教授 杉浦 慎哉,准教授 酒井 雄也
オンライン学習が急速に普及し,ポストコロナでは教育のあり方も大きく変化すると予想される.今後は,オンライン学習を活用するとともに,教室や人がいる場の良さを生かした新しいオフライン教育が求められる.本研究では,オンライン学習を支援するためのデジタルコンテンツを開発するとともに,それらを活用したオフラインでの教育プログラムを開発する.その際,本所で行われている研究をSTEAM(Science, Technology, Engineering, Arts, and Mathematics)という観点から整理することで,初等中等教育における「理数探究」や大学・大学院でのProject-Based Learningなどの基盤となる教育プログラムにもつなげていく予定である.

VR技術を活用した読書支援システムの研究開発

准教授 川越 至桜,大学院学生(川越研) 安川 隼
本研究では,子どもたちにとって興味・関心の高いVR(バーチャルリアリティー:仮想現実)を活用し,読書の楽しさを伝えるとともに,文字からイメージする過程を支援し,コミュニケーションできるシステムを開発する.読書体験を可視化させ,その体験をVR上で他の人と共有しコミュニケーションできるシステムとし,ワークショップにて実践する.そして,読書に対しての意識がどのように変容するかについて調査する.文字からイメージする過程を楽しんでもらい,読書の楽しさを知ってもらうことで,読書自体への興味関心を高め,主体的な読書につなげていくことを目指す.

天文学を軸とした次世代育成とSTEAM教育

准教授 川越 至桜,特任専門員(自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター) 日下部 展彦
天文学は総合科学であるとともに観測機器の設計やデータの可視化など学際的な分野であり,STEAM教育の題材として適している.本研究では,都内の中高一貫校の天文部にて,STEAM教育を念頭においたプログラムを開発し実践した.その結果,生徒たちは天文学のみならず,望遠鏡やプラネタリウム本体,エアドームの設計・製作,データ解析および可視化等,様々な知識を深めることができた.従って,天文学を軸としたSTEAM教育を実践することができたと考えられる.

産業界との協働による新しいSTEAM教育活動・ワークショップの研究開発

准教授 川越 至桜,教授 大島 まり
産業界と協働したSTEAM教育として,東京大学生産技術研究所の次世代育成オフィスが中心となって実験教材を開発し,産学連携ワークショップを実施した.また,それを基に初等・中等教育で使用できる映像教材を開発した.その結果,実験教材を用いたワークショップは,科学技術や産業界への興味・関心を喚起し,理科や科学の学習に有効であった.また科学技術の社会的な役割や意義を理解する上でも有効だと考えられる.

ニュートリノ振動を考慮したニュートリノスペクトルの系統的研究

助教(国立天文台) 滝脇 知也,日本学術振興会特別研究員(国立天文台) 佐々木 宏和,准教授 川越 至桜,Assistant Professor (Virginia Polytechnic Institute and State University) 堀内 俊作,助教(東北大) 石徹白 晃治
重力崩壊型超新星爆発から放射されるニュートリノスペクトルの評価には,ニュートリノ振動を考慮することが不可欠である.本研究では,ニュートリノ振動を考慮したニュートリノスペクトルを系統的に明らかにすることを目的としている.

がん微小環境模倣デバイスによる消化器がんの血管内外浸潤機構の理解

准教授 松永 行子,准教授(金沢大) 大島 浩子

微小血管モデルによる血管微小環境の時空間解析手法の構築

准教授 松永 行子,東京大学特別研究員(松永研) CACHEUX Jean

指先毛細血管情報による健康管理ツールの開発

准教授 松永 行子

科学とデザインによる健康デザインに関する研究

准教授 松永 行子

3次元微小血管モデルを用いたがん細胞の血管内侵入の分子機構の解明と治療への応用

東京大学特別研究員(松永研) 高橋 和樹,准教授 松永 行子

ガス化ケミカルルーピングのプロセス開発および反応メカニズムの解明

准教授 アズィッズ ムハンマッド,大学院学生(アズィッズ研) Hafif DAFIQURROHMAN,大学院学生(アズィッズ研) 宮平 恭輔

ダイレクト固体ケミカルルーピングを利用したポリジェネレーションシステムにおけるシステム開発

准教授 アズィッズ ムハンマッド,大学院学生(アズィッズ研) Zhuang Sun,大学院学生(アズィッズ研) Du WEN

データ駆動的水素燃焼の予測

准教授 アズィッズ ムハンマッド,大学院学生(アズィッズ研) 國原 一真,大学院学生(アズィッズ研) Rahmat Waluyo

三重周期極小曲面を利用した水素貯蔵合金の高性能化

准教授 アズィッズ ムハンマッド,大学院学生(アズィッズ研) Luthfan Adhy LESAMA

AUVによる海中遊泳生物の探知追跡手法

准教授 巻 俊宏
ウミガメのような遊泳生物について調査を進めるため,ソーナーと機械学習によって全自動で探知,追跡するためのアルゴリズムを開発する.

自律システムの連携による海中観測手法【柏地区利用研究課題】

准教授 巻 俊宏
AUV(自律型海中ロボット)と海底ステーション,AUV同士など,複数の自律プラットフォームの連携により新たな海中海底探査用システムを提案する.試作海底ステーション,3台のホバリング型AUV(Tri-Dog 1, Tri-TON, Tri-TON 2)等のテストベッドを用いて,水槽試験,海域試験等により研究開発を進めている.

変形加工学に関する研究【柏地区利用研究課題】

准教授 古島 剛

海洋センシングに関する連携研究

准教授 ソーントン ブレア
Underwater sensing is the raw material of how we perceive the ocean. We aim to improve how the ocean can be observed by investigating the interactions of photons in underwater environments, integrating advanced instrumentation on robotic platforms, and combining this with methods for automated data interpretation. Our group collaborates closely with institutes in the UK, Australia and the USA, and participates in international programs to maximise the global impact of our research and ensure our members can conduct research effectively in an international environment.

柔軟物の動的操り

准教授 山川 雄司
高速なビジョンとアクチュエータを用いて,柔軟物を動的かつ巧みに操り,様々なアプリケーションを創出することを目指している.

高速センサネットワークシステムとその応用

准教授 山川 雄司
各種センサをネットワーク上に接続し,センサネットワークシステムを構築することにより実世界を高速かつ包括的に認識するシステム構築とその応用を目指している.

高速ビジョンのITS応用

准教授 山川 雄司,助教(山川研) 平野 正浩
高速ビジョンを移動体に設置し,高速画像処理を駆使することにより,高速画像センシング技術によるITS応用を目指す.

高速ロボットを用いた人間ロボット協調

准教授 山川 雄司
高速ロボットを用いて,人間とロボットとの協調をリアルタイムで実現することにより,従来の人間ロボット協調とは異なる次世代の人間ロボットインタラクションを目指している.

海洋複合計測システムの実現に関する研究

特任准教授 福場 辰洋,特任助教(ペニントン研) 木下 晴之,国際研究員(金(秀)研) Nicolas Clement
海洋環境中において,生物地球化学的パラメタの複合計測とそれによる高度な海洋計測を実現するため,センサ・現場型分析装置の小型化・機能集積化を進めるとともに,市民参加型の海洋観測手法を模索する.

実映像ドライビングシミュレータに関する研究

特任准教授 小野 晋太郎,准教授(愛知県立大) 河中 治樹,教授(愛知県立大) 小栗 宏次

ドライブレコーダからの天候情報推定と急ブレーキ発生予測

教授(九州大) 川崎 洋,准教授(九州大) 峯 恒憲,特任准教授 小野 晋太郎

並列セルソーターの開発に関する研究

講師 金 秀炫

単一細胞相互作用解析

講師 金 秀炫

高感度リキッドバイオプシーを可能とするバイオマイクロシステムの開発

講師 金 秀炫

半導体ナノ構造とテラヘルツ電磁波の相互作用の制御と応用

教授 平川 一彦,助教(平川研) 黒山 和幸,特任研究員(平川研) 長井 奈緒美
半導体量子ナノ構造とテラヘルツ電磁波の相互作用とその応用に関する研究を行っている.特にスプリットリング共振器と呼ばれるテラヘルツ電磁波に対する共振器に近接させた量子ポイントコンタクト構造や量子ドットの電気伝導特性を調べ,テラヘルツ電磁波とナノ構造とが強く結合した系において発現する新しい物理を探索している.

半導体量子構造を用いた固体冷却素子の開発

教授 平川 一彦,研究員(LIMMS) BESCOND MARC,東京大学特別研究員(平川研) SALHANI Chloe,大学院学生(平川研) 尾上 俊樹,大学院学生(平川研) 朱 翔宇,特任研究員(平川研) 長井 奈緒美
現代のLSIに代表されるエレクトロニクスの進歩を大きく阻んでいるのが発熱による問題であり,冷却技術は将来のエレクトロニクスの発展の鍵を握る技術と言っても過言ではない.我々は半導体へテロ構造のバンドを適切に設計し,熱電子放出と共鳴トンネル効果を同時に制御して実現できるサーミオニッククーリング技術に注目している.本サーミオニッククーリングにおいては,トンネル障壁を介して量子井戸に低エネルギーの電子が共鳴的に注入され,量子井戸を出るときには低くて厚い障壁を高エネルギーの熱電子が熱的に越えていく過程を用いる素子であり,電流を流すにつれて量子井戸層が冷却されていくデバイスである. 本年度は,(1)素子の動作原理の理解と構造最適化のために,共鳴トンネル効果と熱電子放出効果を組み合わせた解析的な理論を構築し,実験で観測された素子を流れる電流の温度依存性などがよく説明できることがわかった.さらに,その理論を用いて,電子冷却のための構造の最適化の検討を行っている.(2)非平衡グリーン関数法による数値計算により,構造パラメータと電子温度の関係に関する議論を行っている.(3)量子井戸を複数個直列に接合したより高効率な冷却素子構造を提案した.

赤外分光技術の開発と応用

教授 平川 一彦,助教(平川研) 大塚 由紀子,教授 白樫 了
フーリエ変換赤外分光光度計を用いて赤外分光を行うことにより,様々な物性研究を行っている.本年度は,グルテンフリーの食材として注目を集めている米ゲルおよび米粉について,水分子の赤外吸収スペクトルを調べることにより,水分子の水素結合が変化する過程の解明や,自由水・結合水の構造に関する重要な知見を得た.また,米ゲルの老化についても検討し,示差走査型熱量計(DSC)を用いて,老化のプロセスに関する詳細な検討を行うとともに,赤外分光を用いた新たな測定法を確立することを検討しているところである.

シリコン量子ビットの集積化に関する研究

教授 平本 俊郎,准教授 小林 正治,助手(平本研) 更屋 拓哉
CMOSによるバイナリーディジタル演算に代わるコンピューティング手法として量子計算が注目されている.本研究室では,量子計算に用いる量子ビットをシリコンで実現し,さらに多量子ビットを集積化する研究を行っている.大規模集積回路プロセス互換のプロセスを用いて集積化を実現する.

ナノスケールCMOSデバイスの特性ばらつきに関する研究

教授 平本 俊郎,准教授 小林 正治,助手(平本研) 更屋 拓哉,特任研究員(平本研) 水谷 朋子,特任研究員(平本研) 竹内 潔
MOSトランジスタが微細化されるとともに,ランダムな特性ばらつきの影響が無視できないほど大きくなってきている.その原因は主にチャネル中の不純物数の揺らぎであるが,ばらつき原因は定量的にはまだ明らかとなっていない.本研究では,ランダムな特性ばらつきの評価と,そのデバイス・回路特性への影響について検討している.

MaaS時代における安心・安全なモビリティ環境実現に向けた利用状況分析・コンテスト推定基盤

助教(瀬崎研) 西山 勇毅,教授 瀬崎 薫,大学院学生(瀬崎研) 小池 優太郎,大学院学生(瀬崎研) 笠原 有貴,大学院学生(瀬崎研) 鈴木 凌斗,大学院学生(瀬崎研) 唐 奥,大学院学生(瀬崎研) 董 学甫,大学院学生(瀬崎研) 彭 何林訳,大学院学生(瀬崎研) 牛島 秀暢,大学院学生(瀬崎研) 徐 立強,大学院学生(瀬崎研) 小野 翔多,大学院学生(瀬崎研) 大塚 理恵子,大学院学生(瀬崎研) 韓 増易,助教(国立情報学研究所) 青木 俊介

ユーザ参加型センシングとセキュリティ

助教(瀬崎研) 西山 勇毅,教授 瀬崎 薫,大学院学生(東大) 松野 有弥
スマートフォン等の高機能端末を多数の人間が常時携帯している中,従来のように専用の固定センサや,無線センサネットワークによって環境やコンテクストをセンシングするのではなく,これら携帯端末に具備されたセンサを用いて安価かつリアルタイムなセンシングを行う「ユーザ参加型センシング」が注目されている.本年度は,多数のスマートフォンが参加しているときに,センサの観測領域と品質を考慮しながら最適なノードを選択する手法や,センサデータのプライバシ保護手法などを研究した.

モバイル・ウェアラブルデバイスを用いたコンテキスト認識と人・集団の行動変容促進

助教(瀬崎研) 西山 勇毅,教授 瀬崎 薫,大学院学生(瀬崎研) 幡井 晧介,大学院学生(瀬崎研) 韓 増易,大学院学生(瀬崎研) 小野 翔多,大学院学生(瀬崎研) 徐 立強,大学院学生(瀬崎研) 牛島 秀暢,大学院学生(瀬崎研) 董 学甫,大学院学生(瀬崎研) 幡井 皓介,大学院学生(瀬崎研) 下条 和暉,大学院学生(瀬崎研) 鈴木 凌斗,大学院学生(瀬崎研) 笠原 有貴,大学院学生(瀬崎研) 陈 美怡
最新のモバイル・ウェアラブルデバイスには複数のハード・ソフトウェアセンサが搭載されている.本研究では,それら複数センサデータの収集・分析基盤の開発と,機械学習等を用いた人・環境のコンテキスト認識技術の研究・開発を行う.さらに,人々のWell-Being実現に向けた,抽出コンテキストの人・集団への情報還元基盤に関する研究も行う.

Private Information Retrieval Scheme Supporting Multi-dimensional Range Queries

大学院学生(松浦研) 林田 淳一郎,主任研究員(産業技術総合研究所) シュルツ・ヤコブ,研究グループ長(産業技術総合研究所) 花岡 悟一郎,教授 松浦 幹太
Private information retrieval (PIR) allows a client to retrieve data from a database without the database server learning what data is being retrieved. Most of the existing PIR schemes consider searching simple one-dimensional databases and the supported query types are often limited to index queries only, which retrieve a single element from the databases. However, most real-world applications require more complex databases and query types. In this study, we build upon the notion of query indistinguishability by Hayata et al. (ESORICS2020), and formalize query indistinguishability for multi-dimensional range queries. We then give a construction of a secure multi-server scheme based on function secret sharing. This is the first instantiation of a PIR scheme supporting multi-dimensional range queries while being capable of hiding the type of query being made and, in the case of multi-dimensional range queries, the number of elements retrieved in each query, when considering a stream of queries.

Signature for Objects: Formalization, Security Definition, and Provably Secure Constructions

大学院学生(松浦研) 林 リウヤ,大学院学生(松浦研) 浅野 泰輝,大学院学生(松浦研) 林田 淳一郎,産業技術総合研究所 松田 隆宏,産業技術総合研究所 山田 翔太,産業技術総合研究所 勝又 秀一,産業技術総合研究所 坂井 祐介,産業技術総合研究所 照屋 唯紀,産業技術総合研究所 シュルツ・ヤコブ,産業技術総合研究所 アッタラパドゥン・ナッタポン,研究グループ長(産業技術総合研究所) 花岡 悟一郎,教授 松浦 幹太,産業技術総合研究所/横浜国立大 松本 勉
Digital signatures cannot be used for non-digital things because they are considered to be used only for digital messages. We suggest a new signature scheme called "Signature for Objects," which can sign real objects. In this scheme, we formalize operating objects. The operation can be divided into two parts. One is to manipulate objects to create new ones, called Command. The other is just to convert objects into digital data, called Sensing. Even if the Sensing operation can return different data when it takes as input the same object, we can independently create a valid signature every time. In this study, we define the security of this scheme and show one simple construction way to satisfy it. Moreover, we prove that it satisfies the security only by assuming that there exists a digital signature scheme satisfying EUF-CMA security.

スクリプト実行環境に対する実行遅延・実行停止を回避する機能の自動付与手法

大学院学生(松浦研) 碓井 利宣,NTTセキュアプラットフォーム研究所 幾世 知範,NTTセキュアプラットフォーム研究所 川古谷 裕平,NTTセキュアプラットフォーム研究所 岩村 誠,教授 松浦 幹太
マルウェアの動的解析を妨げる要因に,不要な命令の繰り返しによる実行の遅延や,例外による実行の停止がある.これらは,機械語形式のマルウェアでは,実行命令や実行状態を監視し,発生箇所を検出してスキップすることで回避できる.しかし,スクリプト形式のマルウェアでは,言語やエンジンごとに,未知のバイトコードの解析や仮想機械の監視の必要が生じるため,実現が困難である. この問題を解決するため,本研究では,スクリプトエンジンに,実行遅延および実行停止を回避する機能を自動付与する手法を提案する.提案手法では,まず仮想機械の解析により,バイトコードの解釈実行の仕組みを明らかにし,実行状態の監視と制御を可能にする.さらに,命令セットアーキテクチャの解析を通して,実行された未知のバイトコードに対しても,コールグラフおよび制御フローグラフを構築可能にする.これらに基づいて,実行遅延や実行停止の発生箇所を検出してスキップする仕組みを,スクリプトエンジンに自動で付与する.実験を通じて,提案手法によって実行の遅延や停止を回避できることを確認した.

ブロックチェーンの安全性を強化し環境負荷を低減する検証証明技術

教授 松浦 幹太,技術専門職員(松浦研) 細井 琢朗
ブロックチェーンのネットワークでは,追記する取引情報の正しさを検証する同じ作業を,多くのノードが様々なフェーズで繰り返し実施する.検証を省略することによって利益を得る確率が高まるため,ノードが検証を省略するインセンティブが生じる.省略を許さない制約を加えると,全体として極めて環境負荷が高くなり,ビットコイン型の実装では欧州の中規模国1国に相当する電力消費にまでなるという試算もあるほどである.本研究では,各取引情報を少なくとも一つのノードが必ず検証し,しかも他のノードが低消費電力でその事実を確認できるメカニズムを提案している.これにより,ブロックチェーンの安全性強化と環境負荷低減を両立することができる.現在,隔離されたノードでの有効性に関して実験的検証に成功し,次の段階の評価を準備している.

ブロックチェーンを応用した暗号資産の匿名性モデル

大学院学生(松浦研) 宮前 剛,教授 松浦 幹太
本研究では,ブロックチェーンを応用した暗号資産の匿名性に関する評価指標の意味と関係を整理した.特に,関連付け困難性 (unlinkability) の評価指標としての汎用性を示した.次に,暗号資産の関連付け困難性をフェアに評価するために,暗号資産の特徴に基づいて四つの関連付け攻撃モデルおよびそれぞれの攻撃モデルに対応する安全性を定義した.最後に,代表的な匿名暗号資産に対して本研究で定義した関連付け攻撃安全性評価を行い,それらの匿名暗号資産の匿名性を比較評価し,いくつかの知見を導出した.

動的に不正署名を生成するデバイスを追跡可能な集約署名とその応用

大学院学生(松浦研) 石井 龍,産業技術総合研究所 照屋 唯紀,産業技術総合研究所 坂井 祐介,産業技術総合研究所 松田 隆宏,研究グループ長(産業技術総合研究所) 花岡 悟一郎,教授 松浦 幹太,産業技術総合研究所/横浜国立大 松本 勉
集約署名は,複数の署名を1 つの署名に集約でき,全体署名長および署名検証時間の短縮という効率性を持つため,センサーネットワークなど多数のユーザやデバイスが署名を送信するシステムでの活用が期待されている.しかし,不正署名を1 つでも含んで集約すると集約署名は不正となり,検証者はどのユーザやデバイスが不正署名を生成したかを特定できない.さらに,上記のセンサーネットワーク等の応用では,多数のデバイスが定期的にデータと署名を送信し,かつ(故障などにより) 不正署名を生成するデバイスが時々刻々と変わることが自然に想定される.本研究では,そのような状況を捉えた追跡可能集約署名のモデルを導入し,その機能的要件と安全性要件の定義を行う.さらに,通常の集約署名とDynamic Traitor Tracing を用いた一般的構成を提案する.また,実応用のパフォーマンス評価を総合的に行う.

深層強化学習によるWebアプリケーションのペネトレーションテストの自動化

大学院学生(松浦研) 久野 朔,教授 松浦 幹太
近年,サイバー攻撃による情報の流出やシステムの改竄などの危険性が問題視されている.これに対抗する方策の一つとして,実際に対象環境に対して疑似的な攻撃を行い,侵入につながり得る脆弱性を発見するペネトレーションテストは非常に有効であるとされる.しかし,これには十分に訓練された人員が必要であり,大きなコストが要求される.この問題を解消するために強化学習・深層学習・深層強化学習などを用いてペネトレーションテストを自動化・効率化する研究が存在している.しかし,実際のペネトレーションテストにおいて利用される脆弱性および複数のツールの情報を直接利用し,なおかつ強化学習・深層強化学習の本領ともいえる状態の遷移をペネトレーションテストに根差した形で取り入れた研究は確認した限りでは存在していない.本研究では,多様な攻撃手法と対象の種類が存在しており,非常に使用頻度の高いwebアプリケーションというカテゴリを対象としたペネトレーションテストの効率化のために深層強化学習を用いて,既存のツールおよびエクスプロイト(exploit)を統合する. 最初に,単純なペネトレーションテスト環境の再現として,著名なwebアプリケーション15種類の現存しているバージョンと公開されているexploitを元に模擬環境を作成し,それぞれのアプリケーションに対し,バージョンに適応するexploitを見つけ出すタスクを設定する.その後,このタスクにPPOアルゴリズムを用いた深層強化学習を適用し,学習を行ったエージェントが正しいexploit を見つけ出せることを示す.次いで,exploitだけではない多数のツールの効力と,状態遷移の概念を導入した模擬環境を作成し,これに対し同様にPPO深層強化学習を行い,より複雑なペネトレーションテストにおける深層強化学習の有効性について検討する.

超低電力シリコン神経ネットワークの開発

教授 河野 崇,准教授 小林 正治,大学院学生(河野研) Ashish Gautam
超低電力アナログCMOS回路とFeFETとを組み合わせることにより,脳に匹敵する超低電力アナログニューロモルフィックハードウェア基盤を構築する.

データドリブン脳神経ネットワークモデル

教授 河野 崇,助教(河野研) 名波 拓哉
近年入手可能になってきた脳のコネクトームデータをベースに,Caイメージングデータ,voltage sensitive色素データなどを統合し,脳機能を再現する神経細胞,シナプスレベルでのモデルの構築を目指す.

GaN FET向けデジタルゲートドライバICの開発

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
GaN FETは小型・高効率な電力変換回路を実現するのに適したパワーデバイスであるが,高速スイッチング動作によって生じる電圧・電流のオーバーシュートおよびリンギングが信頼性低下とEMI問題を引き起こす.これらを解決するため,GaN FETに適した高速動作が可能なデジタルゲートドライバICを開発し,スイッチング損失と電圧・電流オーバーシュートを抑制する.

ゲートドライバICによるパワーデバイスの動作状態推定

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
パワーデバイスの動作状態を監視する手法として,従来は温度センサを用いた接合温度測定や電流センサを用いた負荷電流測定などが行われるが,これらのセンサを使った手法はコストやサイズが増大してしまう.本研究では,ゲートドライバの出力電圧からパワーデバイスの動作状態を推定する手法を提案し,ゲートドライバICに集積可能にすることでコストやサイズの低減を実現する.

ゲート電圧波形の機械学習を用いたパワーデバイスの劣化推定

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
パワーデバイスのゲート電圧波形から機械学習を用いて,パワーデバイス故障の一要因であるボンディングワイヤ剥がれを検出する手法を提案する.従来のボンディングワイヤ剥がれ検出手法と比較して検出回路に絶縁の必要がなく,ゲート電圧波形から抽出される2つのパラメータに対し線形回帰アルゴリズムを適用することによって,負荷電流変動と温度変動にロバストなボンディングワイヤ剥がれ検出手法を構築する.

パワーエレクトロニクスにおけるEMI問題を解決するデジタルゲート駆動技術

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
EMI規格を満たしつつスイッチング損失を最小化するデジタルゲート駆動技術を確立し,パワーエレクトロニクスにおけるEMI問題を簡単・迅速・低コストに解決することを目指す.伝導性EMI規格を満たしつつスイッチング損失を最小化するデジタルゲート駆動技術を提案する.また,放射性EMIに対処するために,デジタルゲートドライバICの設計・試作・評価を行う.

パワートランジスタ(IGBT)駆動用の波形制御プログラマブルゲートドライバIC

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
パワーエレクトロニクスとLSIの異分野連携により,パワートランジスタ(IGBT)のゲート駆動電流をデジタルインターフェースで変えられるプログラマブルゲートドライバICを開発した.AIを使った自動最適制御によって,スイッチング時の損失低減とノイズ低減を両立するとともに,動作条件に応じた最適化手法の更なる高度化に取り組んでいる.

並列接続されたパワーデバイスの電流均一化を実現するデジタルゲートドライバIC

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
パワーエレクトロニクス機器において,パワーデバイスの定格を超える大電流を扱う場合,複数のデバイスを並列接続して大電流に対処する.この場合,パワーデバイスの素子ばらつきによって,あるデバイスに電流が集中して信頼性が劣化する恐れがあり,電流を均一化する技術が必要である.本研究では,ゲート波形を制御可能なデジタルゲートドライバICを活用したパワーデバイスの電流均一化技術を提案する.

小型・高効率を実現するハイブリッドDC-DCコンバータの開発

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
従来の電源回路における効率と体積のトレードオフを克服するハイブリッドDC-DCコンバータの研究開発に取り組んでいる.特に,高入力電圧および高降圧比のアプリケーションに着目し,新しい回路トポロジーの提案と回路設計技術の開発に取り組んでいる.

絶縁型ハイブリッドDC-DCコンバータに関する研究開発

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
効率と体積のトレードオフを克服できる非絶縁型ハイブリッドDC-DCコンバータの回路トポロジーを参考にして,絶縁型DC-DCコンバータの同期整流回路に応用するための回路設計技術と新しい回路トポロジーの提案に向けた研究開発に取り組んでいる.

高エネルギー効率のピクセル近傍2次元CNNアクセラレータ

教授 高宮 真
画像認識を高エネルギー効率で行うことを目的として,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)アルゴリズムの本来の特徴である注目ピクセルの近傍に対してのみ畳み込み演算を行う点を利用し,ピクセル近傍に集積されたデジタル回路を用いて外部メモリへのデータ書き込みなしでCNN演算を2次元的に実現する.

ワイヤレス給電を活用した大容量キャパシタの新しい用途開拓に関する研究

助教(高宮研) 畑 勝裕
各種モバイル機器やEV等のモビリティなどはこれまで電池利用が一般的であったが,ワイヤレス給電技術の普及によって高頻度給電が可能となれば,電池に変わって大容量キャパシタを利用できるアプリケーションが数多く存在すると考えられる.そのため,大容量キャパシタとワイヤレス給電の融合に基づく新たな電源設計技術を確立し,大容量キャパシタの新たな用途開拓とシステム構築に向けた研究開発に取り組む.

非接触給電等によるエネルギー・モビリティ統合システムの研究開発

助教(高宮研) 畑 勝裕
自動運転技術やデマンド型交通などを利用した公共交通サービスではカバーできない過疎地域の移動課題を解決するため,次世代モビリティと給電インフラの協調によるエネルギー・モビリティ統合システムを開発する.

poimo (POrtable and Inflatable MObility)

学術専門職員(東大) 佐藤 宏樹,特任研究員(東大) Seong Young Ah,特任講師(東大) 鳴海 紘也,特任助教(東大) 笹谷 拓也,助教(高宮研) 畑 勝裕,mercari R4D 山村 亮介,Takram 緒方 壽人,講師(東大) 新山 龍馬,准教授(東大) 筧 康明,教授(東大) 川原 圭博
やわらかく安全,軽く変形可能なため持ち運べる,というインフレータブルの特性を活かしたモビリティ.MaaSや自動運転のような,移動革命のトレンドを踏まえた新しい技術とそのプロダクト創出を目指す.

電界結合方式ワイヤレス電力伝送の基礎検討と月面探査ローバへの応用

大学院学生(東京理科大) 一柳 宏樹,准教授(東京理科大) 居村 岳広,教授(東京理科大) 堀 洋一,助教(高宮研) 畑 勝裕,JAXA 本田 さゆり,JAXA 嶋田 修平,JAXA 川崎 治
高低温環境下に晒される宇宙探査機等の高断熱化を実現するため,太陽電池を電力源としたワイヤレス電力伝送システムを開発し,宇宙探査機等の質量低減を目指す.本研究では,電界結合型ワイヤレス電力伝送を用いた本システムの成立性を確認する.

非接触給電舗装の実用化に関する研究

准教授(東京理科大) 居村 岳広,教授(東京理科大) 堀 洋一,教授(東大) 藤本 博志,助教(高宮研) 畑 勝裕,東亜道路工業(株) 塚本 真也,東亜道路工業(株) 阿部 長門
走行中充電における道路側コイルの電気的特性と機械的強度向上させた上で,アスファルトへの埋込み技術確立を目的とする.電気的特性(効率・電力など)と機械的特性(耐久性など)を従来コイルと比較し,経年劣化の評価を行い,埋込み深さの最適化,低コストコイル等の可能性を示す.

ダイヤモンド微小共振器技術の開発

教授 岩本 敏,助手(東大) 石田 悟己,主任研究員((国研)産業技術総合研究所) 加藤 宙光,研究チーム長((国研)産業技術総合研究所) 牧野 俊晴,教授(横浜国立大) 小坂 英男
近年,ダイヤモンド中の色中心を用いた量子センサや量子メモリなどの量子情報デバイスが高い関心を集めている.しかし,これら素子の効率は必ずしも十分ではなく,ダイヤモンド色中心と光子の相互作用を増強することによる高効率化の実現が大いに期待されている. 我々の研究室では,これまでにシリコンや化合物半導体を用いて培ってきたフォトニック結晶技術をダイヤモンドに展開し,量子デバイスの高効率化に資するダイヤモンドフォトニック結晶ナノ共振器の基盤技術開発を進めている.ダイヤモンド微小共振器構造の設計のほか,それを実現するためのダイヤモンド微細加工技術の開発にも取り組んでいる.

分散型地球環境情報ベース【柏地区利用研究課題】

准教授 根本 利弘

地球環境デジタル基盤の構築とその高度化

准教授 根本 利弘,特任准教授(東大) 生駒栄司,特任助教(東大) 安川 雅紀,特任助教(東大) 山本 昭夫,特任研究員(東大) 松村 浩道,特任研究員(合田研) 服部 純子,特任研究員(東大) 平川 晶子,特任研究員(東大) 西川 史恵,特別教授(東大) 喜連川 優
地球環境分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)を更に推進するとともに,国,地方自治体,企業等の意思決定に貢献する,気候変動対策や防災・減災対策等を中心とした地球環境全体のデータプラットフォームとしての土台を築く.

未来ロボット基盤技術

元特任教授 森 三樹,教授 新野 俊樹,教授 坂本 慎一,准教授 大石 岳史
マルチマテリアルAM(Additive Manufacturing)のロボットへの適用研究では,AM技術とMID(Molded Interconnect Device)技術の融合により,複雑な立体配線を有する機能部品の提供を目指し研究を進めている. 種々の音環境がロボットに及ぼす影響の評価・解析では,環境音下におけるロボットの了解度試験と3次元音場データ測定システムの開発を目指し研究を進めている. 自律移動ロボット・ヒューマノイドロボット操作インタフェースの研究では,移動型ロボットによる高精度・高密度環境3次元デジタル化として,コンピュータビジョンによる自律移動ロボット支援とロボットプログラミングインタフェースの開発を目指し研究を進めている.

3次元デジタル化とロボティクス

准教授 大石 岳史,助教(大石研) 影澤 政隆,特任助教(大石研) 岡本 泰英,特任助教(大石研) 佐藤 啓宏,特任助教(大石研) メナンドロ ローハス,特任研究員(大石研) 石川 涼一
カメラやLiDARを用いて実世界を3次元デジタル化する移動体計測システムを開発している.ローバーやドローンの位置姿勢をセンサデータから推定し,推定された位置姿勢をもとにLiDARデータを再配置することによって対象の3次元点群を得ることが可能となる.このような計測システムだけでなく遠隔作業を目的としたヒューマノイドロボットの仮想空間操作インタフェースや,SLAMデバイスを用いたロボットナビゲーション技術,学習ベースの自動3次元計測ロボットなどの開発も進めている.

サイバー考古学

准教授 大石 岳史,助教(大石研) 影澤 政隆,特任助教(大石研) 岡本 泰英,特任助教(大石研) メナンドロ ローハス,特任研究員(大石研) 石川 涼一
文化財などの3次元デジタルデータを解析し,考古学,美術史学,建築学といった異分野との融合によって新たな知見を得る学際研究を推進している.これまでにアンコール遺跡群尊顔の解析,アウグストゥス像の分類や,クフ王の太陽の船の仮想復元など,デジタルデータの特性を生かした解析手法の開発を行ってきた.また3Dプリンタによる出力モデルを用いた風洞実験や,レプリカの生成など様々な形で学術的,社会的な貢献を目指している.

複合現実感モビリティシステムの開発

准教授 大石 岳史,助教(大石研) 影澤 政隆,特任助教(大石研) 岡本 泰英,特任助教(大石研) メナンドロ ローハス,特任研究員(大石研) 石川 涼一
車両を利用した複数ユーザが同時体験可能な複合現実感(MR)システムを開発している.近年,文化財のモデル化,表示,解析などを目的としたe-Heritage分野の研究が盛んに行われている.その中でもMR技術は,失われた文化財を仮想的に復元展示する手法として注目されつつある.この復元展示で対象となる遺跡は屋外であることが多く,光源環境の変化などから様々な技術的課題が残されている.またこれまでのMRシステムは個人で利用するものが主であり,さらに広範囲を移動できないといった問題があった.そこで我々は,車両を利用して遺跡内を移動しながら複数ユーザが同時に体験可能な復元展示MRシステムを開発している.

量子中継応用にむけたダイヤモンドオプトメカニクス系のシミュレーション

准教授 野村 政宏,教授(横浜国立大) 小坂 英男,教授 岩本 敏,特任助教(野村研) Byunggi Kim

定量免疫学

准教授 小林 徹也
免疫は未知で多様な外敵を認識・学習し,速やかに外敵を排除する生体防御システムである.免疫による外敵の認識・学習において,T細胞・B細胞をはじめとした免疫細胞の多様性(レパートリー)とその変化が重要な役割を果たす.本研究では,免疫細胞集団の集団ダイナミクスモデルと,ハイスループットシーケンシングに基づく免疫レパートリー解析を統合し,我々の免疫状態がどのように維持され,また動的に制御されているか,その原理の理解に取り組んでいる.

定量発生学

准教授 小林 徹也
着床前胚の形成は,1つの受精卵が多能性細胞を含む複数の状態の細胞に分化・脱分化をする哺乳類胚発生の最も単純な第一ステップである.複雑な多細胞構造が動的にまた空間的に形成される原理を理解するためには,発生の系譜を追跡し再構成することが不可欠である.本研究では,長期胚培養,定量的3Dタイムラプスイメージング,画像からの細胞核の自動同定,核の自動追跡アルゴリズム,発生系譜の統計解析技法,そして胚発生の力学モデルなどの技術開発に取り組んでいる.これらの手法は発生の理解のみならず,胚の状態を定量化し,その培養条件を最適化する応用にも貢献すると期待される.

定量細胞生物学

准教授 小林 徹也
大腸菌,酵母,細胞性粘菌,培養細胞などの単細胞生物は,生命システムにおける定量的な法則を見出すためのよいモデルシステムである.本プロジェクトでは,様々な実験研究者と協力することで,多様な定量データに様々な数理・データ解析手法を組み合わせ,新たな法則の発見に取り組んでいる.特に我々は,1細胞レベルでの振る舞いと細胞ごとの確率性・多様性の結果として,どのように細胞集団の挙動や機能が実現しているか?に着目して研究を進めている.

生体情報処理の数理理論

准教授 小林 徹也
生体システムは個体から細胞まで積極的に環境の情報を取得・処理し,運動・状態変化などの応答を決定する.しかし,ミクロな細胞を構成する化学反応は極めて確率的でノイジーである.ノイジーな化学反応を用いてどのように細胞は情報を扱い,そして情報をどう活用しているのか.その原理は明らかではない.本研究では,情報理論や情報熱力学をベースとして,動的に変化する環境の認識や探索に関する数理理論の構築を行っている.またそれを定量的な計測と組み合わせて,生体情報処理を情報の観点から理解することを探求する.

確率生体現象の数理と熱力学

准教授 小林 徹也
細胞はすべての多細胞生物の構成要素であり,また化学反応はすべての細胞の構成要素である.細胞という微小環境に閉じ込められた,少数だが多種の反応群は極めて確率性の高い挙動を示す.本研究では,確率論に基づく数理理論の構築と,定量データを用いた理論の検証を通して,このような現象をどのように記述したら良いのか?分子の少数性は現象の定性的な振る舞いにどのような影響を持つのか?少数分子からなる平衡・非平衡系に成り立つ熱力学的法則は何か?といった問題を数理的な立場から解決することを目指す.

