これまでの内容

これまでに開かれた研究会は下記のとおりです。
欠席された方で話題提供の配布資料をご希望の場合は世話人までご連絡下さい。

2023年度
2024年1月9日(火) 第78回LES研究会
2023年11月10日(金) 第77回LES研究会
2023年9月12日(火) 第76回LES研究会
2023年7月14日(金) 第75回LES研究会
2023年5月9日(火) 第74回LES研究会

2022年度
2023年3月9日(木) 第38回生研TSFDシンポジウム
2023年1月10日(火) 第73回LES研究会
2022年11月11日(金) 第72回LES研究会
2022年9月20日(火) 第71回LES研究会
2022年7月8日(金) 第70回LES研究会
2022年5月10日(火) 第69回LES研究会

2021年度
2022年3月4日(金) 第37回生研TSFDシンポジウム
2022年1月11日(火) 第68回LES研究会
2021年11月12日(金) 第67回LES研究会
2021年9月14日(火) 第66回LES研究会
2021年7月9日(金) 第65回LES研究会
2021年5月11日(火) 第64回LES研究会

2020年度
2021年3月9日(火) 第36回生研TSFDシンポジウム
2021年1月12日(火) 第63回LES研究会
2020年11月13日(金) 第62回LES研究会
2020年9月9日(水) 第61回LES研究会
2020年7月10日(金) 第60回LES研究会

2019年度
2020年3月12日(木) 第35回生研TSFDシンポジウム
2020年1月14日(火) 第59回LES研究会
2019年11月8日(金) 第58回LES研究会
2019年9月17日(火) 第57回LES研究会
2019年7月12日(金) 第56回LES研究会
2019年5月14日(火) 第55回LES研究会

2018年度
2019年3月8日(金) 第34回生研TSFDシンポジウム
2019年1月8日(火) 第54回LES研究会
2018年11月9日(金) 第53回LES研究会
2018年9月18日(火) 第52回LES研究会
2018年7月13日(金) 第51回LES研究会
2018年5月8日(火) 第50回LES研究会

2017年度
2018年3月5日(月) 第33回生研TSFDシンポジウム
2018年1月9日(火) 第49回LES研究会
2017年11月10日(金) 第48回LES研究会
2017年9月12日(火) 第47回LES研究会
2017年7月14日(金) 第46回LES研究会
2017年5月9日(火) 第45回LES研究会

2016年度
2017年3月22日(水) 第32回生研TSFDシンポジウム
2017年1月10日(火) 第44回LES研究会
2016年11月11日(金) 第43回LES研究会
2016年9月20日(火) 第42回LES研究会
2016年7月8日(金) 第41回LES研究会
2016年5月10日(火) 第40回LES研究会

2015年度
2016年3月9日(水) 第31回生研TSFDシンポジウム
2016年1月12日(火) 第39回LES研究会
2015年11月13日(金) 第38回LES研究会
2015年9月8日(火) 第37回LES研究会
2015年7月10日(金) 第36回LES研究会
2015年5月12日(火) 第35回LES研究会

2014年度
2015年3月12日(木) 第30回生研TSFDシンポジウム
2015年1月13日(火) 第34回LES研究会
2014年11月14日(金) 第33回LES研究会
2014年9月30日(火) 第32回LES研究会
2014年7月11日(金) 第31回LES研究会
2014年5月13日(火) 第30回LES研究会

2013年度
2014年3月5日(水) 第29回生研TSFDシンポジウム
2014年1月14日(火) 第29回LES研究会
2013年11月8日(金) 第28回LES研究会
2013年9月17日(火) 第27回LES研究会
2013年7月12日(金) 第26回LES研究会
2013年5月14日(火) 第25回LES研究会

2012年度
2013年3月8日(金) 第28回生研TSFDシンポジウム
2013年1月8日(火) 第24回LES研究会
2012年11月9日(金) 第23回LES研究会
2012年10月3日(火) 第22回LES研究会
2012年7月13日(金) 第21回LES研究会
2012年5月8日(火) 第20回LES研究会

2011年度
2012年3月5日(月) 第27回生研TSFDシンポジウム
2012年1月10日(火) 第19回LES研究会
2011年11月11日(金) 第18回LES研究会
2011年9月27日(火) 第17回LES研究会
2011年7月8日(金) 第16回LES研究会
2011年5月10日(火) 第15回LES研究会

2010年度
2011年3月14日(月) 第26回生研TSFDシンポジウム
2011年1月11日(火) 第14回LES研究会
2010年11月12日(金) 第13回LES研究会
2010年9月14日(火) 第12回LES研究会
2010年7月9日(金) 第11回LES研究会
2010年5月11日(火) 第10回LES研究会

2009年度
2010年3月5日(金) 第25回生研TSFDシンポジウム
2010年1月12日(火) 第9回LES研究会
2009年11月13日(金) 第8回LES研究会
2009年9月8日(火) 第7回LES研究会
2009年7月10日(金) 第6回LES研究会
2009年5月12日(火) 第5回LES研究会

2008年度
2009年3月13日(金) 第4回LES研究会
2009年1月13日(火) 第3回LES研究会
2008年11月7日(金) 第2回LES研究会
2008年9月16日(火) 第1回LES研究会


2023年度

第78回LES研究会

日時 2024年1月9日(火) 14:00-15:30
場所 Zoomによるオンライン会議

「ファサード形状を再現した実建物モデルの広範囲・高解像度LESによる風圧力推定」
河合英徳(お茶の水女子大学)
建築物の耐風設計においてLESの活用が実用化されつつある中で,ファサードが複雑な実建物の形状を再現したLESに基づく建築物の風圧力推定の事例について紹介する。まず,格子生成法や流入条件の異なる実用的な解析モデルに基づくLESを実施し,乱流境界層中の三次元角柱の風圧力に関する検証を行うとともに,風圧力のばらつきを提示する。さらに,ファサード形状を実建物モデルを対象とする広範囲・高解像度LESにより,風上にある高層建築物群から発生する乱流場や複雑なファサードの周りに発生する微細な渦など,様々なスケールの乱流構造が風圧力に及ぼす影響を明らかにする。

