東京大学生産技術研究所 物質・環境系部門 工藤研究室 東京大学生産技術研究所 物質・環境系部門 工藤研究室
東京大学生産技術研究所 物質・環境系部門 工藤研究室
Top メンバー 研究機器 講義関連 アクセス リンク
脂環式ポリイミド(〜2012,現在は休止中)

 芳香族ポリイミドは高い耐熱性をもち、古くから航空・宇宙分野での材料として研究されてきました。これに対し、脂環式ポリイミドは、耐熱性は劣るものの、着色性がない、溶剤溶解性がある、誘電率が低いなどの点で芳香族ポリイミドよりも優れており、電子・光機能性材料への応用が有望視されています。当研究室では、イタコン酸誘導体から3段階の反応で容易に得られるスピロ脂環式二酸無水物DAnを用いたポリイミドの合成とその機能材料への展開を行なっています。
 
DAnが脂環式で誘電率が低いことに着目し,さらに多孔性にすることで有機エレクトロニクスの分野で必要とされる低誘電率膜を作製しました。

Full-size image (19 K)

両親媒性交互共重合ポリイミド・ポリアミド酸の合成と水中での会合挙動 (Chem. Lett., 2010, 39, 1106 & 1285. )

DAnの反応性を利用して両親媒性の交互共重合ポリアミド酸,ポリイミドを合成し,水中での分子会合体の形成に関してそれらとランダム共重合体とで有意な差があることを見出しました。

CL-100633figc

交互共重合ポリイミドのOne-pot合成 (Macromol. Rapid Commun., 2006, 27, 1430. [Featured as Back Cover])

二酸無水物DAnの特異な反応性を利用して交互共重合ポリイミドをOne-Potで合成することに成功しました。今後,交互共重合体特有の物性や機能を持つ材料への応用が期待できます。

Thumbnail image of graphical abstract

・光学活性ポリイミド (J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem., 2002, 40, 4038)

二酸無水物DAnはキラリティーを持っています。そこで,不斉合成により光学活性なDAnを得,それを用いて光学活性脂環式ポリイミドを合成することに成功しました。報告されている不斉Diels-Alder反応では満足のいく不斉収率が得られなかったため,光学活性ビナフトールを不斉源とするオリジナルの反応を開発しました。

Thumbnail image of graphical abstract

・定序性ポリイミド (Bull. Chem. Soc. Jpn., 2001, 74, 1767)

脂環式二酸無水物DAnの構造は非対称であり,2つの酸無水物部位は互いに等価ではありません。これらの酸無水物部位に大きな反応性の差があることがわかりました。すなわち,6員環酸無水物(下記の絵の左側部分)が他方よりもはるかに反応性が高く,芳香族ジアミンとの反応が高い位置選択性で起こります。このことを利用して,多段階反応によってポリマー鎖中でのDAn部位の向きに秩序をもった完全頭−頭型,完全頭−尾型のポリイミドを作り分けることに成功しました。また,頭−頭型については,低温で反応を行うことでone-potで合成可能であることも明らかにしました。


 

・スピロ骨格をもつ脂環式二酸無水物を用いるポリイミドの合成と評価 (Macromol. Chem. Phys., 2000, 201, 2289.)

硬い構造を持ったp-フェニレンジアミンを用いた場合で比較すると、DAn由来のポリイミドはDAnと分子量が同じでスピロ骨格を持たない他の脂環式二酸無水物を用いたものよりも、膜形成能、熱安定性、溶解性の点で優れることを見出しました。