進化と適応の統一理論

准教授 小林 徹也
生体システムは確率的に変動する環境に柔軟に適応する能力を有する.自然選択に基づくダーウィン進化は,環境適応の基本メカニズムの一つであり,生体は集団内に遺伝型・表現型の多様性を生成することで,未知の環境変動へのリスクを分散し,生存確率や適応度を高める.一方で,生体システムは環境を積極的に感知・予測し,事前に適応的な状態を選択することのできる脳の様な器官を発達させてきた.この2つの適応機構はどのように関連しているのか?本研究では,ダーウィン的自然選択と予測的情報処理に共通する情報論的変分構造を用いて,この2つの適応機構を理論的に統合し,生物の適応に関わる統一理論の構築とその応用に取り組んでいる.

知的反射板制御アルゴリズムの開発

准教授 杉浦 慎哉
ミリ波やテラヘルツ波などによるワイヤレス通信では広帯域が利用可能である一方,電波の距離減衰や直進性が高く障害物による遮蔽に弱いため,見通し外通信に不向きであるという欠点がある.反射波の特性を柔軟に制御可能な知的反射板によりこの欠点を克服することが期待されている.本研究では,知的反射板を利用したセキュアなマルチユーザ通信を実現するためのアルゴリズムを提案した.また,反射波のビーム方向と偏波を任意に制御可能なメタサーフェス構成を開発した.

HfO2系材料における強誘電性発現のメカニズムの解明

准教授 小林 正治,教授 平本 俊郎
CMOSプロセスと整合性が高く,10nm以下でも強誘電性を有する,強誘電体HfO2が次世代のメモリ材料として大きな注目を集めている.ドーパントを含むHfO2をアニール処理することで,中心対称性の破れた直方晶が形成され,これが強誘電性をもたらしているという実験報告はある.一方,理論的に熱過程で強誘電体相が形成されるメカニズムは十分に明らかになっていない.本研究ではSiをドープしたHfO2においてアモルファス相から強誘電体相へ相転移するプロセスを熱過程に沿って系統的に第一原理計算によって明らかにした.HfO2はドーパントと界面エネルギーの効果により,正方晶のエネルギーが斜方晶よりも安定になる.さらに各層のエントロピーをフォノンバンドの計算結果から直接求め,ドープされたHfO2の各結晶相のグレインサイズと温度に対する自由エネルギーを計算した結果,高温において正方晶の核形成が行われることがわかった.さらに低温に戻す過程で正方晶は準安定状態に移り,運動学的な遷移エネルギーの低い強誘電体相へ相転移することを第一分子動力学法を用いて直接観測することに成功した.

IGZOトランジスタとRRAMの三次元集積技術による三次元ニューラルネットワークの実証

准教授 小林 正治,教授 平本 俊郎
AI特にニューラルネットワークのアルゴリズムでは,学習と推論のために膨大なデータが必要であり,従来のコンピューティングではCPUとメモリとの間のデータ伝送が性能のボトルネックになることが課題となっている.この課題を解決する技術として,演算とメモリを一体化させ,メモリアレイで演算まで行うインメモリコンピューティングが注目を集めている.しかし,ニューラルネットワークの認識精度を上げるにはメモリアレイの規模を大きくする必要があり,今後配線での遅延や消費エネルギーが問題となる.本研究ではCMOSプロセスの配線層に形成可能なIGZOトランジスタとRRAMを多層にモノリシック集積したチップを開発した.多層プロセスでもデバイス特性の劣化は見られず高い信頼性を維持することを確認した.またバイナリニューラルネットワークで基本演算要素となるXOR演算をIGZOトランジスタとRRAMによるメモリセルのペアで動作実証した.

負性容量トランジスタのデバイス物理に関する研究

准教授 小林 正治,教授 平本 俊郎
強誘電体HfO2をゲート絶縁膜とする負性容量トランジスタは,サブスレショルド係数が60を切ることで超低電圧動作が期待される次世代トランジスタ技術である.しかし,サブスレショルド係数が60を切るメカニズムや負性容量トランジスタに特有の現象を説明できる包括的な物理メカニズムは未解明であった.本年度の研究では,本研究室が提唱してきた強誘電体のダイナミクスに基づく過渡的な負性容量の物理モデルをベースとして,さらに界面や膜中における電荷トラップと固定電荷の影響も含めた包括的なモデリングを行い,より現実に即したデバイス物理の解明に貢献できるようになった.

PSD法によるⅢ族窒化物の成長

教授 藤岡 洋,助教(藤岡研) 上野 耕平
パルスプラズマを励起源として用いて結晶成長を行うことによって高品質Ⅲ族窒素化物薄膜を低温かつ高いスループットで成長させる.この手法により,従来手法では実現できなかった金属上半導体単結晶の高速成膜を実現する.

フレキシブルマイクロLEDの開発

教授 藤岡 洋,助教(藤岡研) 上野 耕平
大面積金属基板上へ半導体単結晶を成長させ受発光素子や電子素子などのエレクトロニクス素子を作製する.その後,作製した素子をポリマーへ転写することによって透明かつ柔軟,大面積のフレキシブルデバイスを作製する.

キラルな無機化合物の合成と物性評価 ガラスを前駆体とした無機化合物の合成

助教(井上(博)研) 木崎 和郎
ある種の結晶性無機化合物はその対称性を反映して,キラルな構造をもつ.このキラルな無機化合物の結晶構造と,発光や磁性などの物性との構造物性相関を明らかにする.

コロナウイルス迅速診断デバイス開発に向けた抗体に代わる分子認識が可能なペプチドの設計

教授 工藤 一秋,教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
ポストコロナ社会において,社会経済活動を維持・発展させ,人々の生活の質を向上させるためには,新型ウイルスの感染拡大の事前抑止が必須であり,これにはワクチン投与だけでなくウイルス陽性診断法の革新がゲームチェンジャーの役割を果たす.本研究の目的は,抗体に代わる分子認識が可能なペプチドを研究開発することで,PCRや抗体検査とは異なる原理によるウイルス検査法を確立することである.完成すれば非破壊で迅速にウイルス陽性を診断できるという強力な能力を持つ.本研究で開発する検査法を基にした,コロナウイルス陽性診断デバイスを開発する連携研究プロジェクトへの速やかな展開を目指す.

ペプチド有機触媒の開発

教授 工藤 一秋,大学院学生(工藤研) 劉 謙,大学院学生(工藤研) Tian Jiaqi
ペプチド触媒は,酵素,有機低分子化合物に次ぐ第三の分子触媒として,独自の機能が期待される.これに関してペプチド触媒ならではといえる反応の探索を行った.

生合成反応を模倣した生理活性分子の合成

教授 工藤 一秋,大学院学生(工藤研) 竹内 優太,大学院学生(工藤研) Shi Yihao,大学院学生(工藤研) 川崎 駿,大学院学生(工藤研) Lu Yu
生体内でアセチルCoAとマロニルCoAから得られる二次代謝物であるポリケチドには多様な分子骨格,生理活性をもつものが存在する.それらは生体内では共通のシンプルな反応の積み重ねによって作られている.そのしくみを模倣することで,多様な化合物を生み出す人工の反応システムの開発へとつなげることを目指す.

プラズモン共鳴の応用

教授 立間 徹,助教(立間研) 西 弘泰,特任助教(立間研) 石田 拓也,技術専門職員(立間研) 黒岩 善徳,特任研究員(立間研) イ スンヒョク,大学院学生(立間研) 松下 匠
局在表面プラズモン共鳴による光応答増強や,光学材料,色材,スマートウィンドウ,センサ等への応用を図る.

プラズモン誘起電荷分離の応用

教授 立間 徹,助教(立間研) 西 弘泰,特任助教(立間研) 石田 拓也,特任研究員(立間研) イ スンヒョク,大学院学生(立間研) 東條 太朗,大学院学生(立間研) 本間 徹,大学院学生(立間研) 井澤 哲舜,大学院学生(立間研) 中根 佑真,大学院学生(立間研) 大木 崚我,大学院学生(立間研) 孫 瑞卓,大学院学生(立間研) 薮野 真弥
金属ナノ粒子と半導体の界面において,プラズモン共鳴に基づいて電荷分離が誘起される.この現象の光電変換,光触媒,フォトクロミズム,バイオセンサ,ナノファブリケーション等への応用に関する研究を行う.

プラズモン誘起電荷分離の機構解明

教授 立間 徹,助教(立間研) 西 弘泰,特任助教(立間研) 石田 拓也,特任研究員(立間研) イ スンヒョク,大学院学生(立間研) キム カンソク,大学院学生(立間研) 左 袁
金属ナノ粒子と半導体の界面において,プラズモン共鳴に基づいて電荷分離が誘起される.この現象の機構を解明する.

光機能ナノ材料の開発

教授 立間 徹,助教(立間研) 西 弘泰,特任研究員(立間研) イ スンヒョク,技術専門職員(立間研) 黒岩 善徳
発光デバイス用量子ドット,抗菌・抗ウイルス性光触媒などの開発を行う.

電子ビーム溶解法を用いた貴金属およびレアメタルの高効率回収法の開発【柏地区利用研究課題】

教授 岡部 徹

エントロピー駆動型水素結合による高分子材料の強靭化機構の解明

教授 吉江 尚子,助教(吉江研) 中川 慎太郎,大学院学生(吉江研) Jun Xia,大学院学生(吉江研) 石坂 祥吾,研究実習生(吉江研) 田島 怜奈
共有結合よりも弱い可逆的な動的結合により,高分子材料を強靭化することができる.我々は最近,柔軟かつ三次元的な構造をもつ水素結合性基が,材料の靭性および自己修復性などの動的性質を向上させることを見出し,これをエントロピー駆動型水素結合と名付けた.本研究では,このエントロピー駆動型水素結合の特性を調査し,材料の靭性などの特性向上のメカニズムの解明を目指す.計算化学と実材料の物性測定により,エントロピー駆動型水素結合の普遍性および高分子鎖のダイナミクスに及ぼす効果を明らかにしている.

マルチロック型生分解性ポリマーの開発

教授 吉江 尚子,助教(吉江研) 中川 慎太郎,大学院学生(吉江研) Olivier Doat
海洋プラスチック問題等のポリマー材料に関わる環境問題の解決のために,使用時には分解せず優れた力学特性を発揮し,かつ廃棄後には迅速に分解するポリマー材料が求められている.本研究では,刺激応答性の動的結合を利用して,複数の外部刺激が重なったときにのみ迅速に生分解するマルチロック型生分解性ポリマーの開発を目指している.

動的結合の制御配置による高分子材料の強靭化

教授 吉江 尚子,助教(吉江研) 中川 慎太郎,大学院学生(吉江研) 石坂 祥吾
可逆的な動的結合を高分子鎖中に組み込むことで,硬さと伸びしろを両立した強靱な高分子材料が得られる.本研究では,我々が最近発見したエントロピー駆動型水素結合性基を高分子鎖中に制御配置することで,高靭性な材料の創製を目指す.水素結合性基の数・配置により,硬軟様々な高靭性材料が得られることを見出した.水素結合性基の様々なスケールでの配置制御により結合強度や相分離構造を変化させ,それらと巨視的な力学特性の相関解明を行っている.

生体を模倣した折りたたみ構造の導入によるポリマーの力学特性強化

教授 吉江 尚子,助教(吉江研) 中川 慎太郎,大学院学生(吉江研) 兼村 夏姫
産業上重要な材料である架橋ポリマーでは,一般に高い弾性率と大きな破断伸びがトレードオフの関係にあるため,それらを両立するためには工夫が必要である.一方,自然界には筋肉などこれらを両立した素材が多い.特に,生物の骨格筋に含まれるチチンというタンパク質は,分子の「局所的な折りたたみ」により高い靭性を発揮する.そこで本研究では,この局所的な折りたたみ構造を単純化した「分子内架橋による折りたたみ」を提案し,その機構が架橋ポリマーの力学特性に及ぼす効果を解明する.

構造制御されたボトルブラシ型高分子網目の合成および物性

助教(吉江研) 中川 慎太郎,教授 吉江 尚子
高分子鎖に多数の高分子鎖が修飾されたボトルブラシ型高分子が近年その特異な構造・物性から注目を集めている.本研究では,構造がよく制御されたボトルブラシ高分子網目を合成する手法の確立,およびそれを用いた構造−物性相関の解明を行っている.

構造均一な高分子網目を用いた動的結合と高分子材料の力学特性の相関解明

助教(吉江研) 中川 慎太郎,教授 吉江 尚子,大学院学生(吉江研) Xin Huang,大学院学生(吉江研) 川崎 将和
共有結合よりも弱く可逆な動的結合は高分子材料の力学特性を向上させるが,動的結合の分子特性と材料の巨視的な力学特性の相関の全貌は明らかになっていない.本研究では,我々が最近開発した構造均一な高分子網目を基盤として,種々の動的結合が力学特性に及ぼす効果の統一的な理解を目指す.

構造均一化による架橋高分子の極限物性への挑戦

助教(吉江研) 中川 慎太郎,教授 吉江 尚子
架橋高分子は一般に様々な構造不均一性を含むため,高分子鎖一本一本が本来持っている力学特性等を活かし切ることができていない.本研究では,架橋高分子の網目構造の均一化により,架橋高分子が到達しうる極限の力学特性への到達を目指す.

キラル物質の分光学的性質に関する研究

教授 石井 和之

クロロフィル集合体の磁気光学分光

教授 石井 和之

セシウム吸収材を担持させた素材の開発とその製品化

教授 石井 和之

ソフトクリスタルの光機能に関する研究

教授 石井 和之

ビタミンCバイオイメージング用蛍光プローブの開発

教授 石井 和之

ホモキラリティの起源に関する研究

教授 石井 和之

ポルフィリン・フタロシアニンの光機能化に関する研究

教授 石井 和之

ロータリーエバポレーターを用いた不斉合成法の開発

教授 石井 和之

光機能性錯体とナノファイバーの複合化研究

教授 石井 和之

光線力学的癌治療を志向した光増感剤の研究

教授 石井 和之

分子性光触媒の研究

教授 石井 和之

分子性結晶の準安定状態に関する研究

教授 石井 和之

刺激応答性クロミック材料の開発

教授 石井 和之

金属錯体の分光測定研究

教授 石井 和之

4 配位Ti を高濃度に骨格に含む多孔性シリカ材料の合成と触媒応用

助教(小倉研) 茂木 堯彦,教授 小倉 賢,大学院学生(小倉研) 清 智弘

Cuゼオライトによる窒素酸化物除去触媒作用とゼオライト構造因子の解明

教授 小倉 賢
銅(Cu)をイオン交換担持したゼオライト触媒は,特異的な窒素酸化物除去触媒作用を示す.NO直接分解,アンモニア(NH3)を還元剤とした選択的還元反応(SCR)にともに高活性・高選択性・高耐久性を示すことを明らかにするとともに,ゼオライト構造が特別な役割をもち,活性を強く支配していることを見出した.この構造因子を明らかにすることを目的としている.

アルカン転換反応を指向した骨格タンタルを有するゼオライトの合成

助教(小倉研) 茂木 堯彦,教授 小倉 賢,大学院学生(小倉研) 高橋 怜央

シリカおよび炭素骨格への部分窒素導入と新たな機能を賦活した塩基触媒の創製

教授 小倉 賢
これまで当研究室で培ってきたシリカの部分窒化をゼオライト,メソポーラスシリカ,アモルファス炭素へ展開する.これら多孔質物質のローカル構造に依存した新しいタイプの塩基性窒素塩基触媒性能を追究する.

シリカ系メソ多孔空間内に固定された酵素による化学反応設計

教授 小倉 賢

ゼオライト触媒を用いたオレフィン合成において骨格構造がプロピレン選択性に及ぼす影響

助教(小倉研) 茂木 堯彦,教授 小倉 賢,大学院学生(小倉研) 木村 孝博

二酸化炭素からの有価物合成:炭化水素燃料への転換に資する触媒に関する研究

教授 小倉 賢
内燃機関から排出される二酸化炭素を原料に転換し,有価物を得る資源循環プロジェクトの一環.環境負荷のないプロセスで製造されたグリーン水素を利用し,MTOやFTにより燃料に資する高級炭化水素合成を目指す.

多成分炭化水素からの単相選択的吸着分離を目指したMOF/ゼオライト・コンポジットの創製

教授 小倉 賢

定常状態同位体過渡速度解析法によるゼオライト上でのメタノール─オレフィン反応解析

教授 小倉 賢
メタノールから低級オレフィンを合成するメタノール−オレフィン(MTO)反応は,プロピレンなど有効な成分の選択性および収率を向上させるなど時代のニーズに合わせた脱石油化学プロセスとして期待されている.それを触媒するゼオライト上での反応機構解明を,定常状態同位体過渡速度解析法(SSITKA)を用いて検討している.

排ガス処理触媒系の探索,特にN2O,メタンの排出抑制に資するゼオライト系触媒の設計

教授 小倉 賢

燃焼排ガス中の一酸化窒素NOの選択吸着材の調製とアンモニアへの転換触媒システム開拓

教授 小倉 賢
燃焼排ガスに含まれる一酸化窒素NOを吸着阻害性物質共存下において選択的に吸着・濃縮する.この濃縮NO種を還元剤を用いてアンモニアへと転換する触媒システムの構築・設計研究.PdゼオライトおよびZIF, ZIF由来炭素系多孔質材が有効であることを見出し,そのNO吸着特性を評価することを目的とする.

ガラス・液体の原子分解能構造解析

教授 溝口 照康
STEM-EELSを用いたガラスおよび液体の原子分解能計測

先端計測インフォマティクス

教授 溝口 照康
計測される画像およびスペクトルを,データ駆動型手法により解析

内殻電子励起分光スペクトル(ELNES/XANES)の第一原理計算

教授 溝口 照康
一粒子計算法(DFT-LDA/GGA),二粒子計算法(BSE),および多電子計算法(CI)を用いた内殻電子励起分光スペクトル(ELNES/XANES)の理論計算

半導体,エネルギー材料および機能性セラミックス中格子欠陥における構造機能相関

教授 溝口 照康

格子欠陥のマテリアルズインフォマティクス

教授 溝口 照康

分子間振動の粗視化理論に基づく分子結晶の構造安定性予測

教授 北條 博彦,大学院学生(北條研) 王 越,大学院学生(北條研) 岡村 彰太
超分子複合体や分子結晶における分子間振動モードを分子間力の剛性定数に帰納する理論を構築するとともに,それを分子結晶の多形構造安定性評価へと応用する研究を行う.

分子集積体における電子状態の効率的計算法の開発とその応用

教授 北條 博彦,主任研究員(長崎県工業技術センター) 重光 保博,大学院学生(北條研) 許 明戈,大学院学生(北條研) 鯉渕 領
階層的QM/MM法,周期境界条件をもちいたDFT法などの計算法をもちいて,分子集積体中の着目分子の電子状態を効率的に計算するとともに,固相中で示される分子物性を合理的に説明できるモデルの構築を試みる.

新規蓄熱材の開発と特性評価

教授 北條 博彦,大学院学生(北條研) 真子 泰典
金属錯体を利用した,過冷却−冷結晶化システムにおいて,錯体の分子構造と蓄熱挙動の関係について調べ,材料設計の指針とする.

有機結晶の光・熱応答特性に関する速度論的および構造化学的研究

教授 北條 博彦,大学院学生(北條研) 鯉渕 領
光および熱に応答して電子状態が変化する有機結晶を対象として,その応答特性を速度論的に記述する実験的手法を開発・改良するとともに,得られたパラメータ群と結晶構造との関連付けを試みる.

先端技術を社会実装するための知財保護/知的財産をもとにした産学連携/知的財産をコアにした協創の場のデザイン/協創の場における知的財産保護/知財の視点をもった研究者・技術者の育成

教授 菅野 智子
データを活用した材料開発など,最先端の研究や新しい技術開発における発明創出のプロセスを検証し,またデータを含めた知財の保護の在り方を考察する.また多数主体が関わる研究開発における知財の保護の在り方,産学連携の在り方を考察する.

非鉄金属生産工学

特任教授 黒川 晴正
銅,鉛,亜鉛などのベースメタルに加え,レアメタル,レアアース,貴金属を含む多岐にわたる金属は,現代社会の発展に必要不可欠な素材であり,今後もますますその重要性は増していく. 一方,優良な資源は枯渇してきているため,従来では経済合理性の無かった難処理・低品位資源,およびリサイクル原料を有効活用する製錬プロセスの改良・開発が急務になってきている.生産プロセスにおける消費エネルギーの最小化,および目的元素を最大限回収することによる廃棄物の発生量低減を通じて,低消費エネルギー・低環境負荷・低コストのプロセススキームを実現することを目指している.

多数の金属種の配列の精密制御と機能発現

准教授 砂田 祐輔
多数の金属種を平面状や立方体状など構造を精密に規定しながら配列し,それらの特異な化学的・物理的機能を開拓する.

遷移金属と典型元素の協働作用を活用した高機能性クラスター開発

准教授 砂田 祐輔
遷移金属化合物において,典型元素化合物を配位子として導入することで,通常では実現困難な様々な触媒機能を付与できるなど,特異な機能を発現できることを最近当研究室では見出している.本研究では,多数の遷移金属と典型元素から構成されるクラスターを開発し,元素間協働作用に基づく特異な反応性や新規物性の発現を指向した研究を行う.

高機能性ベースメタル触媒開発

准教授 砂田 祐輔
有機化合物の合成・変換における多くの場合において,貴金属化合物が触媒として用いられている.近年,貴金属の枯渇や価格の高騰から,貴金属を用いない触媒の開発が望まれており,当研究室では,鉄などの安価なベースメタル触媒の開発を行っている.

薄膜の脱濡れ現象による自己組織化機能性ナノ材料の創製

助教(八木研) 神子 公男
特異な形状や良質な結晶構造(配向性)を有することで,光学特性や磁気特性といった機能性の向上が期待されるナノ材料を,脱濡れ(熱凝集)現象を用いた自己組織化により作製する.本研究において,目的とする機能層と基板との間に,シード層と呼ばれる薄膜層を挿入することで自己組織化やエピタキシャル成長を促進させ,余分な蝕刻工程等を必要としない,ボトムアップ型のナノ材料創製技術の確立を目指す.

分子認識能を賦与した有機薄膜トランジスタ型化学センサの創製

准教授 南 豪
有機薄膜トランジスタは,軽量性,柔軟性,低環境負荷,大面積デバイス化が可能などの特徴を有していることから,センサデバイス開発において魅力的なプラットフォームである.しかし,センサとしての応用研究は萌芽段階にあり,とりわけ分子認識化学的視点からの研究展開はこれまでにおこなわれていない.そこで本研究では,有機合成化学に立脚して合目的に創製した分子認識材料を有機薄膜トランジスタに組み込むことにより,新たな化学センサデバイスの提案を目指している.

超分子センサアレイによるハイスループット分析手法の開発

准教授 南 豪
ホスト−ゲスト化学に基づいて開発される分子センサは,比較的高い選択性を有する一方で,多成分を迅速かつ同時に検出することは得意ではない.本研究では,あえて標的化学種に対して“低選択性”を有する分子センサ群を“可能な限り簡易に”合成し,これをマイクロアレイ上に並べて,体液などに含まれる多成分をハイスループットに分析する手法を開発する.低選択性分子センサ群のアレイ化により得られる種々の信号応答について,統計学・機械学習に基づくケモメトリックスを用いて解析をおこない,複数種の同時定性・半定量・定量分析を試みている.

窒化物半導体/超伝導体集積エレクトロニクス

特任准教授 小林 篤

非耐熱性酸化物上窒化物エレクトロニクス

特任准教授 小林 篤

トポロジカル絶縁体のバルク絶縁性向上

講師 徳本 有紀
トポロジカル絶縁体の特殊な表面状態に起因する表面伝導,量子振動を検出するためには,バルクの絶縁性を向上させることが不可欠である.表面および転位物性を評価することを念頭に置き,Pb系カルゴゲナイドトポロジカル絶縁体を対象とし,バルク絶縁性向上の研究に取り組んでいる.

トポロジカル絶縁体の塑性変形による転位導入

講師 徳本 有紀
トポロジカル絶縁体中の転位においてヘリカルにスピン偏極した金属状態が生じ得ることが理論的に予測されている.この金属状態の実験的な検証を目指し,転位において特殊な金属状態が発現し得るPb系トポロジカル絶縁体の作製,塑性変形による転位の導入,転位の構造解析を行っている.

層状準結晶の合成および物性評価

講師 徳本 有紀
遷移金属カルコゲナイド系層状物質の中でも未開拓の物質であるTa-Te 準結晶に着目し,新規物性の探索を目指している.

ナノ摩擦力顕微鏡によるポリジアセチレンメカノクロミズムの解明

講師 杉原 加織
メカノクロミックポリマー,ポリジアセチレンがどのような力をかけると発光するのかという「力と発光の相関」をナノスケールで定量的に解明する.

強力な抗菌薬開発に向けた抗菌ペプチド・コオペラティブ効果の原理解明

講師 杉原 加織
抗菌ペプチド・ コオペラティブ効果という異種のペプチドを混ぜることで発現する新しい生体分子機能の原理解明.

BIM による建築生産イノベーションに関する特別研究会RC-90

教授 野城 智也,特任講師 森下 有,特任研究員(野城研) 村井 一
従前より,BIM(Building Information Modeling)を導入することによって,建築設計を含む建築生産プロセスを変革する期待が高まっている.特に,従来の人の暗黙知に付随して蓄積されてきた異業種間相互調整プロセスから,建物の情報のみならず,建築生産に必要な当事者間調整情報(設計情報・生産情報)を統合的にマネジメントしていくプロセスに変革していく期待は高い. しかしながら,我が国における現況として,設計のBIM,生産のBIM,運用のBIMと言われるように,建築生産プロセス間の連携と相互調整において未だに多くの課題があり,BIMを利活用するメリットを最大限に活かしきれていない状況である.すなわち,当事者間において,「つなぐ」ことを目的とした,異業種間相互調整プロセスを支援する仕組みを欠いている状況である.初年度の本特別研究会でも「繋がらない」原因となる課題を抽出した.課題を解いていくための手がかり,特に建築生産におけるそれぞれの立場を超えて「つなぐ」ための仕組みについて検討する.

IoT特別研究委員会

教授 野城 智也,特任教授 荻本 和彦
生産技術研究所のCOMMAハウス等を活用したテストベッドでの付加価値アプリケーション創出トライアルや,増分コストの極小化策,「IoT由来の脅威」への対処方策などの知見を共有して,IoT社会の早期実現に向けたこれら諸課題の解決方法を検討・発信する.さらに,それらを構成するソフトウェアや,全体機能の維持・運用・情報の取り扱いに関する課題等についても幅広く研究し,これを必要とする事業者に広く便益を提供する中間組織の在り方を取りまとめることとする.

サステナブル建築実現のためのCPSの利活用に関する研究

教授 野城 智也
サステナブル建築を実現するために,デジタル化されたテクノロジーを活用していくための可能性が高まり,端緒となる実践も種々展開されている. しかし,現実を見ると,それぞれの技術の繋がりが円滑ではなく,折角の可能性が制約されてしまっている. 野城研究室では,サステナブル建築を実現するための「さまざまなデジタル技術を繋げていくための仕組み」を考究している.具体的には,下記の研究に取り組んでいる. 1 様々なベンダーが製造供給した機器を,滑らかに接続するためのIoT連携基盤(IoT-Hub)の開発・普及をはかる. 2 建築・都市各所に配置した,加速度センサー,二酸化炭素センサーからのData Aggregation によるサステナブルな建築のファシリティマネジメント手法の開発 3 BIMなどの建築デジタル・モデルをもとにした構工法計画手法

トレージャー・ハンティングによるライフスタイルを賦活するデザイン・エンジニアリングの展開

教授 野城 智也,教授 ペニントン マイルス,准教授 戸矢 理衣奈
生産技術研究所に眠る様々な技術的シーズをトレージャーハンティング活動により掘り起こして,多様化された社会においてライフスタイルを賦活させていくモノ・コトのプロトタイプを開発していく.

建築・まちづくりプロジェクトのマネジメントに関する研究

教授 野城 智也
建築・まちづくりプロジェクトにおいて,さまざま関係者と連携しながら,想いづくり,ものづくりを融合させていくためには,どのように組織とプロセスを仕込み,運営していけばよいのかについて,過去のプロジェクト事例の分析などをもとに考究する.2022年度にその成果を出版予定.

建築・都市分野におけるカーボントレーディングに関する研究

教授 野城 智也
温室効果ガスの排出削減量をクレジット化して市場で売買することにより,建築・都市分野における温室効果ガス抑制策が促進される仕組みについて研究する.2022年度に成果を出版予定.

物理空間・サイバー空間の協調運用のための共通空間記述基盤の構築

教授 野城 智也,特任教授 豊田 啓介
建築・都市空間内で,人,ロボットを含む人工物が,物理空間・サイバー空間を連携的に利活用しつつ,協調的に活動していくために,様々な技術者,組織が専門分野や業種を超えて共通に利用できる,空間記述基盤を構築することを目指す.

地震動と地盤歪ひずみの観測【柏地区利用研究課題】

教授 目黒 公郎

海底測位・測量センターの性能評価に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 目黒 公郎

災害情報プラットフォームの研究

教授 目黒 公郎, 井上 雅志
適切な災害対応には複数の組織や機関,部署間の連携した活動が不可欠であり,そのポイントは情報の共有である.これを実現するシステムとして,防災情報共有プラットフォームの研究を進めている.限られた資源の効果的な利用と,異なる組織間での緊密な連携を実現するために,大規模地震災害時における広域医療搬送活動や,複数の自治体の防災活動などを対象として,組織間の情報共有と応援体制の連携に関する現状分析と防災情報共有プラットフォームのあるべき姿,その貢献についても分析している.

組積造構造物の地震被害に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 目黒 公郎

防災ビジネスの創造と育成に関する研究

教授 目黒 公郎,特任助教(目黒研) 山本 憲二郎
防災における「自助・共助・公助」の中で,従来は行政が公的な資金を用いて主導する「公助」が大きな割合を占めてきた.しかし,現在の少子高齢人口減少や財政的な制約を考えると,今後は「公助」の割合は減少する.その不足分は「自助と共助」で補う必要があるが,これを実現する上でのキーワードは,防災の「コストからバリュー」と「フェーズフリー」である.従来は行政も民間も防災対策を「コスト」とみなしていた.コスト型の防災は,継続性が難しく,対策の効果は災害発生時にのみ発現すると考えられてきた.しかしバリュー型の防災対策は継続性が担保され,災害の有無に関わらず常に対策を実施した組織や地域に価値(バリュー)をもたらす.一方フェーズフリーは,発生の有無や時期が不確定な災害に対する対策にお金をかけることは難しいことから,災害時と平時のようにフェーズを分けるのではなく,日常の生活の質を向上させる商品やサービスがそのまま災害時にも有効に活用できるようにしようという考え方である.これらはいずれも,自助や共助の担い手である個人や法人の「良心」に訴えかける防災がもはや限界で,防災対策の自主的な推進を後押しする仕組みとしての「防災ビジネス」の必要性に基づいている.

シェルターのイノベーションに関する研究

教授 川口 健一,特任講師 中楚 洋介,助教(川口(健)研) 張 天昊,大学院学生(川口(健)研) 大塚 陽汰,大学院学生(川口(健)研) 武藤 宝,大学院学生(川口(健)研) 坪井 洸太,大学院学生(川口(健)研) 寺内 太一
日本における避難所とは一般に学校体育館などの施設を示す場合が多いが,これらは鉄骨バラック建築に近い.一方,地下シェルターは様々な非常時に人命保護としての優れた点が多い.現在,多くの人が集まる場所には地下街を含む地下施設が発達しているが,これらはシェルターとして機能するようには全く考えられていない.本研究では,極限的な災害時にも利用できる地下シェルターの理想的な形態と,都心に存在する地下施設をシェルターとして利用するために改修するロードマップ等に関して研究を行っている.近年は地下施設の浸水について調査するために,ポンド法やMPS法を用いたシミュレーションの研究を行っている.2021年7月3日に発生した熱海における土砂災害のシミュレーションやハザードマップ上で危険とされる老人ホームの改良案の提案なども行っている.さらに,空気膜構造を用いたシェルターやステージを支える構造の開発なども行っている.

地震による構造物の破壊機構解析(共同研究)

教授 川口 健一,教授 目黒 公郎,准教授 清田 隆,教授 桑野 玲子,教授 腰原 幹雄,助教(川口(健)研) 張 天昊,教授 中埜 良昭,准教授 沼田 宗純

天井等の非構造材の落下事故防止に関わる研究

教授 川口 健一,特任講師 中楚 洋介,助教(川口(健)研) 張 天昊,技術専門員(川口(健)研) 大矢 俊治,大学院学生(川口(健)研) 幸田 雄太,大学院学生(川口(健)研) Sophearith Ly
天井等,建築内部空間の高所に設置した非構造材は,様々な理由で落下し内部空間の安全性を著しく損なう.本研究では,軽量な天井材の利用や落下防止ネット,重量天井の落下を防止する方法や被害を軽減する方法,さらにはAIを用いた天井の安全性判定プログラムの開発などを行っている.東京大学施設部における保存カルテ作業における実装研究,2022年3月16日に福島県で発生した地震の被害調査なども行っている.

宇宙構造物及び可動式,展開型構造物に関する研究

教授 川口 健一,特任講師 中楚 洋介,助教(川口(健)研) 張 天昊,技術専門員(川口(健)研) 大矢 俊治,学部学生(東京都市大) 千葉 博史,大学院学生(川口(健)研) 永井 翔真,大学院学生(東京都市大) 澤橋 泰介
宇宙展開構造物や開閉式屋根,展開型パーソナルシェルターや可動式構造物など,3次元的な部材配置により高度な機能を実現する構造に関する研究を行っている.東京都市大学の宇宙システム研究室とは継続的に宇宙展開構造物に関する情報交換と研究交流を行っている.

実大テンセグリティ構造物の応力測定システム【柏地区利用研究課題】

教授 川口 健一,特任講師 中楚 洋介,助教(川口(健)研) 張 天昊,技術専門員(川口(健)研) 大矢 俊治,大学院学生(川口(健)研) 佐野 匠,教授 今井 公太郎,准教授 本間 健太郎
2017年に完成した柏の葉キャンパスにあるWhiteRhinoIIの応力状態の継続的モニタリングを行っている.また数値解析などによりテンセグリティ構造が最適構造となるための条件の探索などを行っている.2001年に竣工した旧千葉実験所の White Rhino I の撤去作業時の実大モニタリング実験も行った.

建築構造物の力学特性に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 川口 健一,技術専門員(川口(健)研) 大矢 俊治,特任講師 中楚 洋介,助教(川口(健)研) 張 天昊

新しい住宅用耐震及び制振部材の開発

教授 川口 健一,技術専門員(川口(健)研) 大矢 俊治,特任講師 中楚 洋介,助教(川口(健)研) 張 天昊,大学院学生(川口(健)研) 高橋 祐貴

新しい軽量空間構造物の開発及び歴史的な空間構造物の調査

教授 川口 健一,特任講師 中楚 洋介,助教(川口(健)研) 張 天昊,技術専門員(川口(健)研) 大矢 俊治,大学院学生(川口(健)研) 水谷 圭佑,大学院学生(川口(健)研) 李 陽洋,大学院学生(川口(健)研) 武藤 宝,大学院学生(川口(健)研) 寺内 太一
構造部材の三次元的な配置を利用した新しい軽量空間構造システムの開発提案を継続的に行っている.微分幾何学に立脚した曲面構造の解析や新しいグリッドパターンの探求,また,日本における初期の鉄骨ドームや鉄筋コンクリートシェルなどの空間構造に関する調査,デジタルアーカイブ化などの研究も行っている.空気膜構造を圧縮材として用いた足場構造の開発や,高所からの落下時に有効な空気膜の応用に関する考察など,軽量化による低炭素社会への貢献の模索も行っている.

植物の力学的最適化戦略に基づくサステナブル構造システムの基盤創成 ~植物構造オプト~

教授 川口 健一,特任講師 中楚 洋介,助教(川口(健)研) 張 天昊,技術専門員(川口(健)研) 大矢 俊治,大学院学生(川口(健)研) 武藤 宝,大学院学生(川口(健)研) 堀口 翔太
植物生理学者との協働,共同研究を通して,生きた植物を建築構造に応用する,あるいは生きた植物の最適化戦略から学んだ原理を応用する,ことを目指す挑戦的研究.

生きた植物の建築への利用に関する実験的研究【柏地区利用研究課題】

教授 川口 健一,特任講師 中楚 洋介,助教(川口(健)研) 張 天昊,技術専門員(川口(健)研) 大矢 俊治

ひび割れ自己治癒コンクリートの実環境暴露試験に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 岸 利治

コンクリート中への水分浸透に関する研究

助教(岸研) 鎌田 知久

セメント硬化体空隙の三次元構造情報に関する研究

助教(岸研) 鎌田 知久

中性化と水の浸透の複合作用を考慮した鉄筋コンクリート構造物の変状予測モデルに関する研究

助教(岸研) 鎌田 知久

大規模展示場における空調制御・最適化システムの開発

教授 大岡 龍三
負荷変動の大きい大規模展示場において,複数の熱源を最適に運転制御し,省エネ・コストの効果を予測可能なシステムを開発する.

学習的探索手法を応用した建築・都市エネルギーシステム最適化手法の開発

教授 大岡 龍三,准教授 菊本 英紀
エネルギーの需給バランス制御と省エネルギー・コスト削減の同時達成を目的とした,1)実建物の計測データ収集,需要・発電量予測に関する既存技術の調査・比較,2)単体建物におけるエネルギーシステムの詳細な最適化計算の手法確立,3)街区モデルへの拡張,4)1及び3による不確実性を考慮した最適化シミュレーション手法の開発及びデータ解析による定量的な評価,これら4つを軸とする包括的な最適建築・都市エネルギーマネジメントシステムの方法論を開発している.

