準教科書的書籍:ウォーレン「有機化学第2版」(東京化学同人)本講義で主に扱うのは上巻の2,3,4,7,8,13,14,16章。
(参考:ウォーレン「有機化学」初版では,対応する章は上巻の2,3,4,7,8,11,16,18章となります。)
大きな主題は”酸と塩基”,”立体化学”の2つ。”有機化合物の構造決定”についてもある程度扱う。
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工藤からのメッセージ:
有機化学は他人に教わるものではありません。自分で会得するものです。教科書の読破(できれば原書)と自ら手を動かすこと,これがなによりの勉強法です。
本講義関連の質問はこちらまで(講義期間中でなくとも歓迎します)。
9/25 | 講義開始時点での有機化学の理解度を調査する目的でquizを行った。quizの解答例はこちら(その1,その2)。問題別正答率はこちら。原子論・結合論の簡単な復習に続いて,重要な置換基名と略称についての解説を行った。有機化学における構造決定法についての導入的説明を行った(3章)。説明に用いたpptの写しはこちら(その1("結合"のエネルギー),その2(原子のエネルギー準位),その3(スペクトルによる構造解析の導入))。 |
9/28 | まず,結合エネルギー,結合距離についての説明を一通り行い,その後,有機化学における構造決定法についての説明の続きを行った(3章)。講義で用いたpptの写しはこちら。章末問題(3章)の解答例はこちら。[章末問題には1H NMRの入ったものも含まれています。それらは10/2の講義の後で解いてみてください] |
10/2 | 有機化学における構造決定法について窒素ルールと不飽和度を紹介し,スペクトルからの構造決定の演習を2題行った。問題はこちら。Aは解答として2つの可能性を残していたが,化学データベースSciFinderを検索しスペクトルデータを照合した結果,4員環過酸化物と判明。Bについても推論が正しかったことがスペクトルデータを照合して確かめられた。さらに4章に関する内容を概観した。[今日のスペクトル問題はいきなり難しすぎたと反省しています。ついては慣れてもらうためにもう少し簡単そうな演習問題をここに置くので各自トライしてください。最初の3問は全て分子量73,後ろの5問は全て分子量88です。解答例はこちら。] |
10/5 | 13C NMRとIRを併用するスペクトル解析についてクイズを2題出題した。PPTを用いて,原子価結合法と分子軌道法を併用している現状について説明した。写しはこちら。その後5章の内容に沿って説明し,6章についても簡単に触れた。章末問題の解答例はこちら(5章,6章)。 |
10/12 | 前回の内容に関連するクイズを行った(巻矢印を用いる反応の記述)。その後7章の解説に進んだ。講義で使用したpptの写しはこちら。 |
10/16 | 前回の内容に関連するクイズを行った(共鳴構造の記述。問題はこちら)。7章について解説を進め,有機工業化学について簡単に解説した。8章の解説を少し行った。講義で使用したpptの写しはこちら。7章章末問題の解答例はこちら。 |
10/19 | 8章について解説を進めた。講義で使用したpptの写しはこちら。Superbase, superacidに関するものはこちら。 |
10/23 | 8章の内容に関連して,置換安息香酸のpKaに対する置換基の効果,並びにHammettのσ値について説明した。 |
10/26 | 8章の補足説明として,Hammettのσ値と種々の実験値との相関を示した(用いたpptの写しはこちら)。次に13章のプロトンNMRについて解説した。pptの写しはこちら(含・演習問題)。8章章末問題の解答例はこちら。 |
10/30 |
前回の内容に関連するクイズを行った(スペクトルからの構造推定。Quizの問題はこちら。正解は1がacetoin,
2がp-chlorobenzaldehyde)。あり得ない構造の化合物を解答している例が数名あった。どんなものがあり得ないのかはこちらを参照のこと。 有機化合物の命名法に関して配布資料をもとに説明した。13章の章末問題(抜粋)の解答例はこちら。 ※講義内容に関して”NMRでピークがどのあたりにでそうかということについて,どこまで覚えればいいのか”という質問があり,「基本的な炭化水素と含酸素官能基についてのおおまかな化学シフトは覚えてほしい」と答えました。その観点から13章章末問題でできるようになっていてほしいのは,1の右下の化合物,2,4,5の右端の化合物,そして10の化合物AとBです。(3の問題はJ値の違いにまで踏み込んだadvancedな内容です。)[2の問題の左から2番目の化合物の-CH2-CH2-がtでなくsなのは,「環境が等価なプロトン同士はカップリングしない」という ルールがあるためです。10/26分のpptの写しのファイルの20ページ目 ”スピンースピン結合(カップリング)(5)”で,一番下のp-ジメトキシベンゼンでは, 隣接炭素上にプロトンがあるにも関わらずsになっていますが,これと同じです。同じ理由から,ベンゼンの1H NMRのシグナルは1本線で出ます。 ] |