第77回LES研究会

日時 2023年11月10日(金) 14:00-15:30
場所 Zoomによるオンライン会議

「都市空気環境における発生源同定:LESによる随伴濃度解析とセンサ配置の最適化」
賈 鴻源(東大生研)
都市空気環境における汚染物質の未知発生源情報を推定する問題に対するLESの応用に関する研究を紹介する。発生源同定における、随伴濃度方程式はセンサと発生源との応答関数としてよくシミュレーションされている。まず、都市環境による複雑な汚染物資の拡散に対し、LESに基づいた随伴解析の有効性を示す。単純な市街地モデルを用いたテストケースで、LESはRANSより約90%に推定誤差を削減できることがわかった。さらに、LESにより随伴濃度場の情報エントロピーに基づいたセンサ配置最適化手法を提案している。均一とランダム配置の推定結果と比較することによって最適化されたセンサ配置の優越性を実証した。

第76回LES研究会

日時 2023年9月12日(火) 14:00-15:30
場所 Zoomによるオンライン会議

「機械学習によるLESのための乱流モデリング:SGS応力モデルと壁面モデルの開発」
服部裕司(東北大学)
機械学習によるLESのための乱流モデリングに関するこれまでのわれわれの研究について紹介する。一つ目はSGS応力モデルの開発である。チャネル乱流および一様等方性乱流の直接数値シミュレーションデータを用いてフィルタ操作により求めたSGS応力をターゲットとし、ニューラルネットワークによる学習を行い、SGS応力モデルを得た。もう一つは壁面モデルの開発である。畳み込みニューラルネットワークを用いた深層学習により、緩和層から対数領域内の断面分布から、壁面せん断応力を推定することに成功した。両方の場合に、実際に得られたモデルによるLES計算を行い、既存のモデルと比べて遜色ない結果が得られることを示した。

第75回LES研究会

日時 2023年7月14日(金) 14:00-15:30
場所 Zoomによるオンライン会議

「円管の急回転および急停止による円管内乱流のDNS」
岡本正芳(静岡大学)
既にこれまでLES研究会では円管を急回転させた際に発生する安定化現象に関して話をさせていただきましたが、この現象は時間が経過すると乱れが回復して完全発達状態の乱流場へと移行する。そこでできるだけ安定な状況を長く維持させる試みには管の回転運動を止める必要があると考えられる。この講演の内容としては管の急回転停止による流れ場の変化と急回転と急停止を組み合わせたケースに関するものとなっている。

第74回LES研究会

日時 2023年5月9日(火) 14:00-15:30
場所 Zoomによるオンライン会議

「格子ボルツマン法とアクチュエーターラインモデルによる風車後流のLES解析」
渡辺勢也(九州大学)
洋上ウィンドファームには多数の風車が配置され,風車から発生した後流は風下に配置された風車に影響する.そのため,ウィンドファームの発電量や風車の疲労荷重の予測には,風車後流の計算精度が重要となる.本研究では,大規模な流体計算に適している格子ボルツマン法を用いた風車後流およびウィンドファームの解析手法を開発している.計算高速化のため,風車モデルにはブレードを点群で表現するアクチュエーターラインモデルを用いる.本発表では,格子解像度や流入乱流条件が風車後流に与える影響や,デンマークの洋上ウィンドファームHorns Rev 1の解析例について紹介する.


2022年度

第73回LES研究会

日時 2023年1月10日(火) 14:00-15:30
場所 Zoomによるオンライン会議

「低圧旋回渦同定手法を用いた横風時の自動車の空気抵抗増大に寄与する渦の同定」
中村優佑(マツダ)
簡易ノッチバック車両の空気抵抗は,あるヨー角で増大することが知られている.そこで,空気抵抗の増大に関連する後流中の渦を数値計算と低圧旋回渦同定手法を用いて分析した結果を報告する.具体的には,高抵抗状態および低抵抗状態となるヨー角における数値計算結果に対して,2つの渦同定手法(渦度等値面と渦中心線)を適用し,後流中の渦の違いを定性的に議論した.結果,2状態に共通する渦として,回転方向が異なる1対の渦が後端近傍に発生した.また,高抵抗状態では,ルーフエッジ渦が風下側に発生し,後端下部に2つの渦が新たに観察された.流線による分析の結果,これらの渦は風下の巻き込み流れによるものであった.

第72回LES研究会

日時 2022年11月11日(金) 14:00-15:30
場所 Zoomによるオンライン会議

「気象モデルの高解像度化による「グレーゾーン」問題」
伊藤純至(東北大学)
気象モデルを高解像度化させた場合、レイノルズ平均とLESのどちらにもみなせない中間的な「グレーゾーン」とされる解像度となる。このような解像度ではパラメタリゼーションの前提が揺らいでしまい、グレーゾーン問題と呼ばれている。グレーゾーン問題に対応したMellor-Yamadaモデルを拡張の提案や関連した研究課題について発表する。

第71回LES研究会

日時 2022年9月20日(火) 15:00-16:30
場所 Zoomによるオンライン会議

「乱流衝突噴流熱伝達現象のDNS解析と予測について」
服部博文(名古屋工業大学)
乱流噴流を加熱面に衝突させて熱伝達や物質輸送を促進する衝突噴流熱伝達現象について,DNSによる解析結果と,そのDNSデータを用いた予測に対する評価について述べる.衝突噴流場の基本形態は,噴流入口ノズル形状によって分類されることが多いが,本講演では円形と平行平板型の噴流入口ノズル型の乱流衝突噴流熱伝達場を解析,予測した結果について考察する.

第70回LES研究会

日時 2022年7月8日(金) 14:00-15:30
場所 Zoomによるオンライン会議

「実市街地における乱流場と放射場の連成解析に関する検討」
新井舞子(大成建設)
 近年、東京の都心部では再開発が進み、高層建築物が密集して建てられている。このような都市キャノピー内での乱流場・温度場も高層建物周辺に形成される詳細な乱流構造により複雑化が進んでおり、屋外熱環境の評価においてもこれらの現象を適切に再現することは重要な課題である。特に高層建物群における歩行者空間は、日射によって加熱された地面からの対流熱伝達の影響や瞬時的に発生する渦による移流効果の影響も大きいと考えられる。このような場所において瞬時的に変動する熱環境評価を行う場合、乱流場と放射場の相互影響を考慮したLESによる検討が必要だと考えられる。しかしながら、実市街地を対象としてLESを用いた乱流場と放射場の連成解析手法の検証はあまり行われていない。
 本発表では、LESを用いた乱流場と放射場の連成解析手法の検証を目的として、実市街地を対象とした気流・熱環境解析を行い、既往研究の市街地での実測値との比較結果を紹介する。