複数の再生可能エネルギーを用いた建築エネルギーシステムの性能検証・最適制御【柏地区利用研究課題】

教授 大岡 龍三

飛沫・飛沫核拡散の動的物理モデルの構築

助教(大岡研) オウ ウオンセク,教授 大岡 龍三,准教授 菊本 英紀
人の活動(咳,くしゃみ,会話)を通じて噴出される飛沫・飛沫核が室内環境へ飛散および拡散する物理的な現象を計測により明確に把握し,数値解析手法(CFD)で再現することを目的とする.咳,くしゃみ,会話等の行為は,気流(気体)と飛沫・飛沫核(液体)が混在する流れを生成する.気流と飛沫・飛沫核の粒径分布を正しく計測するためには,粒子画像流速計測法(PIV)および干渉画像法技術(IMI)技術を実現させる必要がある.上記の技術は,定常流条件では計測精度が安定的に確保できる反面,非定常流条件の短い時間刻みでの測定に活用することは挑戦的な課題である.加えて,空気中に浮遊する飛沫・飛沫核は粒子が非常に小さく,周囲の環境条件に大きく影響を受け蒸発と凝縮するため,CFDモデルの構築には,環境条件に応じた非定常解析が必要となる.構築したCFDモデルは,咳,くしゃみ,会話等の可視化実験により交差検証を行う.

高層建築物による風環境の変化に関する解析

教授 大岡 龍三
高層建築物周辺に形成される高風速域の定量的評価を行い,風洞実験により実在市街地に建つ高層建築物周辺の風速分布を解析する.

高温排気ガスの大気拡散予測手法の開発

教授 大岡 龍三,准教授 菊本 英紀
建築設備排気等の高温低密度ガスの大気拡散状態の数値予測手法を検討する.

モビリティ・イノベーション連携に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大,教授 中野 公彦,教授 大口 敬

自動運転による社会・経済インパクトに関する研究 (NEDO SIP)【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大,教授 大口 敬,教授 中野 公彦,准教授 鈴木 彰一,特任研究員(大口研) 長谷川 悠,同志社大 三好 博昭,同志社大 渡辺 昭次
消費者の購入意向調査に基づき,将来,導入されると期待される自動運転技術に応じて,その自動運転車の普及推定モデルと,これを利用した自動運転車の導入・普及により,交通事故低減や,交通渋滞削減とこれに伴うCO2削減がもたらす社会・経済効果評価などに関する研究開発に取組んでいる.

自動運転に係る海外研究機関との共同研究の推進に向けた連携体制の構築 (NEDO SIP)【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大,教授 中野 公彦,教授 大口 敬

ITS(高度道路交通システム)に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大,教授 中野 公彦,教授 大口 敬,准教授 鈴木 彰一,准教授 山川 雄司,特任准教授 小野 晋太郎,客員教授 天野 肇,客員教授 鎌田 実,助教(大口研) 鳥海 梓,助教(山川研) 平野 正浩,助教(中野研) 楊 波,特任助教(須田研) 郭 鐘聲,特任助教(須田研) 霜野 慧亮,特任助教(須田研) 林 世彬,特任研究員(須田研) 内村 孝彦,特任研究員(須田研) 梅田 学,特任研究員(須田研) 河野 賢司,特任研究員(大口研) 長谷川 悠

ネットワーク交通シミュレーション技術の高度化

教授 大口 敬,助教(大口研) 鳥海 梓,特任研究員(大口研) 張 嘉華,大学院学生(大口研) 服部 充宏,大学院学生(大口研) カレル ジャナック
ネットワーク交通シミュレーションの開発,周辺技術検討,さらに高度化に継続的に取り組んでいる.交差点周辺,都市レベル,日本全国レベルの様々な空間範囲やシミュレーション記述の粒度の異なるシミュレーションをシームレスに接続するハイブリッドシミュレーション,リアルタイムにセンサやプローブデータと連動させるナウキャストシミュレーション,首都圏3環状道路を対象とした交通施策評価シミュレーションなどを開発している.シミュレーション・パラメータとして,ボトルネック交通容量や自由流速度を設定する必要があるが,これらのパラメータは降雨量や路面状況にも影響を受けることが知られており,交通および気象データを用いたモデル化を進めている.さらに,首都圏3環状道路の効率的な利用を促すための交通マネジメント方策の評価について検討を進めるため,交通需要等の変動特性に関する基礎的な分析を行うとともに,オリ・パラ等の大規模イベント開催時におけるマネジメント施策に関するケーススタディを進めている.

交通信号機および交通信号制御に係わる実証的研究【柏地区利用研究課題】

教授 大口 敬,助教(大口研) 鳥海 梓,准教授(東大) 伊藤 昌毅,シニア協力員(大口研) 新倉 聡,大学院学生(大口研) 白畑 健,慶應義塾大 植原 啓介,慶應義塾大 佐藤 雅明,慶應義塾大 渡辺 諒,東京電機大 岩井 将行,東京電機大 安齋 凌介
交通安全上も円滑上も最も重要な平面交差点における交通信号制御について,多角的な研究を推進している.損失時間の実証評価手法の開発,単路部歩行者横断施設による歩行者・車両双方に最適な横断施設運用,左折車と直進車による混用車線によるランダム性の影響評価,信号灯器設置位置による運転挙動への影響分析,さらに最新のセンシング技術および通信技術を用いた自律分散型信号システムの開発などに,柏キャンパス ITS R&R フィールドも活用しながら,実証的に取組んでいる.

交通性能照査型道路計画設計

教授 大口 敬,助教(大口研) 鳥海 梓,大学院学生(大口研) 小川 泰斗,(株)道路計画 石田 貴志
道路の計画・設計段階で,目標とする交通性能を設定し,この性能を実現するかどうかを逐次照査しながら計画・設計を進める手法を提案し,これを実務で適用する方策を実務技術者と一緒に検討し,交通工学研究会におけるweb上で公開したガイドラインの更新に向けた検討を進めるとともに,道路の交通容量に関する最新データを整理し,マニュアルの編纂を行っている.また,交通性能の経年変化傾向とその要因分析も進めている.

自動運転導入にともなう道路交通運用条件に関する研究

教授 大口 敬,助教(大口研) 鳥海 梓,大学院学生(大口研) カラ ジャヤ・バルシニ
自動運転技術の導入初期段階を想定して,高速道路上に自動運転専用車線を設けた場合に必要となる,一般車線への合流区間特性を道路構造や交通流条件などから明らかにするため,一般車両の車頭時間分布特性の道路幾何構造に応じた影響特性を分析している.

街路の計画・設計・交通運用とウォーカビリティの評価に関する研究

教授 大口 敬,助教(大口研) 鳥海 梓,准教授 鈴木 彰一,特任研究員(大口研) 長谷川 悠,大学院学生(大口研) 阿知波 雄大
都市内街路における歩行者の歩きやすさや歩きたくなるかどうか(ウォーカビリティ)に影響を及ぼす要因の整理とその評価に取組んでいる.具体的には,街路における駐車場出入口の設置が歩行者に与える影響のシミュレーション評価や,バス停,駐車場出入口,横断歩道等の配置がドライバーの歩行者認知等に及ぼす影響についてのアンケート調査などを行なっている.また,街路における道路構造・沿道利用状況と歩行者の車道横断特性に関する実態調査にも取組んでいる.

高頻度鉄道システムの簡略化モデリング

教授 大口 敬,特任研究員(大口研) 張 嘉華,筑波大 和田 健太郎
首都圏における高頻度鉄道システムは,膨大な通勤需要への対応を可能とする一方,「慢性的な列車遅延」という副作用を引き起こしている.本研究では,この問題の全体像を簡便かつ的確に捉えるために,乗客の時間集中(出発時刻選択)という需要側の要素と,駅・線路上における列車混雑・遅延という供給側の要素の相互作用を考慮したミニマルな(解析的な取り扱いが可能な)鉄道システムモデルの開発に取り組んでいる.また,このモデルを用いて,システム全体の効率性と安定性とのトレードオフ関係についての一般的知見を導くこと,その知見に基づく需給両面の交通マネジメント戦略を提案することを目的としている.

道路交通安全に係る技術・制度・文化における国際比較研究

助教(大口研) 鳥海 梓,教授(名古屋大) 中村 英樹,准教授(立命館大) 塩見 康博
世界各国におけるインフラや車両の整備水準,交通安全教育と文化,各種制度と取締り等が,交通安全意識や交通事故死亡率に及ぼす影響を多角的に検証することを目的としている.10か国を対象にアンケート調査や道路交通行政・学識者へのヒアリング,統計データ等の収集を行い比較分析を行っている.

木質構造物の崩壊挙動に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 腰原 幹雄

煉瓦造構造物の崩壊挙動に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 腰原 幹雄

地域分析の手法に関する研究

教授 今井 公太郎,准教授 本間 裕大,准教授 本間 健太郎,助教(今井研) 新井 崇俊
地域空間の構造を数理的に把握するための手法論について継続して研究している.本年度は,地方商店街を対象とし商店街の持続可能性について検討を行った.特に住宅地図を電子データ化することで,対象商店街の時空間の精緻な分析が可能となった.また再開発によって街路ネットワーク構造がどう変化するかをいくつかの沿線で調査し,それと不動産価値の増減が相関するかを調べた.一方,景観写真構図に着目し,その撮影場所や条件を数理的に推定するモデルを構築した.

数理的アプローチによる設計手法に関する実践的研究

教授 今井 公太郎,准教授 本間 裕大,准教授 本間 健太郎,助教(今井研) 新井 崇俊
空間設計の下敷きになる数理解析手法の研究及び,開発した手法に基づく空間設計の実践を継続して行っている.本年度は,旅客から見た空港ターミナルのパラメトリックプランニングモデルを構築した.またVRアイトラッカーを用いて歩行者の視覚体験プロセスを把握するシステムを作り,建築空間が視覚体験に与える影響を調べた.

空間システムの計画手法の研究と建築設計

教授 今井 公太郎,教授 加藤 孝明,特任研究員(今井研) 国枝 歓
新しい空間のシステムを効果的に計画するための手法を考案・研究している.本年度は,防災施設と観光施設の融合した新たな建築タイプとして,伊豆市において地域の防災計画の主幹をなす津波避難複合施設の研究開発を行っている.

数理モデルを応用した建築設計手法に関する研究

助教(今井研) 新井 崇俊
数理モデルを応用した空間設計手法に関する研究を行っている.本年度は,空間のビジビリティ分布及び障害対移動距離分布から建築計画学を再考するための基礎的な研究を行った.

空間解析モデル開発と地域分析

助教(今井研) 新井 崇俊
都市・建築空間の解析モデル開発及び適用に関する研究を行っている.本年度は,ロジットモデルを用いたテレワーク頻度を考慮した居住地分布に関する研究,及びシェアリングエコノミーに着目した配送システムに関する研究を行った.

室内音響に関する研究

教授 坂本 慎一,助教(坂本研) 米村 美紀,大学院学生(坂本研) 蔡 行知,大学院学生(坂本研) 萩原 孝彦
ホール・劇場や各種空間の室内音響に関する研究を継続的に行っている.今年度は,NHKホールの改修に際して,改修前の状態におけるインパルス応答の実測調査を行い,残響時間,音圧レベル分布等の音響物理指標の整理を行った.また,ホール形状データを基に,幾何音響解析に基づく音場シミュレーションを行った.鉄道駅の音響改善に関する研究として,実鉄道駅における実測調査,駅試験装置における音響・振動の再現および物理的評価,3次元音場シミュレーションを用いた聴感評価実験を行った.

環境騒音の予測・評価に関する研究

教授 坂本 慎一,助教(坂本研) 米村 美紀,大学院学生(坂本研) Marjorie Takai,大学院学生(坂本研) 福田 大輝,大学院学生(坂本研) 許 文瑞
環境騒音の伝搬予測法および対策法に関する研究を継続的に進めている.今年度は,広域道路交通騒音マップに関する検討を音源特性,伝搬特性の2点に着目して行った.まず音源特性に関しては,近年入手することが容易になってきた広域航空写真のデータを基にして,道路の交通量を推定し,それを基に道路交通騒音の音響出力を推定する手法を検討し,その自動処理化および精度検証を行った.伝搬特性に関しては,建物群内部での騒音伝搬量を推定する手法を実装し,いくつかの現場測定結果との比較により精度検証を行った.道路交通騒音予測計算法に関しては,日本音響学会の技術セミナーや駒場リサーチキャンパス公開等の場において昨年度に引き続き周知・啓蒙活動を行った.

純音性騒音の評価に関する研究

教授 坂本 慎一,助教(坂本研) 米村 美紀
風力発電施設から発せられる騒音や,ヒートポンプ給湯器から発せられる騒音は,機械の回転に起因する純音性の成分が多く含まれ,苦情の原因となっている可能性がある.実験室における聴感評価実験を用いて,純音性騒音の不快感を調べる研究を行っている.本年は,昨年度の基礎的な検討に引き続き,定常騒音に複数の周波数の純音が含まれる騒音を対象としてその「わずらわしさ」に関する主観評価実験の一環として,倍音構造をもつ騒音に対する不快感評価を行った.

音場の数値解析に関する研究

教授 坂本 慎一,助教(坂本研) 米村 美紀,大学院学生(坂本研) 沈 颁泉,大学院学生(坂本研) 福田 大輝,大学院学生(坂本研) 蔡 行知,大学院学生(坂本研) 許 文瑞
各種空間における音響・振動現象を対象とした数値解析手法の開発を目的として,有限要素法,境界要素法,差分法等に関する研究を進めている.今年度は,都市環境騒音の評価において活用が期待される環境騒音マップに関連し,幹線道路から建物群に伝搬する騒音レベルの計算方法に関して実測調査結果との比較による精度検証を行った.また,教会建築の室内音響特性について,音場モデリングおよび波動音響解析を行った.NHKホールの改修に際して,改修前の形状データを取得し,インパルス応答の幾何音響解析を行った.

音響計測法に関する研究

教授 坂本 慎一,助教(坂本研) 米村 美紀,大学院学生(坂本研) Marjorie Takai,大学院学生(坂本研) 福田 大輝
室内外の音響伝搬特性,室間遮音特性,音響材料音反射・吸音特性を精度よく計測する手法,屋外騒音の効率的測定方法について研究を行っている.今年度は,道路交通騒音の測定評価に関する研究として,自動車の走行騒音パワーレベルの測定の自動化に関する研究を昨年度に引き続き行った.

空から地表からインフラを診る

教授 竹内 渉,教授 桑野 玲子,准教授 水谷 司
日本のインフラの多くが1960年代の高度経済成長期に集中的に整備されているため,およそ半世紀を経た現在,その老朽化が問題となっている.国土規模の道路・地下・橋梁・トンネル・鉄道のインフラストックに対して,点検と診断方法の多くは目視点検や打音調査が基本であり,熟練点検員の減少による人員不足は深刻な問題となっている.これらの問題を改善するために,産学官挙げてインフラ維持・管理に対して IoT 技術の有効活用が期待されている.このような背景の中,生産技術研究所では「災害・環境リモートセンシング」「リアルタイム空間解析工学」「地盤機能保全工学」を専門とする研究者が連携し,「空から地表からインフラを診る」活動を開始した.具体的には,1) 宇宙からのリモートセンシングや空からのドローン撮影,地上・地中レーダー,モバイルマッピングレーザー,高解像度カメラなどの最先端の計測技術,2) AI・機械学習,ディジタル信号処理による超高速解析・検知技術,3) 土質力学や地盤材料の力学特性に基づいた地中構造物や土構造物の長期挙動の診断技術,を複合的に組み合わせ,真に実務的な利用に資する研究を展開し,最新の情報提供を行う.

SAR画像を用いた小規模データセットからのディープラーニングによる建物損傷箇所の特定

大学院学生(竹内(渉)研) Yang Yu,教授 竹内 渉

ボクセルモデルを用いた仮想白菜農場の反射率シミュレーション

大学院学生(竹内(渉)研) Shao Shuai,教授 竹内 渉

マングローブ生態系における生態系純交換の衛星観測によるモデル化

大学院学生(竹内(渉)研) Han Yuhan,教授 竹内 渉

モンゴルにおける国内移住の影響分析

大学院学生(竹内(渉)研) Yan Guanyu,教授 竹内 渉

人工衛星を用いたバイオマス燃焼による全球CO2排出量の推定

研究員(宇宙航空研究開発機構JAXA) 朴 慧美,教授 竹内 渉

八ヶ岳のカラマツ林の樹木の影を考慮したBRDFシミュレーション

大学院学生(竹内(渉)研) 藤原 匠,教授 竹内 渉,准教授(千葉大) 本多 嘉明

新たな空港投資で都市の経済発展の要因分析

教授(東大) 加藤 浩徳,Associate Professor (Singapore University of Technology and Design) Jin Murakami,教授 竹内 渉

海草の分布とブルーカーボンモニタリング

大学院学生(竹内(渉)研) Trinh Xuan TRUONG,教授 竹内 渉
ベトナム沿岸域のブルーカーボン生態系の気候変動影響評価に関する研究で,過去40年程度に取得された種々の衛星画像解析,UAV画像解析,現地踏査による海藻の分布調査,バイオマス調査などを主に行なっている.

レジリエンスに関する理論研究

教授 加藤 孝明
レジリエンスの概念は多様な概念定義が散見されており,必ずしも確立されているとは言えない.数理的なアプローチを含め,レジリエンスの概念を説明する理論を行う.

共助を育む理論・手法に関する研究

教授 加藤 孝明
防災に不可欠である自助・共助・公助のうち,共助に着目し,共助を育むための理論研究,手法開発,支援技術の開発を行う.地区防災計画の計画論,策定プロセスの標準化,成立条件の解明,共助の状態の評価理論,加えて支援技術の開発を行う.

市街地における災害現象の解明

教授 加藤 孝明
市街地に自然の外力が加えられたときに生じる物理現象・社会現象を解明する.特に市街地ストックと災害現象との関係に焦点をあてる.地震火災,水害等の幅広いハザードを対象とする.ただし地震時の市街地火災については独自性が高い.

復興準備の概念の確立と手法の構築

教授 加藤 孝明
次の災害復興に向けて,適切かつ円滑な復興に向けた準備が不可欠である.現在の防災計画に欠けている要素である.復興準備の概念はかねてより提唱し,根付いたところである.具体の手法を開発し,社会に根付かせる実践研究を行う.複数の自治体と協働し,有用性の検証と改良を行う.

防災を含めた地域づくりに関する研究

教授 加藤 孝明
防災だけに着目するのではなく,防災を含む総合的なアプローチによる地域づくりを志向する.「防災【も】まちづくり」を提唱.防災×観光,防災×地域の持続性等,各地域の最重要課題に着目し,実践を通して総合的な地域づくりのモデルを構築する.

防災対策の高度化に関する研究

教授 加藤 孝明
行政の防災対策,防災計画の高度化を図る.地域防災計画論の新たな計画論の構築,民間施設の活用による資源の確保等,従来手法の改善ではなく,創発的な視点を重視する.また水害避難シミュレーション等,行政向けの計画支援技術の開発を行う.

水同位体情報を用いた気候と水循環に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 芳村 圭
水の中の水素安定同位体比或いは酸素安定同位体比を地球システムモデルに組み込むことによって,複雑な地球水循環過程における水の動きを詳細に追跡し,気候システムとの関連について研究している.同時に,質量分析計・分光分析計や人工衛星を用いて地球上様々な場所での雨や地表水,水蒸気等の同位体比を観測している.

水循環モニタリングシステムToday's Earthの構築とその検証

教授 芳村 圭,准教授 山崎 大,助教(芳村研) 新田 友子,特任准教授 吉兼 隆生,助教(山崎研) 日比野 研志,特任研究員(芳村研) 馬 文超
東大とJAXAの共同研究として,陸域水循環モニタリングシステムToday's Earth(TE)の開発とその検証を行っている.TEには全球版のTE globalと,日本域のみだが高解像度のTE Japanの2つのプロダクトがある.TE globalは長期のデータを持ち,過去の水文イベント(洪水や干ばつ)のデータベースとしての役割を果たす.TE Japanはそれに加えてほぼリアルタイムのデータを提供することで,洪水予測にも役立つことが期待されている.また,JAXAの協力により衛星データを利用することで精度の向上を目指している.

統合陸域シミュレータの開発及び検証

教授 芳村 圭,助教(芳村研) 新田 友子,准教授 山崎 大
これまで大気モデルに従属して開発されてきた陸面モデルをベースにして,土地利用や植生変化・人間活動・湖沼や河川の水動態や水温変化・斜面水文過程と地表水−地下水相互作用など多様な時空間スケールの陸域水文過程を包括的に表現可能な次世代陸域モデルである統合陸域シミュレータ(ILS)の開発を行っている.

行政機関における危機管理のあり方

客員教授 伊藤 哲朗

デジタルスマートシティイニシアティブ

教授 野城 智也,特任教授 関本 義秀,教授 腰原 幹雄
近年のビッグデータ,オープンデータ,AI等,多くの情報関係の技術が加速して進む中で,世界最先端の都市管理に関する様々な情報技術を磨きつつも,各地域が特定の主体等に依存し過ぎないデータ管理技術や,草の根の人的ネットワークの構築等,自律したスマートシティの技術基盤の涵養を行っていく事も重要である.そうした活動をより体系的に行っていくために,防災,交通,建物,インフラ構造物,地域経済等,都市運営の各分野を見据えつつ,都市情報基盤のグランドデザイン・コンセプトを描き,そのためのデータやソフトウェア等から構成されるデジタルシティを構築し,社会実証を行っていく.

人々の流動を計測し,行動モデルと組合せて全体流動を推定するデータ同化技術の開発

特任教授 関本 義秀
多様な観測方法に基づく性質の異なる移動データを,均質なデータとして整理すると共に,特に災害を中心とする平常時とは異なる人の流動について,行動モデルを適用させ推定する人流データ同化技術の開発を行なう.

商業,交通,観光,災害等のコンテクストにおける人々の流動の生態の解明

特任教授 関本 義秀
人々の流動を様々な分野に適用するために,災害時のみならず観光行動や交通モードの推定によるモビリティ分析を行なう.

国や地域のサステナブルな情報流通を支える基盤技術の開発

特任教授 関本 義秀
官民が保有するさまざまな社会基盤情報をワンストップで入手できるようなオープンなプラットフォームを開発するとともに,データを利用した視覚化・地図アプリなどの機能を提供し,データのショーケース化を図る.

国内外の地域の課題をデータと結びつけることによる実証研究的アプローチの開発

特任教授 関本 義秀
国内の社会基盤情報の整備を進めるとともに,国外においても簡易で継続的なデータ収集手法を構築し,データの質を評価するとともに,交通渋滞の解決や都市計画等の基礎データとしての活用を目指す.

ドローンや車両などの移動物体のモニタリングに関する研究

助教(関本研) 樫山 武浩

都市ダイナミクスの再生に関する研究

助教(関本研) 樫山 武浩
都市部における人々のモビリティデータの作成と災害時の行動予測を行う.

インフラ構造物の維持管理に関する研究

准教授 長井 宏平
損傷した実構造物の損傷検知や補修補強,橋梁群としてのマネージメントなどについて,構造力学的な視点や,AI等の技術活用,データベース分析を通した将来予測に基づく維持管理計画の策定,人口減少等の社会情勢を考慮したインフラ重要度評価など,多角的に取り組んでいる.

インフラ維持管理技術と制度の国内外への展開

准教授 長井 宏平
インフラ維持管理技術や制度を国内外に社会実装をする活動で,海外の損傷橋梁などの性能評価や,維持管理技術者育成も実施している.

鉄筋コンクリートの力学特性に関する研究

准教授 長井 宏平
鉄筋コンクリート構造物の耐力や疲労寿命,損傷部材の補修補強,付着定着など,主に構造特性の観点からの研究を実施している.

鉄筋コンクリートの微細構造解析

准教授 長井 宏平
三次元微細構造解析プログラムを独自に開発し,構造力学特性や腐食による損傷,コンクリートの体積変化によるひび割れの発生や進展のシミュレーションを実施している.

人を健康にする建築のあり方

准教授 川添 善行

建築の時間論

准教授 川添 善行

然形学の体系

准教授 川添 善行

日本近代都市の中小神社と地域社会に関する研究

特任助教(川添研) 小南 弘季

漁業集落における共同体と空間形成プロセスの関連性に着目した集落更新モデルの構築

博士研究員(川添研) 青木 佳子

巡回移動型サービスにおける最適オペレーション手法の構築に関する研究

准教授 本間 裕大
LPガス容器の配送などの巡回移動型サービスにおける巡回方法は,未だに人の経験と勘を頼りにしている部分が多く,効率化の余地が多く残されている.そこで,数理最適化の手法を用いることで,配送コストの削減並びに業務負荷の軽減を目指した.

数理最適化に基づく建築空間設計の支援に関するシステム開発

准教授 本間 裕大
建築空間設計では,多様な人と利用目的が空間上で複雑に絡み合うゆえに,人手による再帰的な検討が日常的に生じており,迅速な設計の妨げとなっている.本研究では,数理最適化手法の一つである混合整数計画法を活用し,建築空間設計の定量的評価とその最適化を支援するシステム開発を目指す.

経路情報データを活用した空間移動嗜好の逆推定

准教授 本間 裕大,大学院学生(本間(裕)研) 羽佐田 紘之
空間移動嗜好の把握は,実際の移動経路情報を活用して実現する.空間移動嗜好として,人々の実際の移動を決定づける合成コストと,それを共有する主集団やそれ以外それぞれの移動特性を把握する.経路情報データから空間各所のリンクコストを逆推定する数理最適化モデルを構築し,構築したモデルを利用して,共通のコストを有さない経路情報データを検出する手法を提案する.

複数主体を前提とした建築保存における文化的価値の交換スキームに関する数理的研究

准教授 本間 裕大,大学院学生(本間(裕)研) 井澤 佳織
本研究では,歴史建築物の保存を過去と現在とで生じる「時を超えた価値交換」と捉える.建築保存の観点から,「金銭的に測れる価値観と測れない価値観」という両側面の乖離とその交換可能性を追求する.

超高層建築物の日影が街区の日照環境に与える複合的影響

准教授 本間 裕大,大学院学生(本間(裕)研) 渡部 宇子
本研究では,超高層建築物と周辺建築物との複合日影に着目し,超高層建築物による日影が街区の日照環境に与える影響を定量的に示す.具体的には,超高層建築物による日影の影響を,日影時間そのものの増加だけでなく,周辺建築物による日影との重複時間の増加という側面からも分析することによって,都市部における日照環境の特徴を明らかにする.本研究では街区における複合日影の影響を,時間と重複の2要素に分解し,(i)日影時間が増加する地域,(ii)影の重複が増加する地域,それぞれの時空間的特徴を明らかにする.詳細な日影シミュレーションを通して,周辺建築物が密集する地域においては,むしろ影の重複が助長され,結果として,重複時間のほうが増加傾向にあることを明らかにし,両指標が互いに補完的関係にあることを示した.既存の等時間日影図では到達しえない知見であり,今後,街区の採光性をより精緻に分析するための応用可能性を秘めている.

電気自動車における将来充電方式の経済合理性に関する研究

准教授 本間 裕大
低炭素社会の実現に向け,代替燃料車の社会的普及が求められている.電気自動車は,その有力な候補となるが,一方で連続航行距離など現状では課題も多い.そこで,本研究では,従来とは異なる将来充電方式を前提としたとき,どの程度の経済合理性が担保されるか,数理的検討を行う.

データ同化を用いた洪水予測シミュレーションの精度向上

准教授 山崎 大
従来の広域洪水予測シミュレーションでは,気象予測のみを外力としており,その誤差が洪水予測の精度に大きく影響していた.本研究では,衛星観測等による地表水の現状を河川モデルに同化することで,短期〜中期の洪水予測の大幅な精度向上を目指す.

全球河川モデルの社会実装に関する研究

准教授 山崎 大
全球河川モデルは地球システム科学の研究ツールとして開発されてきたが,精度向上と社会からの要請によって,リスク管理や気候変動対策など民間での利用が検討されるようになった.そこで,全球河川モデルの精度検証および社会実装における障壁を明らかにするための研究を行っている.

衛星ビッグデータを用いた地球環境変動の解析とモニタリング

准教授 山崎 大,特任教授 沖 一雄
数ペタバイトにおよぶ長期間・高解像度の衛星観測データを用いて,地球規模での水域分布図の構築や,河川水温の長期トレンド検出など,大規模データ解析にもとづく地球環境変動の新たな知見を創出する.

次世代陸域水文モデルの開発

特任准教授 金 炯俊,准教授 山崎 大,教授 芳村 圭,教授(東京工業大) 鼎 信次郎,室長(国立環境研究所) 花崎 直太,室長(気象研究所) 仲江川 敏之,特任研究員(芳村研) 大沼 友貴彦
これまで大気モデルに従属して開発されてきた陸面モデルをベースにして,土地利用や植生変化・人間活動・湖沼や河川の水動態や水温変化・斜面水文過程と地表水−地下水相互作用など多様な時空間スケールの陸域水文過程を包括的に表現可能な次世代陸域モデルの開発を行っている.陸域の水・エネルギー収支と水循環とを大陸規模・日単位のスケールで精度良く推計でき,大気・海洋・生物圏などからなる地球システムモデルとも結合可能な陸域水循環の物理的側面に関する高精度で高計算効率の陸域水文シミュレーションを実施する.また,超高解像度の水文地理データや水利用データの整備,一貫性の長期気象外力データの整備を行い,全球1km 解像度での高解像度陸域水循環シミュレーションや全大陸50km 解像度での250 年分の長期アンサンブルシミュレーションの実現を目指している.

鉄道ネットワーク上のバリアフリールートの最適化に関する研究

准教授 本間 健太郎,准教授(東京都市大) 丹羽 由佳理,講師(東大) 日下部 貴彦,大学院学生(本間(健)研) 新井 祐子
「出発地から目的地までのシームレスな移動を可能にする統合的なバリアフリールート」を計画するための方法を開発している.具体的には,A.個人の移動行動を把握し,それに基づき B.広域ネットワーク上の移動流シミュレータを作り,それを用いて C.バリアフリールートを全体最適化するための提言を行う.今年度,課題Aとしては,Nested Logitモデルに基づく経路選択行動モデルに整合的な,街なかの移動と鉄道の乗車を含む経路についてのStated Preference調査を設計し,車いす利用者およびその介助者を対象として実施した.課題Bとしては,歩行空間ネットワークモデルを用いて経路の速達性や安全性を評価する指標を提案し,それを用いて鉄道駅を中心とする空間構造に対する車いすのアクセシビリティを評価した.また鉄道に乗車して複数駅を使う一連の移動についてのアクセシビリティ評価も行った.

コンクリートの完全なリサイクル

准教授 酒井 雄也
粉砕および圧縮成形によりコンクリートがれきを再生することで,副産物が発生せず,新たな材料の投入を必要としないリサイクルを試みている.

廃棄食材を用いた素材の開発

准教授 酒井 雄也
廃棄食材を乾燥して粉砕して得られる粉体を熱プレスすることで製造する,新たな材料の開発を進めている.

植物性コンクリートの開発

准教授 酒井 雄也
木粉などの植物粉と,コンクリートがれきや砂粒子などを混合して熱プレスすることで製造する,新たな材料の開発を進めている.

植物性コンクリート(生分解性コンクリート)の開発

准教授 酒井 雄也
CO2排出などの環境負荷の大きいセメントの代わりに,植物を用いて砂や砂利を接着したコンクリートの開発を進めている.

気体や液状水のコンクリートへの侵入挙動の評価

准教授 酒井 雄也
水銀圧入法により得られるコンクリート空隙構造といった実測値や,水セメント比や養生条件といった作製条件から,コンクリート中の気体や液状水移動を予測する手法を提案している.

建物の換気量予測手法の開発と検証【柏地区利用研究課題】

准教授 菊本 英紀
建物の換気量予測に関する技術開発を行うとともに実験建物を用いた予測手法の実証実験を行っている.

環境中の流体・拡散現象の解析・予測・制御技術の開発

准教授 菊本 英紀
都市空間内や建物周辺・内部に形成される気流や空気汚染物質の拡散現象に関して,観測的手法や風洞実験,計算流体力学(CFD)を用いた解析や予測技術の開発を行っている.また,環境中の空気流動や空気汚染物質量を効率的に制御するための理論・実証的研究を行っている.

計測と数値予測を融合した環境解析・制御技術の開発

准教授 菊本 英紀
数理・統計的手法によって計測と数値予測を融合した環境解析・制御技術を開発している.その一つとして,物理モデルや統計モデルを用いて,未知の空気質汚染源などの環境因子を確率的に逆解析する手法を研究している.また,有限の計測データに統計モデルまたは機械学習技術を適用し,環境情報を詳細化・高精度化する技術を研究している.

都市熱環境のモニタリングとその影響評価・予測技術の開発

准教授 菊本 英紀
気候変動や都市化の進展は,都市環境の暑熱化をもたらし,建物のエネルギー負荷の増大や熱中症等の健康被害の深刻化をもたらす.気象観測データやリモートセンシングデータなどを活用し,都市の気候変化をモニタリングするとともに,都市居住者の環境や健康への影響を評価・予測する技術を開発している.

哲学対話を基にした倫理的・法的・社会的課題(Ethical, Legal and Social Issues)抽出手法の開発

准教授 松山 桃世
新技術が社会実装される際には,技術的課題以外にもさまざまな課題が生じうる.人々が技術の普及と暮らしの変化を受け入れるには,事前に人々が対話を重ね,生じうる論点を提示し,専門家がそれらに対処することが望ましい.本研究では,公共交通の自動運転化をトピックスに,日本科学未来館と連携し,問いを重ねて対象の理解を深める「哲学対話」の手法を基に,論点抽出手法の開発を進めている.

生研道具箱カードゲーム:工学的思考の疑似体験と総合知の醸成

准教授 松山 桃世
本所の設立70周年記念事業の一環として開発した「生研道具箱カードゲーム」をさらにブラッシュアップし,パッケージ化およびウェブ化した.複数の試行会およびワークショップを経て,人々が先進技術を自分ごとと捉え,技術で課題解決方法を自ら考えるという「工学思考の疑似体験」を提供すると同時に,参加者どうしの対話により課題をさまざまな視点からとらえて解決方法を探る「総合知の醸成」のきっかけとなる可能性が見えてきた.

伝家研究

准教授 林 憲吾,教授(神奈川大) 六角 美瑠
家の継承の在り方に関する実践的研究

百年カンポンに関する研究

准教授 林 憲吾,講師(インドネシア大) Evawani Ellisa

近現代建築と折り紙建築

准教授 林 憲吾

長屋門ステイ

准教授 林 憲吾
宮城県栗原市に現存する長屋門の保全再生プロジェクト

オマーンの伝統的集落の保全に関する研究

准教授 林 憲吾,准教授(総合地球環境学研究所) 近藤 康久,教授 腰原 幹雄

東南アジアの近現代建築に関する研究

准教授 林 憲吾,教授(東京理科大) 山名 善之,教授(国立シンガポール大) Johannes Widodo

Toyoshima Virtual Pavilion 豊島ライフスタイル寄付研究部門におけるトレジャーハンティングとプロトタイプ制作の総括としてのヴァーチャル展覧会

准教授 戸矢 理衣奈
豊島ライフスタイル寄付研究部門の活動総括として,これまでの制作物を総合的に展示するヴァーチャル展覧会を行った.

「第6回価値創造デザインフォーラム Beyond STEAM 」パネリスト

准教授 戸矢 理衣奈

フォーラム「工学とリベラルアーツ」コーディネート及び趣旨説明,司会

准教授 戸矢 理衣奈
3月23日に「文化をめぐる人文と工学の研究グループ」の企画によるフォーラム「工学とリベラルアーツ」を開催した. 2021年1月に実施した「文化×工学研究会」にて,小林康夫・本学名誉教授(フランス思想・現代哲学)より,教養学部の1-2年生に総合的に「リベラルアーツとしての工学」を教えるべきであるとのご提起を受けた.とりわけこの半世紀,情報工学の急速な進展が社会および「人間」のあり様にすら影響を与えていることを深刻視されてのことである.その重要性から,当グループでは構想の具体化に本格的に着手することを決定し,今回は,その「旗揚げ」として本質的な議論を行うべく,小林名誉教授,横山特別研究顧問,北島隆次弁護士をお迎えしてフォーラムを実施した.

