2. 金属ナノ材料の光アンテナ効果

「1. 金属ナノ材料による光機能 」で述べたプラズモン共鳴には、光を集めてナノ粒子の周囲にとどめる「光アンテナ効果」もあります。これを利用すると、以下の効果が期待できます。

・太陽電池などの、光吸収体の量を減らす。
 たとえば、色素増感太陽電池に使われる、高価なルテニウム錯体の使 用量を減らすことができます。また、光吸収層を薄くできるので、内部抵抗 を低くして熱損失を抑えたり、柔軟性を高めたりすることも可能です。

・太陽電池などの、苦手な波長域の吸収を高める。
 太陽電池では、近赤外領域の光を十分に使えていない場合が多く、その「光吸収体の苦手な領域」での吸収の弱さを、光アンテナ効果で補うことができます。ただし、光吸収体による吸収が全くなければ、補うことができません。

・光吸収の弱い光機能材料やデバイスに組み合わせて、効率を高める。
 新しい原理の太陽電池を開発したが、光吸収が弱い、という場合などにつかえます。光触媒、人工光合成など、光吸収が不足しやすい光機能材料などにも適用できます。

こうした効果はすでに知られていましたが、私たちは、プラズモン誘起電荷分離の研究などで培った知識と経験を活かし、光アンテナ効果についても研究しています。とくに、光アンテナ効果の距離依存性や、粒子サイズ依存性など、基礎的な知見を集めています。


光アンテナ効果の色素増感型太陽電池への適用例


光を集めて光電変換に使う
 色素増感太陽電池や、半導体量子ドット太陽電池、金属クラスター太陽電池の電流増強に利用しています。プラズモンカップリングを利用することで、近赤外域の電流増強にも利用できることを明らかにしました (JPCC 2013)。

光を集めて光触媒に使う
 光触媒反応や人工光合成系に適用することも検討しています。



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