第69回LES研究会

日時 2022年5月10日(火) 14:00-15:30
場所 Zoomによるオンライン会議

「陰的LESとDNSの比較を通したLESに関する一考察」
松山新吾(JAXA)
本講演ではRe=10000の平面乱流噴流を対象に、陰的LESによる結果とDNSによる結果との比較を通して、LESにおけるSGSモデル・空間フィルタリングの役割などについて考察をしたい。陰的LESはスキーム固有の数値粘性がSGSモデル(空間フィルタリング)の肩代わりをする手法であるが、空間解像度が低い場合にはエネルギーカスケードが正しく再現できていないような結果も見受けられ、決して万能ではない。本講演で提示する考察について聴講者の皆様からもご意見などをいただき、LESにおけるSGSモデル・空間フィルタリングはどうあるべきかといった議論をする機会としたい。


2021年度

第68回LES研究会

日時 2022年1月11日(火) 14:00-15:30
場所 Zoomによるオンライン会議

「汎用有限体積法コードによる大気境界層乱流の再現に関する取り組み」
小野浩己(電力中央研究所)
汚染質の大気拡散予測や建物周辺の風環境予測の分野では,古くから風洞実験の手法が確立されており,実際に数多くの実地適用がなされている.これらの風洞実験をCFD,とりわけ近年ではLESによって再現する取り組みも実施されるようになってきたが,その多くは風洞実験の力学系を模したものとなっている.典型的には,細長い直方形の風路に対して,その入口側を定常または非定常の流入境界条件とし,出口側を固定圧力端とするものである.平均風速の鉛直分布や乱れの大きさなどは予め規定しておく必要がある.
一方で,実際の大気境界層の力学系はいわゆるエクマン境界層を基本とし,ここに熱や非一様な地表粗度の影響が絡み合うような場と考えられる.本研究ではこのような力学系を想定したLESを行い,大気境界層乱流を再現することを目的としている.類似の研究は数多く存在するが,その多くは準スペクトル法などのコードによるものであり,これらをそのまま大気拡散予測や風環境予測の実務に応用することは難しい.そこで,実際に大気拡散予測や風環境予測の実務にも多く活用されている汎用有限体積法コード(ここではOpenFOAM)を用いて大気境界層乱流の再現を試みる.

第67回LES研究会

日時 2021年11月12日(金) 14:00-15:30
場所 Zoomによるオンライン会議

「機械学習による風環境予測シミュレーションの高速化」
山口純輝(鹿島建設)
今回は機械学習を利用して街区のCFDを高速化する研究について紹介します。RANSとLESの計算結果を学習し,ある街区の平均風速場を予測する2種類の機械学習モデルを構築しました。街区の形状を入力としたモデルでは,RANSと同程度の精度で数十万倍以上高速に平均風速場を予測でき,さらにRANSの結果を入力に加えたモデルでは,RANSの約7割の誤差で平均風速場を予測できました。この結果から,建物設計時の街区の風環境調査においても機械学習が有効であることがわかります。

第66回LES研究会

日時 2021年9月14日(火) 14:00-15:30
場所 Zoomによるオンライン会議

「遷音速ファン翼の境界層遷移のLESに向けて」
榎本俊治(JAXA)
近年の航空エンジンのファンは従来よりも低速で回転し翼面の流れのレイノルズ数が低いため、ファン翼面境界層の摩擦損失の低減ために層流領域を広く保つ設計方針が現実的になってきている。しかしながら実際のファンのリグ試験で境界層が層流であるかどうかを確認することは難しい。そこでファン翼面境界層が遷移するかしないか、遷移する場合はその位置を、数値解析により推定することを試みた。ここではLESコードを用いているが、着目したのは付着した層流境界層中に発生する不安定波の成長と遷移のシミュレートであり、遷移した後の乱流域は計算格子密度不足のため精度の良いLESでは無い。計算対象としたのは、ファン動翼形状を模擬した単翼の風洞試験の流れ場である。試験供試体は、ベースとなる形状(LF-5)と、それを基に層流域が広くなるように設計した形状(LF-6)の2体であり、主に前縁の形状が異なっている。実験では2体の流れ場は遷移位置が異なってはいるもののどちらも遷移していた。この形状に対しスパン方向に狭い幅で周期境界条件を課した数値シミュレーションを行った。初めに擾乱を与えずに計算を行ったところ全域層流の結果が得られた。そこで前縁付近にランダムな擾乱を与えたところ、LF-5では不安定波が発生して徐々に成長し遷移に至るという結果が得られた。一方LF-6では与えた擾乱は減衰するのみで遷移が発生することは無かった。このように、遷移過程のシミュレーションは可能性は有るとは思われるものの、定量的な精度を達成するには、例えば、計算領域のスパン方向幅を広くすることとや、より実際に近い流入乱れを模擬する方法など、さらなる改善が必要であると思われる。

第65回LES研究会

日時 2021年7月9日(金) 14:00-15:30
場所 Zoomによるオンライン会議

「壁乱流の最適制御における乱れ抑制機構とReynolds数効果」
伊藤宗嵩(東大生研)
壁面からの流体の吹出し・吸込みは、壁乱流制御で典型的な制御手法であるが、最適制御理論によりその時空間分布を最適化することで、非常に高い乱れ抑制効果が得られる。革新的乱流フィードバック制御則の構築に向けて、その制御機構の解明が期待されるが、制御入力および流れの応答の複雑さから、その進展は長らく得られていない。本講演では、制御入力を空間的に大きいスケールのみに制限しても高い制御効果が得られることを示し、検討が容易になった流れ場で制御機構を調査した結果を紹介する。合わせて、乱流最適制御におけるReynolds数効果について調査した結果も報告する。

