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水の特異性の起源と臨界現象
水の特異性の起源と臨界現象

田中 肇 教授(研究当時、現:名誉教授/シニア協力員)、シー ルイ 特任研究員(研究当時、現:浙江大学准教授)の研究グループは、水が示す、密度、等温圧縮率、比熱、拡散定数、粘度などのさまざまな物理量の異常な温度・圧力依存性を、X線散乱実験データの解析から求めた、液体の水の中に存在する2種類の構造の分率により説明するとともに、第2臨界点の位置を予測することに成功した。「水の特異性は第2臨界点にもたらされる臨界異常性に起因する」という従来の通説を覆し、それが、水素結合により局所的に安定化された正四面体的構造の形成に起因しており、第2臨界点は存在する可能性が高いものの、その影響は実験可能な温度・圧力領域では無視できることを示した。この発見は、長年の未解明問題であった水の特異性の物理的起源を解明したのみならず、第2臨界点の位置を実験データに基づき予測する全く新しい方法を確立した点に意義がある。水は、われわれ人類にとって最も重要な物質であり、本研究成果は、物理・化学にとどまらず、生命科学・地球科学分野に大きく貢献するものと期待される。