11/2 | 14章の立体化学について解説した。14章章末問題の解答例はこちら。8番はジアステレオマー8種,うちメソ体は7種。 |
11/6 | 14章立体化学の続きを解説し,次いで,16章立体配座解析について解説した。講義で用いたpptの写しはこちら。16章章末問題の解答例はこちら。 |
11/9 | 16章の立体配座解析について解説した。講義で用いたpptの写しは,「化学研究とNMR」の話がこちら,「Conformation of molecules」の話がこちら。 |
11/13 | 試験を行った。 |
【参考1】副読本 一口に有機反応化学既修と言っても,その理解度には個人差があると思います。基礎の部分で不安がある場合は,拙著「化学はじめの一歩シリーズ4 有機化学」(工藤・渡辺共著,化学同人2500円+税)をお薦めします。 【参考2】有機化学関連の有用なサイト 1) 有機化合物命名法に関して 有機化学 plus on web (PDF, 33 pages)。このサイトは命名以外にもスペクトルの説明(含・演習),小テストなどもあって,初学者にはかなりよい。 http://pub.maruzen.co.jp/book_magazine/yuki_shohan/web/index.html 左のフレームにある 「有機化合物命名法」や「スペクトルによる分子構造の決定法」をクリックします。 (10/30訂正) Wikipedia IUPAC命名法 http://ja.wikipedia.org/wiki/IUPAC%E5%91%BD%E5%90%8D%E6%B3%95 2) 有機化合物のpKa一覧 Bordwell pKa table http://www.chem.wisc.edu/areas/reich/pkatable/index.htm 3) 芳香族化合物などの電子分布(静電ポテンシャル)図 Phil Baran lab’s HP http://www.scripps.edu/baran/heterocycles/ の中から“•Patrick Lam's Electrostatic Potential Maps”を選ぶ 4) 分子軌道計算(主として半経験的分子軌道法) winmoster 無償版(max 30原子)が入手できる http://winmostar.com/jp/ Avogadro(英語) https://avogadro.cc/ 5) 分子モデル表示 rasmol (英語) http://www.bernstein-plus-sons.com/software/rasmol/ 6) 構造式描画 Chemsketch(英語) http://www.acdlabs.com/resources/freeware/chemsketch/ 7) タンパク質構造データベース Protein data bank http://www.rcsb.org/pdb/home/home.do 8) 化学データベース(学内のみ) Scifinder https://scifinder.cas.org/ 詳しくは東大図書館のHPに情報あり http://www.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/manual/SFS/sfw_usreg.html 9) 有機化合物のスペクトルデータベース ただいろいろな化合物のスペクトルを見るだけでも大変勉強になります。 http://sdbs.riodb.aist.go.jp/sdbs/cgi-bin/cre_index.cgi?lang=jp 10) スペクトルによる有機化合物同定の演習 UCLAのサイトですが,英語できなくても大丈夫です。 https://webspectra.chem.ucla.edu/ 上記は一例で,他にもいろいろあります。Web上で検索してみるとよいでしょう。 [番外編](有機)化学にまつわる最新情報など 化学者のつぶやき http://www.chem-station.com/blog/ |