10月17日(金)、第14回海中海底工学フォーラム・ZERO(https://seasat.iis.u-tokyo.ac.jp/UTforum/UTforumzero14/)が、本学 大気海洋研究所で開催された。本フォーラムは、理学と工学の水面下の接点を探るべく、年に2回、本所(春)と大気海洋研究所(秋)にて、海中海底工学に関する最新の動向を取り上げて開催されている。今回は、現地参加者117名に対して、オンライン参加者は85名。コロナ後3回目の柏キャンパスでの開催で、ようやく、現地参加がオンライン参加数を上回った。柏まで足を運んでくださった皆さんに感謝したい。
今回は、自律型海中ロボット(AUV: Autonomous Underwater Vehicle)の開発・運用・応用展開に関する講演が4件行われた。最初は、中国の複数AUV運用とネットワーキングに関する講演で、中国科学アカデミーのXU, Wen主席研究員が、北極調査航海からの帰路、船上からオンラインで発表を行った。また、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の中谷 武志 グループリーダー代理は、「深海巡航探査機『うらしま8000』の開発」で、AUV「うらしま」の3,500mから8,000m級深度への大規模改造と実海域での長時間観測航行の遂行について、日本工業大学の山縣 広和 准教授は、「南極AUV『MONACA』の軌跡 -極域探査を目指すAUV技術の進展-」で、AUV「MONACA」の南極での2度目の挑戦で無索での運用成功および極域での運用の困難さと技術的課題について、いであ(株)の高島 創太郎 外洋調査事業本部長は、「自律型無人探査機(AUV)の利用実証事業への参加とその目的」で、ホバリング型AUVを浮体式洋上風力発電施設の水中部点検に用いることで、自動化・効率化を進める実証試験とその結果について紹介した。
理学系の講演も2件行われた。JAMSTECの田村 芳彦 上席研究員は、「トカラ列島の火山について」で、最近のトカラ列島の活発な地震活動について、他の海底火山との比較から要因を探る試みについて、大気海洋研究所の沖野 郷子 教授は、「中央海嶺は呼吸するか -2024年白鳳丸インド洋航海」で、中央海嶺の過去から現在までの海洋地殻断面が連続して見られる長大な海底断層を観測することで、海洋地殻生産の時間変動とその要因を知ろうとする試みについて紹介した。いずれも時間のスケールが大きい話である。
その他にも、深海の洞窟に生息する「生きた化石」を探査するプロジェクト、および久米島における海洋深層水の冷房などへの新たな商業利用と表層海水と温度差を利用した海洋温度差発電への取組に関する講演が行われ、バラエティ豊かなフォーラムとなった。
次のフォーラムは、2026年4月17日(金)、本所 コンベンションホールで開催いたします。皆様のご参加をお待ちしています。
(海中観測実装工学研究センター 特任研究員 杉松 治美)

左から、前半の司会を行う大気海洋研究所 山口 飛鳥 准教授(幹事)、後半の司会を行う本所 巻 俊宏 准教授(幹事)、中谷グループリーダー代理による講演

左から、山縣准教授と沖野教授による講演、賑わう会場