本学 名誉教授の藤田 隆史 先生が、令和7年秋の叙勲において瑞宝中綬章を受章されました。藤田先生は長年にわたり振動制御工学を専門とされ、免震構造、高層建築物のアクティブ制振システム、精密機器のアクティブ微振動制御システム、スマート構造など、多岐にわたる振動制御技術に関して、先進的かつ実用的な研究開発を推進し、当該分野の研究・教育の発展および産学連携の推進に大きく貢献されました。
特に、免震構造の最重要要素である積層ゴムの研究に1981年から取り組まれ、免震構造の実用化に向けた基礎を築かれました。この業績により、2004年に文部科学大臣賞・科学技術功労者を受賞されています。先生の研究成果に基づく積層ゴムは1986年に初めて実用化され、その後、多くの免震建築物に導入されました。免震構造は1995年の阪神・淡路大震災において有効性が実証され、今日広く普及していることは周知のとおりです。
また、機械系耐震工学の専門家として原子力施設の耐震安全性を検討する多くの委員会に参画され、その活動に対して2007年に経済産業大臣表彰・原子力安全功労者を受賞されています。
さらに、1999年4月以降は日本振動技術協会会長を務められ、現在もその職にあたられています。同協会は、振動技術の社会的重要性にふさわしい信頼性の確保と高度化を目的に、振動技術に携わるメーカーの業界団体として設立され、2014年からは一般社団法人として活動しています。藤田先生は振動技術の社会実装推進に大きな役割を果たしてこられました。
本学においては、産学連携本部長、統括長(産学連携系)、本部統括長(産学連携系)を歴任され、設立間もない産学連携本部の組織や制度の整備に尽力されました。
このたびの藤田先生の叙勲を心よりお慶び申し上げます。先生のご健勝と益々のご活躍を祈念致します。
(機械・生体系部門 教授 中野 公彦)
藤田 隆史 名誉教授のコメント
生研2部(現 機械・生体系部門)に所属した機械工学が専門の小職が地震関連の研究をできたのは、5部(現 人間・社会系部門)、1部(現 基礎系部門)、2部の研究室が組織した耐震構造学研究グループに入れて頂き、同グループの実験施設を使用できたお蔭でした。異分野間の交流が容易な生研の伝統が大いに助けになりました。また、最初の免震研究は、民間企業と共同開発した電算機システム用免震床でした。幸運にもこの免震床は、ある程度の商業的成功を収め、この経験を通して、研究成果が社会で実用されることによって大きい達成感が得られることを知りました。それ以来、2009年3月に定年退職するまでの約30年間、免震・制振・除振技術の先進的開発研究を民間企業と共同で実施し、多くの装置・システムを実用化することができました。これも産学連携を重視する生研の伝統が味方になりました。今後も生研のより良い伝統を生かして、後輩の皆様がますますご活躍されんことを祈念致しております。