文化×工学研究会の実施(計10回),コーディネート

准教授 戸矢 理衣奈
学内外の研究者,実務家,アーティストの方々を講師に迎え,本質的に工学と関連するテーマについてご講演を頂くとともにディスカッションを行っている.東大EMP(エグゼクティブ・マネジメント・プログラム)修了生有志主宰,生産技術研究所の協力のもとで実施しており,全学の教職員とEMP修了生を対象としている.これにより文理融合と社会連携を同時に推進しており,有機的なネットワークの構築を図っている.将来的には領域を超えた共同研究や文系も含めた社会連携の促進を想定している.
※2021年度の開催実績
高田 英樹(内閣官房気候変動対策推進室 総括参事官)「グリーン・ファイナンス:気候変動対策と金融の新たな潮流」
鎌田 富久(TomyK代表/東京大学大学院情報理工学系研究科特任教授)「スタートアップ流で未来を創るイノベーションの実践」
※イタリア特集(全3回)
岡田 暁生(京都大学人文科学研究所教授)「イタリアの音楽:超未来のハイテクと融通無碍の帳尻合わせ」
小野塚 知二(東京大学大学院経済学研究科教授)「イタリアの技芸:霊感と人間」
宮嶋 勲(ワインジャーナリスト)「イタリアのワイン:怠惰と爆発」
川村 美穂(経済産業省 経済産業政策局 経済社会政策室長)「日本におけるダイバーシティ経営」
井出 悦郎 (一般社団法人お寺の未来 代表理事)コメント 丸井 浩(東京大学名誉教授 インド哲学) 「現代人とお寺の関係性 - あの世観と供養観の変容を通じて」
横山 禎徳 (東京大学生産技術研究所特別研究顧問) 「原発システムに『社会システム・デザイン』で対応する」
村上 由美子 (MPower Partners ゼネラル・パートナー) 「世界のESG投資と日本の戦略」
山形 季央 (株式会社資生堂 元宣伝製作部長・多摩美術大学名誉教授) 「GRAPHIC DESIGN」

東京大学社会科学研究所・生産技術研究所主催シンポジウム「成熟社会での日本型イノベーションを考える~「測る」×「創る」~」パネリスト

准教授 戸矢 理衣奈
開催趣旨は以下の通りである.「各国それぞれの社会経済状況の中でイノベーションが展開されている.日本社会は世界の後塵を拝する場面が散見される.優れた技術基盤・要素技術はあるが,それが必ずしもイノベーションに結び付いていないようにも見受けられる.社会的規範の中で,成熟社会にふさわしいイノベーションを促進させる独自の社会環境を整えていく必要がある.本シンポジウムでは,イノベーションをキーワードに社会的規範を「測る」社会科学分野,そしてイノベーションの担い手である「創る」工学分野の研究者の議論を通して未来を展望する.また,本シンポジウムが二つの研究所の交流,連携を深めるきっかけとなることを期待する」.

豊島ライフスタイル寄付研究部門におけるトレジャーハンティングとプロトタイプ制作(第6期)

准教授 戸矢 理衣奈
豊島ライフスタイル寄付研究部門の第6期として,近未来ライフスタイル分析として豊島(株)社員の方々との協働するワークショップ等を実施するとともに,価値創造デザイン推進基盤との連携により生産技術研究所研究室へのシーズの探求(「トレジャーハンティング」)に基づくプロトタイプ制作を行った.竹内昌治研究室との協働を行った.

資産価格変動研究会の開催

准教授 戸矢 理衣奈
文化×工学研究会における講演を契機に,市場変動分析に合原一幸教授の点過程分析を応用する研究会が経済学研究科・渡辺努教授のご協力も得て立ち上がり,4月より継続的に研究会を行った.東大基金への寄付金をもとに,チューリヒ工科大学ディディエ・ソネット教授を招聘しての講演をはじめ,学内外の講師を招聘した.こうした活動を経て,2022年4月の複雑系社会システム研究センターの発足へとつながった.

通信型ITSによる公共交通優先型スマートシティの構築

教授 須田 義大,特任准教授 小野 晋太郎,准教授 鈴木 彰一,リサーチフェロー(須田研) 杉町 敏之

Biosphere and Land Use Exchanges with Groundwater and soils in Earth system Models

特任准教授 金 炯俊,准教授 山崎 大
地下水と土壌水分の相互作用は,土壌,水資源,生態系,地表近くの気候,社会システムを含む臨界領域(CZ)を形成する重要な役割を担っている.土壌水分,地下水,灌漑は,平均的な気候と異常気象(干ばつ,熱波,洪水),生態系生産性(湿地,農地),土壌炭素に影響を与えるが,それに対する応答もまた同様である.これらの結合プロセスは時空間的に対照的な現れ方を示し,観測結果からその相対的な影響を理解することは困難である.そこで我々は高度な数値モデリングを用いて人新世(1900-2100)におけるこれらのプロセスの長期的進化を,地球規模および地域規模(フランス大都市圏とメコン川流域の2つ)において探求する.

Classification of Precipitating Systems and Estimation of Associated Systematic Biases in passive Microwave precipitation Retrieval

特任准教授 金 炯俊,特任研究員(金(炯)研) Kedar OTTA,特任研究員(金(炯)研) 豊嶋 紘一
人工衛星を用いた降水リモートセンシングの精度向上のため,様々な情報を用いて降水に関わる情報(降水のタイプや原因となる擾乱の種類など)を推定する手法を開発している.マイクロ波放射計観測を用いた降水タイプ分類や,機械学習手法を用いて降水・無降水の判定と降水量推定を同時に実現する手法の開発などを行っている.

水共生学の創生に向けた水とその周辺環境情報の創出と展開

特任准教授 金 炯俊,特定准教授(京都大) 渡辺 哲史,助教(京都先端科学大) 内海 信幸,特任研究員(金(炯)研) 豊嶋 紘一
本研究では,領域目標である水共生学の創生に向け水とその周辺環境情報の創出に取り組む.これは地球圏―生物圏―人間圏の相互作用により成立する水循環システムのゆらぎを社会文化の観点から動態的に明らかにするための基礎情報となる.具体的には,1)水文気候シミュレーションによる過去300年を対象とした長期水文気候再現および将来100年を対象とした将来水文気候予測,2)リモートセンシング等による水を取り巻く周辺環境の計測,3) 観測および数値モデリングによる流域スケールでの水と環境物質動態解明を行い,過去―現在―未来における水とその周辺環境の変化を明らかにする.また,地球科学分野におけるデータが有する時空間解像度や確率的な特徴を,生物圏および人間圏における研究に活用しやすい形に変換する,情報翻訳のアプローチについての開拓にも取り組む.

衛星観測を活用したデータ駆動型の水文季節予報手法の開発

特任准教授 金 炯俊,特任研究員(京都大) 渡辺 哲史,助教(京都先端科学大) 内海 信幸
衛星観測を含む様々なデータを活用してデータ駆動型の水文季節予報手法の開発を行うための国際共同研究枠組みを構築する.米国側カウンターパートはジェット推進研究所であり,主に陸域貯水量変動が河川水位に与える影響についての専門的知見を提供する.一方,日本側は海面温度など全球スケールの様々な変数と流域スケールでの水文量の関係についての知見を提供する.両者を統合し,データ駆動型の水文季節予報手法の開発を行う.

DERの情報多様性要求への対応策検討

特任准教授 馬場 博幸,リサーチフェロー(馬場研) 石田 慶樹,代表取締役CTO(IoT-EX(株)) 松村 淳,代表取締役社長(IoT-EX(株)) 小畑 至弘
特定のメーカー・型式のDERからみると,自身を操作対象とするアグリゲーターは複数存在する可能性があり,DERから発出される情報について個々のアグリゲーターが四則演算処理など異なるスタイル等を当該メーカーに要求する可能性が考えられる.これは,当のメーカーにとって煩雑な業務となり,DERのコスト増加圧力を発生させかねない.本研究はこれを解決する方策を検討する.

DRにおけるミクロ─マクロ制御共存に関する研究

特任准教授 馬場 博幸,特任教授 荻本 和彦,特任助教(名古屋大) 今中 政輝,課長(東京電力ホールディングス(株)) 天津 孝之,副長(東京電力ホールディングス(株)) 増田 浩
人為的な出力増減がしづらい再エネの積極的活用には,供給側の制御だけでなく,需給状態に応じた能動的な需要増減も必要であり,この場合,需要側ではマクロな制御とミクロな制御の共存のように,複数の制御が共存する環境が想定される.本研究はこれらの協調について検討する.

IoT向け相互接続インフラへの他網接続機能の追加研究

特任准教授 馬場 博幸,リサーチフェロー(馬場研) 石田 慶樹,代表取締役CTO(IoT-EX(株)) 松村 淳,代表取締役社長(IoT-EX(株)) 小畑 至弘
開発したIoT-HUBを,実際の商用運転などの経験を基に,LPWAなどインターネットではない網やVPNで集約されたデバイスにも直接対応できるよう改良する方策の基礎的研究

複数アプリケーション共存環境下のDER操作に関する研究

特任准教授 馬場 博幸,特任教授 荻本 和彦,特任助教(名古屋大) 今中 政輝,課長(東京電力ホールディングス(株)) 天津 孝之,副長(東京電力ホールディングス(株)) 増田 浩,部長(IoT-EX(株)) 柳川 大直
分散エネルギー資源(DER)を活用して,太陽光などの人為的に出力調整が困難な電源を大量に含む電力システムの安定化を確保する研究を推進.個々のDERは,複数のアプリから制御されることになると想定され,このような環境下でアグリゲーターの需給調整市場への入札商品づくりに寄与する機能の実装を考案し,実験結果を論文化した.論文は2022年5月にエネルギー・資源学会誌に掲載予定(査読済み).

電力需給運用における太陽光発電予測の選択手法の開発,PV出力制御モデルの開発,系統混雑解析手法の開発

特任准教授 竹内 知哉

人体有限要素モデルを用いた天井等落下物に対する危険度評価に関する研究

特任講師 中楚 洋介
人体有限要素モデルを用いて天井等落下物に対する衝撃解析を行い危険を定量的に評価する研究

産業で用いられる光学の教育

特任教授 菅谷 綾子
近年大きくなりつつある大学の光科学研究と産業界の最先端光学技術との乖離を埋めるため,産業に直結する光学の教育を行って次代の光学産業を担うリーダーとなり得る人材を育成することを目的としている.具体的な活動は以下の通りである.先端レーザー科学教育研究コンソーシアムCORALに参加,大学院学生に「光学産業における光学技術」の題目で講義1回(6/14)とレンズ設計実習「レンズ設計・基礎から実践まで」を2回(6/16,17)実施,10月~1月に光工学特論の大学院講義を駒場Ⅱで開講.例年開催している駒場リサーチキャンパス公開における小・中学生向け理科教室「光を感じて写真をとってみよう!」はキャンパス公開がオンライン開催となり中止となった.

トレージャー・ハンティングによるライフスタイルを賦活するデザイン・エンジニアリングの展開

教授 野城 智也,教授 ペニントン マイルス,准教授 戸矢 理衣奈
生産技術研究所に眠る様々な技術的シーズをトレージャーハンティング活動により掘り起こして,多様化された社会においてライフスタイルを賦活させていくモノ・コトのプロトタイプを開発していく.

Toyoshima Virtual Pavilion 豊島ライフスタイル寄付研究部門におけるトレジャーハンティングとプロトタイプ制作の総括としてのヴァーチャル展覧会

准教授 戸矢 理衣奈
豊島ライフスタイル寄付研究部門の活動総括として,これまでの制作物を総合的に展示するヴァーチャル展覧会を行った.

豊島ライフスタイル寄付研究部門におけるトレジャーハンティングとプロトタイプ制作(第6期)

准教授 戸矢 理衣奈
豊島ライフスタイル寄付研究部門の第6期として,近未来ライフスタイル分析として豊島(株)社員の方々との協働するワークショップ等を実施するとともに,価値創造デザイン推進基盤との連携により生産技術研究所研究室へのシーズの探求(「トレジャーハンティング」)に基づくプロトタイプ制作を行った.竹内昌治研究室との協働を行った.

車載カメラを用いたカーブミラーに映る危険事象の認識

教授 須田 義大,特任准教授 小野 晋太郎

人間機械系における新しいシステム設計論の構築

特任教授 平岡 敏洋
人間機械系を設計するうえで,従来のシステム設計論では,メインタスク達成に要するユーザの物理的労力ならびに心理的労力をいかに減らすかという視点で,自動化を導入することが殆どであった.しかしながら,1) ユーザの技能低下,2) ユーザの対象系理解度の低下,3) システム異常時(故障時)の対応力低下,4) システムに対する過信増大,といった弊害も生じている.本研究では,メインタスク達成のために,あえてユーザに労力をかけさせるような設計にすることで,上述する弊害を軽減もしくは解消することを目指して,新しいシステム設計論の体系化を行っている.

無人移動サービス車両における乗客の車内転倒防止のための運動制御

特任教授 平岡 敏洋,特任助教(須田研) 霜野 慧亮,教授 須田 義大
車内における乗客の転倒は,加減速時に生じる慣性力の影響で発生する.床面と水平な方向に生じる慣性力を低減できれば,車内事故の軽減につながると期待される.加減速に合わせ意図的に車体を傾斜させることで慣性力の方向を床面方向に向けて水平方向の影響を減らせると考えられる.自動運転と合わせて注目される電気自動車では,前後輪にインホイールモータを内蔵するものもあり,前後輪の制駆動力を制御することでピッチ角を制御できる.この特徴を活かした先行研究では,車両運動の安定性向上を目的としたピッチ角抑制制御を行っている.それに対して本研究では,車内に立って乗車する乗客の転倒防止を目的として,車両が加減速する際に乗客に作用する慣性力の影響を打ち消すようなピッチ角制御を行う.

自動運転システム・運転支援システムのHMI設計

特任教授 平岡 敏洋
自動運転システムや運転支援システムにおけるよりよいヒューマン・マシン・インタフェースを実現するための基礎的検討として,ドライバの信頼状態がどのように醸成され,その信頼状態が運転行動に与える影響を分析した.さらに,ドライバの運転支援システムがステアリングホイールなどの操作端を介して操作を共有するHaptic Shared Control (HSC)について,直接型HSC (Direct HSC) と間接型HSC (Indirect HSC) の2種類があることを提案し,それぞれの長所と短所を整理した.

実映像ドライビングシミュレータに関する研究

特任准教授 小野 晋太郎,准教授(愛知県立大) 河中 治樹,教授(愛知県立大) 小栗 宏次

ドライブレコーダからの天候情報推定と急ブレーキ発生予測

教授(九州大) 川崎 洋,准教授(九州大) 峯 恒憲,特任准教授 小野 晋太郎

(国研)日本医療研究開発機構 創薬支援推進事業・創薬総合支援事業(創薬ブースター) 麻疹ウイルスベクターを用いた新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発

特任教授 米田 美佐子
麻疹ウイルスベクターを用いた新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの開発を行う.ワクチンシードの作製,治験用GMP製剤の製造,前臨床安全性および有効性試験の実施を目指す.

生体分解性・多孔質マイクロニードルとペーパーベースの無痛・迅速診断チップの開発

教授 金 範埈,助教(金(範)研) パク チョンホ,特任教授 甲斐 知惠子,特任教授 米田 美佐子
本研究は,“生体分解性多孔質マイクロニードルを用いた医療用パッチ”の新たな応用として,新型コロナウイルス感染症の低侵襲(無痛)自己診断チップの開発に関するものである. 専門的な医療従事者を要しないかつ簡便で迅速な感染症の診断を実現できるため,まず診断対象である血清又は間質液からの無痛かつ適量の抽出が可能な新規マイクロニードルの構造設計及び製作に関する研究.

マイクロ2相流の基礎研究

教授 鹿園 直毅
将来のエネルギー問題を解決する上で,エクセルギー損失の小さい低温度差の熱機関であるヒートポンプや蒸気エンジンへの期待は非常に大きい.一方で,競合技術である燃焼式の給湯器やエンジンに比べ大型・高価であることが課題である.極めて細い冷媒流路を用いることで,ヒートポンプや蒸気エンジン用熱交換器の大幅な小型軽量化が実現できるが,本研究では,そのために必要となる超薄液膜二相流の基礎的な現象理解を進めている.具体的には,共焦点レーザー変位計を用いたマイクロチャネル内の薄液膜厚さの測定およびそのモデリング,マイクロチャネルを利用した高性能蒸発器の限界熱流束の研究等を行っている.

固体酸化物形燃料電池(SOFC)の実験および数値シミュレーション

教授 鹿園 直毅
エクセルギー有効利用の重要性から,700~1000度で作動する固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)に注目が集まっている.SOFCは単体での高い発電効率に加え,様々な炭化水素燃料に対応できること,熱機関や内部改質による排熱利用が可能である等,様々なメリットを有する.しかしながら,SOFCの実用化のためにはコストや耐久性といった課題を克服する必要があり,そのためにはシステムとそれを構成するセルや電極の階層的な設計技術を高度化する必要がある.本研究では,SOFCの高信頼性,高効率化に向けて,実験及び数値計算手法を開発し,発電システムから電極レベルに至る広い時空間スケールの現象を予測,制御するための研究を行っている.特に,電極微細構造が発電性能に与える影響に注目し,微細構造を制御したSOFCの性能を実験により計測するとともに,収束イオンビーム走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)を用いた3次元電極微細構造の直接計測,ミクロな実構造における拡散と電気化学反応を連成させた格子ボルツマン法による数値シミュレーションを行っている.

次世代熱機関用要素技術の研究

教授 鹿園 直毅
低温度差で作動するヒートポンプや蒸気エンジンはエクセルギー損失が非常に小さく,将来のエネルギー問題の解決に不可欠な技術である.一方で,競合する燃焼式給湯器等に比べ大型で高価であることが課題であり,従来の延長線上にない画期的な要素技術が求められている.本研究では,基礎的な研究に基づいて,より高性能,高信頼性,小型,安価を実現する新たな機構を提案し実証している.

消費者受容性を考慮した住宅エネルギー管理システム

特任教授 岩船 由美子
不安定な発電出力特性を有する再生可能エネルギーの大量導入を実現させるためには,電力システムにおけるエネルギー需給調整力を確保することが必要である.そのために,消費者の快適性・利便性を維持しつつ必要に応じて電力需要を調整できる機能を持つ住宅エネルギー管理システム(HEMS)の開発を目指す.また,HEMS普及促進のために,社会に受け入れられる仕組み・制度に関する検討や付加価値を高めるための研究も行う.

DRにおけるミクロ─マクロ制御共存に関する研究

特任准教授 馬場 博幸,特任教授 荻本 和彦,特任助教(名古屋大) 今中 政輝,課長(東京電力ホールディングス(株)) 天津 孝之,副長(東京電力ホールディングス(株)) 増田 浩
人為的な出力増減がしづらい再エネの積極的活用には,供給側の制御だけでなく,需給状態に応じた能動的な需要増減も必要であり,この場合,需要側ではマクロな制御とミクロな制御の共存のように,複数の制御が共存する環境が想定される.本研究はこれらの協調について検討する.

複数アプリケーション共存環境下のDER操作に関する研究

特任准教授 馬場 博幸,特任教授 荻本 和彦,特任助教(名古屋大) 今中 政輝,課長(東京電力ホールディングス(株)) 天津 孝之,副長(東京電力ホールディングス(株)) 増田 浩,部長(IoT-EX(株)) 柳川 大直
分散エネルギー資源(DER)を活用して,太陽光などの人為的に出力調整が困難な電源を大量に含む電力システムの安定化を確保する研究を推進.個々のDERは,複数のアプリから制御されることになると想定され,このような環境下でアグリゲーターの需給調整市場への入札商品づくりに寄与する機能の実装を考案し,実験結果を論文化した.論文は2022年5月にエネルギー・資源学会誌に掲載予定(査読済み).

未来志向射出成形技術

准教授 梶原 優介,特任講師 龍野 道宏,助教(梶原研) 木村 文信,特任研究員(梶原研) 加藤 秀昭,特任研究員(梶原研) 佐藤 滉
主要なプラスチック成形加工技術の射出成形は,広範な成形工業界を擁し国民生活および産業界の発展を下支えしている.近年では,炭素長繊維等の難成形性・難制御性の材料が出現し,超臨界流体応用微細転写・発泡成形,型内異材成形・接合・組み立て等が求められ,複雑化する成形現象の解明が追い付かず材料特性を十分に引き出せなくなっている.本部門では,技術的にも学問的にも未開拓なこれら領域に道筋をつけ,来るべき射出成形技術を先導することを目指し研究を進めている.

サステナブル建築実現のためのCPSの利活用に関する研究

教授 野城 智也
サステナブル建築を実現するために,デジタル化されたテクノロジーを活用していくための可能性が高まり,端緒となる実践も種々展開されている. しかし,現実を見ると,それぞれの技術の繋がりが円滑ではなく,折角の可能性が制約されてしまっている. 野城研究室では,サステナブル建築を実現するための「さまざまなデジタル技術を繋げていくための仕組み」を考究している.具体的には,下記の研究に取り組んでいる. 1 様々なベンダーが製造供給した機器を,滑らかに接続するためのIoT連携基盤(IoT-Hub)の開発・普及をはかる. 2 建築・都市各所に配置した,加速度センサー,二酸化炭素センサーからのData Aggregation によるサステナブルな建築のファシリティマネジメント手法の開発 3 BIMなどの建築デジタル・モデルをもとにした構工法計画手法

デジタルスマートシティイニシアティブ

教授 野城 智也,特任教授 関本 義秀,教授 腰原 幹雄
近年のビッグデータ,オープンデータ,AI等,多くの情報関係の技術が加速して進む中で,世界最先端の都市管理に関する様々な情報技術を磨きつつも,各地域が特定の主体等に依存し過ぎないデータ管理技術や,草の根の人的ネットワークの構築等,自律したスマートシティの技術基盤の涵養を行っていく事も重要である.そうした活動をより体系的に行っていくために,防災,交通,建物,インフラ構造物,地域経済等,都市運営の各分野を見据えつつ,都市情報基盤のグランドデザイン・コンセプトを描き,そのためのデータやソフトウェア等から構成されるデジタルシティを構築し,社会実証を行っていく.

サステナブル建築実現のためのCPSの利活用に関する研究

教授 野城 智也
サステナブル建築を実現するために,デジタル化されたテクノロジーを活用していくための可能性が高まり,端緒となる実践も種々展開されている. しかし,現実を見ると,それぞれの技術の繋がりが円滑ではなく,折角の可能性が制約されてしまっている. 野城研究室では,サステナブル建築を実現するための「さまざまなデジタル技術を繋げていくための仕組み」を考究している.具体的には,下記の研究に取り組んでいる. 1 様々なベンダーが製造供給した機器を,滑らかに接続するためのIoT連携基盤(IoT-Hub)の開発・普及をはかる. 2 建築・都市各所に配置した,加速度センサー,二酸化炭素センサーからのData Aggregation によるサステナブルな建築のファシリティマネジメント手法の開発 3 BIMなどの建築デジタル・モデルをもとにした構工法計画手法

建築・都市分野におけるカーボントレーディングに関する研究

教授 野城 智也
温室効果ガスの排出削減量をクレジット化して市場で売買することにより,建築・都市分野における温室効果ガス抑制策が促進される仕組みについて研究する.2022年度に成果を出版予定.

物理空間・サイバー空間の協調運用のための共通空間記述基盤の構築

教授 野城 智也,特任教授 豊田 啓介
建築・都市空間内で,人,ロボットを含む人工物が,物理空間・サイバー空間を連携的に利活用しつつ,協調的に活動していくために,様々な技術者,組織が専門分野や業種を超えて共通に利用できる,空間記述基盤を構築することを目指す.

着霜制御サイエンス─ 霜のつかない表面を設計する物理的指針

特任教授 ビルデ マーカス,教授 福谷 克之,特任講師 高江 恭平
水蒸気が氷となって凝結する着霜現象は,工学的・社会的に極めて重要な現象である.例えば,透明なガラスの光学的な透過度の低下を招く,熱交換機の熱効率の著しい低下をもたらす,コンクリートにダメージを与える,航空機の安定な飛行を困難にするなど,着霜は様々な深刻な問題を引き起こすことが知られている.しかしながら,着霜現象に対する物理的な理解は十分とは言えず,これまで着霜の阻害のための明確な物理的指針は存在していなかった. そこで,本社会連携研究部門では,この状況を打破すべく,理論・シミュレーション・実験を融合することにより,ミクロからマクロにわたる新たな階層的な視点から,着霜という非平衡現象の物理的な機構に迫ることで,この現象の基礎的な解明をはかるとともに,上記のような深刻な社会的問題の解決のための基本的な物理的指針を確立することを目指す.

キラル分子からなる結晶のトポロジカル相転移における創発弾性場の役割

特任講師 高江 恭平,講師(名古屋大) 川﨑 猛史
らせん状や渦巻き状など鏡像と重ならない複数の構造を示す「トポロジカル材料」の相転移を制御するモデルを新たに提案し,トポロジカル材料の相転移で力を生み出せること,力で相転移を制御できることを明らかにした.この成果は,電気・磁気のみならず,力学的にも機能を発揮するトポロジカル材料を設計する基礎的な物理原理を提供するものであり,アクチュエータや圧電素子などへの応用が期待される.

着霜制御の物理的指針を得るための理論・数値シミュレーション

特任講師 高江 恭平

粘弾性流体におけるシアバンディングのメカニズム解明

特任講師 高江 恭平,客員共同研究員(東大) 田中 肇
高分子系に代表される粘弾性流体は特異な力学特性を示し,中には流動化で自発的に不均一流動が生ずるレオロジー不安定性を有するものがある.とくにシアバンディングと呼ばれる現象では,均一なシア流動に対して,シア勾配の大きい領域と小さい領域とに自発的に分離する.我々はそのメカニズムを解明すべく,体積粘弾性緩和を取り入れた理論を構築し,流体力学シミュレーションによりシアバンディングが説明可能であることを示した.さらに分子動力学シミュレーションにより,本モデルの分子論的起源にも迫ることに成功した.

自己回転粒子の相分離

PhD. student (Indian Institute of Technology, Madras) Bhadra HRISHIKESH,客員共同研究員(東大) 田中 肇,特任講師 高江 恭平

荷電コロイドの流体力学における電荷の不均一性

特任講師 高江 恭平,客員共同研究員(東大) 田中 肇,特任研究員(東大) Jiaxing YUAN
コロイド粒子とは目では見えないほど小さく,しかし原子分子よりはるかに大きな大きさを持つ粒子の総称であり,相互作用が多彩であること,熱ゆらぎの影響を強く受けることなどから,多様な構造形成,ダイナミクスを示す.多くのコロイド粒子は,表面に電荷を持ち,水などの溶媒中に分散したイオンと相互作用することで複雑な挙動を示すが,そこでは,コロイド表面の電荷が不均一になることが重要であり,コロイドの凝集過程や,水と油の混合溶液における運動を支配している.そのような複雑なふるまいを,電荷の不均一性と流体力学の結合に着目して,統一的に理解することを目的としている.それにより,コロイド溶液のダイナミクスに普遍的な物理的描像を与えること,またコロイドを構成要素とした高次の構造形成に対する,指針を与えることが可能になると期待している.

定置網漁業の自動魚群誘導システム

教授 北澤 大輔,助教(北澤研) 李 僑,大学院学生(北澤研) 古市 大剛,特任研究員(北澤研) 董 書闖,シニア協力員(北澤研) 水上 洋一
定置網漁業において,箱網に入った魚を収穫する作業は揚網作業と呼ばれるが,多くの作業員を必要とし,早朝の危険を伴う作業である.そこで,この作業を自動化するため,可撓性ホースを結合して作成された自動魚群誘導システムの実海域実験を実施した.また,自動魚群誘導システムの挙動を再現するための数値シミュレーションモデルの開発を行った.

潮流・海流発電普及に向けた環境影響評価手法の検討

教授 北澤 大輔,リサーチフェロー(北澤研) 吉田 毅郎,特任研究員(北澤研) 周 金鑫
潮流・海流発電のタービンブレードが海中に設置され,回転すると,海生動物が衝突するリスクがある.縮尺比1/100 のタービンブレード模型を用いて実施した既存の研究をとりまとめ,現在までに得られている知見を整理した.

炭電極を用いた汚水の電気化学的処理技術の開発

教授 北澤 大輔,シニア協力員(北澤研) 岡本 強一
汚水処理技術の一つとして,電気分解が注目されている.電気分解では,一般に金属製の電極が用いられるが,使用中にイオン化し,水生生物に影響を及ぼす可能性があるため,当研究室では炭電極を用いた電気分解による汚水処理技術の開発を行っている.これまでに実施した実験結果を整理して,論文の執筆を進めた.

琵琶湖全循環の環境リスクファイナンス

教授 北澤 大輔,リサーチフェロー(北澤研) 吉田 毅郎,特任研究員(北澤研) 周 金鑫,教授(立教大) 久保 英也,准教授(滋賀大) 菊池 健太郎
気候変動に伴い,琵琶湖では全循環の欠損が懸念されている.将来の気象シナリオの与え方を改善して,琵琶湖での全循環欠損のリスクの予測シミュレーションを行った.

統計的手法による沿岸生態系モデルのパラメータ推定に関する研究

教授 北澤 大輔,特任研究員(北澤研) 周 金鑫,大学院学生(北澤研) 遠藤 和真,准教授(東北大) 藤井 豊展
生態系モデルを社会実装するためには,モデルに含まれる不確かなパラメータを客観的にチューニングする必要がある.そこで,ベイズ最適化を活用したパラメータ推定法を提案し,女川湾の生態系シミュレーションに適用した.

複合養殖による養殖場の環境保全に関する研究

教授 北澤 大輔,リサーチフェロー(北澤研) 吉田 毅郎,特任研究員(北澤研) 周 金鑫
養殖種の排泄物を他の生物に吸収させる複合養殖によって,養殖場の環境を保全する方法について実海域実験を行った.魚類養殖場直下の海底上でナマコを飼育し,成長を把握した.

養殖の持続可能性の評価に向けた指標の開発

教授 北澤 大輔,大学院学生(北澤研) 高 紅霞,特任研究員(北澤研) 董 書闖,特任研究員(北澤研) 周 金鑫
国内外の養殖場では,養殖魚からの排泄物や陸域からの栄養塩負荷による環境汚染が頻発している.海域の養殖の環境収容力を判断するため,排泄物と陸域からの負荷を考慮した指標を開発した.

グラフェンを利用した熱拡散型工具の開発

教授 臼杵 年,特任研究員(臼杵研) 萩野 将広,大学院学生(臼杵研) 黄 穂生
工具刃先温度の低減による凝着(原子整合による付着)の軽減を行うために,グラフェンの高熱伝導特性(理想値5800W/mK)を利用した工具開発を行っている.また冷却効果を上げるため超高圧クーラントの併用とその効果も検討している.

タングステンの切削およびねじ切り加工

教授 臼杵 年,特任研究員(臼杵研) 森田 翔,大学院学生(臼杵研) 関 紘也
純タングステンの切削特性とねじ切り特性について調査している.

航空機製造におけるものづくりに関する技術開発

教授 臼杵 年,教授 岡部 徹,教授 岡部 洋二,准教授 土屋 健介,特任教授 橋本 彰,特任講師 馬渡 正道,教授(東大) 柳本 潤,准教授 山川 雄司
次世代の航空機製造技術に関して,複数のテーマを同時進行でその課題解決に取り組んでいる.

超高圧クーラント給油の効果に関する研究

教授 臼杵 年,特任研究員(臼杵研) 森田 翔,大学院学生(臼杵研) 毛 経天
超高圧クーラント給油の効果について,旋削およびエンドミル加工において逃げ面給油を追加した効果について検証している.さらに冷却作用だけでなく切削界面を含む切削領域周辺での潤滑作用についても見直しを行っている.主対象被削材は,チタン合金,超耐熱合金である.

難削材切削加工の研究【柏地区利用研究課題】

教授 臼杵 年,特任研究員(臼杵研) 森田 翔
チタン合金,超耐熱合金等の難削材料の切削加工を中心に,加工法,切削現象,切削工具開発や切削油剤給油法等の研究を行っている.

複雑ネットワークのクラスター解析【柏地区利用研究課題】

教授 羽田野 直道

量子アクティブマターの提案【柏地区利用研究課題】

教授 羽田野 直道

量子熱力学の構築【柏地区利用研究課題】

教授 羽田野 直道

開放量子系の非マルコフ的ダイナミクス

教授 羽田野 直道
周囲と粒子やエネルギーをやりとりしている量子系を開放量子系と呼ぶ.近年,様々な観点からの理論研究が進められている.量子系の実験では,観測機器を接続するために常に開放量子系になっていると言える.周囲と強く相互作用するような開放量子系のダイナミクスを理論的に明らかにすることは,実験における測定で系を乱すときに初めて起こる現象の探索など,幅広い意義がある.これまでの多くの研究ではメモリー効果を無視したマルコフ近似を行った解析がほとんどであった.本研究では,非マルコフ的ダイナミクスを非線形固有値問題として直接的に解析する手法を検討している.

非エルミート量子力学の発展【柏地区利用研究課題】

教授 羽田野 直道

弱測定の精密測定への応用に向けた理論解析

助教(羽田野研) 李 宰河,准教授(高エネルギー加速器研究機構) 筒井 泉
量子測定において有用な測定値を選別する手法としての弱測定法が,測定精度の向上をもたらし得る機構を解析し,既存の実験のデータの分析・検証を通したその有用性の実証や,今後の幅広い応用へ向けた検討を行う.

量子化・擬確率の随伴理論に基づく量子現象の解析

助教(羽田野研) 李 宰河
量子化・擬測定の双対構造に着目して,量子論における諸現象を解析する.

量子論における不確定性原理の普遍的定式化

助教(羽田野研) 李 宰河
不確定性原理の普遍的な定式化を通して,量子論における不確定性の多彩な顕現様式を融合し,その包括的理解に資することを目的とする.

カーパラメトリック発振器のデコヒーレンス解析

大学院学生(羽田野研) 青木 隆明,主任研究員((国研)産業技術総合研究所) 松崎 雄一郎
カーパラメトリック発振器のGKSL方程式のミクロな導出と解析

情報エントロピーを用いる熱力学不確定関係

大学院学生(羽田野研) 王 鑫
クレーマー―ラオ不等式に基づいて,フィッシャー情報量はどのような条件の下に情報エントロピーに結びつくかを解明し,情報エントロピーを含んだ熱力学不確定関係を導出する.またそれをいくつかのモデルで検証を行う.

結合量子調和振動子系の非平衡熱力学

大学院学生(羽田野研) 青木 隆明,主任研究員((国研)産業技術総合研究所) 松崎 雄一郎
結合量子調和振動子系のエントロピーや温度の定義と解析

製御可能なキャビティ光力学に基づく開放量子システムの研究

大学院学生(羽田野研) 尚 程,教授 羽田野 直道
コール非線形性を利用して光力学システムの放射圧非線形性の製御可能な強化を実現し,それによって光力学システムの固有の非線形性による物理特性を研究する.

量子Ising系の非平衡ダイナミクスとその応用

大学院学生(羽田野研) 吉永 敦紀
量子多体系の基本モデルであるIsing系における特異な非平衡現象とその技術応用についての理論研究を行っている.

量子アクティブ粒子の非エルミート量子ウォークを用いた定義

大学院学生(羽田野研) 山岸 愛,教授 羽田野 直道,助教(北海道大) 小布施 秀明
古典系において研究が進められているアクティブマターを,非エルミート量子ウォークを用いて量子系で定義することを試みている. これまでに一次元では成功し,古典系での先行研究と同様の,エネルギー取り込みがあるとその分運動が活発になりポテンシャル障壁を登るという様子がみられた.今後,先行研究との対応を見やすくするために二次元への拡張を目指している.

量子相関および情報を考慮した量子熱力学の構築に関する研究

大学院学生(羽田野研) 石崎 未来,助教(羽田野研) 李 宰河,教授 羽田野 直道,協力研究員(羽田野研) 田島 裕康
量子相関及び量子情報の観点から,熱力学を量子的に拡張した量子熱力学の理論的構築を行う.

統合陸域シミュレータの開発及び検証

教授 芳村 圭,助教(芳村研) 新田 友子,准教授 山崎 大
これまで大気モデルに従属して開発されてきた陸面モデルをベースにして,土地利用や植生変化・人間活動・湖沼や河川の水動態や水温変化・斜面水文過程と地表水−地下水相互作用など多様な時空間スケールの陸域水文過程を包括的に表現可能な次世代陸域モデルである統合陸域シミュレータ(ILS)の開発を行っている.

次世代陸域水文モデルの開発

特任准教授 金 炯俊,准教授 山崎 大,教授 芳村 圭,教授(東京工業大) 鼎 信次郎,室長(国立環境研究所) 花崎 直太,室長(気象研究所) 仲江川 敏之,特任研究員(芳村研) 大沼 友貴彦
これまで大気モデルに従属して開発されてきた陸面モデルをベースにして,土地利用や植生変化・人間活動・湖沼や河川の水動態や水温変化・斜面水文過程と地表水−地下水相互作用など多様な時空間スケールの陸域水文過程を包括的に表現可能な次世代陸域モデルの開発を行っている.陸域の水・エネルギー収支と水循環とを大陸規模・日単位のスケールで精度良く推計でき,大気・海洋・生物圏などからなる地球システムモデルとも結合可能な陸域水循環の物理的側面に関する高精度で高計算効率の陸域水文シミュレーションを実施する.また,超高解像度の水文地理データや水利用データの整備,一貫性の長期気象外力データの整備を行い,全球1km 解像度での高解像度陸域水循環シミュレーションや全大陸50km 解像度での250 年分の長期アンサンブルシミュレーションの実現を目指している.

地震による構造物の破壊機構解析(共同研究)

教授 川口 健一,教授 目黒 公郎,准教授 清田 隆,教授 桑野 玲子,教授 腰原 幹雄,助教(川口(健)研) 張 天昊,教授 中埜 良昭,准教授 沼田 宗純

実大テンセグリティ構造物の応力測定システム【柏地区利用研究課題】

教授 川口 健一,特任講師 中楚 洋介,助教(川口(健)研) 張 天昊,技術専門員(川口(健)研) 大矢 俊治,大学院学生(川口(健)研) 佐野 匠,教授 今井 公太郎,准教授 本間 健太郎
2017年に完成した柏の葉キャンパスにあるWhiteRhinoIIの応力状態の継続的モニタリングを行っている.また数値解析などによりテンセグリティ構造が最適構造となるための条件の探索などを行っている.2001年に竣工した旧千葉実験所の White Rhino I の撤去作業時の実大モニタリング実験も行った.