第64回LES研究会

日時 2021年5月11日(火) 14:00-15:30
場所 Zoomによるオンライン会議

「乱れを含む流れの中に置かれた翼まわりの流れと発生する空力音の予測と発生メカニズムの解明」
小林典彰(大阪大学)
 乱れを含む主流中に翼などの揚力を生じる物体(リフティングサーフィス)が置かれた場合,物体まわりの流れから発生する音が,主流に乱れが無い場合と比較して,10デシベルから20デシベル程度,大幅に増大することが知られている.このような流れは,ファンの上流に障害物が設置され,その後流中の乱れを含んだ流れがファンの動翼に流入する場合,上流の風車や大気境界層中の乱れの影響を受ける風車の動翼まわりの流れなどで発生し,工学的に重要度の高い問題である.
 乱れを含んだ主流中に置かれた翼から発生する音に関しては,これまでいくつかの研究成果が発表されており,たとえば,このような場合に音が大きくなる理由として,乱れによる翼の迎え角の変動による翼の揚力変動や乱れ自体から発生する音の翼表面における散乱があげられていた.しかし,これらの仮説を裏付ける具体的なデータは十分には示されておらず,音が増大する本質的な原因は明らかにされていなかった.
 本研究は特殊な風洞実験と大規模な数値流体解析・数値音響解析を行い,乱れを含む主流中に置かれた翼から発生する音が増大する本質的な理由を明らかにしたものである.まず,風洞実験により翼に流入する乱れのスケールやその周波数,乱れが流入する位置を変化させることで,翼に対する乱れの通過位置をわずかに変化させた場合に翼面静圧変動や発生する音が大幅に変化することを明らかにした.次に,流れと音の数値解析により,翼の表面にすべり壁の条件を設定すると翼表面には境界層は発達しないが,境界層が発達する固着壁条件の場合よりも発生する音が大きくなることを示した.このことは,主流中の乱れ自体が翼のまわりで変化し,音が発生することを意味しており,本研究で得られた知見の中で最も重要なものである.さらに,翼まわりの流れと発生する音を詳細に調査した結果,主流中の乱れ(渦)が翼前縁の淀み点で速度が零になり,その後の加速により渦が引き伸ばされることが,乱れの中に置かれた翼(リフティングサーフィス)から発生する音が大きくなることの本質的な理由であることを明らかにした.


2020年度

第63回LES研究会

日時 2021年1月12日(火) 15:30-17:00
場所 Zoomによるオンライン会議

「2流体モデルの連立数値計算を用いた量子乱流の研究」
湯井悟志(慶應義塾大学)
液体ヘリウム4は,2.17 K以下になると超流動状態に転移する.2流体モデルによると,超流動ヘリウム4は非粘性超流体と粘性常流体の混合流体である.超流体の乱流は量子乱流ともよばれ,その解明は低温物理学や非平衡物理学などにおいて重要である.ほとんどの量子乱流の研究では,超流体成分のダイナミクスのみが議論されてきた.しかし,超流体の2段階乱流転移などの重要問題は,2流体両方のダイナミクスを考慮しなければ解明できないと予想されている.また,近年の可視化実験の発展により,2流体それぞれのダイナミクスを直接観測することが可能になってきた.そこで,我々は2流体を連立した数値計算を導入して,量子乱流の性質を調べた.本発表では,はじめに量子乱流の基本的な説明をしてから,我々の行った2流体モデルの連立数値計算の結果を紹介をする.

第62回LES研究会

日時 2020年11月13日(金) 14:00-15:30
場所 Zoomによるオンライン会議

「数値気象モデルを用いた風車配列境界層のLES」
中尾圭佑(電力中央研究所)
再生可能エネルギーへの注目を背景に洋上ウィンドファーム(WF)建設への関心が高まっている.サイトの風況予測や経済性評価には,マルチスケールの気象情報が必要となり,ウィンドファームの影響を考慮する気象モデルの開発も進んできている.本研究は,その中で最も狭域の現象である,境界層と風車ウェイクの相互作用に関する検討である.風車単機のモデルを導入した数値気象モデルを用いてLarge-eddy simulationを実施し,WFに形成される粗度境界層を数値的に再現した.近年の国内の風車サイトの特徴として離岸距離の短い洋上を建設地点に選ぶことが多い.この条件で顕著となる,海陸の熱的特性の違いが風況に及ぼす影響をパラメトリックスタディした.得られた結果から,風車ウェイクや境界層の発達特性について議論する.

第61回LES研究会

日時 2020年9月9日(水) 14:00-15:30
場所 Zoomによるオンライン会議

「壁乱流中の中間サイズ気泡挙動と抵抗低減効果」
大島伸行(北海道大学)
気泡導入による船舶摩擦抵抗低減技術(微小気泡法, 気膜法)は2000年代に入って新たに開発された計測技術により乱流摩擦抵抗メカニズムが解明され始めた.そのなかで,中間サイズ気泡(数mm〜cmオーダー)を用いた摩擦抵抗低減は比較的新しく注目され始めた技術であり主に実験的研究が進められている。一方、数値計算においては変形の小さい微小気泡(μmオーダー)に多数適用されてきたが、中間サイズ気泡のように変形性の高い気泡の数値計算では数値誤差や界面拡散につながる課題があり研究例が少ない。近年これらを扱う数値手法の理解が進み汎用ソフトウェアにも導入されてきたことから、本研究では、OpenFOAM Ver.18 にて開発された二相流ソルバー interFoam, interIsoFoam を用いて、壁乱流中の中間サイズ気泡の直接数値計算を試みている。実験可視化との比較検証とともに、その抵抗低減に及ぼす影響効果解析についての成果を紹介する。

第60回LES研究会

日時 2020年7月10日(金) 14:00-15:30
場所 Zoomによるオンライン会議

「物体非適合直交格子における壁面モデルLESの適用と保存則について」
玉置義治(東北大学)
複雑形状周りの解析に向けて直交格子が近年注目されているが、物体非適合直交格子では壁面で保存則が厳密に成り立たない。壁面モデルLESを物体非適合直交格子に適用する際には、保存則の誤差がモデルで与えられる壁面せん断応力の効果を阻害するため、対数速度分布が再現できない。本発表では、この問題を解決するために、壁面での滑り速度の付与を通じて保存則誤差を低減し、対数速度分布の再現を可能とする手法を提案する。


2019年度

第59回LES研究会

日時 2020年1月14日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「実走行環境における自動車の空力特性について」
中島卓司(広島大学)
近年の自動車空力研究では、これまで考慮されてこなかった実路上における種々の非定常現象の影響について、多くの検討がなされている。本発表では,実路上で想定される現象のうち、特に路上風による時間的な相対風向変化の影響に注目して行った研究成果について報告する。自動車のような3次元ブラフボディの周囲に発生する流れ場は、相対風向の変化に対して、ある風向角を境に急激な変化を示すことがある。このような大規模な流れの形態変化は特徴的な過渡現象を引き起こし、周期的な風向変動下における平均空気力にも影響を与え得る。これらの現象に関して、発表者らがこれまで実施してきた風洞試験と非定常空力シミュレーションの双方の事例を紹介する。

「スケール相似項を用いた安定化SGSモデルにおける物理効果の検討」
稲垣和寛(東大生研)
近年,スケール相似項を用いつつ,バックスキャッターを取り除いて安定的に解くことができるSGSモデルが提案されている.こうしたモデルは従来の渦粘性型のモデルと比べて,さらに粗い格子解像度においても平均速度や乱流強度を良い精度で予測できる.これはSGSモデルにおける非渦粘性的な効果の重要性を示唆している.しかしながらモデルは多様な要素を含んでおり,どのような効果がSGSモデルの性能改善に寄与しているかは未解明な点が多い.本研究ではチャネル乱流においてSGSモデルに関する数値実験を行い,モデルが持つ物理効果に関して検討を試みる.

