年次要覧
第71号 2022年度 I. 概要

3. 令和4年度の主な活動内容

3. 令和4年度の主な活動内容

令和4年度も新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため,感染拡大防止対策が必要ではあったものの,少しずつ対面での活動が戻ってきた年となった.例えば,キャンパス公開は事前登録制により来場者数に制限を設ける必要があったものの,対面とオンラインのハイブリッド形式で実施することができ,対面では2日間で約3,000名の来場者を迎えることができた.また,博士課程学生同士の研究交流・プレゼンテーション能力の育成として実施していた「IIS Ph.D Student Live」も,感染対策を行った上で3年ぶりに開催が可能となった.さらに,令和4年10月には食堂コマニが営業を開始したほか,駒場IIキャンパスにふさわしい食堂として,ダイニングスペースに研究のエッセンスを加えて,サイエンスに関する会話が自然と湧きあがり,創発を促す場を目指す「ダイニングラボ」の活動を開始した.本所の広報室が制作しているクリアファイルを題材とした,本所教員による15分程度のプチトークや,幅広い分野の教員等がリレー形式で講演を行うイブニングセミナーを開催しており,新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって分断された人と人とのつながりを復活させるための拠点として機能している.

研究組織については,令和3年度末まで所内センターとして活動していた持続型エネルギー・材料統合研究センターが,水素化や電化など新たな化学・エネルギー源を最大限利用したマテリアル循環,再生可能エネルギーの利用促進のための新材料・新技術開発,持続型社会を支える新材料・エネルギー技術の社会受容性評価に関する研究に取り組み,高度持続型社会に貢献するための基盤構築を目的とし,令和4年4月に持続型材料エネルギーインテグレーション研究センターという名称で附属研究センターとして改組された.また,サイバー空間と,フィジカル空間の境界空間をInterspaceと呼称し,両空間がスムーズに連携し機能するための学理を構成するとともに,その技術実装の開発拠点を形成し,研究開発を地球規模で牽引することを目的に設置されたインタースペース連携研究センターは,令和4年4月から所内センターであるインタースペース研究センターに組織形態が変更されたほか,資産価値の急激な変動を中心課題とし,複雑系として扱うことのできる社会的な現象における急激な変動の背景にある数学的構造の解明と,そのための産官学の協創推進を行うことを目的とした複雑系社会システム研究センターも所内センターとして設置された.社会連携研究部門としては,実社会から生み出される大規模データの高次解析を可能とする強力なデータプラットフォーム技術を確立すると共に,当該技術を礎として産業界で生み出されるデータの高次解析を実践し,実社会課題の解決につなげることを目指すビッグデータ価値協創プラットフォーム工学社会連携研究部門が令和4年4月に設置された.一方,令和4年11月末に自動運転の車両運動制御寄付研究部門,令和5年3月末にニコンイメージングサイエンス寄付研究部門,建築・都市サイバー・フィジカル・アーキテクチャ学社会連携研究部門,価値創造デザイン推進基盤,光物質ナノ科学研究センター,ソシオグローバル情報工学研究センター,革新的シミュレーション研究センター,先進ものづくりシステム連携研究センターが時限を迎えた.ニコンイメージングサイエンス寄付研究部門は光・精密技術を利用したテーマ創出の研究や最先端の光利用技術・精密技術の魅力を知り,幅広い視野をもつ人材の育成に寄与することを目的に,令和5年4月にニコン 光・精密フロンティア寄付研究部門として活動を行うことになった.価値創造デザイン推進基盤と革新的シミュレーション研究センターは再設置が決定し,令和5年度以降も継続して活動を続けることとなった.

海外との連携の推進としては,令和4年11月にドイツ フラウンホーファー研究機構 生物医学技術研究所と部局間交流協定に調印した.国内における連携の推進については,令和4年7月に理数教育及び探究活動の推進を目的とし,相互の連携と積極推進を図るため,埼玉県教育委員会と連携協力協定を締結したほか,12月には(国研)国立精神・神経医療研究センターと連携・協力の推進に関する協定を締結,令和5年2月には災害対策の推進のため神戸市と協定を締結した.その他,令和4年5月には本所と社会科学研究所が(株)関電工,東芝エネルギーシステムズ(株),アストモスエネルギー(株),(株)日建設計総合研究所と社会連携研究部門設置の契約を締結し,地域の持続性(サステナビリティ),防災性(レジリエンス),環境貢献(カーボンニュートラル)の3つの視点から未来に向けて地域の空間・機能・社会システムを再デザインすることを目的とした「地域力創発デザイン」研究を進めることとなった.

組織の運営に関する事項としては,本所の支援により令和3年9月に設立された(一財)学びのイノベーションプラットフォーム(Platform for Learning Innovation - Japan(PLIJ))におけるSTEAM教育の振興に資する事業を行うため,社会貢献に資するアウトリーチ活動の取り組みを検討することを目的として,STEAM人材育成研究会生研ワーキングループおよび,同ワーキングループにかかる具体的な事業の検討・実施を主に行うSTEAM人材育成研究会生研プロジェクトチームを令和4年5月に設置した.令和4年6月には,女性人事加速5カ年計画を踏まえ,更なるジェンダー平等の推進に向けた検討並びに構成員の多様性を尊重・受容し,強みとして活かす環境の実現について提言し,実行することを目的として,生研ダイバーシティ&インクルージョンタスクフォースを設置した.その他,令和5年1月に研究顧問懇談会を開催し,産学官の様々な立場でご活躍の19名の研究顧問の方々にご参加いただき,「さらなる対話」「多様化の促進」「社会実装の道筋」「未来はいつか」「シーズ・研究重視」「丁寧な教育」など,様々な視点から評価やアドバイスをいただいた.自己点検・評価関連については,教員レビュー制度によって2名のレビューを実施した.