植物の力学的最適化戦略に基づくサステナブル構造システムの基盤創成 ~植物構造オプト~

教授 川口 健一,特任講師 中楚 洋介,助教(川口(健)研) 張 天昊,技術専門員(川口(健)研) 大矢 俊治,大学院学生(川口(健)研) 武藤 宝,大学院学生(川口(健)研) 堀口 翔太
植物生理学者との協働,共同研究を通して,生きた植物を建築構造に応用する,あるいは生きた植物の最適化戦略から学んだ原理を応用する,ことを目指す挑戦的研究.

フォトポリマーフィルムを用いた自然光再生ホログラフィーの研究【柏地区利用研究課題】

教授 志村 努

SARS-CoV-2タンパク質の電子状態解析

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)の2つのタンパク質の全電子計算を実行した.一つは,RNAが結合するヌクレオカプシドタンパク質のN末端ドメインであり,RNA結合まわりにはArgや酸性アミノ酸残基のGlu,芳香環を持つTyrなどが位置しており複雑な静電場を形成していることが明らかとなった.本研究は,UTokyoGSCプログラムの一環として実施した.もう一つは,ACE2と結合するスパイクタンパク質のACE2結合ドメインであり,この計算結果を用いてACE2との間の相互作用を解析した.

密度汎関数法に基づく第3世代カノニカル分子軌道法とQCLO法の開発

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
グリッドフリー法とコレスキー分解法を組み合わせて,スパコンで十分な性能を引き出すことができる第3世代法を開発した.今年度は特にコレスキーベクトルのI/Oの改善などを行った.また,QCLO法の新コードを整備した.今年度は特にPipek-Mezey法による局在化軌道の計算方法の改善を行った.

PETase活性中心の電子状態研究

大学院学生(佐藤(文)研) 王 天宇,教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
ポリエチレンテレフタラート(PET)を分解できる酵素PETaseはSerine proteaseの1種であり活性中心はSer-His-Aspである.これら3残基は水素結合が形成されるように空間的に配置されており,Ser側鎖のγ酸素が基質を求核攻撃するとみられる.本研究では,PETaseの基質特異性とPET分解反応機構を解明するために,正準分子軌道計算によるPETaseの活性中心とその周辺タンパク質の電子状態を解析した.

RNAポリメラーゼの電子状態解析

教授(岡山大) 田村 隆,教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
RNAポリメラーゼの効率を上げるためのミューテーション実験の解析のために,RNAP/DNA/mRNA複合体の電子構造計算を実施した.

インターフェロンα2の電子構造研究

大学院学生(佐藤(文)研) 中岡 亮太,教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
インターフェロン(IFN)は,ウィルスなどの侵入に対して細胞が分泌するサイトカインである.IFNα2はI型インターフェロンでヒトでIFNα2b変異体が市販されており,天然と活性に有意な差がある.IFNα2とIFNα2bのアミノ酸配列の変異は1か所だけであり(Lys23Arg),電荷に変化はなく,23番目のアミノ酸残基はIFN受容体の結合部位には存在しない.本研究では,変異体による電子状態の変化が遠方にまで及び活性の違いを与えていると仮説を立てIFNα2の作用機序を電子レベルで解析した.

海洋センシングに関する連携研究

准教授 ソーントン ブレア
Underwater sensing is the raw material of how we perceive the ocean. We aim to improve how the ocean can be observed by investigating the interactions of photons in underwater environments, integrating advanced instrumentation on robotic platforms, and combining this with methods for automated data interpretation. Our group collaborates closely with institutes in the UK, Australia and the USA, and participates in international programs to maximise the global impact of our research and ensure our members can conduct research effectively in an international environment.

CFRP用工具ベンチマーク

准教授 土屋 健介
CFRP用工具について,市場調査と過去の切削試験の知見に基づいて切削試験の評価基準を提案する.

高難易度部材加工プログラムのアルゴリズム提案

准教授 土屋 健介
航空機製造は,ローコストオペレーションとして工程自動化と労働人口減少への代替化技術が日本のモノづくり力として求められている.従来,エキスパートシステムなど熟練作業者の技能の取り込みや過去のデータベース化で最適切削条件等を見出すなどの取り組みがあるが実績を超えるような成果を得られず,製造現場では未だに最適化の切削条件の決定には熟練者の経験に頼っている.そのため切削難度判定に関する要素を抽出し,最適切削条件を選定する手法の確立を目指す.

津波漂流船舶の衝突に対する鉄筋コンクリート造建築物の安全性評価手法に関する研究

教授 中埜 良昭,助教(中埜研) 松川 和人,助教(名古屋大) 浅井 竜也,大学院学生(中埜研) 肖 子旋
本研究では,津波避難ビルに影響を与える可能性の高い比較的大型の船舶を対象に,①津波波力作用下における津波漂流物の衝突によるRC造柱部材の局所損傷パターンを明らかにし,②柱の残存軸耐力に加えて梁等による軸力伝達効果を考慮しうる架構実験によりこれが建築物全体の崩壊危険性に与える影響を定量的に評価・分析することにより,③津波防災施設の設計や指定に要する荷重算定手法や架構の耐崩壊安全性評価手法ならびに関連する技術資料・データを具体的かつスピード感をもって提示すること,④これにより被災地の復旧・復興や南海トラフ地震による被害が危惧されている地域の津波災害の軽減に直接的に資すること,を目的としている.今年度は,昨年度に引き続き1層1スパン×1スパンの3次元架構に対して船舶を模擬した鋼棒を衝突させることにより,その反発係数に代表される力学特性や,安全性検討フローの適用性検証を行った.

無補強組積造壁を含むRC造脆弱架構の構造性能に関する実験的研究

教授 中埜 良昭,助教(中埜研) 松川 和人,シニア協力員(中埜研) 芳賀 勇治,大学院学生(中埜研) Adnan S.M. Naheed,大学院学生(中埜研) Monzurul Islam
途上国でみられる無補強組積造壁を含むRC造脆弱架構の破壊メカニズムと構造性能の検討を目的として,比較的知見が蓄積されているバングラデシュ国での事例を参考に,無補強組積造壁の有無をパラメータとした2層2スパンの骨組試験体を2体作製し加力実験を2018年度に行った.2019~2020年度には無補強組積造壁付き試験体の挙動を再現でき,さまざまな破壊モードに適用可能なマクロモデルの開発を実施してきた.今年度は,同種の架構の面外方向振動台実験を実施している.

鉄筋腐食を生じた鉄筋コンクリート造部材の構造性能に関する研究

教授 中埜 良昭,助教(中埜研) 松川 和人,大学院学生(中埜研) 宋 榮訓
鉄筋腐食を生じた鉄筋コンクリート造部材の耐震性に代表される構造性能を適切に評価することを目的として,本年度は,あらかじめ鉄筋腐食し3Dスキャンにより断面積分布をしておいた鉄筋を用いて鉄筋コンクリート造柱試験体を製作し,その変形能力評価実験を行った.また,部材の変形能力に腐食鉄筋の伸び能力が与える影響を検討し,断面積分布から簡易に伸び能力の減少を評価する手法を提案した.

建築・都市計画におけるデザインとエンジニアリングの融合【柏地区利用研究課題】

准教授 本間 健太郎

鉄道ネットワーク上のバリアフリールートの最適化に関する研究

准教授 本間 健太郎,准教授(東京都市大) 丹羽 由佳理,講師(東大) 日下部 貴彦,大学院学生(本間(健)研) 新井 祐子
「出発地から目的地までのシームレスな移動を可能にする統合的なバリアフリールート」を計画するための方法を開発している.具体的には,A.個人の移動行動を把握し,それに基づき B.広域ネットワーク上の移動流シミュレータを作り,それを用いて C.バリアフリールートを全体最適化するための提言を行う.今年度,課題Aとしては,Nested Logitモデルに基づく経路選択行動モデルに整合的な,街なかの移動と鉄道の乗車を含む経路についてのStated Preference調査を設計し,車いす利用者およびその介助者を対象として実施した.課題Bとしては,歩行空間ネットワークモデルを用いて経路の速達性や安全性を評価する指標を提案し,それを用いて鉄道駅を中心とする空間構造に対する車いすのアクセシビリティを評価した.また鉄道に乗車して複数駅を使う一連の移動についてのアクセシビリティ評価も行った.

自律システムの連携による海中観測手法【柏地区利用研究課題】

准教授 巻 俊宏
AUV(自律型海中ロボット)と海底ステーション,AUV同士など,複数の自律プラットフォームの連携により新たな海中海底探査用システムを提案する.試作海底ステーション,3台のホバリング型AUV(Tri-Dog 1, Tri-TON, Tri-TON 2)等のテストベッドを用いて,水槽試験,海域試験等により研究開発を進めている.

マイクロ波レーダを用いた海面観測に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 林 昌奎
マイクロ波パルスドップラーレーダを用いる海面観測システムの開発を行っている.海面から散乱するマイクロ波は,海面付近水粒子の運動特性によって周波数が変化し,海面から散乱するマイクロ波の強度には使用するアンテナの特性が含まれる.その特性を解析することで,海洋波浪の進行方向,波高,周期及び位相,海上風の風速と風向,海面高さの情報を得ることができる.相模湾平塚沖での海面観測を行っている.

再生可能エネルギー開発に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 林 昌奎
波力及び潮流のエネルギーを利用する発電システムの開発を行っている.宮城県・松島湾の浦戸諸島において垂直軸型の潮流発電装置のプロトタイプ(5kW)を,岩手県久慈市において振り子式の波力発電装置のプロトタイプ(43kW)を,神奈川県平塚市において高効率波力発電装置(45kW)を開発し,海域実証試験(試験送電)を実施している.

大型浮体構造物の挙動に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 林 昌奎,教授(日本大) 居駒 知樹,准教授(日本大) 惠藤 浩朗
波浪に起因する浮体式海洋構造物の動揺,弾性変形,波漂流力などを,海洋波浪レーダによるリアルタイム波浪観測技術とエアクッションを用いた浮力制御技術により,制御する方法について研究を行っている.

水槽設備を利用した研究開発【柏地区利用研究課題】

教授 林 昌奎,教授 北澤 大輔,准教授 巻 俊宏,准教授 横田 裕輔
海洋工学水槽及び風路付き造波回流水槽において,海洋環境計測,海洋空間利用,海洋再生可能エネルギー開発,海底資源開発などに必要な要素技術の開発に関連する実験・観測を行っている.

流れ中で回転する水中線状構造物の挙動に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 林 昌奎,教授(日本大) 居駒 知樹,准教授(日本大) 惠藤 浩朗
海洋掘削用ドリルパイプは比較的単純な構造物であるにもかかわらず,作用する流体外力,構造自体の応答特性も一般に非線形である.また,海流など流れを有する海域で作業するドリルパイプには,回転による振動に流れによる振動が加わり,より複雑な応答を示す.これらの問題は,対象となる水深が深くなりパイプが長大になるに従い,強度が相対的に低下したり,水深ごとの流れの流速が変化したりすると,強度設計,安全性確保の観点からより重要になる.

環境評価AIの構築に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 井上 純哉

鉄鋼冶金インフォマティクスに関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 井上 純哉

鉄鋼材料の疲労挙動に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 井上 純哉

高強度アルミニウム合金の再結晶挙動に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 井上 純哉

3Dプリンタ等の次世代技術を用いたローコスト住宅のプロトタイピング【柏地区利用研究課題】

教授 今井 公太郎,特任助教(今井研) 久保田 愛,特任研究員(今井研) 大井 鉄也,特任研究員(今井研) 伊東 優,特任研究員(今井研) 国枝 歓,大学院学生(今井研) 山口 大翔,大学院学生(今井研) 菅野 成一
近年普及が目覚しい 3D プリント(付加製造技術)と建築デザインの融合による新たな可能性を探求している.具体的には 3D プリンタを用いて仕口(ジョイント)を製作し,大部分の工程をセルフビルド可能な住宅のプロトタイピングを行う.今年度は実物大のモックアップの制作を行い,建造実験を行った.

イノベーションのための空間に関する実践的研究

教授 今井 公太郎,准教授 本間 健太郎,特任研究員(今井研) 伊東 優,特任研究員(今井研) 国枝 歓
新たなアイデアを生み出し新たな価値を創造するための空間はどうあるべきかを構想する研究である.今年度は新しい公衆トイレの新たな可能性について実践的に研究しプロトタイプをデザインしている.

空間システムの計画手法の研究と建築設計

教授 今井 公太郎,教授 加藤 孝明,特任研究員(今井研) 国枝 歓
新しい空間のシステムを効果的に計画するための手法を考案・研究している.本年度は,防災施設と観光施設の融合した新たな建築タイプとして,伊豆市において地域の防災計画の主幹をなす津波避難複合施設の研究開発を行っている.

日本財団FSI基金による海洋ごみ対策プロジェクト(2019~)

教授 ペニントン マイルス
大気海洋研 道場 豊教授と行っている海洋プラスチックごみ対策に資する科学的試験充実プロジェクト
テーマ1 海洋マイクロプラスチックに関わる実態把握
テーマ2 マイクロプラスチックの生体影響評価
テーマ3 プラスチックごみ発生フロー解明と削減・管理方策の検討
・OMNIコンセプトに係るモニタリングブイプロトタイプ作成
・データー共有の為のプラットフォーム(ウェブサイト)構築.一般向け紹介動画を数本作成,公開.今後も継続的に作成.
・プラスチックごみ削減対策を含む自治体との連携について可能性を確保(逗子市)
大気海洋研 道場氏の周知とSTEAM教育プログラムの一環として,神奈川県逗子海岸にて地域の方々や子供に向け(黒門とびうおクラブ)ワークショップを開催.
テーマは“海洋マイクロプラスチックに関わる実態把握”誰もが参加出来る方法と仕組みをデザインする.

産総研(AIST)+S design school

教授 ペニントン マイルス
産総研でデザインスクールにおけるデザイン思考教育に関する研究
産総研主催のデザイン教育プログラムS design schoolに協力,ワークショップを年に3回実施

AM(Additive Manufacturing)を用いた新しいものづくりの研究

教授 山中 俊治
近年,3Dプリンタの普及によって生産技術の現場は大きく変革しているが,その反面で,AMの効果を最大限活かしたコンテンツの発見にはまだ至っていない.本研究では,AMの製造技術を理解したうえで可能となるものづくりの方向性を示すことを目的としている.

AM技術を用いた義足のデザイン

教授 山中 俊治
現在,義肢装具士の手づくりで行われている義足のソケット製作のプロセスにAM技術を導入することで,美しい外観を持ち且つひとりひとりにフィットするソケットをデザインする.3次元計測による義肢装具士が行っているソケット製作のノウハウを定量化,積層造形技術の特性を活かした美しい外観と機械特性を両立するデザイン手法の開発を行う.

Bio-Likenessロボットの研究

教授 山中 俊治
本研究では人に生命感を想起させるロボットを制作する.一般的にロボットは産業用ロボットを除くと生体模倣を基軸とした設計が主であるが,特にそれらにおいては構造と外装の設計を分けて考えがちである.制御部品やモータは覆い隠される傾向にあるが,構造によるふるまいと外観は同時にデザインされるべきであると考えている.このようなデザイン・エンジニアリング手法を取り入れた設計は,ブラックボックス化を防ぐだけでなく,メンテナンス性の向上にもつながる.

アスリート用義足のデザイン

教授 山中 俊治
主に陸上競技用の義足の開発を行う.2008年から始まったプロジェクトの一環として,身体のラインに沿うデザインの機能的かつ美しい義足の開発を行っている.断端に合わせて作成するソケットは,従来義肢装具士の手作業で作られており,重量の最適化や外観のデザインは十分になされていなかった.本研究では,3次元計測とドライカーボンの製造技術を用い,軽く,強度に優れ且つ美しい義足を開発する.

建築・都市計画におけるデザインとエンジニアリングの融合【柏地区利用研究課題】

准教授 本間 健太郎

1次元型表面ホログラフィックメモリーの研究

教授 志村 努,助教(志村研) 田中 嘉人,大学院学生(志村研) 古山 昴樹,大学院学生(志村研) 平山 颯紀,准教授(宇都宮大) 藤村 隆史
ホログラフィックメモリーでは,通常は厚い記録媒体を用いる体積型ホログラムを用いるが,これはBragg回折を用いているため,温度変化による膨張収縮に弱い,ディスクへの一括書き込みができないなどの欠点を持っている.これに対し表面型ホログラフィックメモリーは,Raman-Nath回折であるため,ホログラムの膨張収縮があっても読み書きが可能であり,また射出成型やナノインプリントなどによるディスクの一括複製が可能である.我々は1次元ホログラムをディスク表面に記録し,やはり1次元の像を再生することにより,多チャンネルの時系列信号の同時再生を行い,データ転送レートをこれまでの光ディスクに比べ大きく向上することを狙ったシステムの基本原理の解明を行っている.

Giant dissymmetry factor of twisted metal nanorods due to strong plasmon coupling

教授 志村 努,特任研究員(志村研) 呉 安安,助教(志村研) 田中 嘉人
The chiroptical response of most natural chiral material is generally very weak, which limits its further studies and applications. Chiral plasmonic structures have lately received great attention for the large chiroptical response due to the strong interaction with light. The conventional approach for enhancing the chiroptical response mainly focuses on the shape design of the chiral structure. Here, the chiroptical response at the plasmon-coupling-induced hybridized mode is investigated. It is found that a dimer of twisted gold nanorods with a small gap size exhibits a strong chiroptical response owing to the plasmon coupling between the two nanorods. The dissymmetry factor reaches values up to ~1.03 in the experiment even for the simple structure. Furthermore, the chiroptical response as well as the plasmon coupling strength can be controlled by tuning the gap size and twisted angle of the nanorods. Our approach based on the plasmon coupling points out a new direction for the study of chiroptical response, and it will aid in the design of chiral plasmonic structures for metamaterial applications.

キラルナノ構造の光渦二色性の顕微分光イメージングシステムの開発

教授 志村 努,大学院学生(志村研) 宇都 隆宏,助教(志村研) 田中 嘉人
軌道角運動量(以下OAMと省略する)を持つ光は,スピン角運動量を持つ光(円偏光)に加わる新たな光の角運動量の自由度として,その物理的性質や応用などから近年注目を集めている.特にキラルな物質との相互作用により,OAMのハンドネスに依存した光学的応答,つまり光渦二色性が盛んに研究されている.本研究では,OAMを持つ光の一種であるラゲールガウスビームを導入した顕微分光イメージングシステムを新たに開発し,光との相互作用断面積が大きく,かつシンプルなモードで解析できるプラズモニックナノ構造を対象とした光渦二色性の解明に取り組んでいる.

ナノ構造に働く新奇光圧の研究

教授 志村 努,大学院学生(志村研) 福原 竜馬,助教(志村研) 田中 嘉人
表面プラズモン共鳴は,ナノ構造と光の間に従来にない相互作用を生じさせ,その特性がナノ構造の形状に強く依存している.本研究は,表面プラズモンを介してナノ構造に働く従来にない光の力を発見し,解析することを目的としている.これまでに,V字ナノ構造に新奇な横向きの光トルクが生じることを発見し,その物理を明らかにした.また,実験的な検証のための新奇光圧測定システムの開発も進めており,金ナノ構造に働く光圧及び光トルクの3次元的観測に成功した.

フォトポリマーフィルムを用いた自然光再生ホログラフィーの研究【柏地区利用研究課題】

教授 志村 努

プラズモニックナノ構造からの第二高調波放射制御

教授 志村 努,大学院学生(志村研) 木村 友哉,助教(志村研) 田中 嘉人
プラズモニックナノ構造による波長変換は,光の回折限界を超えたナノ領域で発生する新奇な非線形光学効果として注目されている.特に第二高調波発生は,線形過程とは全く異なる興味深い放射特性を持つが,ナノ構造表面の粗さに敏感に依存するためその制御は困難だとされてきた.我々は,二次非線形分極とプラズモンモードが空間的に結合可能なナノ構造を用いることで第二高調波の放射パターンが制御可能であることを見出し,この結合プロセスが存在することの実験的な検証を行った.また第二高調波制御の実例として,放射方向を一方向に制限する構造やベクトルビームを生じる構造,さらに円偏光を生じるナノ構造を数値シミュレーションにより設計し,それらの実験的な観測に成功した.特に,円偏光を生じるナノ構造について,非線形キラル特性という新奇な性質を持つことを見出し,その検証を行った.

プラズモニックナノ構造体からの散乱光の位相変化を利用した屈折率センシング

教授 志村 努,大学院学生(志村研) 元 志喜,助教(志村研) 田中 嘉人
二つの金ナノロッドを並べ,片方のみを何らかの固体物質で囲むEC (Exposed and Covered)ナノロッドペアからの散乱光パターンは,周辺屈折率に依存して変化することが数値計算で予想されている.この性質を利用すると,構造からのスペクトルの変化ではなく,一波長からの散乱パターンで屈折率変化をセンシングすることができる.これは,高速な空間屈折率マッピング技術などへの応用が期待される.本研究ではECペア構造をナノ加工技術で作製し,その物理的性質を調べ,新たなナノセンシング技術への応用を目指している.

室温大気中における高速カシミール力計測システムの開発

教授 志村 努,大学院学生(志村研) 紫垣 政信,助教(志村研) 田中 嘉人
1948年にCasimirが存在を予言したカシミール力は,平行に置かれた2枚の導体板間に引力が働く現象として知られている.これまで真空環境下では,高速・高感度でドリフトの影響を受けにくいPLL(Phase Locked Loop)を用いた周波数シフト方式によるカシミール力計測例が多数報告されている.一方,大気中では,空気の流体的なふるまいに起因した流体力学的相互作用力がカシミール力測定のノイズとなるため,PLLを用いた周波数シフト方式ではなく,2つの導体板の振動の位相差からカシミール力と流体力学的相互作用力を分離し計測する方法が用いられてきた.この位相差計測法を用いた高精度な力計測にはロックインアンプの信号積算時間を長くすることが必要不可欠なため,PLLを用いた方式に比べドリフトの影響が大きい.しかし大気中では,空気を介した熱の授受によって真空中よりもドリフトが発生しやすいため,高速なカシミール力計測法の開発が強く望まれている.そこで本研究では,大気中でもドリフトの影響を受けにくいカシミール力計測を実現するため,力変化に対する応答が高速なPLLと,流体力学的相互作用力の低減にむけて導体球のサイズを最適化した球カンチレバーを組み合わせたカシミール力計測システムを開発した.

表面型相関シフト多重ホログラフィックメモリー

教授 志村 努,大学院学生(志村研) 平山 颯紀,准教授(宇都宮大) 藤村 隆史,助教(志村研) 田中 嘉人
ホログラフィックメモリーの記録媒体として一般的に用いられる体積型ホログラムは,大記録容量を実現できるが,一括複製が難しく,僅かな変形で再生信号が劣化するという欠点を持つ.微細加工で作製されるような表面型ホログラムを記録媒体に用いることで,ホログラフィックメモリー特有の高速データ転送速度を活かしつつ,これらの欠点を回避することが期待できる.われわれは表面型ホログラムの多重記録による,時系列信号方式の新しいホログラフィックメモリーに着目した.本研究ではその記録再生特性の解明を目的として,システムの記録再生原理を定性的に理解するための解析モデルを構築した.また,記録密度・データ転送レートを評価する上で考慮すべきシステムパラメーターの関係を明らかにした.さらに,これらの記録再生特性の定量的な評価を行い,既存のメモリーとの比較を行った.

半導体ナノ構造とテラヘルツ電磁波の相互作用の制御と応用

教授 平川 一彦,助教(平川研) 黒山 和幸,特任研究員(平川研) 長井 奈緒美
半導体量子ナノ構造とテラヘルツ電磁波の相互作用とその応用に関する研究を行っている.特にスプリットリング共振器と呼ばれるテラヘルツ電磁波に対する共振器に近接させた量子ポイントコンタクト構造や量子ドットの電気伝導特性を調べ,テラヘルツ電磁波とナノ構造とが強く結合した系において発現する新しい物理を探索している.

半導体量子構造を用いたテラヘルツ光源・検出器の開発

教授 平川 一彦,大学院学生(平川研) 邱 博奇,大学院学生(平川研) 牛 天野,准教授(東京農工大) 張 亜,特任研究員(平川研) 長井 奈緒美,特任研究員(平川研) 渡辺 宣朗,大学院学生(平川研) 小田嶋 修
半導体量子構造を用いて,これまで未開拓であったテラヘルツ領域で動作する新規光源,検出器の開拓を行っている.本年度は,MEMSを用いたボロメータについて,(1)梁構造の初期曲がりによる感度劣化の抑制や歪みを用いた感度増大効果のために,梁の内部歪みや梁表面の構造の最適化を進めている.特に梁の座屈の臨界応力を印加することにより,感度を15倍も増大できることを見出した.(2)GaAsヘテロMEMSヘテロ構造を高抵抗Si基板に貼り合わせることにより,感度が消失する周波数帯の除去が可能となった.(3)p型ヘテロ構造を用いることにより,MEMS共振信号をピエゾ抵抗効果により読み出すことができた.さらにバッファートランジスタを用いなくても,mVオーダーのrf信号を得ることができた.(4)大振幅非線形駆動時に梁内部で起こるモード間結合効果について実験と数値計算から考察を行った,などの成果が挙がった.

半導体量子構造を用いた固体冷却素子の開発

教授 平川 一彦,研究員(LIMMS) BESCOND MARC,東京大学特別研究員(平川研) SALHANI Chloe,大学院学生(平川研) 尾上 俊樹,大学院学生(平川研) 朱 翔宇,特任研究員(平川研) 長井 奈緒美
現代のLSIに代表されるエレクトロニクスの進歩を大きく阻んでいるのが発熱による問題であり,冷却技術は将来のエレクトロニクスの発展の鍵を握る技術と言っても過言ではない.我々は半導体へテロ構造のバンドを適切に設計し,熱電子放出と共鳴トンネル効果を同時に制御して実現できるサーミオニッククーリング技術に注目している.本サーミオニッククーリングにおいては,トンネル障壁を介して量子井戸に低エネルギーの電子が共鳴的に注入され,量子井戸を出るときには低くて厚い障壁を高エネルギーの熱電子が熱的に越えていく過程を用いる素子であり,電流を流すにつれて量子井戸層が冷却されていくデバイスである. 本年度は,(1)素子の動作原理の理解と構造最適化のために,共鳴トンネル効果と熱電子放出効果を組み合わせた解析的な理論を構築し,実験で観測された素子を流れる電流の温度依存性などがよく説明できることがわかった.さらに,その理論を用いて,電子冷却のための構造の最適化の検討を行っている.(2)非平衡グリーン関数法による数値計算により,構造パラメータと電子温度の関係に関する議論を行っている.(3)量子井戸を複数個直列に接合したより高効率な冷却素子構造を提案した.

単一原子レベルの超微細加工プロセスと単一分子トランジスタ

教授 平川 一彦,特任助教(平川研) 杜 少卿,大学院学生(平川研) 田 玥,特任助教(平川研) 相場 諒,教授(東北大) 平山 祥郎,助教(東北大) 橋本 克之,教授(京都大) 村田 靖次郎,助教(京都大) 橋川 祥史
我々は,原子レベルでの金属超微細電極の加工プロセスおよびそれを用いて作製した単一分子トランジスタの伝導の研究を行っている.本年度は,(1)単一水分子を内包したフラーレン分子の伝導特性とテラヘルツ分光の実験に着手し,フラーレン分子に内包された水分子の回転モード・振動モードの観測を行った.その結果,C60分子の中では水分子がオルソとパラ状態間を揺らいでいることが明らかになった.また,強磁場下での伝導も評価したところ,B = 2T付近で急激な特性変化があることがわかった.(2)金とニッケルで通電断線法によりナノギャップ電極を形成する過程において,通電断線における臨界電圧の振る舞いに大きな差があり,融点が高いニッケルでは,1個の伝導電子から1個の原子へのエネルギー移動が原子を移動させる主な原因であることがわかった.

プラズモン共鳴の応用

教授 立間 徹,助教(立間研) 西 弘泰,特任助教(立間研) 石田 拓也,技術専門職員(立間研) 黒岩 善徳,特任研究員(立間研) イ スンヒョク,大学院学生(立間研) 松下 匠
局在表面プラズモン共鳴による光応答増強や,光学材料,色材,スマートウィンドウ,センサ等への応用を図る.

プラズモン誘起電荷分離の応用

教授 立間 徹,助教(立間研) 西 弘泰,特任助教(立間研) 石田 拓也,特任研究員(立間研) イ スンヒョク,大学院学生(立間研) 東條 太朗,大学院学生(立間研) 本間 徹,大学院学生(立間研) 井澤 哲舜,大学院学生(立間研) 中根 佑真,大学院学生(立間研) 大木 崚我,大学院学生(立間研) 孫 瑞卓,大学院学生(立間研) 薮野 真弥
金属ナノ粒子と半導体の界面において,プラズモン共鳴に基づいて電荷分離が誘起される.この現象の光電変換,光触媒,フォトクロミズム,バイオセンサ,ナノファブリケーション等への応用に関する研究を行う.

プラズモン誘起電荷分離の機構解明

教授 立間 徹,助教(立間研) 西 弘泰,特任助教(立間研) 石田 拓也,特任研究員(立間研) イ スンヒョク,大学院学生(立間研) キム カンソク,大学院学生(立間研) 左 袁
金属ナノ粒子と半導体の界面において,プラズモン共鳴に基づいて電荷分離が誘起される.この現象の機構を解明する.

光機能ナノ材料の開発

教授 立間 徹,助教(立間研) 西 弘泰,特任研究員(立間研) イ スンヒョク,技術専門職員(立間研) 黒岩 善徳
発光デバイス用量子ドット,抗菌・抗ウイルス性光触媒などの開発を行う.

キラル物質の分光学的性質に関する研究

教授 石井 和之

クロロフィル集合体の磁気光学分光

教授 石井 和之

ソフトクリスタルの光機能に関する研究

教授 石井 和之

ビタミンCバイオイメージング用蛍光プローブの開発

教授 石井 和之

ホモキラリティの起源に関する研究

教授 石井 和之

ロータリーエバポレーターを用いた不斉合成法の開発

教授 石井 和之

光機能性錯体とナノファイバーの複合化研究

教授 石井 和之

光線力学的癌治療を志向した光増感剤の研究

教授 石井 和之

分子性光触媒の研究

教授 石井 和之

分子性結晶の準安定状態に関する研究

教授 石井 和之

刺激応答性クロミック材料の開発

教授 石井 和之

金属錯体の分光測定研究

教授 石井 和之

半導体ナノワイヤの構造制御および電子スピンの長距離輸送

客員教授 寒川 哲臣
本研究では,VLS法による半導体ナノワイヤの形状・組成・界面の精密制御ならびに発光波長の制御を行っている.また量子井戸構造における電子スピンの輸送現象に着目し,特にスピン軌道相互作用に起因する有効磁場の効果の解明を進めている.

トポロジカルフォトニクス

教授 岩本 敏,准教授(慶應義塾大) 太田 泰友,助教(京都工芸繊維大) 高橋 駿,教授(関西学院大) 若林 克法,教授(筑波大) 初貝 安弘,特任教授(東大) 荒川 泰彦,教授(横浜国立大) 馬場 俊彦,准教授(東北大) 小澤 知己,部門長(電磁材料研究所) 小林 伸聖,主任研究員(電磁材料研究所) 池田 賢司
物性物理学の分野で発展してきたバンドトポロジーの概念を,光の制御に適用することで,新たな現象の発現やそれを活かしたデバイスの実現を目指すトポロジカルフォトニクスの研究を進めている.我々の研究室では,特に集積フォトニクスへの展開を視野に,フォトニックナノ構造を基礎に研究を展開している.バレーフォトニック結晶と呼ばれる構造を用いて急峻な曲げがあっても高効率に伝搬する光導波路や,トポロジーの概念を用いて設計したナノ共振器レーザなどを実現するとともに,トポロジカルフォトニック結晶を用いたスローライトデバイスの提案などの成果を挙げている.また,3次元フォトニック結晶を用いたトポロジカルフォトニクスや,新たな磁気光学材料を用いた一方向性導波路,周波数次元も活用した人工次元トポロジカルフォトニクスに関する研究なども進めている.これらの内容の一部について,筑波大学,関西学院大学,京都工芸繊維大学,横浜国立大学,東北大学,電磁材料研究所との共同研究を進めている.

バンドトポロジー制御による弾性波制御

教授 岩本 敏,教授(筑波大) 初貝 安弘
バンドトポロジーの制御による波動制御は,光だけでなく音波や弾性波,機械振動などにも利用できる.我々の研究室では,バンドトポロジーの概念を活用して固体中を伝搬する弾性波の制御とその応用を目指した研究を進めており,完全フォトニックバンドギャップを有する一次元フォトニック結晶で弾性波のトポロジカル局在状態の実現に初めて成功している.最近では,GHz帯弾性波のオンチップ生成と制御が可能なバレーフォトニック結晶の設計を進めるとともに,その実現を目指し研究を進めている.

フォトニックナノ構造における光のスピン軌道相互作用とその応用

教授 岩本 敏,准教授(慶應義塾大) 太田 泰友
強い光閉じ込めが生じる細線導波路やフォトニック結晶導波路,ナノ共振器などでは,光のスピン軌道相互作用と呼ばれる現象が生じ,局所的な光の偏光状態と光の進行方向や回転方向との相関が生まれる.この効果を用いた光渦やフルポアンカレビームなどのトポロジカル光波を生成するオンチップデバイスや,物質との相互作用も活用した一方向性発光デバイスなどの研究を進めている.

電界制御型量子ドット─フォトニック結晶ナノ共振器融合技術の開発

教授 岩本 敏,助教(電気通信大) 田尻 武義,教授(大阪大) 大岩 顕,准教授(慶應義塾大) 太田 泰友,特任教授(東大) 荒川 泰彦,研究員(ルール大ボーフム) Arrne Ludwig,教授(ルール大ボーフム) Andreas D. Wieck
電子スピン状態と光子の偏光状態は一対一に対応するため,スピンの持つ量子状態と光子の偏光状態の相互変換は,量子情報の転写・転送を可能にする技術として実現が期待されている技術である.電界制御型量子ドットは電子のスピン状態の高度な制御が可能であり,固体量子ビットを実現し得る系の一つである.本研究では,大阪大学との共同研究により,フォトニック結晶ナノ共振器を用いて電界制御型量子ドットと光の相互作用を増強することで,光子からスピンへの高効率変換を実現することを目指している.これまでに電界制御型量子ドットを導入できるフォトニック結晶共振器を初めて実現するとともに,共振器モードに起因する吸収増強効果の実証に成功している.量子状態の転写に必要な縮退型共振器の検討なども進めている.

高品質フォトニックナノ構造の作製技術開発とその応用

特任教授(東大) 荒川 泰彦,准教授(慶應義塾大) 太田 泰友,教授 岩本 敏
フォトニック結晶を中心とするフォトニックナノ構造の作製技術の深化を図るとともに,それを活用した固体共振器量子電気力学の基礎研究や,ナノ共振器レーザや量子光学デバイスへの応用を目指した研究を進めている.特にGaAs系フォトニック結晶ナノ共振器の高Q値化を目指した技術開発を進めており.世界最高品質の量子ドット−フォトニック結晶ナノ共振器強結合系の実現,時間分解発光測定による真空ラビ振動の観測などの成果を挙げている.その他転写プリント法を用いた量子ドット単一光子源のシリコンフォトニクス光回路等への集積化など,集積量子フォトニクスへの展開を目指した研究も推進している.

量子中継応用にむけたダイヤモンドオプトメカニクス系のシミュレーション

准教授 野村 政宏,教授(横浜国立大) 小坂 英男,教授 岩本 敏,特任助教(野村研) Byunggi Kim

Ego4D First-Person Video Collection Project

教授 佐藤 洋一,准教授 菅野 裕介,助教(佐藤(洋)研) 古田 諒佑,大学院学生(佐藤(洋)研) 八木 拓真,大学院学生(佐藤(洋)研) Yifei Huang,修士研究員(佐藤(洋)研) 西保 匠,大学院学生(佐藤(洋)研) Zhenqiang Li
ウェアラブルカメラにより得られる一人称視点映像を用いた人物行動のセンシング・理解技術はFirst-Person VisionやEgocentric Visionと呼ばれ,コンピュータビジョンの分野において近年注目を集めている.本プロジェクトは,First-Person Visionの研究開発に広く資することを目指し,Meta AI Labを幹事機関として世界各国の13大学が連携して大規模な一人称視点映像データセットの構築に取り組むものである.

MaaS時代における安心・安全なモビリティ環境実現に向けた利用状況分析・コンテスト推定基盤

助教(瀬崎研) 西山 勇毅,教授 瀬崎 薫,大学院学生(瀬崎研) 小池 優太郎,大学院学生(瀬崎研) 笠原 有貴,大学院学生(瀬崎研) 鈴木 凌斗,大学院学生(瀬崎研) 唐 奥,大学院学生(瀬崎研) 董 学甫,大学院学生(瀬崎研) 彭 何林訳,大学院学生(瀬崎研) 牛島 秀暢,大学院学生(瀬崎研) 徐 立強,大学院学生(瀬崎研) 小野 翔多,大学院学生(瀬崎研) 大塚 理恵子,大学院学生(瀬崎研) 韓 増易,助教(国立情報学研究所) 青木 俊介

ユーザ参加型センシングとセキュリティ

助教(瀬崎研) 西山 勇毅,教授 瀬崎 薫,大学院学生(東大) 松野 有弥
スマートフォン等の高機能端末を多数の人間が常時携帯している中,従来のように専用の固定センサや,無線センサネットワークによって環境やコンテクストをセンシングするのではなく,これら携帯端末に具備されたセンサを用いて安価かつリアルタイムなセンシングを行う「ユーザ参加型センシング」が注目されている.本年度は,多数のスマートフォンが参加しているときに,センサの観測領域と品質を考慮しながら最適なノードを選択する手法や,センサデータのプライバシ保護手法などを研究した.