第58回LES研究会

日時 2019年11月8日(金) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「MSSGを用いた建物・樹冠解像LESによる暑熱環境解析」
松田景吾(JAMSTEC)
地球温暖化とヒートアイランドによって都市の気温は上昇傾向にあり,暑熱環境の緩和策が検討されている.その緩和策として注目されているのが緑地の効果である.そこで,樹木の効果を考慮しながら街区スケールでの暑熱環境を解析することのできる高解像度LESモデルの開発に取り組んだ.マルチスケール大気海洋モデルMSSGをLESモデルとして用い,これに樹木モデルと3次元放射モデルを組み込むことにより数m解像度での暑熱環境解析を実現した.本発表では,これを実在街区に適用した事例について紹介したい.

「LESを用いた単体建物モデル周辺気流における瞬時最大風速の予測と評価に関して」
菊本英紀(東大生研)
都市の風環境予測におけるCFDならびにLESの利用が広がりつつある。LESを高層建物周辺などでの風害予測に活用するためには、LESによる瞬時最大風速の予測可能性の検証とともに実空間とモデル空間での現象の相似性を考慮したデータ分析手法の確立が求められる。本講演では、都市境界層流中に置かれた単体建物モデル周辺気流に関するLESを実施し、瞬時最大風速を予測するとともに、実現象との対応を考慮しながらガストファクター(突風率)などの統計的指標を評価した事例を紹介する。

第57回LES研究会

日時 2019年9月17日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室5 (As313)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「High-Re flows past a square cylinder: spanwise resolution effects and emerging flow features」
Yong Cao(Tokyo Institute of Technology)
This study focuses on the typical flows around a two-dimensional square cylinder at Re=22000 and at the angles of attack (α) of 0° and 14°. The shear layers separate, on the average, completely from the leading edges of the cylinder at α=0°. However, the shear-layer separation at α=14° is followed by slight reattachment on the side wall of the cylinder. When the mesh resolution in the cross-sectional plane perpendicular to the cylinder axis is ensured to be sufficiently fine, the spanwise resolution (dz/D, where D is the width of the cylinder) varies between dz/D=0.08 and 0.013. Two aspects are emphasized: (1) the effects and requirements of spanwise resolution, which remain unclear for DNS or LES since the coarse spanwise resolution was widely used with the purpose of reducing the computational resources; (2) the flow features emerging in the cases of fine dz/D, with a particular focus on the laminar-turbulent transition in the shear layer and the low-frequency unsteadiness.

「乱流熱対流場における複雑伝熱面の多自由度形状最適化:アルゴリズム構築と実証」
亀谷幸憲(東大生研)
熱交換器の性能向上には伝熱促進だけでなく圧力損失の抑制が鍵となる.本研究では,非線形現象である乱流場において,圧力損失増加を抑制しつつ伝熱促進を達成する形状最適化アルゴリズムの開発を行なった.本アルゴリズムでは,RANSに基づく定常随伴解析の渦粘性・渦拡散係数を,非定常DNSから得られた乱流統計量を用いてチューニングする.また,得られた最適形状の供試体を樹脂3Dプリンタで制作し,非定常法及び微差圧計を用いて熱伝達係数及び圧力損失を計測することで,アルゴリズムの実証実験を行なった.

第56回LES研究会

日時 2019年7月12日(金) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「分割型移流項と近似リーマン解法を組み合わせた圧縮性流れの陰的LES」
芳賀臣紀(JAXA)
DNSやLESなど乱流の数値計算では,非線形項に起因する数値不安定を抑えつつ非物理的な乱れの生産や散逸をできるだけ与えないことが重要であり、自乗量保存性を有する混合型の移流項差分スキームが提案されている。本研究では高次精度化が容易な不連続有限要素法の一種であるFlux-Reconstruction法を用い、圧縮性流れの移流項に質量保存則を通して混合型と互換になる分割型を採用する。本手法は、セル境界で自乗量保存形の流束を用いることで非散逸(数値粘性ゼロ)のスキームとなるが、高レイノルズ数の流れ場に適用するには適切なサブグリッドスケールモデルの導入が必須である。一方、近似リーマン流束を用いた陰的LESによる良好な結果の報告例もあり、本発表では基本的な流れ(Taylor-Green渦、壁乱流)における陰的LESの性能を検証する。

「複雑形状における渦構造の同定手法について」
中村優佑(広島大学)
自動車の空力では、自動車周りにできる特徴的な渦構造と空力性能の関係を解明し、流れを制御することで性能向上を行う。そのため、複雑な流れ場から渦構造を可視化し、同定することは重要である。本発表では、複雑形状(特に自動車)周りの流れ場から渦を個別に同定する技術を説明し、簡易実車模型のCFD結果に適用した結果を紹介する。
 1.渦構造に着目する理由
 2.従来の渦可視化手法とその課題
 3.複雑形状における渦構造の同定手法
 4.基礎的な流れ場および簡易自動車模型への適用結果

第55回LES研究会

日時 2019年5月14日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 小セミナー室5 (As309)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「乱流モデルによるH型流路内対向流の温度分布に関する数値解析」
斎藤寛之(鉄道総研)
鉄道の地下駅や、機械を構成する熱交換器などをモデル化して、そこでの流れと熱移動の特性を数値計算により調べる。その際に、現象の本質を損なわないように実際の形状をできる限り単純化して、平行な2本の流路の中央部が連結されたH型流路内の熱流動現象として捉えれば、流速や形状が特性に与える影響を明確にできると考えられる。ここでは、2次元H型流路内の対向流を対象として、乱流計算では低レイノルズ数型k-εモデルで速度場を、温度場0方程式モデルで温度場を計算した。計算において、流入部のレイノルズ数とH型流路を構成する平行な2本の流路の連結部の長さを変えて、それらの影響について調べた。また、一部の条件についてはLESも実行しているため、そのLESにより得られた結果とRANSの比較についても述べる。

「大規模竜巻発生装置における竜巻状渦の乱流特性の把握」
服部康男、江口譲、中尾圭佑(電中研)
竜巻状渦の地表面近傍での風速場の乱流特性の把握および相似則への理解を目指し,Re数の影響が無視しうる大きなRe数条件でテキサス工科大学の大型竜巻模擬実験装置VorTECHでの3成分瞬時風速の時系列計測を実行した.レイノルズ応力など基本乱流統計量の空間分布を把握するとともに,実際の竜巻とのスケール比について平均場と乱流場の両者の整合を確認した.さらに,竜巻状渦固有の乱流発生機構や速度場の計測値から圧力場を推定する際の乱流成分の寄与を解明した.


