私たちは、これを酸化チタンなどの半導体と組み合わせると、共鳴ナノ粒子から半導体へ電子が移動し、正と負の電荷が分離することを明らかにし (Nature Mater 2003, JACS 2005)、この現象を「プラズモン誘起電荷分離」と名付けました。
プラズモン誘起電荷分離(模式図)
この現象の解明と、応用について研究しています。
プラズモン誘起電荷分離の現象と機構の解明
ナノイメージング法などを駆使して、プラズモン局在電場が強い領域で電荷分離が起きやすいこと (Chem Comm 2011)、しかし、局在電場は半導体の励起に寄与しているわけではないこと (Nano Lett 2012)、金属ナノ粒子の電位が半導体より正になること、などを明らかにしています。
これらのことから、共鳴ナノ粒子から半導体への電子移動により電荷分離が起きていると考えられます。
ほかにも、高次モードプラズモンでもプラズモン誘起電荷分離が起こることなどを明らかにしています。
プラズモン誘起電荷分離の起こりやすい場所と局在電場の強い場所の相関
あてた光の色に変わる(多色フォトクロミズム)
酸化チタンの上にいろいろなサイズの銀ナノ粒子を載せると、暗褐色を呈します。これに青、緑、黄、赤などの光をあてると、材料の色が、その光と同様の色に変化します。これは、プラズモン誘起電荷分離により、特定サイズの銀ナノ粒子が銀イオンへと酸化され、ナノ粒子のサイズが変化するためです。紫外光を照射すれば、もとの暗褐色に戻りますので、リライタブルペーパーなどへの応用が可能です (Nature Mater 2003, J Am Chem Soc 2004, Adv Mater 2007)。
粒子ひとつでいろんな色に(単一粒子フォトクロミズム)
市販の球状銀ナノ粒子を酸化チタンに載せると、2つの波長(緑と赤)で共鳴を示し、それらが合わさったオレンジ色の散乱光が観察されます。緑色光で強く励起すると、粒子全体が酸化して粒子サイズが小さくなり、緑色の散乱光が減じて、散乱光は赤色になります。赤色光で強く励起すると、粒子下部のみが酸化して酸化チタンとの接触面積が小さくなり、赤色の散乱光が減じて、散乱光は緑色になります。両方励起すれば、散乱光は消えます。1つの粒子でいろんな色に変えることができ、ナノフォトニック素子などへの展開が期待されます (Nano Lett 2012)。
単一銀ナノ粒子の散乱色変化
光でポリマーゲルの形を変える(アクチュエータ)
銀ナノ粒子を有機ゲルと組み合わせることで、紫外光をあてると水を吸って膨らみ、可視光をあてると水を吐きだして縮む材料を作ることができます。光アクチュエータとしての応用が期待されます (Adv Mater 2007)。