モバイル・ウェアラブルデバイスを用いたコンテキスト認識と人・集団の行動変容促進

助教(瀬崎研) 西山 勇毅,教授 瀬崎 薫,大学院学生(瀬崎研) 幡井 晧介,大学院学生(瀬崎研) 韓 増易,大学院学生(瀬崎研) 小野 翔多,大学院学生(瀬崎研) 徐 立強,大学院学生(瀬崎研) 牛島 秀暢,大学院学生(瀬崎研) 董 学甫,大学院学生(瀬崎研) 幡井 皓介,大学院学生(瀬崎研) 下条 和暉,大学院学生(瀬崎研) 鈴木 凌斗,大学院学生(瀬崎研) 笠原 有貴,大学院学生(瀬崎研) 陈 美怡
最新のモバイル・ウェアラブルデバイスには複数のハード・ソフトウェアセンサが搭載されている.本研究では,それら複数センサデータの収集・分析基盤の開発と,機械学習等を用いた人・環境のコンテキスト認識技術の研究・開発を行う.さらに,人々のWell-Being実現に向けた,抽出コンテキストの人・集団への情報還元基盤に関する研究も行う.

Private Information Retrieval Scheme Supporting Multi-dimensional Range Queries

大学院学生(松浦研) 林田 淳一郎,主任研究員(産業技術総合研究所) シュルツ・ヤコブ,研究グループ長(産業技術総合研究所) 花岡 悟一郎,教授 松浦 幹太
Private information retrieval (PIR) allows a client to retrieve data from a database without the database server learning what data is being retrieved. Most of the existing PIR schemes consider searching simple one-dimensional databases and the supported query types are often limited to index queries only, which retrieve a single element from the databases. However, most real-world applications require more complex databases and query types. In this study, we build upon the notion of query indistinguishability by Hayata et al. (ESORICS2020), and formalize query indistinguishability for multi-dimensional range queries. We then give a construction of a secure multi-server scheme based on function secret sharing. This is the first instantiation of a PIR scheme supporting multi-dimensional range queries while being capable of hiding the type of query being made and, in the case of multi-dimensional range queries, the number of elements retrieved in each query, when considering a stream of queries.

Signature for Objects: Formalization, Security Definition, and Provably Secure Constructions

大学院学生(松浦研) 林 リウヤ,大学院学生(松浦研) 浅野 泰輝,大学院学生(松浦研) 林田 淳一郎,産業技術総合研究所 松田 隆宏,産業技術総合研究所 山田 翔太,産業技術総合研究所 勝又 秀一,産業技術総合研究所 坂井 祐介,産業技術総合研究所 照屋 唯紀,産業技術総合研究所 シュルツ・ヤコブ,産業技術総合研究所 アッタラパドゥン・ナッタポン,研究グループ長(産業技術総合研究所) 花岡 悟一郎,教授 松浦 幹太,産業技術総合研究所/横浜国立大 松本 勉
Digital signatures cannot be used for non-digital things because they are considered to be used only for digital messages. We suggest a new signature scheme called "Signature for Objects," which can sign real objects. In this scheme, we formalize operating objects. The operation can be divided into two parts. One is to manipulate objects to create new ones, called Command. The other is just to convert objects into digital data, called Sensing. Even if the Sensing operation can return different data when it takes as input the same object, we can independently create a valid signature every time. In this study, we define the security of this scheme and show one simple construction way to satisfy it. Moreover, we prove that it satisfies the security only by assuming that there exists a digital signature scheme satisfying EUF-CMA security.

スクリプト実行環境に対する実行遅延・実行停止を回避する機能の自動付与手法

大学院学生(松浦研) 碓井 利宣,NTTセキュアプラットフォーム研究所 幾世 知範,NTTセキュアプラットフォーム研究所 川古谷 裕平,NTTセキュアプラットフォーム研究所 岩村 誠,教授 松浦 幹太
マルウェアの動的解析を妨げる要因に,不要な命令の繰り返しによる実行の遅延や,例外による実行の停止がある.これらは,機械語形式のマルウェアでは,実行命令や実行状態を監視し,発生箇所を検出してスキップすることで回避できる.しかし,スクリプト形式のマルウェアでは,言語やエンジンごとに,未知のバイトコードの解析や仮想機械の監視の必要が生じるため,実現が困難である. この問題を解決するため,本研究では,スクリプトエンジンに,実行遅延および実行停止を回避する機能を自動付与する手法を提案する.提案手法では,まず仮想機械の解析により,バイトコードの解釈実行の仕組みを明らかにし,実行状態の監視と制御を可能にする.さらに,命令セットアーキテクチャの解析を通して,実行された未知のバイトコードに対しても,コールグラフおよび制御フローグラフを構築可能にする.これらに基づいて,実行遅延や実行停止の発生箇所を検出してスキップする仕組みを,スクリプトエンジンに自動で付与する.実験を通じて,提案手法によって実行の遅延や停止を回避できることを確認した.

ブロックチェーンの安全性を強化し環境負荷を低減する検証証明技術

教授 松浦 幹太,技術専門職員(松浦研) 細井 琢朗
ブロックチェーンのネットワークでは,追記する取引情報の正しさを検証する同じ作業を,多くのノードが様々なフェーズで繰り返し実施する.検証を省略することによって利益を得る確率が高まるため,ノードが検証を省略するインセンティブが生じる.省略を許さない制約を加えると,全体として極めて環境負荷が高くなり,ビットコイン型の実装では欧州の中規模国1国に相当する電力消費にまでなるという試算もあるほどである.本研究では,各取引情報を少なくとも一つのノードが必ず検証し,しかも他のノードが低消費電力でその事実を確認できるメカニズムを提案している.これにより,ブロックチェーンの安全性強化と環境負荷低減を両立することができる.現在,隔離されたノードでの有効性に関して実験的検証に成功し,次の段階の評価を準備している.

ブロックチェーンを応用した暗号資産の匿名性モデル

大学院学生(松浦研) 宮前 剛,教授 松浦 幹太
本研究では,ブロックチェーンを応用した暗号資産の匿名性に関する評価指標の意味と関係を整理した.特に,関連付け困難性 (unlinkability) の評価指標としての汎用性を示した.次に,暗号資産の関連付け困難性をフェアに評価するために,暗号資産の特徴に基づいて四つの関連付け攻撃モデルおよびそれぞれの攻撃モデルに対応する安全性を定義した.最後に,代表的な匿名暗号資産に対して本研究で定義した関連付け攻撃安全性評価を行い,それらの匿名暗号資産の匿名性を比較評価し,いくつかの知見を導出した.

動的に不正署名を生成するデバイスを追跡可能な集約署名とその応用

大学院学生(松浦研) 石井 龍,産業技術総合研究所 照屋 唯紀,産業技術総合研究所 坂井 祐介,産業技術総合研究所 松田 隆宏,研究グループ長(産業技術総合研究所) 花岡 悟一郎,教授 松浦 幹太,産業技術総合研究所/横浜国立大 松本 勉
集約署名は,複数の署名を1 つの署名に集約でき,全体署名長および署名検証時間の短縮という効率性を持つため,センサーネットワークなど多数のユーザやデバイスが署名を送信するシステムでの活用が期待されている.しかし,不正署名を1 つでも含んで集約すると集約署名は不正となり,検証者はどのユーザやデバイスが不正署名を生成したかを特定できない.さらに,上記のセンサーネットワーク等の応用では,多数のデバイスが定期的にデータと署名を送信し,かつ(故障などにより) 不正署名を生成するデバイスが時々刻々と変わることが自然に想定される.本研究では,そのような状況を捉えた追跡可能集約署名のモデルを導入し,その機能的要件と安全性要件の定義を行う.さらに,通常の集約署名とDynamic Traitor Tracing を用いた一般的構成を提案する.また,実応用のパフォーマンス評価を総合的に行う.

深層強化学習によるWebアプリケーションのペネトレーションテストの自動化

大学院学生(松浦研) 久野 朔,教授 松浦 幹太
近年,サイバー攻撃による情報の流出やシステムの改竄などの危険性が問題視されている.これに対抗する方策の一つとして,実際に対象環境に対して疑似的な攻撃を行い,侵入につながり得る脆弱性を発見するペネトレーションテストは非常に有効であるとされる.しかし,これには十分に訓練された人員が必要であり,大きなコストが要求される.この問題を解消するために強化学習・深層学習・深層強化学習などを用いてペネトレーションテストを自動化・効率化する研究が存在している.しかし,実際のペネトレーションテストにおいて利用される脆弱性および複数のツールの情報を直接利用し,なおかつ強化学習・深層強化学習の本領ともいえる状態の遷移をペネトレーションテストに根差した形で取り入れた研究は確認した限りでは存在していない.本研究では,多様な攻撃手法と対象の種類が存在しており,非常に使用頻度の高いwebアプリケーションというカテゴリを対象としたペネトレーションテストの効率化のために深層強化学習を用いて,既存のツールおよびエクスプロイト(exploit)を統合する. 最初に,単純なペネトレーションテスト環境の再現として,著名なwebアプリケーション15種類の現存しているバージョンと公開されているexploitを元に模擬環境を作成し,それぞれのアプリケーションに対し,バージョンに適応するexploitを見つけ出すタスクを設定する.その後,このタスクにPPOアルゴリズムを用いた深層強化学習を適用し,学習を行ったエージェントが正しいexploit を見つけ出せることを示す.次いで,exploitだけではない多数のツールの効力と,状態遷移の概念を導入した模擬環境を作成し,これに対し同様にPPO深層強化学習を行い,より複雑なペネトレーションテストにおける深層強化学習の有効性について検討する.

ポジショニングとナビゲーション

准教授 上條 俊介,大学院学生(上條研) 石 暁瑛,特任研究員(上條研) エッサン ジャワンマーディ
GNSSのNLOSやマルチパスの問題を解決することで,いわゆるurban canyonにおけるポジショニング精度の改善に関する研究を行っている.また,スマートフォンのジャイロ,磁気センサとの融合により,さらなる精度改善が可能となる.GNSSの精度向上は,カーナビにも応用可能で,自動運転におけるレーンポジショニングにとって重要な要素技術となる. Solving the NLOS and multiple paths problem, positioning accuracy in urban canyon can be drastically improved. Fusion of the information from gyro and magnetic sensors in smart phone can improve the positioning accuracy more. Our GNSS technology is applicable to car navigation systems, and it would be a key technology of lane positioning for autonomous driving.

ロケーションサービスとマーケティングの研究

准教授 上條 俊介,大学院学生(上條研) Hettiarachchi Dulmini,大学院学生(上條研) 劉 雪倫,大学院学生(上條研) 于 涵,大学院学生(上條研) 石 暁瑛
スマートフォンを活用してロケーションに応じた情報を提供するサービスの研究を行っている.また,ロケーションサービスのユーザー行動履歴,操作履歴,SNSを活用することでユーザーの関心を推定するための技術の研究を行っている. The system provides information based on the location which is obtained from smartphone. Also the system analyses the history of user location and manipulation of the smartphone to detect user's interests and intentions.

深層学習を活用した複合的研究

准教授 上條 俊介,大学院学生(上條研) 陳 杜煜,大学院学生(上條研) 劉 雪倫,大学院学生(上條研) Withanawasam Jayani,大学院学生(上條研) 林 逸琦,大学院学生(上條研) 盧 倩雯,特任研究員(上條研) エッサン ジャワンマーディ
深層学習を用いて,スポーツ映像理解や漫画画像変換,シーン理解のための認知フレームワークの研究を行っている.また深層学習の自動ネットワーク生成の研究を行っている. Some researches related to Deep Learning are performed such as sport movie understanding, comic drawing transformation, and cognitive framework for scene understanding. Also, a research on DL network synthesis is performed.

自動運転に関する統合的研究

准教授 上條 俊介,大学院学生(上條研) 遠藤 勇樹,大学院学生(上條研) 塩塚 大気,大学院学生(上條研) 井澤 泰輝,大学院学生(上條研) 王 之霖,大学院学生(上條研) 刘 海洋,大学院学生(上條研) トーマス マキネン,大学院学生(上條研) Withanawasam Jayani,特任研究員(上條研) エッサン ジャワンマーディ
レベル3からレベル5を目指して,物体認識,シーン理解,自車位置推定,デジタル地図の研究を統合的に行っている. Researches are performed tightly coupled and inregrated way among the topics of object detection, scene understanding, self-localization, and High Definition Digital Map toward level3-5 automation.

実社会ビッグデータ利活用のためのデータ統合・解析技術の研究開発

教授 豊田 正史,准教授 吉永 直樹,准教授 合田 和生,大学院学生(豊田(正)研) 金 洪善,特任研究員(吉永研) 佐藤 翔悦,大学院学生(豊田(正)研) 石田 展雅
実社会ビッグデータの様々な利活用を図るべく,実社会から生成されるリアルタイムデータを含む異種データを連携利用するための共通的なデータ統合・解析技術として,インタラクティブな大規模情報の可視化技術と大容量データ格納手法を高度に連携させたデータ格納・可視化技術の研究開発を実施する.

Webマイニングに関する研究

教授 豊田 正史,准教授 吉永 直樹,大学院学生(豊田(正)研) 金 洪善,特任研究員(吉永研) 佐藤 翔悦,大学院学生(豊田(正)研) 赤崎 智,大学院学生(吉永研) 根石 将人,大学院学生(豊田(正)研) 張 翔,大学院学生(豊田(正)研) 清水 洸希,大学院学生(豊田(正)研) 久光 祥平,大学院学生(豊田(正)研) 廖 芸謀
Web情報は大規模かつ多様な情報源であり,ネットワーク分析,自然言語処理を用いた多様なアプリケーションのための解析手法の研究開発を行っている.本研究では,ソーシャルネットワークサービス等のWebメディアにおける情報伝搬分析,新固有表現抽出,対話分析,ソーシャルネットワークにおけるA/Bテスト手法など,様々なWebメディア解析手法を提案した.

自然言語処理による,ことばを介した情報の高度利活用

准教授 吉永 直樹,教授 豊田 正史,特任研究員(吉永研) 佐藤 翔悦,大学院学生(豊田(正)研) 赤崎 智,大学院学生(吉永研) 根石 将人,大学院学生(豊田(正)研) 大葉 大輔,大学院学生(豊田(正)研) 土屋 潤一郎,大学院学生(吉永研) 蔦 侑磨,大学院学生(吉永研) 王 子晗,研究実習生(吉永研) 中村 夏子,大学院学生(吉永研) 中村 朝陽,大学院学生(吉永研) 姚 望,大学院学生(吉永研) 京野 長彦,大学院学生(吉永研) ティヤジャーモン ナッタポン,大学院学生(吉永研) 髙﨑 環
ソーシャルメディアとスマートフォンの普及により,誰もがいつでもどこでも情報を発信し共有する時代が訪れている.人々が発信する情報には,これまで記録・公開されることが少なかった個人的な体験や,直接観測することが難しい個人の内面の表出(意見)が含まれ,社会把握や世論分析等への利活用が期待されている.しかしことばで書かれた情報は構造化されておらず,同じ意味内容を記述するのに多様な表現が可能であることから,多くの価値ある情報はテキスト中に「隠れた」状態にある.そこで本研究室では,テキストの内容を理解するための基礎技術や,書かれた情報を実世界と紐付けて構造化する方法論を研究し,その成果を元に文字通り「社会の動きを読む」システムの構築を進めている.

ストレージデバイスの信頼性モデルの構築に関する研究

准教授 合田 和生
磁気ディスクドライブをはじめとするストレージデバイスの信頼性モデルを構築する.

レセプト情報・特定健診等情報データベースを利用した医療需要の把握・整理・予測分析および超高速レセプトビッグデータ解析基盤の整備

准教授 合田 和生,協力研究員(合田研) 佐藤 淳平,特任研究員(合田研) 服部 純子,特任研究員(合田研) 賀好 昭仁,特任研究員(合田研) 山田 浩之
これまで構築してきた高速レセプト・ビッグデータ解析基盤を更に発展させることにより,医療の需要・供給,質,コストが国・地域・医療機関レベルで即座に解析・可視化できる技術を開発する.

動的対故障性を備えたデータベースシステムの構成法に関する研究

准教授 合田 和生,特任助教(合田研) 早水 悠登
問合せ実行時に一部のハードウェアに於いて故障が生じた場合に,それまでの実行結果と新たな実行計画に基づき,当該問合せ実行を継続することを可能とする動的対故障性を備えたデータベースシステムを実現する.

非順序型実行原理に基づく高速データベースエンジンの構成法に関する研究

准教授 合田 和生,特任助教(合田研) 早水 悠登,特任研究員(合田研) 川道 亮治,特任研究員(合田研) 小沢 健史

高機能ストレージシステムの研究

准教授 合田 和生
ストレージシステムに於いて従来の入出力処理に留まらない高水準のデータ管理機能を実行するためのソフトウェア構成法とその有効性を明らかにする.

健康・医療情報等ビッグデータのための解析基盤の開発と当該基盤を用いた調査分析

准教授 合田 和生
多種多様な医療ビッグデータを集約し解析可能とするデータプラットフォームを開発する.

知的反射板制御アルゴリズムの開発

准教授 杉浦 慎哉
ミリ波やテラヘルツ波などによるワイヤレス通信では広帯域が利用可能である一方,電波の距離減衰や直進性が高く障害物による遮蔽に弱いため,見通し外通信に不向きであるという欠点がある.反射波の特性を柔軟に制御可能な知的反射板によりこの欠点を克服することが期待されている.本研究では,知的反射板を利用したセキュアなマルチユーザ通信を実現するためのアルゴリズムを提案した.また,反射波のビーム方向と偏波を任意に制御可能なメタサーフェス構成を開発した.

ユーザに開かれたAI設計のためのインタラクティブ機械学習

准教授 菅野 裕介
ユーザが実際に必要とする認識タスクは多種多様であり,事前に学習した認識モデルを適用するだけでは不十分な場合が多い.ユーザ自身が自らの認識タスクを定義・学習し,ユーザに適応したモデルを利用できるようなアプリケーション設計は重要な課題となる.本研究ではこのようなユーザ参加型インタラクティブ機械学習のためのGUI・可視化手法設計,およびアルゴリズム開発を行う.さらに,非専門家向けのワークショップ等の機会を通して,AI技術や機械学習応用研究そのものをより開かれたものにすることを目指す.

未知の環境に適応するためのアピアランスベース視線推定モデル学習

准教授 菅野 裕介
機械学習アプローチに基づくアピアランスベース視線手法には,特殊なデバイスを利用する従来手法とは異なり,通常のカメラ画像のみを用いた推定が可能になるという大きな利点がある.本研究では,学習データに含まれない未知の頭部姿勢に対応するための学習手法やデータ生成手法,ドメイン適応手法の開発を通して,多様な環境下で頑健に動作する視線推定モデル学習手法の確立を目指す.

FrontFlow/X(FFX)の開発

教授 加藤 千幸,みずほリサーチ&テクノロジーズ(株) 山出 吉伸,教授(豊橋技術科学大) 飯田 明由,大学院学生(加藤(千)研) 鍵山 裕輝
Front/Flow/X(FFX)はLattice Boltzmann法(LBM)による汎用LES解析プログラムであり,複雑形状の流れ場に対して計算格子を完全に自動生成できることに加えて,空力音の直接計算も可能なプログラムである.令和3年度は,壁面境界条件を与えるためのインターセクトの計算方法など,前処理のアルゴリズムを抜本的に見直し,それまで数時間掛かっていた前処理時間を数秒間に短縮した.また,衝突モデルとして,SRTに加えてMRTを実装するなど,種々の機能拡張を実施した.さらに,チャネル乱流を対象としたベンチマーク計算を実施し,粒子モデル,格子解像度,およびSGSモデルが計算精度や計算の安定性に与える影響を明らかにした.

FrontFlow/blue(FFB)の開発

教授 加藤 千幸,みずほリサーチ&テクノロジーズ(株) 山出 吉伸,教授(豊橋技術科学大) 飯田 明由,教授(日本大) 鈴木 康方
Front/Flow/blue(FFB)は有限要素法による,汎用LES解析プログラムであり,実行時の計算メッシュの自動分割機能,および,オーバーセット計算機能を具備しており,FFBによって,ターボ機械をはじめとして,種々の工学的な流れ場の大規模なLES解析が可能となっている.令和3年度はスーパーコンピュータ「富岳」による実用計算における通信速度を短縮し,並列化効率を向上させるための調査研究を実施し,通信速度向上のボトルネックを明らかとした.また,圧縮性流れ解析,オーバーセット計算,およびキャビテーション解析に関してアルゴリズムの改良に向けた基礎検討を実施した.

LESのための壁面モデルに関する研究

教授 加藤 千幸
LESは,流れの支配的な渦を解像することで高精度な乱流解析が可能である.工学的に扱われるレイノルズ数を基に具体的に見積もると,自動車で約3兆,水力機械で約500兆,旅客機で約600兆,船舶で約11京の格子数が必要になる.将来の計算機の発展を考慮したとしても,現実的な乱流解析を行うためには壁面モデルなどを導入し,格子数を減少させる工夫が必要である.そこで,本研究では,信頼性のある壁面モデルの提案のための基礎的な知見を得るために,流れの支配的な渦を解像する高精度なLES解析を行い,壁面せん断応力と流れ場から予測した壁面せん断応力の相関を調べた.

WM-LESの実証計算

教授 加藤 千幸,教授(日本大) 鈴木 康方,助手(日本大) 三木 悠也,(一財)日本造船技術センター 美濃部 貴幸,(一財)日本造船技術センター 西川 達雄,みずほリサーチ&テクノロジーズ(株) 山出 吉伸
Wall-Modeled LES(以下,WM-LES)は粘性長さスケールに比例する,乱流境界層の内層は計算せず,壁面摩擦応力をモデル化して与えるLES計算手法であり,境界層の内層まで計算するWall-Resolved LES(以下,WR-LES)と比較すると,必要な計算資源量を1/10から1/1万程度に削減できるため,その実用化に大きな期待が集まっている.本研究では,モデル船型まわりの乱流境界層をWM-LESによって予測し,WR-LESによる予測結果と比較した.その結果,壁面摩擦応力を計算するための参照点を適切に設定することによって,船の摩擦抵抗,圧力抵抗,ならびに,境界層の平均速度分布をWR-LESと同程度の精度で予測できる見通しを得た.

前方ステップまわりの流れと音に関する基礎研究

教授 加藤 千幸,大学院学生(加藤(千)研) 廣瀬 健一,日本大 白須 雄大,教授(日本大) 鈴木 康方,教授(豊橋技術科学大) 飯田 明由
ステップに流入する乱流境界層の厚みとステップ高さの比をパラメータとして,前方ステップまわりの流れと音の調査研究を実施した.この流れは,自動車のAピラーまわりの流れや流れから発生する空力音をモデルしたものであり,風洞実験および数値解析によって,流れと音を調査した.風洞実験では,ステップ後方流れの積分長長さスケールを計測するとともに,ステップ高さと主流速度によって定義される無次元周波数で5以上の周波数帯域の音に,主流速度には依存しないモードが現れることを明らかにした.一方,数値解析ではステップまわりの流れをLESによって解析するとともに,ステップから発生する音をLighthill音源を用いた音響解析によって予測し,周波数の変化に対する音場の指向性を明らかにした.

圧縮性ターボ機械のLES解析

教授 加藤 千幸,大学院学生(加藤(千)研) 塚本 和寛,みずほリサーチ&テクノロジーズ(株) 山出 吉伸
FFBの圧縮性流れ解析ソルバーを用いて,小型ブロアー内部流れのLES計算を実施するとともに,試験モデルを製作し,性能や圧力変動などの,数値計算のための検証データを取得し,計算結果と比較した.その結果,LES計算によって予測されたブロアー性能は実験結果と概ね一致することを確認したが,軸動力および全圧比が過大評価されることが判明した.過大評価の原因は羽根車動翼圧力面に発達する境界層の予測精度が不足していることに起因しているものと推定され,現在,さらにメッシュ解像度を向上させたLES計算を実施している.

小型ファンの性能および騒音試験【柏地区利用研究課題】

教授 加藤 千幸

小型軸流ファンの性能と音の予測

教授 加藤 千幸,大学院学生(加藤(千)研) 及川 智紀,教授(日本大) 鈴木 康方,教授(豊橋技術科学大) 飯田 明由
LES計算と音響計算によって,羽根車外径180 mm,回転数3,000 rpmのボックスファンの性能と音を予測し,負荷騒音試験装置による計測結果と比較した.その結果,適切な格子解像度を設定し,ダイナミックスマゴリンスキーモデルを用いることによって,ファンの性能は定量的に予測できること,また,比較的周波数の低い音に関しては音圧レベルの定量的な予測が可能であることを明らかにした.一方,高周波数の音は実験値を過大評価しており,また,実験値に見られる動翼通過周波数のピーク音は数値計算では再現できなかった.現在,この原因に関して調査している.

細隙部を含んだ遠心ポンプ内部流れのLES解析

教授 加藤 千幸,(株)日立製作所 Romain Prunieres,みずほリサーチ&テクノロジーズ(株) 山出 吉伸,(株)荏原製作所 渡邉 啓悦
WR-LESによって性能試験の代替えができることを実証することを目的として,バランスピストンやウエアリングなどの細隙部流路も含めた,遠心ポンプのLES計算を実施している.これまでの調査研究によって,細隙部流路の計算メッシュのアスペクト比を適切な値に保つことが,LES計算の精度ならびに安定性の確保のために重要であることを明らかにした.現在,改良した計算メッシュを用いたLES計算を実施しており,LES計算によって予測された遠心ポンプの性能は実験結果と概ね一致することを確認したが,軸動力および全揚程が過大評価されることが判明した.過大評価の原因は羽根車動翼圧力面に発達する境界層の予測精度が不足していることに起因していると推定され,現在,さらにメッシュ解像度を向上させたLES計算を実施している.

CFRP製ジェットエンジンファンブレードの開発

教授 吉川 暢宏,大学院学生(吉川(暢)研) 阿部 雅史,大学院学生(吉川(暢)研) 佐原 由香
CFRP製ファンブレードの長期信頼性を確保するためCFRP材料の疲労強度評価手法を開発している.樹脂と炭素繊維を区分するミクロスケールシミュレーションにより,樹脂の局所的応力上昇を的確に評価することで疲労寿命が予測できることを,積層CFRP試験片を用いた疲労試験により確認した.

ミクロスケール強度基準に基づく短繊維熱可塑性CFRP部材の強度評価

教授 吉川 暢宏
短繊維熱可塑CFRP材料の強度評価手法を開発している.ランダムに配置された短炭素繊維の状況を把握するためX線CTにより撮像された画像から内部構造を構築するための画像処理技術を開発した.作成された内部構造の3次元モデルに基づく強度評価手法を樹脂の材料非線形強度モデルを導入して検討した.現実的なマクロ破壊モデルを構築するための統計的強度モデルを検討し,最弱リンクモデルではなく並列モデルで破壊強度が設定できることを確認した.成形時に樹脂に発生する残留応力を評価し,疲労寿命に与える影響を検討した.

機械学習を利用した高圧水素容器の最適設計

教授 吉川 暢宏
設計変数が膨大な炭素繊維強化プラスチック製の高圧水素容器について,最適設計を効率よく探索するための機械学習の活用法を検討している.炭素繊維強化プラスチック層の積層構成や容器の形状を適切にパラメータ表記し,パラメータをランダムに変動させて機械学習用の有限要素モデルデータを生成する.メゾスケール有限要素解析により,個々の設計の破裂圧力を正確に予測して機械学習データに加え,軽量最適設計を探索するアルゴリズムを開発した.

熱可塑複合材料の製造プロセスシミュレーターの研究開発

教授 吉川 暢宏,特任研究員(吉川(暢)研) 小笠原 朋隆
熱可塑炭素繊維強化複合材料の強度信頼性評価を,製造プロセス段階にまで立ち入って的確に評価するためのシミュレーションシステムを開発している.ミクロスケールでの炭素繊維と樹脂の複合システムとしての加工特性をシミュレーション可能なように,樹脂の温度依存非線形材料特性を直接的に導入した.マルチスケール展開によりマクロな加工特性を導出し,実部品の熱可塑プレス成形プロセス中に発生する不整を評価可能にした.ファイバステアリング技術への適用のため,Automated Tape Laying時の温度とひずみ計測結果を用いてバリデーションを行った.

高圧水素用タイプ3繊維強化プラスチック製蓄圧器の疲労寿命評価法の開発

教授 吉川 暢宏,技術専門職員(吉川(暢)研) 針谷 耕太,特任研究員(吉川(暢)研) キム サンウォン
水素社会を支える基盤インフラである水素スタンド用蓄圧器で活用されるタイプ3炭素繊維強化複合容器の最適設計のため,圧力サイクルに対する的確な寿命予測を行うための有限要素解析手法を開発している.フィラメントワィンディングされた炭素繊維強化プラスチックの積層構成を正確にモデル化するためのソフトウエアFrontCOMP_tankを開発した.詳細な有限要素解析によりアルミ合金ライナーの疲労強度予測の枠組みで寿命予測が可能であることを実証した.また自緊処理により発生する圧縮残留応力により延長される圧力サイクル寿命のメカニズムを検討している.

デバイス信頼性評価のための拡張型原子間ポテンシャルの開発

教授 梅野 宜崇
デバイス材料の信頼性評価のための高精度な原子モデリング手法の確立を目的として,電子状態の影響などを考慮し環境非依存性に優れた拡張型原子間ポテンシャルの開発に取り組んでいる.

ポリマー変形および破壊のマルチスケールモデリング

教授 梅野 宜崇
ポリマーの変形・破壊に及ぼす分子構造の影響を明らかにするための粗視化分子動力学モデリング,粘弾性体に特徴的な破壊挙動の解明のための有限要素モデリング法の研究を行っている.

固体結晶の理想強度に関する第一原理および原子モデル解析

教授 梅野 宜崇
材料強度の本質に迫るため,原子間結合の特性が支配する固体結晶の理想強度(理論強度)について密度汎関数理論第一原理計算および原子モデル解析(分子動力学法)による評価を行っている.

材料の原子レベル構造不安定性の研究

教授 梅野 宜崇
特にナノレベルにおける構造不安定現象を本質的に理解することを目的として,原子レベル構造不安定モード解析法を提唱し,様々なナノ構造体の変形・破壊現象の解明に取り組んでいる.

深層学習によるマルチフィジックス原子モデリング法の開発

教授 梅野 宜崇
深層学習を応用した,原子構造の変化による電子状態変化を高速に求めるためのシミュレーション法の開発を行っている.

CT画像からの3次元血管形状自動抽出手法,血管形状編集手法の開発

教授 大島 まり,受託研究員(大島研) 小林 匡治,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹,リサーチフェロー(大島研) 早川 基治,リサーチフェロー(大島研) 庄島 正明,講師(東大) 保科 克行,大学院学生(大島研) 陳 琰
CTのスライス画像を重ねて3次元血管形状を構築する際には,近接血管がくっついて認識してしまうことがあるほか,CT解像度程度の細い血管が分岐することに起因する血管の突起など,セグメンテーション処理において医学的知見に基づいて手動で補正しなければならない.また,動脈瘤が出現する過程を考察するため,動脈瘤を除去した血管形状をセグメンテーション領域に対して手動で編集する必要がある.本研究ではそれらの作業を自動で行うことのできるアルゴリズムの開発を目指す.

Image-Based Simulationにおける脳血管形状の血行力学に与える影響の考察

教授 大島 まり,大学院学生(大島研) 陳 琰,受託研究員(大島研) 小林 匡治,リサーチフェロー(大島研) 庄島 正明,リサーチフェロー(大島研) 高木 清,リサーチフェロー(大島研) 早川 基治,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹
重大な脳血管疾患であるくも膜下出血に対して,その主要因の脳動脈瘤の破裂に関連する手術ガイドライン作成が求められている.そこで,本研究では脳血管の血流を数値シミュレーションし,動脈瘤の発生,破裂のメカニズムの解明を目指している.シミュレーションに用いる3次元血管モデルについて,医用画像から血管抽出および,3次元構築の手法の問題点と解決法を検討する.さらに,モデルの中心線を抽出することにより形状をパラメータ化し,モデルをパラメトリックに変形して血管形状の血行力学に与える影響を考察する.

Willis動脈輪における血管形状のパラメータ化と形状分析

教授 大島 まり,大学院学生(大島研) 陳 琰
血管内の壁面剪断応力(WSS)は,血管内皮細胞に直接作用を及ぼし,血管疾患の発生に関係する血行力的因子である.WSSは,血管形状に大きく影響される.本研究は,61例のMRA画像(Brain Vasculature database, BraVa)と9例のCT画像から抽出した脳部動脈血管スケルトンデータを対象とし,曲率とねじれ率からなる三次元形状パラメータを用いて血管形状の特徴を分析する.また,データ駆動型のアプローチにより,動脈瘤・狭窄症が起こりやすい脳主幹動脈形状の主成分分析を行う.

デジタルホログラフィック計測によるマイクロ混相流動現象の3次元計測

教授 大島 まり,技術専門職員(大島研) 大石 正道
血液診断チップに代表されるマイクロ流体デバイスは,多くの利点から普及が期待されているものの,デバイス内で起きている3次元的で複数の物理現象が重複した流れを定量的に計測する手法が確立されていないことが,実用化に向けた障害となっている.本研究では,対象の3次元情報を2次元のホログラム画像に記録できるデジタルホログラフィック顕微鏡(DHM)を用いて,これらマイクロスケールにおけるマルチフィジックス現象の定量的な計測を目指す.特に,本計測手法を用いて,マイクロ流体デバイスで頻繁に用いられるマイクロ液滴の生成・流動挙動計測を行う.

マイクロ3次元光造形法の開発

教授 大島 まり,技術専門職員(大島研) 大石 正道
本研究では,赤血球のマイクロ挙動解明に向けたモデル実験に用いる,3次元特殊形状マイクロビーズの造形を念頭においた,マイクロ流路内に複雑な3次元形状の構造物を高速造形する手法の開発を目的とする.本手法で作成する赤血球モデルの混相流計測を行うとともに,本手法が持つ高速性,製作精度,生産性,造形できる形状および機能の自由度の高さといったアドバンテージを生かし,マイクロ流体デバイスの開発手法に強力な造形ツールとして提案する.

モデリング及び可視化機能のある統合的血流1D-0Dシミュレーションシステムの開発

教授 大島 まり,受託研究員(大島研) 小林 匡治,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹,リサーチフェロー(大島研) 早川 基治,大学院学生(大島研) 陳 琰
血流1D-0Dシミュレーションは,手術効果予測・評価のために行われる.全身動脈の血流状態を直感的に把握するには,シミュレーション計算に使われる患者固有医療画像データだけでなく,統計データも取り入れて,人体の全身循環網を3次元に構築し,可視化する必要性がある.本研究は,統計データに基づいて全身の主な動脈の3次元モデルを構築し,deformable modelの手法により患者固有形状モデルと連結させて,その上にシミュレーション結果を可視化する.また,仮想手術と想定する,システム上でインタラクティブに血管径を調整し,1D-0Dシミュレーションに使うインプットファイルを作成する機能もモジュールに取り入れる.

上顎骨の後上方移動術前後における鼻呼吸機能の流体解析

教授 大島 まり,研究実習生(大島研) 青柳 美咲
不正咬合や咀嚼機能の改善に顎顔面領域の外科治療が多く行われており,主として咬合関係や顔貌形態を基準に手術計画が作られる.しかし,術後に気道形態が変化することが指摘され,睡眠時無呼吸症候群などの呼吸障害が生じるおそれがある.上顎骨の移動が呼吸に与える影響は大きく機能的評価が必要であるが,上顎骨後上方移動に伴う鼻腔,咽頭部の変化に関する報告は認められない.そこで,医用画像から気道の3次元モデルを構築し,上顎骨後上方移動を伴う顎矯正手術が鼻呼吸機能に与える影響を機能的に明らかにすることを目的に解析を行っている.

下肢動脈の血管ステント挿入時の血流解析

教授 大島 まり,リサーチフェロー(大島研) 早川 基治,大学院学生(大島研) Chen Wang
Unlike the straight model, the curved helix model will occur secondary flow performance at the curved part of the vessel, which will affect the local wall shear stress and oscillatory shear index distribution, to further investigate on how the shape of the curved helix would affect the flow performance inside the targeted artery, we try to design helix models with different combinations of curvature and torsion and simulate cases using Openfoam and compare the results to the reference straight model.

多波長共焦点マイクロPIVによるマイクロ混相流の可視化計測

教授 大島 まり,技術専門職員(大島研) 大石 正道
近年,発展の目覚しいマイクロTASの分野においては,混合や分離,化学反応,運搬といった様々な機能を,微少流体の正確な操作により実現することを目的としている.主なアプリケーションとして,マイクロ液滴を用いたデッドボリュームの少なさによる混合や反応の高速化,生体細胞やDNAを内包しての運搬などが開発されている.これら主な機能を果たすのは液滴や固体粒子が混在する液液混相流もしくは固液混相流である.そのため,マイクロスケールにおける各相の相互作用の解明が重要である.本研究では本研究室で開発された共焦点マイクロPIVの技術を応用し,マイクロ混相流の計測が可能な2波長分離ユニットを組み込んだ.これにより,マイクロ液滴の内部および外部流速の同時計測や,マイクロジャンクションにおけるwater in oil液滴生成機構の計測,マイクロビーズを含む固液混相流の計測を行なっている.

