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コロイドの結晶化に溶媒の運動は寄与するか? ~有力仮説を覆し、長年の未解決問題に手がかり~
コロイドの結晶化に溶媒の運動は寄与するか? ~有力仮説を覆し、長年の未解決問題に手がかり~

コロイド(微粒子)系の結晶核形成頻度には、数値シミュレーションと実験の間に十桁にも及ぶ相違が見出されており、その有力な原因として、従来のシミュレーションに「溶媒の流れの効果が取り入れられていないため」という説がありましたが、田中 肇 教授らの研究により、その可能性を明確に否定されました。溶媒の流れを考慮してコロイドの結晶化をシミュレーションすることはこれまで困難でしたが、独自のシミュレーション手法により、溶媒の運動はコロイドのブラウン運動にしか寄与せず、結晶核形成頻度にはほとんど影響しないことを明らかにしました。物質の結晶化は、自然科学、材料科学分野で極めて重要な基本的な物理現象です。本成果は、結晶核形成頻度に関する長年の問題の解決に手がかりを与えるだけでなく、結晶化の定量的理論予測の実現のための有用な指針を与えました。