ニュース
ニュース
トピックス
令和5年所長年頭挨拶

2023年頭あいさつ(1200_800).jpg

 新年あけましておめでとうございます。
 三年越しのコロナ禍もようやく収まる兆しが見え、世界は、ポストコロナに向けて動き出しました。しかしながら、ウクライナ危機の先行きは、いまだに見通せません。「前世紀の惨禍」と思っていましたパンデミックや戦争が、21世紀に入ってもなお、これほどまで直接的に私達の生活に影響を及ぼすとは、予想すらできませんでした。
 皆様におかれましても、コロナ禍による行動制限や物価高の影響で大変な一年であったものとお察しいたします。
 一方、カタールにおけるサッカーのワールドカップでの日本の大活躍など、明るい話題もありました。願わくは、今年は一転して、皆様方にとって良い年でありますように願っております。
 今年の干支は「癸卯(みずのとう)」です。癸は古来「これまでの努力が実を結び、勢いよく成長し、飛躍するような年になる」とされています。台湾海峡の緊張など、きな臭いニュースも絶えませんが、今年は「癸卯」にあやかって、失われた30年から脱却して成長に向かう希望の年になるものと期待しております。

 2021年4月に岸 利治 教授から所長を引き継ぎ、すでに所長としての3年の任期の半分以上が経過しました。
 この間、藤井 輝夫 総長のイニシアティブに協力する形で、本所としても、女性教員の増員に取り組み、また、STEAM教育という新たな教育プログラムの推進や関連する組織の立ち上げを行なってまいりました。今後も、藤井総長を鋭意サポートして、本所の改革へ向けての活動を通して全学の発展に貢献できるよう頑張ります。
 
 顧みますと、昨年の年度初めにコロナ禍の規制が緩和され、皆様方の外部での活動が活発になりました。私自身も、昨年は3年ぶりに、生研が主催するニューヨークオフィスのイベントのために二度渡米する機会を得ました。ニューヨークでは、ほとんどの人がマスクをしていなかったことに驚きました。
 本所では、コロナ禍で分断・隔絶された人とのネットワークを少しでも活性化すべく、小倉 賢 教授が弥生会などの組織を活用して、テニス大会や卓球大会を企画・開催してくれました。また、国際・産学連携室や国際交流チームが連携して、ハロウィンイベントを開催し、教職員や学生・研究員が楽しく過ごせる機会を作ってくれました。これからも引き続き、人とのリアルな交流が促進される様々なイベントの活発化を願っております。

 所長就任当初から、重点的に取り組むべき課題は、「若手の教員が大いに成長できる研究・教育環境の整備」、「皆が、幸せに、意義が大きい仕事ができる組織作り」であると述べ、今も、この課題に鋭意取り組んでいます。私自身も若いころには、先輩教職員の方々から、多大な支援をしていただきました。かつて私が受けた御恩の恩返しをするためにも、今は、私が皆様方を支援しなければならないと考えています。

 一方で、研究環境の整備や若手が活躍できる環境づくりに関する一連の取組を行なってきた過程で気になることもあります。それは、全所的な「研究力の低下」です。現時点では、明確な数値として示されることはありませんが、世界的に競争力があり、また、インパクトがある研究に取り組んでいる研究者、とくに若手研究者が少なくなったように思えます。
 これは、以前に比べ、研究に没頭できる時間が減ったためでしょうか。あるいは、論文数や外部研究資金獲得等の見かけの業績主義に引っ張られ、自身の思い入れで突き進むリスクの高い「尖がった研究」が出来なくなったためでしょうか。いずれにしても、本当の意味での良い研究に取り組む若手研究者が増えることを願って止みません。

 本所は、組織としての強い一体感を維持している点、異分野の研究者がコミュニケーションをとって仲良く活動している点が大きな特徴です。若手の研究者にとっては、異分野の先輩から多くのことを学ぶことができる、理想的な環境が整っているものと確信しております。この特徴を生かして、若手が成長して、世界レベルで大活躍する研究者に育ってくれれば、と願っております。
 もっとも、優れた研究者は「育成される」ものではなくて、自ら「成長するもの」です。我々年配者にできることは、その成長を助ける土壌や環境を整えることですが、若手が温室育ちとなれば、世界を相手に競争できる活力のある研究者には育ちません。何事も、「自助」が基本であり、公助・共助はそれを補完する役割を果たすに過ぎないことも強調しておきたいところです。

 東京大学は、日本の教育界・学術界を代表する組織であり、さらに、大学の附置研究所として国内最大級の規模を誇る本所は、世界をリードする研究・教育活動推進の牽引役を果たすべき責務を負っております。
皆様におかれましても、本年も引き続きご支援、ご指導いただきますよう、年頭に当たり改めてお願い申し上げます。

生産技術研究所 所長
岡部 徹

 

月別アーカイブ