大動脈瘤への形状パラメータの影響

教授 大島 まり,研究実習生(大島研) 中島 嘉春
曲率・捩率を基本とした形状パラメータのWSSへの影響を調べることで動脈瘤形成部位の予測を目指す.

機械学習による代理モデルを用いた脳循環シミュレーションの不確かさ解析

教授 大島 まり,リサーチフェロー(大島研) 早川 基治,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹,大学院学生(大島研) 大囿 勇也
血流シミュレーションによる予測結果の信頼性を評価するには,医用計測データに基づいて設定したモデルパラメータの不確かさが,予測結果に及ぼす影響を定量化する必要がある.そのためには,不確かさ範囲内の異なる条件でシミュレーションを繰り返し,結果の統計量を得る必要があるが,計算規模が必然的に大きくなることから,医療現場での実施が難しいという問題点がある.そこで本研究では,深層学習を活用し,従来の血流シミュレーションと同等な予測を高速で行う代理モデルを作成した.これにより,不確かさ解析をデスクトップPCにて数分で実施可能にした.

粒子法による液滴の滴下挙動再現と定量的評価

教授 大島 まり,技術専門職員(大島研) 大石 正道,リサーチフェロー(大島研) 向井 信彦,研究実習生(大島研) 夏目 拓也
脳動脈瘤の破裂によって引き起こされるクモ膜下出血への予防術式として,海外では液体を用いて瘤内を塞栓する液体塞栓術も用いられており,歪かつ巨大な脳動脈瘤に対応可能であることから今後は有力な術式と期待されている.しかしながら,液体塞栓術は塞栓材が瘤外へ流出して健常な血管も塞栓する危険性があるため,国内では未認可である.我々は,粒子法を用いて液体塞栓術への応用を目的とした塞栓材注入シミュレーションを開発し,物理実験と比較することで精度の検証を行ってきた.しかしながら,これまでのシミュレーションで形成された液滴は物理実験のような滴下の挙動を再現できていなかったため,物理実験との比較による定量的な精度検証はできていなかった.そこで,界面張力モデルとしてポテンシャルモデルを用いることで,シミュレーションでも液滴の滴下挙動を再現し,物理実験との比較により液滴挙動の定量的評価を行った.本手法の適用により,液滴の滴下挙動が再現でき,また,滴下時刻は若干異なるが形成過程は物理実験とほぼ一致していることを確認した.

脳循環の末梢血流を考慮した数理モデルの構築

教授 大島 まり,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹,大学院学生(大島研) 祇園 真志
末梢部の流れを考慮した脳循環のモデルを構築することを目的とし,末梢部の側副血行の影響を調べた.

脳血管モデルが血行動態に与える影響の評価

教授 大島 まり,リサーチフェロー(大島研) 山田 茂樹,大学院学生(大島研) 大囿 勇也
医療計測データに基づく不確かさを含めた血流シミュレーションは,過灌流リスクを非侵襲的に評価することが可能であるが,医療現場での利用には多数の実症例で妥当性を検証することが必要である.本研究ではより多数の症例におけるシミュレーションを実施し,予測精度の検証と向上を図る.

腹部大動脈瘤におけるステントグラフトの3次元形状の経時変化の定量化

教授 大島 まり,受託研究員(大島研) 小林 匡治,教授(東大) 高木 周,大学院学生(東大) 根元 洋光,講師(東大) 保科 克行
腹部大動脈瘤におけるステントグラフトを用いた血管内治療は,開腹手術に比べて患者への負担が小さいため広まっている.一方で,ステントグラフトのマイグレーションに起因した有害事象が発生しており,原因調査や対策が研究されている.本研究は,医用画像から得られたステントグラフトの中心線を抽出し,曲率や捩れ率等の形状パラメータとして定量化することで,ステントグラフトのマイグレーションによる有害事象の予兆を定量的に把握するための手法を開発する.医用画像から得られた中心線は画像ノイズを持つため,ペナルティ項付のスプラインフィッティング手法を適用することで,曲線の特徴を消さない平滑化を行う.

腹部大動脈瘤における薬剤内包ミセル挙動解析

教授 大島 まり,講師(東大) 保科 克行,リサーチフェロー(大島研) 向井 信彦,研究実習生(大島研) 夏目 拓也,大学院学生(東大) 福原 菜摘,大学院学生(大島研) 渕 将徳
腹部大動脈瘤に対する治療法として薬剤投与が有効であると考えられており,その臨床化に向けて薬剤ミセルの滞留メカニズムを明らかにする.

色収差を利用した3次元マイクロ速度場計測法の開発

教授 大島 まり,技術専門職員(大島研) 大石 正道,リサーチフェロー(大島研) 向井 信彦
本研究では,共焦点マイクロPIV(Particle Image Velocimetry:粒子画像流速測定法)の欠点であった3次元計測に向けて,クロマティック(色収差)レンズを利用した,3次元マイクロ速度場計測法の開発を行っている.本手法は面倒なキャリブレーション作業を必要とせず,シンプルな機器構成で実現できるアドバンテージがあり,従来の手法よりも高倍率・高解像な計測が可能である.本手法においては光学設計とともに高精度な画像処理技術と3次元速度算出アルゴリズムの開発が重要な要素である.

血管内皮細胞骨格の三次元画像再構築と骨格配向・密度の定量評価

教授 大島 まり,研究員(大島研) 山本 創太,技術専門職員(大島研) 大石 正道,研究実習生(大島研) 慶田 真弘
画像解析ソフトImageJによりアクチンフィラメントの画像の三次元再構築を行い,密度変化を測定した.また,繊維配向プログラムより骨格配向を測定し,壁面せん断応力の影響による配向の変化を考察した.

SARS-CoV-2タンパク質の電子状態解析

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)の2つのタンパク質の全電子計算を実行した.一つは,RNAが結合するヌクレオカプシドタンパク質のN末端ドメインであり,RNA結合まわりにはArgや酸性アミノ酸残基のGlu,芳香環を持つTyrなどが位置しており複雑な静電場を形成していることが明らかとなった.本研究は,UTokyoGSCプログラムの一環として実施した.もう一つは,ACE2と結合するスパイクタンパク質のACE2結合ドメインであり,この計算結果を用いてACE2との間の相互作用を解析した.

密度汎関数法に基づく第3世代カノニカル分子軌道法とQCLO法の開発

教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
グリッドフリー法とコレスキー分解法を組み合わせて,スパコンで十分な性能を引き出すことができる第3世代法を開発した.今年度は特にコレスキーベクトルのI/Oの改善などを行った.また,QCLO法の新コードを整備した.今年度は特にPipek-Mezey法による局在化軌道の計算方法の改善を行った.

PETase活性中心の電子状態研究

大学院学生(佐藤(文)研) 王 天宇,教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
ポリエチレンテレフタラート(PET)を分解できる酵素PETaseはSerine proteaseの1種であり活性中心はSer-His-Aspである.これら3残基は水素結合が形成されるように空間的に配置されており,Ser側鎖のγ酸素が基質を求核攻撃するとみられる.本研究では,PETaseの基質特異性とPET分解反応機構を解明するために,正準分子軌道計算によるPETaseの活性中心とその周辺タンパク質の電子状態を解析した.

RNAポリメラーゼの電子状態解析

教授(岡山大) 田村 隆,教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
RNAポリメラーゼの効率を上げるためのミューテーション実験の解析のために,RNAP/DNA/mRNA複合体の電子構造計算を実施した.

インターフェロンα2の電子構造研究

大学院学生(佐藤(文)研) 中岡 亮太,教授 佐藤 文俊,助教(佐藤(文)研) 平野 敏行
インターフェロン(IFN)は,ウィルスなどの侵入に対して細胞が分泌するサイトカインである.IFNα2はI型インターフェロンでヒトでIFNα2b変異体が市販されており,天然と活性に有意な差がある.IFNα2とIFNα2bのアミノ酸配列の変異は1か所だけであり(Lys23Arg),電荷に変化はなく,23番目のアミノ酸残基はIFN受容体の結合部位には存在しない.本研究では,変異体による電子状態の変化が遠方にまで及び活性の違いを与えていると仮説を立てIFNα2の作用機序を電子レベルで解析した.

大規模計算機工学

客員教授 小野 謙二
大規模な計算機資源を利用して多数のシミュレーションを行い,それらの複数の計算結果から有用な設計情報を得るキャパシティコンピューティングにおいて,ロバスト設計,最適化,不確かさの定量化などに関する研究を行っている.

センサ情報に基づく熱流動場の状態推定

准教授 長谷川 洋介

塗布乾燥プロセスの予測と制御に関する研究

准教授 長谷川 洋介

熱流体システムにおける形状/トポロジー最適化に関する研究

准教授 長谷川 洋介

生体内血管網リモデリングの数理モデル構築に関する研究

准教授 長谷川 洋介

ITS(高度道路交通システム)に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大,教授 中野 公彦,教授 大口 敬,准教授 鈴木 彰一,准教授 山川 雄司,特任准教授 小野 晋太郎,客員教授 天野 肇,客員教授 鎌田 実,助教(大口研) 鳥海 梓,助教(山川研) 平野 正浩,助教(中野研) 楊 波,特任助教(須田研) 郭 鐘聲,特任助教(須田研) 霜野 慧亮,特任助教(須田研) 林 世彬,特任研究員(須田研) 内村 孝彦,特任研究員(須田研) 梅田 学,特任研究員(須田研) 河野 賢司,特任研究員(大口研) 長谷川 悠

ネットワーク交通シミュレーション技術の高度化

教授 大口 敬,助教(大口研) 鳥海 梓,特任研究員(大口研) 張 嘉華,大学院学生(大口研) 服部 充宏,大学院学生(大口研) カレル ジャナック
ネットワーク交通シミュレーションの開発,周辺技術検討,さらに高度化に継続的に取り組んでいる.交差点周辺,都市レベル,日本全国レベルの様々な空間範囲やシミュレーション記述の粒度の異なるシミュレーションをシームレスに接続するハイブリッドシミュレーション,リアルタイムにセンサやプローブデータと連動させるナウキャストシミュレーション,首都圏3環状道路を対象とした交通施策評価シミュレーションなどを開発している.シミュレーション・パラメータとして,ボトルネック交通容量や自由流速度を設定する必要があるが,これらのパラメータは降雨量や路面状況にも影響を受けることが知られており,交通および気象データを用いたモデル化を進めている.さらに,首都圏3環状道路の効率的な利用を促すための交通マネジメント方策の評価について検討を進めるため,交通需要等の変動特性に関する基礎的な分析を行うとともに,オリ・パラ等の大規模イベント開催時におけるマネジメント施策に関するケーススタディを進めている.

交通・物流・交流・防災拠点としての道の駅の性能照査と多目的最適配置に関する研究開発

准教授 本間 裕大,教授 大口 敬,助教(大口研) 鳥海 梓
本研究では,道の駅が備えるべき拠点の機能を,広域交通・物流ネットワーク,地域交流および災害時の物資備蓄・輸送デポ・活動拠点の側面から,それぞれの機能が有効に発揮されるための施設および配置条件を明らかにするとともに,それらの機能がどれだけ有効に発揮されうるかを定量化する手法を提案する.

交通信号機および交通信号制御に係わる実証的研究【柏地区利用研究課題】

教授 大口 敬,助教(大口研) 鳥海 梓,准教授(東大) 伊藤 昌毅,シニア協力員(大口研) 新倉 聡,大学院学生(大口研) 白畑 健,慶應義塾大 植原 啓介,慶應義塾大 佐藤 雅明,慶應義塾大 渡辺 諒,東京電機大 岩井 将行,東京電機大 安齋 凌介
交通安全上も円滑上も最も重要な平面交差点における交通信号制御について,多角的な研究を推進している.損失時間の実証評価手法の開発,単路部歩行者横断施設による歩行者・車両双方に最適な横断施設運用,左折車と直進車による混用車線によるランダム性の影響評価,信号灯器設置位置による運転挙動への影響分析,さらに最新のセンシング技術および通信技術を用いた自律分散型信号システムの開発などに,柏キャンパス ITS R&R フィールドも活用しながら,実証的に取組んでいる.

自動運転導入にともなう道路交通運用条件に関する研究

教授 大口 敬,助教(大口研) 鳥海 梓,大学院学生(大口研) カラ ジャヤ・バルシニ
自動運転技術の導入初期段階を想定して,高速道路上に自動運転専用車線を設けた場合に必要となる,一般車線への合流区間特性を道路構造や交通流条件などから明らかにするため,一般車両の車頭時間分布特性の道路幾何構造に応じた影響特性を分析している.

「柏の葉地区における自動運転バス実証実験運行事業」に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大,教授 中野 公彦,教授 大口 敬

モビリティ・イノベーション連携に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大,教授 中野 公彦,教授 大口 敬

自動運転による社会・経済インパクトに関する研究 (NEDO SIP)【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大,教授 大口 敬,教授 中野 公彦,准教授 鈴木 彰一,特任研究員(大口研) 長谷川 悠,同志社大 三好 博昭,同志社大 渡辺 昭次
消費者の購入意向調査に基づき,将来,導入されると期待される自動運転技術に応じて,その自動運転車の普及推定モデルと,これを利用した自動運転車の導入・普及により,交通事故低減や,交通渋滞削減とこれに伴うCO2削減がもたらす社会・経済効果評価などに関する研究開発に取組んでいる.

自動運転に係る海外研究機関との共同研究の推進に向けた連携体制の構築 (NEDO SIP)【柏地区利用研究課題】

教授 須田 義大,教授 中野 公彦,教授 大口 敬

車載カメラを用いたカーブミラーに映る危険事象の認識

教授 須田 義大,特任准教授 小野 晋太郎

通信型ITSによる公共交通優先型スマートシティの構築

教授 須田 義大,特任准教授 小野 晋太郎,准教授 鈴木 彰一,リサーチフェロー(須田研) 杉町 敏之

ITS(高度道路交通システム)に関する研究

客員教授 天野 肇
協調型自動運転システムの社会影響評価と受容性醸成

室内音響に関する研究

教授 坂本 慎一,助教(坂本研) 米村 美紀,大学院学生(坂本研) 蔡 行知,大学院学生(坂本研) 萩原 孝彦
ホール・劇場や各種空間の室内音響に関する研究を継続的に行っている.今年度は,NHKホールの改修に際して,改修前の状態におけるインパルス応答の実測調査を行い,残響時間,音圧レベル分布等の音響物理指標の整理を行った.また,ホール形状データを基に,幾何音響解析に基づく音場シミュレーションを行った.鉄道駅の音響改善に関する研究として,実鉄道駅における実測調査,駅試験装置における音響・振動の再現および物理的評価,3次元音場シミュレーションを用いた聴感評価実験を行った.

環境騒音の予測・評価に関する研究

教授 坂本 慎一,助教(坂本研) 米村 美紀,大学院学生(坂本研) Marjorie Takai,大学院学生(坂本研) 福田 大輝,大学院学生(坂本研) 許 文瑞
環境騒音の伝搬予測法および対策法に関する研究を継続的に進めている.今年度は,広域道路交通騒音マップに関する検討を音源特性,伝搬特性の2点に着目して行った.まず音源特性に関しては,近年入手することが容易になってきた広域航空写真のデータを基にして,道路の交通量を推定し,それを基に道路交通騒音の音響出力を推定する手法を検討し,その自動処理化および精度検証を行った.伝搬特性に関しては,建物群内部での騒音伝搬量を推定する手法を実装し,いくつかの現場測定結果との比較により精度検証を行った.道路交通騒音予測計算法に関しては,日本音響学会の技術セミナーや駒場リサーチキャンパス公開等の場において昨年度に引き続き周知・啓蒙活動を行った.

純音性騒音の評価に関する研究

教授 坂本 慎一,助教(坂本研) 米村 美紀
風力発電施設から発せられる騒音や,ヒートポンプ給湯器から発せられる騒音は,機械の回転に起因する純音性の成分が多く含まれ,苦情の原因となっている可能性がある.実験室における聴感評価実験を用いて,純音性騒音の不快感を調べる研究を行っている.本年は,昨年度の基礎的な検討に引き続き,定常騒音に複数の周波数の純音が含まれる騒音を対象としてその「わずらわしさ」に関する主観評価実験の一環として,倍音構造をもつ騒音に対する不快感評価を行った.

音場の数値解析に関する研究

教授 坂本 慎一,助教(坂本研) 米村 美紀,大学院学生(坂本研) 沈 颁泉,大学院学生(坂本研) 福田 大輝,大学院学生(坂本研) 蔡 行知,大学院学生(坂本研) 許 文瑞
各種空間における音響・振動現象を対象とした数値解析手法の開発を目的として,有限要素法,境界要素法,差分法等に関する研究を進めている.今年度は,都市環境騒音の評価において活用が期待される環境騒音マップに関連し,幹線道路から建物群に伝搬する騒音レベルの計算方法に関して実測調査結果との比較による精度検証を行った.また,教会建築の室内音響特性について,音場モデリングおよび波動音響解析を行った.NHKホールの改修に際して,改修前の形状データを取得し,インパルス応答の幾何音響解析を行った.

音響計測法に関する研究

教授 坂本 慎一,助教(坂本研) 米村 美紀,大学院学生(坂本研) Marjorie Takai,大学院学生(坂本研) 福田 大輝
室内外の音響伝搬特性,室間遮音特性,音響材料音反射・吸音特性を精度よく計測する手法,屋外騒音の効率的測定方法について研究を行っている.今年度は,道路交通騒音の測定評価に関する研究として,自動車の走行騒音パワーレベルの測定の自動化に関する研究を昨年度に引き続き行った.

実映像ドライビングシミュレータに関する研究

特任准教授 小野 晋太郎,准教授(愛知県立大) 河中 治樹,教授(愛知県立大) 小栗 宏次

ドライブレコーダからの天候情報推定と急ブレーキ発生予測

教授(九州大) 川崎 洋,准教授(九州大) 峯 恒憲,特任准教授 小野 晋太郎

琵琶湖全循環の環境リスクファイナンス

教授 北澤 大輔,リサーチフェロー(北澤研) 吉田 毅郎,特任研究員(北澤研) 周 金鑫,教授(立教大) 久保 英也,准教授(滋賀大) 菊池 健太郎
気候変動に伴い,琵琶湖では全循環の欠損が懸念されている.将来の気象シナリオの与え方を改善して,琵琶湖での全循環欠損のリスクの予測シミュレーションを行った.

統計的手法による沿岸生態系モデルのパラメータ推定に関する研究

教授 北澤 大輔,特任研究員(北澤研) 周 金鑫,大学院学生(北澤研) 遠藤 和真,准教授(東北大) 藤井 豊展
生態系モデルを社会実装するためには,モデルに含まれる不確かなパラメータを客観的にチューニングする必要がある.そこで,ベイズ最適化を活用したパラメータ推定法を提案し,女川湾の生態系シミュレーションに適用した.

養殖の持続可能性の評価に向けた指標の開発

教授 北澤 大輔,大学院学生(北澤研) 高 紅霞,特任研究員(北澤研) 董 書闖,特任研究員(北澤研) 周 金鑫
国内外の養殖場では,養殖魚からの排泄物や陸域からの栄養塩負荷による環境汚染が頻発している.海域の養殖の環境収容力を判断するため,排泄物と陸域からの負荷を考慮した指標を開発した.

マイクロ2相流の基礎研究

教授 鹿園 直毅
将来のエネルギー問題を解決する上で,エクセルギー損失の小さい低温度差の熱機関であるヒートポンプや蒸気エンジンへの期待は非常に大きい.一方で,競合技術である燃焼式の給湯器やエンジンに比べ大型・高価であることが課題である.極めて細い冷媒流路を用いることで,ヒートポンプや蒸気エンジン用熱交換器の大幅な小型軽量化が実現できるが,本研究では,そのために必要となる超薄液膜二相流の基礎的な現象理解を進めている.具体的には,共焦点レーザー変位計を用いたマイクロチャネル内の薄液膜厚さの測定およびそのモデリング,マイクロチャネルを利用した高性能蒸発器の限界熱流束の研究等を行っている.

固体酸化物形燃料電池(SOFC)の実験および数値シミュレーション

教授 鹿園 直毅
エクセルギー有効利用の重要性から,700~1000度で作動する固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)に注目が集まっている.SOFCは単体での高い発電効率に加え,様々な炭化水素燃料に対応できること,熱機関や内部改質による排熱利用が可能である等,様々なメリットを有する.しかしながら,SOFCの実用化のためにはコストや耐久性といった課題を克服する必要があり,そのためにはシステムとそれを構成するセルや電極の階層的な設計技術を高度化する必要がある.本研究では,SOFCの高信頼性,高効率化に向けて,実験及び数値計算手法を開発し,発電システムから電極レベルに至る広い時空間スケールの現象を予測,制御するための研究を行っている.特に,電極微細構造が発電性能に与える影響に注目し,微細構造を制御したSOFCの性能を実験により計測するとともに,収束イオンビーム走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)を用いた3次元電極微細構造の直接計測,ミクロな実構造における拡散と電気化学反応を連成させた格子ボルツマン法による数値シミュレーションを行っている.

次世代熱機関用要素技術の研究

教授 鹿園 直毅
低温度差で作動するヒートポンプや蒸気エンジンはエクセルギー損失が非常に小さく,将来のエネルギー問題の解決に不可欠な技術である.一方で,競合する燃焼式給湯器等に比べ大型で高価であることが課題であり,従来の延長線上にない画期的な要素技術が求められている.本研究では,基礎的な研究に基づいて,より高性能,高信頼性,小型,安価を実現する新たな機構を提案し実証している.

SiCの溶液成長界面のリアルタイム観察

准教授 吉川 健,助教(東北大) 川西 咲子
高品質SiC結晶の育成へ向け,高温下で合金溶液から成長するSiCの成長界面のリアルタイム観察を行い,界面でのナノオーダーの結晶ステップの動的挙動を観測し,各種欠陥の挙動との相関性を調査する.

SiC溶液成長溶媒の最適化研究

准教授 吉川 健,大学院学生(吉川(健)研) 青木 秀人
高品質SiC結晶の高速溶液成長に用いる溶媒組成の最適化のため,熱力学的検討ならびに界面平滑性評価検討を実施する.

ナノ粒子応用SiCの高速液相エピタキシー

准教授 吉川 健,大学院学生(吉川(健)研) 樫村 知之
ナノ粒子の有するGibbs-Thomson効果を応用し,ナノ粒子分散溶媒からSiCのエピタキシャル層の高速成膜を検討する.

溶融含浸法によるSiC/SiCの製造プロセスに関する研究

准教授 吉川 健,特任研究員(吉川(健)研) 江阪 久雄
軽量・高温動作用構造材料として注目を集めるSiC繊維強化SiC基複合材料の,反応性溶融シリコン含浸による製造法について,その場観察と有限要素法解析により,高効率プロセス開発を行う.

チタンスクラップの新規リサイクルプロセスの開発

教授 岡部 徹,講師 大内 隆成,助教(岡部(徹)研) 上村 源,大学院学生(岡部(徹)研) 赤石 謙太,大学生(岡部(徹)研) Earnest Kota Carr
チタンは,軽量,高強度かつ高い耐腐食性を持つ金属材料として知られ,航空機や化学プラントなどに利用される高機能材料である.本研究では,溶融塩中での熱化学的手法並びに電気化学的手法を用いた脱酸プロセス,および反応媒体塩を利用したチタンスクラップの高速塩化リサイクルプロセスに関する基礎研究を行っている.

チタン製品の革新的高効率製造技術の開発

教授 岡部 徹,講師 大内 隆成,助教(岡部(徹)研) 上村 源,大学院学生(岡部(徹)研) 飯塚 昭博
最先端のチタンの脱酸技術である“極低酸素ポテンシャル(極低pO2)制御技術”をチタン粉末の焼結法に応用し,安価なチタン粉末から高品質なチタン製品を効率良く製造する革新的な手法を開発する.

物理選別を利用した貴金属の高効率回収法の開発

教授 岡部 徹,講師 大内 隆成,リサーチフェロー(岡部(徹)研) 谷ノ内 勇樹,大学院学生(岡部(徹)研) Sukho Kang
経済的価値の高い金属である貴金属(金,銀,白金族金属)は,その鉱石品位が非常に低い.したがって,触媒や電子機器などの各種スクラップから貴金属をリサイクルすることが重要となるが,現時点ではスクラップから貴金属を濃縮する効率の良いプロセスが開発されていない.本研究では,無電解めっきなどの表面処理と磁力選別などの物理選別を組み合わせ,貴金属を低コストかつ高効率で濃縮する新規プロセスの開発を行っている.

貴金属の新規な高効率溶解法の開発

教授 岡部 徹,講師 大内 隆成
自動車排ガスの世界的な規制強化により白金族金属を含む排ガス触媒の需要が急増している.白金族金属を含む貴金属は,原料となる鉱石の品位が非常に低いため,金属生産には大きなコストがかかるだけでなく,地球環境に多大な負荷を与える.このため,触媒などのスクラップから高い収率で貴金属を回収することは重要な課題であるが,現時点では効率の良いプロセスは開発されていない.本研究室では,合金化処理と塩化処理を組み合わせることにより,強力な酸化剤を含まない溶液を用いて貴金属を溶解・回収する環境調和型の新プロセスを開発している.

酸化チタンの直接還元法による金属チタン新規製造技術の開発

教授 岡部 徹,講師 大内 隆成
チタンは,軽量,高強度かつ高い耐腐食性を持つ金属材料として知られる.さらに,チタンは地殻存在率が全元素中9位と資源的には無尽蔵である.しかしながら,従来のチタン製造プロセスは非効率で高コストであるため,金属チタンは高価格である.そのため,チタンの利用は航空機や化学プラントなど高付加価値の特殊な用途に限られる.本研究では,鉱石の主成分である酸化チタンをそのまま原料として,化学熱還元および電気化学還元プロセスを用いて金属チタンを製造する,高効率の金属チタン製造プロセスに関する研究を行っている.

チタン合金の新規リサイクルプロセスの開発

講師 大内 隆成,教授 岡部 徹,助教(岡部(徹)研) 上村 源,大学院学生(岡部(徹)研) 飯塚 昭博,大学院学生(岡部(徹)研) 赤石 謙太
チタン製品の製造過程で多量に発生するスクラップは主に鉄と酸素に汚染されている.鉄はスクラップ管理や表面洗浄により除去可能であるが,チタンやチタン合金のスクラップからスポンジチタン(バージン材料)と同程度の酸素濃度(500 mass ppm 以下)まで酸素を効率的に取り除く実用プロセスが存在していない.本研究では,希土類金属のオキシハライドの生成反応をチタン合金スクラップの脱酸に応用することで,チタン合金スクラップをスポンジチタンより低酸素濃度化してリサイクルする技術を開発している.希土類金属のオキシハライド生成反応,およびチタン合金中に含まれる酸素や鉄,アルミニウム,バナジウムなどの元素の脱酸反応中の挙動を解明することで,500 mass ppm 以下の低酸素濃度のチタン合金を製造可能なプロセスの実現を目標としている.

溶融塩電解を用いる革新的貴金属回収プロセスの開発

講師 大内 隆成,教授 岡部 徹
溶融塩電解技術を用いて,ルテニウム(Ru),ロジウム(Rh),パラジウム(Pd),白金(Pt)といった白金族金属(Platinum group metals, PGMs)を含むスクラップの高効率リサイクルを可能とする,新規プロセスを開発する.

エントロピー駆動型水素結合による高分子材料の強靭化機構の解明

教授 吉江 尚子,助教(吉江研) 中川 慎太郎,大学院学生(吉江研) Jun Xia,大学院学生(吉江研) 石坂 祥吾,研究実習生(吉江研) 田島 怜奈
共有結合よりも弱い可逆的な動的結合により,高分子材料を強靭化することができる.我々は最近,柔軟かつ三次元的な構造をもつ水素結合性基が,材料の靭性および自己修復性などの動的性質を向上させることを見出し,これをエントロピー駆動型水素結合と名付けた.本研究では,このエントロピー駆動型水素結合の特性を調査し,材料の靭性などの特性向上のメカニズムの解明を目指す.計算化学と実材料の物性測定により,エントロピー駆動型水素結合の普遍性および高分子鎖のダイナミクスに及ぼす効果を明らかにしている.

マルチロック型生分解性ポリマーの開発

教授 吉江 尚子,助教(吉江研) 中川 慎太郎,大学院学生(吉江研) Olivier Doat
海洋プラスチック問題等のポリマー材料に関わる環境問題の解決のために,使用時には分解せず優れた力学特性を発揮し,かつ廃棄後には迅速に分解するポリマー材料が求められている.本研究では,刺激応答性の動的結合を利用して,複数の外部刺激が重なったときにのみ迅速に生分解するマルチロック型生分解性ポリマーの開発を目指している.

動的結合の制御配置による高分子材料の強靭化

教授 吉江 尚子,助教(吉江研) 中川 慎太郎,大学院学生(吉江研) 石坂 祥吾
可逆的な動的結合を高分子鎖中に組み込むことで,硬さと伸びしろを両立した強靱な高分子材料が得られる.本研究では,我々が最近発見したエントロピー駆動型水素結合性基を高分子鎖中に制御配置することで,高靭性な材料の創製を目指す.水素結合性基の数・配置により,硬軟様々な高靭性材料が得られることを見出した.水素結合性基の様々なスケールでの配置制御により結合強度や相分離構造を変化させ,それらと巨視的な力学特性の相関解明を行っている.

生体を模倣した折りたたみ構造の導入によるポリマーの力学特性強化

教授 吉江 尚子,助教(吉江研) 中川 慎太郎,大学院学生(吉江研) 兼村 夏姫
産業上重要な材料である架橋ポリマーでは,一般に高い弾性率と大きな破断伸びがトレードオフの関係にあるため,それらを両立するためには工夫が必要である.一方,自然界には筋肉などこれらを両立した素材が多い.特に,生物の骨格筋に含まれるチチンというタンパク質は,分子の「局所的な折りたたみ」により高い靭性を発揮する.そこで本研究では,この局所的な折りたたみ構造を単純化した「分子内架橋による折りたたみ」を提案し,その機構が架橋ポリマーの力学特性に及ぼす効果を解明する.

構造制御されたボトルブラシ型高分子網目の合成および物性

助教(吉江研) 中川 慎太郎,教授 吉江 尚子
高分子鎖に多数の高分子鎖が修飾されたボトルブラシ型高分子が近年その特異な構造・物性から注目を集めている.本研究では,構造がよく制御されたボトルブラシ高分子網目を合成する手法の確立,およびそれを用いた構造−物性相関の解明を行っている.

構造均一な高分子網目を用いた動的結合と高分子材料の力学特性の相関解明

助教(吉江研) 中川 慎太郎,教授 吉江 尚子,大学院学生(吉江研) Xin Huang,大学院学生(吉江研) 川崎 将和
共有結合よりも弱く可逆な動的結合は高分子材料の力学特性を向上させるが,動的結合の分子特性と材料の巨視的な力学特性の相関の全貌は明らかになっていない.本研究では,我々が最近開発した構造均一な高分子網目を基盤として,種々の動的結合が力学特性に及ぼす効果の統一的な理解を目指す.

構造均一化による架橋高分子の極限物性への挑戦

助教(吉江研) 中川 慎太郎,教授 吉江 尚子
架橋高分子は一般に様々な構造不均一性を含むため,高分子鎖一本一本が本来持っている力学特性等を活かし切ることができていない.本研究では,架橋高分子の網目構造の均一化により,架橋高分子が到達しうる極限の力学特性への到達を目指す.

ガラス表面への階層性ナノ多孔層の形成とその特性

教授 井上 博之,助手(井上(博)研) 渡辺 康裕,助教(井上(博)研) 木崎 和郎
ガラス表面に酸性あるいは塩基性溶液による処理によって,階層性のナノ構造を持った多孔質層を形成できることが見出された.その表面は,超親水性や低反射率などの優れた特性を示す.様々な組成のガラスで,この表面構造の形成条件を探索するとともに,その形成機構を調べることを目的としている.

無容器浮遊法によるガラスの合成と物性

教授 井上 博之,助手(井上(博)研) 渡辺 康裕,助教(井上(博)研) 木崎 和郎
無容器浮遊法で達成される大過冷却液体状態から,熱力学的に非平衡なガラスを室温まで保持することができる.無容器浮遊法のひとつであるガス浮遊炉を用いて既存の方法では得られない物質の創出,物性の発現を目指している.

Ta-Te系正12角形準結晶の作製

教授 枝川 圭一
2次元層状物質の一種であるTa-Te系正12角形準結晶は,現在のところ唯一の遷移金属−カルコゲン系の準結晶であり,単位層がファンデルワールス力を介して12回軸方向に積層した構造をもつ.この物質は機械的剥離による薄片化が可能で,純粋2次元系準結晶として興味深い研究対象となり得る. しかしながら,試料作製が比較的困難なため,物性測定が可能な単相かつ十分なサイズの試料の作製方法が確立されていない.本研究では物性測定を行うための良質なTa-Te系準結晶を得ることを目的に,焼結法によるTa-Te系準結晶の作製方法を探索している.

トポロジカル絶縁体中転位を利用した新規高性能熱電変換材料の開発

教授 枝川 圭一
近年,エネルギー問題解決のため,高性能熱電変換材料の開発に対する社会的要請は,益々強くなってきている.ここ数年来「トポロジカル絶縁体」とよばれる新しいタイプの物質が物性物理分野で大きな注目を集めている.これはバルク内部では絶縁体であるのに対し,表面が極めて高い伝導度の金属状態となるものである.最近,このような金属状態は表面だけではなく内部の転位に沿っても生じ得ることが理論的に示された.これを使えば熱電変換材料の性能指数(ZT値)を飛躍的に上げることができる可能性がある.本研究は,この理論を世界で初めて実験的に検証し,従来材料の性能をはるかに上回る性能指数ZT=4の熱電変換材料を実現することを目的としている.

準結晶のフォノンーフェイゾン結合

教授 枝川 圭一
準結晶には,その構造秩序の高次元性を反映して,通常の変位(フォノン変位)の自由度の他にフェイゾン変位の自由度が存在する.準結晶の弾性論はそれら両方の自由度を組み入れた形で定式化される.そこで導かれるフォノン−フェイゾン結合弾性については研究例が非常に少ない.以前,我々は近似結晶を用いて結合定数を見積もったが,その値が準結晶でも正しいという保証はなかった.本研究は,準結晶に圧縮応力を負荷してフォノン歪を与え,自発的に導入されるフェイゾン歪を測ることにより,結合弾性定数を評価することを試みた.

準結晶の特異な高温比熱

教授 枝川 圭一
結晶とは異なる特異な秩序構造をもった「準結晶」の比熱が高温域において通常の物質が従うデュロン=プティ則に従わないことが実験的に示されている.この事実が準結晶の高次元性を反映したものであるか否かについては議論が分かれている.我々は,実験・計算の両面から準結晶の特異な高温比熱の起源を解明することをめざしている.

マグネシウム蓄電池用正極活物質の開発

准教授 八木 俊介
マグネシウム蓄電池用正極活物質としてスピネル型酸化物に注目し研究を行った.スピネル型酸化物の構成元素によって電解液の酸化分解反応に対する触媒活性が大きく異なることを発見し,電子状態に注目してそのメカニズムを明らかにした.

二酸化炭素の電解還元のための触媒と電極材料に関する研究

准教授 八木 俊介
二酸化炭素を電気化学的に還元するプロセスに適切な触媒と電極材料の探査のため,二酸化炭素の還元生成物を分析するためのセルの構築と分析手法の確立を進めた.

高活性な酸素の電気化学反応触媒の開発

准教授 八木 俊介
酸素の電気化学反応を促進する触媒として主に酸化物,硫化物に注目し,活性や安定性の起源に関する研究を行った.

二重バイアス印加モード静電引力顕微鏡(DEFM)の開発と表面空乏層容量の可変周波数計測への応用

教授 髙橋 琢二,教授(大阪市立大) 重川 直輝,大学院学生(髙橋研) 福澤 亮太,大学院学生(髙橋研) 小林 大地
可変周波数での表面空乏層容量計測を実現するための二重バイアス印加モード静電引力顕微鏡(DEFM)を提案し,MOS構造やp-n接合,CIGS系化合物半導体材料系等での容量計測を通じて,同手法の有効性に関する実証実験を進めた.

二重バイアス変調を利用した新しい走査トンネル分光法の開発

教授 髙橋 琢二,技術専門職員(髙橋研) 島田 祐二
走査トンネル顕微鏡によるトンネル分光計測において問題となるいくつかの不安定要素を効果的に取り除き,安定した計測を可能とする手法として,二重バイアス変調を用いた微分コンダクタンス分光法を新しく提案するとともに,自己形成InAs量子ドットに対する分光測定を行って,その有効性を確認している.

原子間力顕微鏡(AFM)を用いた光熱分光法の開発と太陽電池材料評価への応用

教授 髙橋 琢二,教授(立命館大) 峯元 高志,大学院学生(髙橋研) 山田 綾果,出光興産 加藤 拓也
原子間力顕微鏡(AFM)による光熱分光計測手法として,断続光励起時の試料熱膨張量を正確に検出できる二重サンプリング法を開発し,その実装実験を行っている.また,同手法を,多結晶SiやCIGS化合物半導体などの太陽電池材料に適用し,結晶粒界などにおける非発光再結合特性の解明に取り組んでいる.

