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羽田野 直道 教授、菅野 裕介 准教授が文部科学大臣表彰を受賞

下記の通り本所の2名の教員が令和7年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰を受賞しました。

<科学技術賞 研究部門>
氏名所属・役職業績名
羽田野 直道東京大学 生産技術研究所 教授非エルミート量子力学の研究
<科学技術賞 理解増進部門>
氏名所属・役職業績名
落合 陽一筑波大学デジタルネイチャー開発研究センター センター長、図書館情報メディア系 准教授/(一社)xDiversity 代表理事AI技術の社会実装による身体/認知的多様性の理解増進
遠藤 謙(株)ソニーコンピュータサイエンス研究所 上級研究員/(一社)xDiversity 理事
菅野 裕介東京大学 生産技術研究所 准教授/(一社)xDiversity 理事
本多 達也富士通(株)コンバージングテクノロジー研究所 Ontennaプロジェクトリーダー/(一社)xDiversity 理事

受賞内容と本所の受賞者および受賞コメントは以下の通りです。

<科学技術賞 研究部門>
羽田野 直道 教授
非エルミート量子力学の研究

羽田野 直道 教授.jpg

○研究内容:
 量子力学では主にエルミート演算子が活躍します。固有値が全て実数なのが現実と符合しているからです。私はそれを敢えて非エルミートに拡張した理論を提案しました。そこでは複素数の固有値が大きな物理的役割を果たします。ちょうど実数を複素数に拡張すると計算に便利だったり新しい発見があったりするのと同じです。私が共同研究者David Nelson氏と提案したモデルは今ではHatano-Nelsonモデルと呼ばれ、最も単純かつ非自明な非エルミート量子力学モデルと見なされています。

○受賞コメント:
 このたび評価された業績は、実はほとんど30年前に私が提案した理論です。提案した最初の頃こそ少しちやほやされましたが、その後、長い間、不遇の時期がありました。幸運にも数年前から再評価が始まり、Hatano-Nelsonモデルが漸く非エルミート量子力学の標準的なモデルとして認められるに至りました。最新の成果ではない業績を認めて表彰して頂けたことをとても幸運に感じています。様々な形で応援して頂いた方々に心からお礼申し上げます。

<科学技術賞 科学技術振興部門>
菅野 裕介 准教授
AI技術の社会実装による身体/認知的多様性の理解増進

受賞_菅野裕介先生表彰式.jpg
左から遠藤 上級研究員、菅野 准教授、落合 准教授、本多 プロジェクトリーダー

受賞_菅野裕介.jpg

○研究内容:
 本活動は、多様な身体・認知特性を持つ当事者・研究者・支援者が協働して支援技術を開発し、その過程を公開して改良する仕組みを構築してきました。私たちの研究室では、体験型イベントを通じて、一般の参加者が機械学習システムを直接操作し技術理解を深める試みを行ってきました。このように当事者視点を取り入れた開発プロセスにより、単なる補完ではなく、新たな可能性を拓くイノベーションが生まれ、共生社会の基盤強化に貢献することを目指しています。

○受賞コメント:
 2017年度に採択されたJST CRESTの研究課題として始まった本活動が、このような形でご評価いただけたことを大変光栄に思います。この8年間でAIや情報技術は想像を超える進化を遂げましたが、技術の多様性や包摂性をめぐる議論は、むしろ大規模AI時代においてこそ一層重要であると感じています。本活動を通じて、私自身も多くの学びを得ることができました。多くの時間を共に過ごしてきた仲間である落合さん、遠藤さん、本多さんをはじめ、ご協力くださったすべての皆さまに心より感謝申し上げます。

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