最新の研究
最新の研究
過冷却した液体中の分子構造は乱雑ではない ~結晶構造に似ていれば結晶へ、似ていなければガラスへ~
過冷却した液体中の分子構造は乱雑ではない ~結晶構造に似ていれば結晶へ、似ていなければガラスへ~

2種類の物質を混ぜると多くの場合、結晶の融点は、純粋な物質に比べ低くなる。融点が最低になる共融点では、比較的容易にガラスが形成できることが経験的に知られてきた。今回、東京大学 生産技術研究所の田中 肇 教授、ジョン・ルッソ 元特任助教(現ブリストル大学 講師)、ベニス大学のフラビオ・ロマーノ 准教授の研究グループは、その物理的な起源を明らかにすることに成功した。液体の構造と結晶の構造が似ていると結晶化しやすく、一方、大きく異なるとガラスが形成されやすい。その違いが共融点付近で最大化されることにより、液体・結晶の界面エネルギーが大きくなることが、共融点近傍でみられる高いガラス形成能の原因であることを示した点に新奇性がある。この発見は、長年の未解明問題であった、ガラス形成能を支配している物理因子が何かを説明しただけでなく、物質のガラス形成能を意図的に制御する新しい道を拓いたという意味で、応用上のインパクトも大きいと期待される。