2018年度

第54回LES研究会

日時 2019年1月8日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「SAMPSONコードによる東京電力福島第一原子力発電所の事故進展解析」
鈴木博之(エネルギー総合工学研究所)
当研究所が所有している過酷事故解析コードSAMPSONを用いた、東京電力福島第一原子力発電所の事故進展解析の解析結果を報告する。事故時に炉内へ到達した代替注水量が正確に分からないなどの制限がある中で、解析の不確かさを低減するために実施した検討内容を示す。加えて、SAMPSONコードの改良の方針を紹介する。なお、本研究は経済産業省「平成29年度廃炉・汚染水対策事業費補助金(総合的な炉内状況把握の高度化)」の一部として実施した。

「深水湖の鉛直循環の比較研究」
北澤大輔(東大生研)
温帯の深水湖は、春季から秋季にかけて成層が形成されるが、冬季には湖面冷却によって鉛直循環が発生し、湖面から湖底まで循環することを全循環と呼んでいる。全循環が発生すると、酸素が湖底まで届けられるが、全循環が欠損すると、湖底は低酸素状態となり、生態系に負の影響が生じる。琵琶湖では、毎年全循環が発生しているが、その発生時期が3月頃にずれこむことがあり、全循環の欠損が懸念される場合がある。鹿児島県の池田湖では、全循環が欠損することが多く、湖底近傍は貧酸素状態となっている。本研究会では、琵琶湖と池田湖のシミュレーション結果から、全循環の発生条件について考察する。

第53回LES研究会

日時 2018年11月9日(金) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「自軸回転円管内乱流における完全発達状態と過渡現象」
岡本正芳(静岡大学)
円管を自軸周りに回転させた乱流場に関して直接数値計算(DNS)を実行した結果(発達過程と完全発達状態)について紹介する。よく知られているように、駆動力を固定して管回転を加えると流量の上昇が確認できるが、その点に関して様々な統計量を解析してその検討を実施している。また、急に回転を加えるとその直後極端に強い安定化が生じ、ほとんど層流の時間変化に沿うケースも発生する。この現象についても紹介していく。乱流モデルに関しても若干の検証を報告する予定である。

「SGS力およびSGSエネルギー輸送に基づくスケール相似則項を用いたSGSモデル」
小林宏充(慶大日吉物理)
最近安倍によって提案されたスケール相似則項を用いた安定化非等方SGSモデルは、平行平板間流れにおいて非常に粗い格子においても平均流速分布をよく再現する。ここで用いられるスケール相似則項には様々な選択肢があり得ることから、乱流中の典型的な渦としてモデル化されるバーガーズ渦周りにおけるSGS力およびSGSエネルギー輸送を検討することで、モデル化されたSGS応力項の振る舞いを理解する。安倍モデルにおけるスケール相似則項を変えた場合のポステリオリテストの結果、ならびに渦粘性項の代わりにスケール相似則項のみを用いたモデルの結果を示し、今後のモデル化の示唆としたい。

第52回LES研究会

日時 2018年9月18日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「iconCFDを使用した衝突噴流のLESおよびRANS解析」
野封カ也(IDAJ)
衝突噴流は、高い熱伝達性能から工業的に活用されている技術である。また、複雑な流れ場を形成し、ノズル出口と衝突壁面間の距離の違いにより、平均Nu数の径方向分布に興味深い特徴が見られることが知られている。本発表では、その代表例であるNu数の径方向分布における第2ピークの存在について、LESおよびRANS解析により再現できるか検討を行った結果を報告する。計算には、OpenFOAMをベースにIcon社と弊社で開発を行っている汎用熱流体解析ソフトウェアiconCFDを使用した。

「LESによる市街地風環境予測のためのガイドライン策定に向けて」
大風 翼(東工大)
日本建築学会・屋外空気環境小委員会・検証用ベンチマーク実施WGでは、LESによる市街地風環境の予測のためのガイドライン策定を目指している。そのため、単体建物、モデル街区及び実在市街地周辺の流れ場のLESを実施し、格子分割の程度、乱流モデル、流入変動風などの各種計算条件の違いが、解に及ぼす程度を系統的に検討している。本発表では、各種ベンチマークケースと現在進行中のLESについて結果を紹介する。

第51回LES研究会

日時 2018年7月13日(金) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「流入変動風の特性による建物の風圧分布に関するLES解析」
小野佳之(大林組)
従来行われてきた市街地建つ建築物の風荷重評価は、おおよそ1kmの範囲の市街地建物をモデル化し、風向別に境界層乱流を流入させて、風洞実験やLES解析により行われてきた。 ここでは、1) 数十kmの範囲の広域市街地建物をモデル化したケース、2) 風向を連続的に変化させたケースに着目し、それぞれのケースの流入変動風が建物に作用する風圧特性へ及ぼす影響について、LES解析結果に基づき考察した結果を示す。

「建物内外気流のLESにおける格子ボルツマン法の検証」
韓 梦涛(東大生研)
近年、格子ボルツマン法(Lattice Boltzmann Method, LBM)を用いた建築風環境解析例が報告されている。本研究では、室内流れ及び単体建物周辺流れを対象として、LESが組み込まれたLBM (LBM-LES) および有限体積法 (FVM-LES) を用いた解析を実施し、LBM-LESの予測精度の検証、及びFVM-LESとの一致性の検討を行う。また、両手法の計算速度と並列計算性能の比較を行う。結果としては、建物内外両方の気流解析においてLBM-LESがFVM-LESと同様な予測精度を与えられるが、LBM-LESにおいて減衰関数と壁関数の欠缺のためにFVM-LESより高い格子解像度が必要である。更に、LBM-LESにおけるMRTは、屋外気流におけるSRTの数値振動を改善する。計算性能の方、LBM-LESは、より優れた並列計算効率が表現し、特に屋外環境ケースにおいて同じ解析精度の場合にFVM-LESより大きい計算速度を与えた。

第50回LES研究会

日時 2018年5月8日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室5 (As313)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「スカラー混合を伴う平面乱流噴流の Implicit Large-Eddy Simulation」
松山新吾(JAXA)
本講演では Implicit Large-Eddy Simulation(ILES)によりスカラー混合を伴う平面乱流噴流の解析を行った結果について報告する.ILES は対流項の数値粘性によって SGS モデルを代用する手法であるが,数値粘性は格子スケール程度の数値振動を取り除くフィルタリングの機能しか果たさないため,SGS 乱流成分を陽的に考慮しない ILES では格子スケール以下の乱流は完全に除外されてしまうことになる.そこで Re = 3000 および 10000 の条件について空間高次精度スキームと格子解像度を変化させて解析を行い,マクロな統計量(平均場と変動場)にどのような影響を及ぼすかを調査し,ILES で良い結果を得るための要件などについて報告する.

