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【報告】第10回海中海底工学フォーラム・ZERO開催(開催日:2023/10/13)

 10月13日(金)、第10回海中海底工学フォーラム・ZERO(https://seasat.iis.u-tokyo.ac.jp/UTforum/UTforumzero10/)が、本学 大気海洋研究所で開催された。本フォーラムは、理学と工学の水面下の接点を探るべく、年に2回、本所(春)と大気海洋研究所(秋)にて、海中海底工学に関する最新の動向を取り上げて開催されている。今回は、約85名の現地参加者に加えて、約133名がオンライン参加した。

 今回のフォーラムでは、大気海洋研究所 道田 豊 教授(フォーラム幹事)が、日本人として初めてユネスコ政府間海洋学委員会IOC(Intergovernmental Oceanographic Commission)議長に選出されたことを記念して、冒頭、IOCの存在意義と今後の展望についてご講演いただいた。本所 巻 俊宏 准教授(同幹事)が道田教授の紹介を行った。そして、フォーラム後に開催した懇談会では、盛大なお祝いを行った。
 
 道田教授の講演に続き、8件の講演が行われた。海洋研究開発機構 宮澤 泰正 上席研究員による「現在の「異常」な黒潮大蛇行と今後の見通しについて」では、記録的な長さで続く現在の黒潮大蛇行の原因についての分析結果を分かりやすく説明いただいた。また、大気海洋研究所 新里 宙也 准教授による世界で最も浅い海に生息するサツマハオリムシのゲノム解析に関するお話は、鹿児島湾で自律型海中ロボット(AUV: Autonomous Underwater Vehicle)を用いて、ハオリムシサイトの海底3Dマッピングを行った実績を有する巻准教授ら多くのエンジニアの関心を引き寄せた。さらに、住み着く生物の行動周期を考慮して生物共生を実現した高知県須崎港における港湾整備、巻研究室が国立極地研究所との共同プロジェクトで開発した南極調査AUV用「MONACA」の棚氷の下での大冒険、日本鯨類研究所がくじらの目視調査のために開発した垂直離着陸型・自律型無人航空機の活躍―日本近海で7群50頭のナガスクジラを発見―、本学発環境移送技術ベンチャー「イノカ」による海洋環境の水槽内での再現技術―時期をコントロールしたサンゴの人口産卵に世界初で成功―など、まさに工学と理学の融合的展開を示す講演が行われた。最後のオンライン講演では、日本を飛び出して、世界で活躍する若手に、現地での仕事・研究や生活、現地からみた日本について等々、率直に語ってもらった。ノルウェーの海事関連会社に出向し、CO₂輸送船の開発に係わる井上 知己 氏は、最先端の海洋産業を生み出すノルウェーの社会・会社の仕組みについて語り、エストニアのタリン工科大学博士課程に留学中の濱松 祐也 氏は、エストニアの大学や研究室の仕組み、またヨーロッパで毎年開催されている最先端の水中ロボットワークショップBTS (Breaking the Surface)への参加経験について語った。世界に飛び出していく若い世代が、次の海中海底工学を担っていくことが予感される頼もしい講演であった。

 次のフォーラムは、2024年4月26日(金)、本所コンベンションホールで開催いたします。皆様のご参加をお待ちしています。                       

(海中観測実装工学研究センター 特任研究員 杉松 治美)

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左から、IOC議長就任記念講演を行う道田教授(幹事)、サツマハオリムシについて熱く語らう新里准教授(左)と巻准教授(右)

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左から、宮澤上席研究員による講演、本所 山縣 広和 研究員による講演

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海外からの講演、井上氏(左上)と濱松氏(右上)と会場からの質疑応答

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