所長挨拶
所長挨拶

東京大学生産技術研究所は、教授、准教授、講師がそれぞれ主宰する110を超える数の研究室からなり、約300名の教職員、約700名の大学院学生を含め、総勢1,000名以上が教育研究活動に従事する国内最大規模の大学附置研究所です。対象とする研究領域は、工学のほぼ全領域をカバーしています。本所は1949年の設立当初から、工学に関わる課題に取り組み、これを実践に結びつけること、またその実践を担う人材を育成することを使命とし、教育研究を通して学問と実践の間に広がる広大な領域の橋渡しを進めて参りました。現在の言葉で言えば、産学連携を強力に推進することを通して産業のイノベーションに貢献してきたといってよいでしょう。そのような実践への対応力の源泉は、新たな学問分野の形成や実社会における課題解決に向けて分野融合的なアプローチをダイナミックに展開することができる本所の柔軟な組織構造にあると言えます。現在も10の研究センターならびに5つの連携研究センター、さらには国際的な共同研究を目的とする2つの国際連携研究センターが活動しており、数多くの融合的学問分野を国内外で牽引しております。

近年では、環境・エネルギーや資源、社会インフラ、高齢化社会等、いわゆる現代的な課題への対応の必要性がより一層顕在化してきております。こうした中で、大学に求められることは、その生み出す知を駆使して課題解決に至る道筋を示すことに加え、課題に取り組む人材を育てることです。本所における上記のような分野融合的なアプローチは、まさにこうした課題解決のための方法論の構築と、実践的人材の育成において、きわめて有効な場を提供するものであると言えます。一方、社会における課題は、工学分野の専門性だけでは対処できない複合的要因によるものが多く、また国境を越えてグローバルな対応が要求されるケースが増えてきています。こうした状況をふまえ、本所においても、大学から社会への一方向的な産学連携の枠組みから一歩踏み出して、社会制度や経済性、社会ニーズ等を踏まえた上で、研究成果を社会実装する、すなわち工学の実践知を社会と共創する試みを進めつつあります。こうした取り組みは国内に限ったことではなく、国外に研究拠点を設けてグローバルな視点で進めようとする計画も進んでいます。

工学分野における世界のトップインスティチュートとして、それぞれの基盤分野では不断に新しい知を創造しつつ、異なる専門性を有する研究者同士が互いに刺激し合うことによって、工学の専門知を相対化し実践力を涵養する。本所が、そうしたダイナミックかつ知的刺激に満ちた研究所であり続け、その使命を存分に果たせるよう、最大限の努力をして参りたいと考えております。