「空力騒音の数値予測とその評価」
吉野 崇(本田技術研究所)
近年,燃費改善のためのパワープラントの電動化に伴いエンジン系の騒音が低下する傾向にあり,車両各部に存在する流れのはく離が起因となる風切音による騒音のさらなる低減が快適性向上のための一要因として重要であると考えられている.そのため,対策案を考える上で風切音発生の予測技術が重要となる.本発表では,風切音予測技術の確立を目的として,
1.単純流れの数値解析の再現と音伝達メカニズムの解明,
2.単純ミラーモデルを用いた流体解析手法の確立,
3.量産ミラーへの適用事例
の紹介を実施することとする.


2017年度

第49回LES研究会

日時 2018年1月9日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「LESを用いた様々なアスペクト比・大気安定度の都市キャニオンにおける乱流フラックスのモデル化に関する検討」
中島慶悟(東大生研)
本研究は、LES解析結果を用いて都市気流に関する標準k-εモデルの予測精度、乱流フラックスのモデル化の問題点を整理するとともに、その高精度化にはどのような効果を組み込む必要があるのかを明らかにすることを目的とする。本発表では、様々なアスペクト比、大気安定度の都市キャニオン気流における乱流フラックスのモデル化の妥当性について検討した結果について報告する。

「Cumulant LBMモデルおよび適合細分化格子法による汚染物質の拡散解析の高速化」
小野寺直幸(日本原子力研究開発機構)
放射性物質の拡散予測シミュレーションは社会的な関心が高く、迅速性および正確性が求められている。本研究では、計算の高速化および予測精度の向上に向けて、大規模計算に適している格子ボルツマン法による汚染物質の拡散解析手法を構築している。都市の気流計算はレイノルズ数が高いため、LBMではサブグリッドスケール(SGS)モデルの導入が必須とされていた。近年、Cumulant量を利用した衝突・緩和モデルの提案により、SGSモデルを必要としない、非常に安定かつ高精度な解析が可能なモデルが提案されている。本発表では、Cumulantモデルを用いた計算の高速化例および計算結果を示すと共に、安定性や精度の面など色々と不明確な点が多いCumulantモデルについて議論したい。

第48回LES研究会

日時 2017年11月10日(金) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「高解像街区スケールシミュレーションによる暑熱環境解析」
焼野藍子(東北大学流体科学研究所)
昨今の地球温暖化とヒートアイランド現象の複合的な影響で,日本の夏季の熱環境は年々悪化しており,人々の多く集まる都市街区内や公共施設周辺での暑熱環境の定量的な評価手法が求められている.国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)では,樹木の流体抵抗,蒸散過程及び三次元放射過程を考慮した樹木モデルを大気海洋結合モデルに実装し,地球シミュレータを用いた大規模な非定常数値シミュレーション技術を開発している.研究班では,文部科学省公募課題「気候変動適応技術社会実装プログラム(SI-CAT)」の枠組みとして,埼玉県熊谷市にある熊谷スポーツ文化公園を対象に,高解像度街区スケールシミュレーションを実施,2016年夏の暑熱観測結果との比較を行った.

「非一様な森林配置が大気接地層の抗力係数に与える影響」
中尾圭佑(電力中央研究所)
数値気象モデルの最下層の境界条件では、土地利用情報が固有の抗力係数と一対一対応している。しかし、建物や森林などの土地利用は、その配置や形状特性が熱・物質輸送に影響することから、単一の抵抗要素とは考えにくい。これらの現象解明に向けて、大気接地層のLESが近年盛んに行われてきている。本研究紹介では、森林が非一様に配置された際の抗力係数の変化について、LESを用いて感度解析した結果を報告する。森林配置の変化により広域の抗力係数が変化することを示すとともに、局所的な抗力係数の特性について考察する。

第47回LES研究会

日時 2017年9月12日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「剥離・再付着を伴う乱流境界層のDNSとモデリング」
阿部浩幸(JAXA)
我々のグループで進めている剥離・再付着を伴う平板乱流境界層のDNSの代表的な結果とそのDNSデータを用いた乱流モデル(k-εモデル)の開発状況について紹介する.

「乱流応力輸送における回転およびヘリシティの効果」
稲垣和寛(東大生研)
乱流における系の回転の効果はこれまでにも多く研究されている。工学的な乱流においても、例えば回転を伴った円管内の乱流の研究は、線形の渦粘性モデルでは記述が困難な流れ場としてよく知られている。特に上流で強い旋回を与えられた流体の直円管内の流れでは、主流速度が管軸付近で凹みを持ち、それが下流まで長く維持されるという特徴的な流れ場が形成される。こうした流れ場を再現するために、Reynolds応力におけるヘリシティの寄与を考えるモデルが提案されている。本講演では系の回転とヘリカルな外力を与えた直方体領域における非一様乱流の数値計算をLESを用いて行った結果を示す。この数値計算の結果を用いて、ヘリシティの効果を含むモデルの物理的な起源をReynolds応力の輸送方程式の観点から探る。最近こうしたヘリシティの効果がSGS応力に対しても提案されており、それらについても紹介する。

第46回LES研究会

日時 2017年7月14日(金) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「格子幅自己認識型SGS応力及びSGS燃焼モデル」
店橋 護(東京工業大学)
乱流のスケール間エネルギー輸送の観点から開発された格子幅自己認識型SGS応力モデルでは,コルモゴロフ・スケールに対するLES格子幅を自己認識することでモデル定数を制御している.ここでは,このモデルを壁乱流に適用するために,壁面近傍のGS-SGSエネルギー輸送を詳細に検討した結果を紹介する.また,格子幅を自己認識する考え方をSGS燃焼モデルに拡張した格子幅自己認識型Fractal dynamic SGS燃焼モデルを紹介し,噴流予混合火炎や旋回乱流予混合火炎のLESに適用した例を示す.

