所長挨拶
所長挨拶

東京大学生産技術研究所は1949年の設立以来、約70年の歴史を有する国内最大規模の大学附置研究所です。総合工学研究所として、対象とする研究は工学のほぼ全ての領域を包含し、教授・准教授・講師がそれぞれ主宰する約120の研究室を擁しています。約300名の教職員と約750名の大学院学生の総勢1,000名以上が教育研究活動に従事し、多くの優れた研究成果を創出すると共に、多くの優秀な人材を輩出してきました。また、全研究室が何れかに属する基幹組織である5つの研究部門を経糸としつつ、複数の研究部門を跨る緯糸として、9つの研究センターと3つの連携研究センター、さらには国際的な共同研究を展開する2つの国際連携研究センターを設置し、各専門分野の独創的な研究の推進に加えて、分野融合かつ国際的な活動を組織的に展開しています。昨年度には、附属千葉実験所が本所発祥の地である西千葉地区から柏キャンパスに機能移転すると共に、価値創造デザイン推進基盤も新たに活動を開始しました。

本所は設立当初から、工学としての学術研究の意義は社会実装の実現にあることを強く意識し、専門分野の深耕と垣根を超えた協働を通して新たな学問分野を創出すると共に、実社会での課題解決に貢献できる技術の開発と展開を実践してきました。また、特に産業界において技術開発と普及の実務を担う人材の育成も使命としてきました。このような本所設立以来の精神と使命感は我々のDNAに深く刻まれ、産学連携を標榜する組織の先駆けとして、工学に関わる諸課題に実践的に取り組んで参りました。そして、その実績と積極的な姿勢は、“生研(SEIKEN)”の名と共に広く認識されているものと自負しています。

現代社会が抱える諸問題は多岐にわたり、それらに対峙すべき工学に期待される役割は益々大きくなっています。その一方で、技術開発だけに拘ったアプローチでは、社会に広く受け入れられる魅力的な成果物がなかなか生み出せないという状況も従来型の工学が抱える課題です。このような工学単独での対処が難しい状況に対して、大学附置研究所として学術的な真理を探求する姿勢を基本としつつ、本所の伝統的な特徴である垣根のない分野横断・実践的な産学連携・意欲的な国際連携というスタイルに、社会実装までの出口戦略を意識した文理融合の学際的なアプローチを加味して、イノベーションによる魅力的な価値創造に貢献する新たなSEIKENスタイルの構築を模索しています。

国内最大ながらも組織としての強い一体感を維持できる絶妙な規模だからこその機動力と総合力を生かし、工学分野における世界最高レベルの研究所として、“みんなの願いの実現”に貢献したいと考えています。

岸 利治