最新の研究
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引力相互作用は過冷却液体の構造を変える
引力相互作用は過冷却液体の構造を変える

密度の高いガラス転移点付近の液体の構造は、液体を構成する粒子同士の斥力相互作用で決まり、引力相互作用には依らないと考えられてきた。今回、田中 肇 教授(研究当時、現:シニア協力員)、トン フア(Tong Hua)特任研究員(現:上海交通大学助教授)の研究グループは、この従来の考え方に反し、実際には引力相互作用が液体の構造を大きく変え、その結果、粒子の動き(ダイナミクス)にも多大な影響を与えることを発見した。液体の構造は粒子間の距離情報だけで記述されるという従来の液体論の常識を覆し、ある粒子と隣接する2つの粒子が作る角度情報が不可欠であることを示した点に新規性がある。この成果は、長年の未解明問題であったガラス形成物質の遅いダイナミクスの起源が、液体の構造にあることを示唆した点に最大のインパクトがある。液体のダイナミクスと構造の関係の理解に大きく貢献すると期待される。