時間分解光照射ケルビンプローブフォース顕微鏡の開発と同手法を用いた太陽電池材料上局所的光起電力特性の評価

教授 髙橋 琢二,教授(立命館大) 峯元 高志,大学院学生(髙橋研) 黒岩 朋恵
光照射下での動作が可能なケルビンプローブフォース顕微鏡に間欠バイアス印加法を導入するとともに,同バイアスパルスと励起光パルスとの時間差をスイープすることによって,光起電力の時間分解計測を行う手法を新たに開発している.また,同手法をCIGS系化合物半導体太陽電池材料に適用し,光励起キャリアのダイナミクスなどを明らかにすることを目指している.

間欠バイアス印加法を用いたケルビンプローブフォース顕微鏡による時間分解表面電位計測手法の開発

教授 髙橋 琢二,大学院学生(髙橋研) 佐藤 捷
間欠バイアス印加法を用いたケルビンプローブフォース顕微鏡(KFM)によって表面電位の時間分解計測を実現する手法を提案し,その実験系を構築するとともに基本性能を実証するための実験を進めている.

静電引力検出モードAFMによる太陽電池材料系の局所的特性の評価

教授 髙橋 琢二,教授(立命館大) 峯元 高志,大学院学生(髙橋研) 福澤 亮太
導電性カンチレバーを用いた静電引力検出モードAFMにより,CIGS系化合物半導体太陽電池材料系での表面電位分布の観測や表面空乏層容量の計測を行い,太陽電池特性劣化の要因となりうる不純物・欠陥準位の影響や,各種材料系に存在する結晶粒や粒界との関連性を明らかにすることを目指している.

エネルギーハーベスト用MEMSデバイス

教授 年吉 洋,教授(静岡大) 橋口 原,共同研究員(鷺宮製作所) 三屋 裕幸,主任研究員(電力中央研究所) 小野 新平
MEMS微細加工や高機能エレクトレットを利用した次世代エネルギーハーベスト(環境発電)用デバイスを研究している.

側壁電極モールドを用いたナノインプリントリソグラフィーの研究

教授 年吉 洋,東芝(株) 李 永芳
10nm級のプローブリソグラフィの実現を目指し,側壁に薄膜電極をつけたモールドを開発した.電極のエッジに対応するナノパターンを局所的な陽極酸化反応でシリコン基板上に描画できることを示した.

オペランド環境走査型プローブ顕微鏡

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
探針や表面の修飾や改変のインプロセス観察を目的とした,環境可変,雰囲気可変走査型プローブ顕微鏡の開発を行なっている.

カラー原子間力顕微鏡の理論考察

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
カラー原子間力の像解釈と理想的探針についての理想的考察

コンタクトモード原子分解能走査型力顕微鏡

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
単原子架橋時に得られる可能性のある接触モード原子分解能撮像の研究.ナノトライボロジー応用と試料観察新手法の実現を目指している.

導電性ポリマーによる吸湿過程の微視的考察

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大,准教授(東北大) 小林 光
導電性ポリマーによる吸湿性を,微小質量計測,顕微鏡観察,微視的粘弾性計測などを用いて明らかにする.社会実装の空調装置としては,東北大学小林光准教授が研究代表者を務めている.

探針のフォーススペクトロスコピー

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大,教授(三重大) 北川 敏一,教授(電気通信大) 佐々木 成朗
分子修飾法,背景力評価等をFIMAFMFIMAFM等で評価.小型の走査型プローブ顕微鏡で,修飾分子を含む気体を還流し表面や探針の修飾の可能なものの研究を行なっている.

生殖細胞の力学的計測

教授 川勝 英樹
配偶子の力学的計測を行うために,力や水中の音に対して感度の高い検出方法を開発している.

空調パイプを用いた除湿・湿度制御に関する研究

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大,准教授(東北大) 小林 光
空調に広く用いられているパイプやダクトを湿度制御のために用いる研究

踏力のリアルタイム計測

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
スポーツにおけるトレーニングや戦略への応用として,IOT技術や通信技術を応用して,多チャンネルの情報取得を構築している.

溶解性マイクロニードル式低侵襲経皮ワクチンデリバリーパッチの新規開発

教授 金 範埈,シニア協力員(金(範)研) 高間 信行,助教(金(範)研) パク チョンホ
生体分解性マイクロニードルのパッチ型無痛ドラッグデリバリーシステムの実用化を目指す.近年の薬剤学・高分子材料工学・マイクロ加工技術のさらなる進歩に伴い,美容分野において既に実用化しているヒアルロン酸やコラーゲンなどのマイクロニードルパッチに関して,新たなマイクロモールド製造技術を開発し,より安価・迅速・安定的な加工プロセスで高機能性パッチの大量生産が実現できるシステムを開発する.一方,インスリンや経皮ワクチンパッチ,ペプチド・タンパク性医薬品を含む難吸収性薬物の経皮パッチ等の開発と臨床実験を進めて,近い将来,医療の現場で既存の注射製剤や経皮吸収製剤と並ぶような,マイクロニードルを用いた革新的ドラッグデリバリーシステムの実現を図る.

生体分解性・多孔質マイクロニードルとペーパーベースの無痛・迅速診断チップの開発

教授 金 範埈,助教(金(範)研) パク チョンホ,特任教授 甲斐 知惠子,特任教授 米田 美佐子
本研究は,“生体分解性多孔質マイクロニードルを用いた医療用パッチ”の新たな応用として,新型コロナウイルス感染症の低侵襲(無痛)自己診断チップの開発に関するものである. 専門的な医療従事者を要しないかつ簡便で迅速な感染症の診断を実現できるため,まず診断対象である血清又は間質液からの無痛かつ適量の抽出が可能な新規マイクロニードルの構造設計及び製作に関する研究.

GaN FET向けデジタルゲートドライバICの開発

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
GaN FETは小型・高効率な電力変換回路を実現するのに適したパワーデバイスであるが,高速スイッチング動作によって生じる電圧・電流のオーバーシュートおよびリンギングが信頼性低下とEMI問題を引き起こす.これらを解決するため,GaN FETに適した高速動作が可能なデジタルゲートドライバICを開発し,スイッチング損失と電圧・電流オーバーシュートを抑制する.

ゲートドライバICによるパワーデバイスの動作状態推定

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
パワーデバイスの動作状態を監視する手法として,従来は温度センサを用いた接合温度測定や電流センサを用いた負荷電流測定などが行われるが,これらのセンサを使った手法はコストやサイズが増大してしまう.本研究では,ゲートドライバの出力電圧からパワーデバイスの動作状態を推定する手法を提案し,ゲートドライバICに集積可能にすることでコストやサイズの低減を実現する.

ゲート電圧波形の機械学習を用いたパワーデバイスの劣化推定

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
パワーデバイスのゲート電圧波形から機械学習を用いて,パワーデバイス故障の一要因であるボンディングワイヤ剥がれを検出する手法を提案する.従来のボンディングワイヤ剥がれ検出手法と比較して検出回路に絶縁の必要がなく,ゲート電圧波形から抽出される2つのパラメータに対し線形回帰アルゴリズムを適用することによって,負荷電流変動と温度変動にロバストなボンディングワイヤ剥がれ検出手法を構築する.

パワーエレクトロニクスにおけるEMI問題を解決するデジタルゲート駆動技術

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
EMI規格を満たしつつスイッチング損失を最小化するデジタルゲート駆動技術を確立し,パワーエレクトロニクスにおけるEMI問題を簡単・迅速・低コストに解決することを目指す.伝導性EMI規格を満たしつつスイッチング損失を最小化するデジタルゲート駆動技術を提案する.また,放射性EMIに対処するために,デジタルゲートドライバICの設計・試作・評価を行う.

パワートランジスタ(IGBT)駆動用の波形制御プログラマブルゲートドライバIC

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
パワーエレクトロニクスとLSIの異分野連携により,パワートランジスタ(IGBT)のゲート駆動電流をデジタルインターフェースで変えられるプログラマブルゲートドライバICを開発した.AIを使った自動最適制御によって,スイッチング時の損失低減とノイズ低減を両立するとともに,動作条件に応じた最適化手法の更なる高度化に取り組んでいる.

並列接続されたパワーデバイスの電流均一化を実現するデジタルゲートドライバIC

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
パワーエレクトロニクス機器において,パワーデバイスの定格を超える大電流を扱う場合,複数のデバイスを並列接続して大電流に対処する.この場合,パワーデバイスの素子ばらつきによって,あるデバイスに電流が集中して信頼性が劣化する恐れがあり,電流を均一化する技術が必要である.本研究では,ゲート波形を制御可能なデジタルゲートドライバICを活用したパワーデバイスの電流均一化技術を提案する.

小型・高効率を実現するハイブリッドDC-DCコンバータの開発

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
従来の電源回路における効率と体積のトレードオフを克服するハイブリッドDC-DCコンバータの研究開発に取り組んでいる.特に,高入力電圧および高降圧比のアプリケーションに着目し,新しい回路トポロジーの提案と回路設計技術の開発に取り組んでいる.

絶縁型ハイブリッドDC-DCコンバータに関する研究開発

教授 高宮 真,助教(高宮研) 畑 勝裕
効率と体積のトレードオフを克服できる非絶縁型ハイブリッドDC-DCコンバータの回路トポロジーを参考にして,絶縁型DC-DCコンバータの同期整流回路に応用するための回路設計技術と新しい回路トポロジーの提案に向けた研究開発に取り組んでいる.

高エネルギー効率のピクセル近傍2次元CNNアクセラレータ

教授 高宮 真
画像認識を高エネルギー効率で行うことを目的として,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)アルゴリズムの本来の特徴である注目ピクセルの近傍に対してのみ畳み込み演算を行う点を利用し,ピクセル近傍に集積されたデジタル回路を用いて外部メモリへのデータ書き込みなしでCNN演算を2次元的に実現する.

Thin-Film Transistor Array Platform for On-chip In-vitro Neuro-cardiac System Study

准教授 ティクシェ アニエス,博士(東大) Anne-Claire Eiler,共同研究員(年吉研) 井樋田 悟史,准教授(The University of Bordeaux) Timothee Levi,特任准教授(東大) 藤生 克仁,准教授 池内 与志穂,教授 年吉 洋,教授 河野 崇
Thin-Film-Transistor technology allows to fabricate substrates with a surface covered with a large and dense array of microelectrode used as sensors. TFT platforms based on this technology are developed for electrophysiology sensing of on-chip in-vitro neuro-cardiac system. Key communication between heart cells, and large-scale cardiovascular and nervous systems is expected to be elucidated in the aim of disease investigation, treatment development and modeling. TFT platforms integrated with FPGA biomimetic device is also under development for further control and analyses of the data.

Thin-Film-Transistor sensor array platform for pancreas cells investigation

准教授 ティクシェ アニエス,教授 年吉 洋,博士(東大) Anne-Claire Eiler,共同研究員(年吉研) 井樋田 悟史,博士(東大) Dongchen Zhu,教授(東大) 酒井 康行,准教授(近畿大) 小森 喜久夫,助教(東大) Mathieu Danoy
Thin-Film-Transistor technology allows to fabricate substrates with the surface covered with a large and dense array of microelectrode used as sensors. In this project these sensors are used for electrophysiology as well as electrochemical sensing of heart cells cultured on the device. The development of this platform offers unique access to versatile lab-on-a-chip devices that integrate many measurement techniques on one chip for the study of cell cultures, tissues, and organoids. In addition, due to its unique features, TFT platform can provide more understanding of the key communication between heart cells, and large-scale cardiovascular and nervous systems, in the aim of disease further investigation, treatment development and modeling. TFT platforms integrated with FPGA biomimetic device is under development for further control and analyses of the data.

3 omega法による超精密熱伝導率測定系の構築

准教授 野村 政宏,国際研究員(野村研) Jalabert Laurent,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

SiGe熱電変換デバイス開発

准教授 野村 政宏,教授(東京都市大) 澤野 憲太郎,大学院学生(野村研) 柳澤 亮人,大学院学生(野村研) 小池 壮太
社会に広く普及する実用的な熱電変換デバイスの実現には,低環境負荷で高効率な熱電変換材料の開発が不可欠である.本研究では,バルク材料でも高い熱電性能を示すSiGeを用いてウェハ型熱電変換デバイス開発を進める.

SiNおよびSiC薄膜における表面フォノンポラリトンによる熱伝導

准教授 野村 政宏,国際研究員(野村研) Sebastian Volz,特任研究員(野村研) Yunhui Wu,特任助教(野村研) Roman Anufriev

SiおよびSiGe薄膜ペルチェ素子を用いた局所冷却

准教授 野村 政宏,教授 金 範埈,国際研究員(野村研) Sebastian Volz,特任助教(野村研) Roman Anufriev,大学院学生(野村研) 柳澤 亮人,大学院学生(野村研) Eldar Sido
本研究室では,シリコン薄膜を用いた熱電変換デバイス開発を進めているが,ゼーベック効果とペルチェ効果が表裏一体であるため,電流を流すことで局所冷却デバイスも実現できる.本研究では,シリコン薄膜にペルチェ素子を形成し,世界最小サイズのペルチェ素子を実現することを目指す.

サーモリフレクタンス法による温度イメージング系の開発

准教授 野村 政宏,特任助教(野村研) Byunggi Kim,大学院学生(野村研) 小河原 陽平

ナノギャップ熱伝導に関する研究

准教授 野村 政宏,大学院学生(野村研) 立川 冴子,国際研究員(野村研) Jalabert Laurent,国際研究員(野村研) Sebastian Volz,国際研究員(野村研) Jose Ordonez-Miranda
物体表面からの熱放射はプランクの法則に従うが,異なる二物体表面が近接すると,プランクの法則を遥かに超える熱伝導が生じる.本研究では,ナノ・マイクロ構造形成技術により,高い熱絶縁性を持ったマイクロ構造中にナノギャップを挟んで向かい合う二平面を形成し,ギャップ幅を変えながら熱輸送の変化を観測する.

ナノスケール熱伝導の物理

准教授 野村 政宏,准教授(東大) 塩見 淳一郎,特任助教(野村研) Roman Anufriev,大学院学生(野村研) 柳澤 亮人,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

ハーフホイスラー合金薄膜を用いた超高性能熱電デバイス開発

准教授 野村 政宏,グループ長((国研)物質・材料研究機構) 森 孝雄,大学院学生(野村研) 小池 壮太,大学院学生(野村研) 柳澤 亮人

フォノニクスによる熱伝導制御

准教授 野村 政宏,国際研究員(野村研) Sebastian Volz,特任助教(野村研) Roman Anufriev
本研究では,周期が数百ナノメートルのシリコンフォノニック結晶ナノ構造を用いて,コヒーレントなフォノン伝導制御による熱伝導制御を目指し,理論・実験の両面から研究を進めている.エアブリッジ状のフォノニック結晶ナノ構造およびナノワイヤー構造を作製し,熱フォノンの波動性に基づいた熱伝導制御に成功している.

フォノニック結晶中の熱フォノン輸送シミュレーションに関する研究

准教授 野村 政宏,特任助教(野村研) Roman Anufriev
フォノンの平均自由行程よりも短い周期のフォノニック結晶中では,弾道的輸送特性およびバンドフォールディング効果により,バルクとは大きく異なるフォノン輸送が起こる.本研究では,モンテ・カルロ法によるフォノン輸送シミュレーションおよび有限要素法を用いた線形弾性論によるフォノンバンド解析を行い,フォノニック結晶中の熱輸送シミュレーションを行う.

フォノンのコヒーレンスを含む熱輸送理論

准教授 野村 政宏,国際協力研究員(野村研) Zhongwei Zhang,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

フォノンの消滅生成過程に関するシミュレーション

准教授 野村 政宏,国際協力研究員(野村研) Zhongwei Zhang,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

フォノン流体力学に基づく熱伝導

准教授 野村 政宏,日本学術振興会特別研究員(野村研) Yangyu Guo,国際研究員(野村研) Sebastian Volz,大学院学生(野村研) Xin Huang,教授 町田 友樹,特任准教授 増渕 覚

半導体薄膜における熱フォノン平均自由行程測定

准教授 野村 政宏,特任助教(野村研) Roman Anufriev,国際研究員(野村研) Jose Ordonez-Miranda,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

平面型熱電変換デバイスの開発

准教授 野村 政宏,教授(フライブルク大) Oliver Paul,グループ長((国研)物質・材料研究機構) 森 孝雄,大学院学生(野村研) 柳澤 亮人,大学院学生(野村研) 小池 壮太,大学院学生(野村研) 縄江 朋季
社会に広く普及する実用的な熱電変換デバイスの実現には,低環境負荷で高効率な熱電変換材料の開発が不可欠である.本研究では,シリコンにナノ加工を行うことで,材料の電気伝導率を保ちつつ,熱伝導率を低減することで性能を飛躍的に高めることを目指している.本研究は,フライブルク大学(ドイツ)と共同で研究を進めており,マイクロマシン技術に基づいたオンチップ熱電変換能測定技術を用いて,様々な材料や構造の熱電特性の測定を進めている.

熱放射スペクトル制御による放射冷却構造開発

准教授 野村 政宏,特任研究員(野村研) Yunhui Wu,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

量子中継応用にむけたダイヤモンドオプトメカニクス系のシミュレーション

准教授 野村 政宏,教授(横浜国立大) 小坂 英男,教授 岩本 敏,特任助教(野村研) Byunggi Kim

非平衡グリーン関数法を用いた熱伝導率シミュレーション

准教授 野村 政宏,日本学術振興会特別研究員(野村研) Yangyu Guo,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業「反射波を活用した油圧シリンダ鉛直配置式波力発電装置(平塚波力発電所)の海域実証」 (環境省事業)

教授 林 昌奎
世界に先駆けて実用化のベースとなる新型波力発電装置「反射波を活用した油圧シリンダ鉛直配置式波力発電装置」を開発する.開発する波力発電装置は,日本初となる系統接続した久慈波力発電所の経験を活かし,大型で軽量な波受板を採用するもので,波高1.5m以上で45kW(発電端出力),変換効率50%,設備利用率35%以上(参考:洋上風力目標30%)を設計目標とする.なお,発電装置の試作機は,1年間の海域実証試験を神奈川県平塚漁港にて実施し,終了後,撤去する(1年間の延長).

マイクロ波レーダを用いた海面観測に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 林 昌奎
マイクロ波パルスドップラーレーダを用いる海面観測システムの開発を行っている.海面から散乱するマイクロ波は,海面付近水粒子の運動特性によって周波数が変化し,海面から散乱するマイクロ波の強度には使用するアンテナの特性が含まれる.その特性を解析することで,海洋波浪の進行方向,波高,周期及び位相,海上風の風速と風向,海面高さの情報を得ることができる.相模湾平塚沖での海面観測を行っている.

再生可能エネルギー開発に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 林 昌奎
波力及び潮流のエネルギーを利用する発電システムの開発を行っている.宮城県・松島湾の浦戸諸島において垂直軸型の潮流発電装置のプロトタイプ(5kW)を,岩手県久慈市において振り子式の波力発電装置のプロトタイプ(43kW)を,神奈川県平塚市において高効率波力発電装置(45kW)を開発し,海域実証試験(試験送電)を実施している.

大型浮体構造物の挙動に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 林 昌奎,教授(日本大) 居駒 知樹,准教授(日本大) 惠藤 浩朗
波浪に起因する浮体式海洋構造物の動揺,弾性変形,波漂流力などを,海洋波浪レーダによるリアルタイム波浪観測技術とエアクッションを用いた浮力制御技術により,制御する方法について研究を行っている.

水槽設備を利用した研究開発【柏地区利用研究課題】

教授 林 昌奎,教授 北澤 大輔,准教授 巻 俊宏,准教授 横田 裕輔
海洋工学水槽及び風路付き造波回流水槽において,海洋環境計測,海洋空間利用,海洋再生可能エネルギー開発,海底資源開発などに必要な要素技術の開発に関連する実験・観測を行っている.

流れ中で回転する水中線状構造物の挙動に関する研究【柏地区利用研究課題】

教授 林 昌奎,教授(日本大) 居駒 知樹,准教授(日本大) 惠藤 浩朗
海洋掘削用ドリルパイプは比較的単純な構造物であるにもかかわらず,作用する流体外力,構造自体の応答特性も一般に非線形である.また,海流など流れを有する海域で作業するドリルパイプには,回転による振動に流れによる振動が加わり,より複雑な応答を示す.これらの問題は,対象となる水深が深くなりパイプが長大になるに従い,強度が相対的に低下したり,水深ごとの流れの流速が変化したりすると,強度設計,安全性確保の観点からより重要になる.

平塚市・東大生研連携協力協定

教授 林 昌奎
この協定は,東京大学 生産技術研究所および平塚市の密接な連携と協力の下,海洋活用技術の研究開発を推進するとともに,新産業創出,人材育成等に寄与することを目的とする.

定置網漁業の自動魚群誘導システム

教授 北澤 大輔,助教(北澤研) 李 僑,大学院学生(北澤研) 古市 大剛,特任研究員(北澤研) 董 書闖,シニア協力員(北澤研) 水上 洋一
定置網漁業において,箱網に入った魚を収穫する作業は揚網作業と呼ばれるが,多くの作業員を必要とし,早朝の危険を伴う作業である.そこで,この作業を自動化するため,可撓性ホースを結合して作成された自動魚群誘導システムの実海域実験を実施した.また,自動魚群誘導システムの挙動を再現するための数値シミュレーションモデルの開発を行った.

潮流・海流発電普及に向けた環境影響評価手法の検討

教授 北澤 大輔,リサーチフェロー(北澤研) 吉田 毅郎,特任研究員(北澤研) 周 金鑫
潮流・海流発電のタービンブレードが海中に設置され,回転すると,海生動物が衝突するリスクがある.縮尺比1/100 のタービンブレード模型を用いて実施した既存の研究をとりまとめ,現在までに得られている知見を整理した.

炭電極を用いた汚水の電気化学的処理技術の開発

教授 北澤 大輔,シニア協力員(北澤研) 岡本 強一
汚水処理技術の一つとして,電気分解が注目されている.電気分解では,一般に金属製の電極が用いられるが,使用中にイオン化し,水生生物に影響を及ぼす可能性があるため,当研究室では炭電極を用いた電気分解による汚水処理技術の開発を行っている.これまでに実施した実験結果を整理して,論文の執筆を進めた.

琵琶湖全循環の環境リスクファイナンス

教授 北澤 大輔,リサーチフェロー(北澤研) 吉田 毅郎,特任研究員(北澤研) 周 金鑫,教授(立教大) 久保 英也,准教授(滋賀大) 菊池 健太郎
気候変動に伴い,琵琶湖では全循環の欠損が懸念されている.将来の気象シナリオの与え方を改善して,琵琶湖での全循環欠損のリスクの予測シミュレーションを行った.

統計的手法による沿岸生態系モデルのパラメータ推定に関する研究

教授 北澤 大輔,特任研究員(北澤研) 周 金鑫,大学院学生(北澤研) 遠藤 和真,准教授(東北大) 藤井 豊展
生態系モデルを社会実装するためには,モデルに含まれる不確かなパラメータを客観的にチューニングする必要がある.そこで,ベイズ最適化を活用したパラメータ推定法を提案し,女川湾の生態系シミュレーションに適用した.

複合養殖による養殖場の環境保全に関する研究

教授 北澤 大輔,リサーチフェロー(北澤研) 吉田 毅郎,特任研究員(北澤研) 周 金鑫
養殖種の排泄物を他の生物に吸収させる複合養殖によって,養殖場の環境を保全する方法について実海域実験を行った.魚類養殖場直下の海底上でナマコを飼育し,成長を把握した.

養殖の持続可能性の評価に向けた指標の開発

教授 北澤 大輔,大学院学生(北澤研) 高 紅霞,特任研究員(北澤研) 董 書闖,特任研究員(北澤研) 周 金鑫
国内外の養殖場では,養殖魚からの排泄物や陸域からの栄養塩負荷による環境汚染が頻発している.海域の養殖の環境収容力を判断するため,排泄物と陸域からの負荷を考慮した指標を開発した.

AUVによる海中遊泳生物の探知追跡手法

准教授 巻 俊宏
ウミガメのような遊泳生物について調査を進めるため,ソーナーと機械学習によって全自動で探知,追跡するためのアルゴリズムを開発する.

自律システムの連携による海中観測手法【柏地区利用研究課題】

准教授 巻 俊宏
AUV(自律型海中ロボット)と海底ステーション,AUV同士など,複数の自律プラットフォームの連携により新たな海中海底探査用システムを提案する.試作海底ステーション,3台のホバリング型AUV(Tri-Dog 1, Tri-TON, Tri-TON 2)等のテストベッドを用いて,水槽試験,海域試験等により研究開発を進めている.

海洋センシングに関する連携研究

准教授 ソーントン ブレア
Underwater sensing is the raw material of how we perceive the ocean. We aim to improve how the ocean can be observed by investigating the interactions of photons in underwater environments, integrating advanced instrumentation on robotic platforms, and combining this with methods for automated data interpretation. Our group collaborates closely with institutes in the UK, Australia and the USA, and participates in international programs to maximise the global impact of our research and ensure our members can conduct research effectively in an international environment.

GNSS-A観測技術に関する研究

准教授 横田 裕輔,地震調査官(海上保安庁海洋情報部) 石川 直史,主任海洋防災調査官(海上保安庁海洋情報部) 渡邉 俊一,海上保安庁海洋情報部 中村 優斗
海底の精密測距技術であるGNSS-Aは,地震学・地質学的な重要性のみならず,将来の巨大地震像の理解による津波災害,強震動災害などの地震に関する複合災害に対する防災工学の基礎的な情報を構築する.このため,政府の地震調査研究推進本部等の調査観測技術の研究推進課題として近年,重要性が高まっている.この技術によって得られる測地学的情報の地震防災工学的利活用,海洋学等への多角的応用,技術の高度化などに関する研究を推進している.具体的には海洋学的な情報を把握する解析技術の開発や,準リアルタイムGNSS観測技術の開発,ゆっくりすべり現象の検知と現象の解釈を実施しており,将来的な基盤観測網構築に向けた基礎技術開発を進めている.

UAVによる海面プラットフォームの研究

准教授 横田 裕輔,講師(明治大) 松田 匠未
高速かつ安価な海洋情報取得においてUAVは新時代を担いうる海面プラットフォームである.この応用範囲と実用化についての研究を行っている.

地球科学データのオープンデータシステム

准教授 横田 裕輔
測地学・地震学・地質学などの固体地球物理学的情報は災害科学に強く関連するため公共性が高く,広く異なる学術分野の研究者が容易にデータにアクセスする環境が必要である.また地球物理学的データは,長期に多くの人員と予算を割いて観測し,成果を管理する必要があるため,観測業務と技術開発・成果に関する研究について,貢献を適切に評価し,安定したシステムを構築する必要がある.このようなオープンデータシステムは医学・薬学・社会学・物理学分野では進展してきており,防災工学・地球科学分野におけるデータシステムの早急な構築を推進している.現在,国際機関等との協力のもと測地学分野の多岐にわたるデータ管理手法の研究を実施している.

海底測位・測量センサーの性能評価に関する研究

准教授 横田 裕輔,海上保安庁海洋情報部 住吉 昌直
海底測量・海底検知・海底資源探査など,現代の海底観測においてマルチビーム測深技術は不可欠なものである.しかしながらマルチビーム測深器には,音響発振部の特性や返信シグナルの解析技術など,複数の領域において不確定性が存在する.これまでの目的精度において問題にならなかった誤差も,AUVによる高密観測・水路における連続観測・高度な学術応用に向けては大きな課題となっている.このような課題を改善するための技術開発・基準構築に向けた研究活動を実施している.

SLR観測システムの開発

准教授 横田 裕輔,教授(一橋大) 大坪 俊通,助教(国立天文台) 荒木 博志,宇宙航空研究開発機構 松本 岳大
海陸地球表面上の位置決定のための測地基準系の構築においてSLR観測は不可欠なものである.この観測技術を代表とするグローバル測地学に関連する観測技術の研究を行っている.

感染症を含む自然災害における地方自治体の危機管理体制・計画に関する研究

大学院学生(沼田研) 西崎 航貴,准教授 沼田 宗純

新型コロナウイルス禍での避難所運営体制の検討

大学院学生(沼田研) 安井 あり紗,准教授 沼田 宗純

メタルデポジションによる大型成形治具の積層造形に関する研究

教授 岡部 洋二,大学院学生(岡部(洋)研) 馬田 啓佑,助教(岡部(洋)研) 齋藤 理,特任助教(東大) Sabrina Ahsan,特任研究員(臼杵研) 薄井 雅俊
航空機の大型複合材料構造部材を成形するための治具を,金属3Dプリンターによって高効率かつ低コストで製造する技術を構築する.

CFRP用工具ベンチマーク

准教授 土屋 健介
CFRP用工具について,市場調査と過去の切削試験の知見に基づいて切削試験の評価基準を提案する.

ロボットシーリング

准教授 土屋 健介
航空機の製造現場において,シーリング作業は高度熟練技能者による手作業で行われている.これをロボットで自動化することを目指し,ハードウェア・ソフトウェアの研究開発を行う.

高難易度部材加工プログラムのアルゴリズム提案

准教授 土屋 健介
航空機製造は,ローコストオペレーションとして工程自動化と労働人口減少への代替化技術が日本のモノづくり力として求められている.従来,エキスパートシステムなど熟練作業者の技能の取り込みや過去のデータベース化で最適切削条件等を見出すなどの取り組みがあるが実績を超えるような成果を得られず,製造現場では未だに最適化の切削条件の決定には熟練者の経験に頼っている.そのため切削難度判定に関する要素を抽出し,最適切削条件を選定する手法の確立を目指す.

半導体量子構造を用いた固体冷却素子の開発

教授 平川 一彦,研究員(LIMMS) BESCOND MARC,東京大学特別研究員(平川研) SALHANI Chloe,大学院学生(平川研) 尾上 俊樹,大学院学生(平川研) 朱 翔宇,特任研究員(平川研) 長井 奈緒美
現代のLSIに代表されるエレクトロニクスの進歩を大きく阻んでいるのが発熱による問題であり,冷却技術は将来のエレクトロニクスの発展の鍵を握る技術と言っても過言ではない.我々は半導体へテロ構造のバンドを適切に設計し,熱電子放出と共鳴トンネル効果を同時に制御して実現できるサーミオニッククーリング技術に注目している.本サーミオニッククーリングにおいては,トンネル障壁を介して量子井戸に低エネルギーの電子が共鳴的に注入され,量子井戸を出るときには低くて厚い障壁を高エネルギーの熱電子が熱的に越えていく過程を用いる素子であり,電流を流すにつれて量子井戸層が冷却されていくデバイスである. 本年度は,(1)素子の動作原理の理解と構造最適化のために,共鳴トンネル効果と熱電子放出効果を組み合わせた解析的な理論を構築し,実験で観測された素子を流れる電流の温度依存性などがよく説明できることがわかった.さらに,その理論を用いて,電子冷却のための構造の最適化の検討を行っている.(2)非平衡グリーン関数法による数値計算により,構造パラメータと電子温度の関係に関する議論を行っている.(3)量子井戸を複数個直列に接合したより高効率な冷却素子構造を提案した.

オペランド環境走査型プローブ顕微鏡

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
探針や表面の修飾や改変のインプロセス観察を目的とした,環境可変,雰囲気可変走査型プローブ顕微鏡の開発を行なっている.

カラー原子間力顕微鏡の理論考察

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
カラー原子間力の像解釈と理想的探針についての理想的考察

コンタクトモード原子分解能走査型力顕微鏡

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
単原子架橋時に得られる可能性のある接触モード原子分解能撮像の研究.ナノトライボロジー応用と試料観察新手法の実現を目指している.

導電性ポリマーによる吸湿過程の微視的考察

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大,准教授(東北大) 小林 光
導電性ポリマーによる吸湿性を,微小質量計測,顕微鏡観察,微視的粘弾性計測などを用いて明らかにする.社会実装の空調装置としては,東北大学小林光准教授が研究代表者を務めている.

探針のフォーススペクトロスコピー

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大,教授(三重大) 北川 敏一,教授(電気通信大) 佐々木 成朗
分子修飾法,背景力評価等をFIMAFMFIMAFM等で評価.小型の走査型プローブ顕微鏡で,修飾分子を含む気体を還流し表面や探針の修飾の可能なものの研究を行なっている.

踏力のリアルタイム計測

教授 川勝 英樹,助教(川勝研) 小林 大
スポーツにおけるトレーニングや戦略への応用として,IOT技術や通信技術を応用して,多チャンネルの情報取得を構築している.

二重バイアス印加モード静電引力顕微鏡(DEFM)の開発と表面空乏層容量の可変周波数計測への応用

教授 髙橋 琢二,教授(大阪市立大) 重川 直輝,大学院学生(髙橋研) 福澤 亮太,大学院学生(髙橋研) 小林 大地
可変周波数での表面空乏層容量計測を実現するための二重バイアス印加モード静電引力顕微鏡(DEFM)を提案し,MOS構造やp-n接合,CIGS系化合物半導体材料系等での容量計測を通じて,同手法の有効性に関する実証実験を進めた.

原子間力顕微鏡(AFM)を用いた光熱分光法の開発と太陽電池材料評価への応用

教授 髙橋 琢二,教授(立命館大) 峯元 高志,大学院学生(髙橋研) 山田 綾果,出光興産 加藤 拓也
原子間力顕微鏡(AFM)による光熱分光計測手法として,断続光励起時の試料熱膨張量を正確に検出できる二重サンプリング法を開発し,その実装実験を行っている.また,同手法を,多結晶SiやCIGS化合物半導体などの太陽電池材料に適用し,結晶粒界などにおける非発光再結合特性の解明に取り組んでいる.

時間分解光照射ケルビンプローブフォース顕微鏡の開発と同手法を用いた太陽電池材料上局所的光起電力特性の評価

教授 髙橋 琢二,教授(立命館大) 峯元 高志,大学院学生(髙橋研) 黒岩 朋恵
光照射下での動作が可能なケルビンプローブフォース顕微鏡に間欠バイアス印加法を導入するとともに,同バイアスパルスと励起光パルスとの時間差をスイープすることによって,光起電力の時間分解計測を行う手法を新たに開発している.また,同手法をCIGS系化合物半導体太陽電池材料に適用し,光励起キャリアのダイナミクスなどを明らかにすることを目指している.

間欠バイアス印加法を用いたケルビンプローブフォース顕微鏡による時間分解表面電位計測手法の開発

教授 髙橋 琢二,大学院学生(髙橋研) 佐藤 捷
間欠バイアス印加法を用いたケルビンプローブフォース顕微鏡(KFM)によって表面電位の時間分解計測を実現する手法を提案し,その実験系を構築するとともに基本性能を実証するための実験を進めている.

静電引力検出モードAFMによる太陽電池材料系の局所的特性の評価

教授 髙橋 琢二,教授(立命館大) 峯元 高志,大学院学生(髙橋研) 福澤 亮太
導電性カンチレバーを用いた静電引力検出モードAFMにより,CIGS系化合物半導体太陽電池材料系での表面電位分布の観測や表面空乏層容量の計測を行い,太陽電池特性劣化の要因となりうる不純物・欠陥準位の影響や,各種材料系に存在する結晶粒や粒界との関連性を明らかにすることを目指している.

3 omega法による超精密熱伝導率測定系の構築

准教授 野村 政宏,国際研究員(野村研) Jalabert Laurent,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

SiNおよびSiC薄膜における表面フォノンポラリトンによる熱伝導

准教授 野村 政宏,国際研究員(野村研) Sebastian Volz,特任研究員(野村研) Yunhui Wu,特任助教(野村研) Roman Anufriev

SiおよびSiGe薄膜ペルチェ素子を用いた局所冷却

准教授 野村 政宏,教授 金 範埈,国際研究員(野村研) Sebastian Volz,特任助教(野村研) Roman Anufriev,大学院学生(野村研) 柳澤 亮人,大学院学生(野村研) Eldar Sido
本研究室では,シリコン薄膜を用いた熱電変換デバイス開発を進めているが,ゼーベック効果とペルチェ効果が表裏一体であるため,電流を流すことで局所冷却デバイスも実現できる.本研究では,シリコン薄膜にペルチェ素子を形成し,世界最小サイズのペルチェ素子を実現することを目指す.

ナノスケール熱伝導の物理

准教授 野村 政宏,准教授(東大) 塩見 淳一郎,特任助教(野村研) Roman Anufriev,大学院学生(野村研) 柳澤 亮人,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

フォノニクスによる熱伝導制御

准教授 野村 政宏,国際研究員(野村研) Sebastian Volz,特任助教(野村研) Roman Anufriev
本研究では,周期が数百ナノメートルのシリコンフォノニック結晶ナノ構造を用いて,コヒーレントなフォノン伝導制御による熱伝導制御を目指し,理論・実験の両面から研究を進めている.エアブリッジ状のフォノニック結晶ナノ構造およびナノワイヤー構造を作製し,熱フォノンの波動性に基づいた熱伝導制御に成功している.

フォノンの消滅生成過程に関するシミュレーション

准教授 野村 政宏,国際協力研究員(野村研) Zhongwei Zhang,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

フォノン流体力学に基づく熱伝導

准教授 野村 政宏,日本学術振興会特別研究員(野村研) Yangyu Guo,国際研究員(野村研) Sebastian Volz,大学院学生(野村研) Xin Huang,教授 町田 友樹,特任准教授 増渕 覚

半導体薄膜における熱フォノン平均自由行程測定

准教授 野村 政宏,特任助教(野村研) Roman Anufriev,国際研究員(野村研) Jose Ordonez-Miranda,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

熱放射スペクトル制御による放射冷却構造開発

准教授 野村 政宏,特任研究員(野村研) Yunhui Wu,国際研究員(野村研) Sebastian Volz

非平衡グリーン関数法を用いた熱伝導率シミュレーション

准教授 野村 政宏,日本学術振興会特別研究員(野村研) Yangyu Guo,国際研究員(野村研) Sebastian Volz