「Immersed boundary法を用いたレシプロエンジン用圧縮性LESソルバの研究開発」
南部太介(JAXA)
戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「革新的燃焼技術」において、発表者らは自動車用レシプロエンジンを主な解析対象としたCFD解析ソルバ「HINOCA」の研究開発を進めている。本ソルバの特徴としては、圧縮性LESを用いていること、また格子生成に関する計算コストを最小限とするために等間隔直交格子を用い、境界埋め込み法(immersed boundary (IB)法)により壁面境界の解析を行っていることが挙げられる。本発表では、測定値との比較を行った解析例を幾つか示しつつ、本ソルバの現状を紹介する。

第45回LES研究会

日時 2017年5月9日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「電磁流体乱流のSGSモデル」
半場藤弘(東大生研)
プラズマ気体などの電導性流体では磁場の配位が流体運動に影響を及ぼす。磁場の拡散率が小さい高磁気レイノルズ数の流れでは、速度場だけでなく磁場も乱れた状態となる。そのような電磁流体(MHD)乱流のモデル化と、スマゴリンスキーモデルを拡張したSGSモデルの導出の試みを説明する。またレイノルズ平均モデルの検証のためのチャネル乱流のLESについて紹介する。

「高温プラズマ実験装置"LHD"中の圧力駆動型不安定性・非線形飽和のラージ・エディ・シミュレーション」
三浦英昭(核融合研)
大型ヘリカル装置(LHD)は、高温プラズマを閉じ込めて核融合を目指すための実験装置である。LHD中でプラズマを安定に閉じ込めるための最も重要な課題の一つは、圧力駆動型不安定性による閉じ込め磁場の破壊の回避である。この圧力駆動型不安定性を模擬するための有力な手段として、ラージ・エディ・シミュレーション(LES)に注目している。この発表では、LHD中の圧力駆動型不安定性の概略、MHDモデルの破綻と2流体MHDモデルの導入、2流体MHDの性質、2流体MHDモデルのLESについての現状を紹介する。


2016年度

第44回LES研究会

日時 2017年1月10日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「T型流路内における乱流温度混合の数値解析に関する研究」
服部博文(名古屋工業大学)
2つの流路がT型に交差するT型流路は,エアコンや工場等の流路配管に多く見られる流れ場であり,そこにおける温度混合状態を把握することは,混合によって任意の温度をもつ流体利用や,交差部における熱応力の集中による配管破断現象を防止すること等,重要な知見となる.本話題では,2つの流路でそれぞれ異なる温度を伴う発達乱流を設定し,それらのT型流路における乱流温度混合過程を,先ず直接数値シミュレーション(DNS)を実行することによって基本をデータを取得して現象を理解したこと,次に,同様な場でラージエディシミュレーション(LES)とレイノルズ平均モデルによるシミュレーション(RANS)を実行し,乱流モデルの予測評価を行ったことについて述べる.

「様々なヘリシティを通して構造効果を組み入れたサブグリッド・スケール・モデリング」
横井喜充(東大生研)
ヘリシティ効果に基づくサブグリッド・スケール(SGS)モデルが紹介される.数学的・数値スキーム的手続きに基づく通常のSGSモデルと違い,これらのモデルは乱流の局所的な対称性の破れ(流れ方向の渦や磁束など)の物理に基づくモデルである.わかりやすい例として,流体乱流中での非一様ヘリシティの効果が論じられる.回転ヘリカル乱流の直接数値計算を用いて,平均運動量輸送における非一様ヘリシティの効果とその効果のモデリングが検証される.このヘリシティ効果の物理的起源も議論される.別の例としては,電磁流体乱流中での諸ヘリシティの効果が議論される.SGSモデルの磁気リコネクションへの応用が簡単に紹介される.

第43回LES研究会

日時 2016年11月11日(金) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「壁面一様吹出し/吸込みの空間発達乱流境界層への影響」
亀谷幸憲(東大生研)
航空機・鉄道をはじめ,輸送機は機体表面に流体摩擦抵抗を生じ,エネルギー消費の観点から環境負荷の要因となっている.本研究では摩擦抵抗低減制御を目的とし,壁面一様吹出し及び吸込みを伴う空間発達乱流境界層のラージエディシミュレーション(LES)を行う.吹出し及び吸込み制御が,空間発達乱流境界層の乱流構造に与える影響を,統計量及びスペクトル解析の結果から考察する.

「乱流フラックスのコレスキー分解によるスカラー変動を含む変動風生成法の開発」
大風 翼(東京工業大学)
近年、メソ気象モデルを用いた気象スケールの解析結果を都市・建築スケールのLES へ接続しようという試みもなされ、メソ気象解析により得られる乱流統計量を満たす流入境界条件を生成する研究も精力的に行われている。大気安定度を考慮したLESでは、風速だけでなく温度や濃度等のスカラー変動を考慮した流入変動風の生成が必要である。本研究では、Xie and Castroにより提案されたレイノルズ応力のコレスキー分解により人工的に変動風を生成する手法を拡張し、スカラー変動を考慮した変動風を人工的に生成する手法を開発したので、その結果を報告する。

第42回LES研究会

日時 2016年9月20日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「トンネル内走行時の高速列車に生じる変動空気力を解明するためのLES」
中出孝次(鉄道総合技術研究所)
高速鉄道車両がトンネル内を走行する際には、車両の左右方向に変動空気力が発生する。この変動空気力は車両動揺の原因となり、新幹線の高速化においては乗り心地の面から重要な課題となる。現在の列車速度では、車体振動制御技術によって車両動揺の低減が実現されており、乗り心地の問題は生じていないが、将来の速度向上においては、変動空気力そのものの低減も期待されている。本研究では、単純形状車両モデル周りの流れのLESを実施し、変動空気力の発生メカニズムを検討した。LESにより得られた流れ場からは車両周りの蛇行流れが観察され、この蛇行流れによって変動空気力が生じると考えられた。本発表では、変動空気力を解明するために実施した単純形状車両モデル周りの流れのLESと変動空気力発生メカニズムについて紹介する。

「HDD内乱流のLESと複雑乱流のテストケースについて」
小尾晋之介(慶應義塾大学)
ハードディスクドライブ(HDD)の内部には狭隘部で高速回転する複数の円盤により複雑な乱流場が発達する。ディスク、RWアームなどの構造物は乱流にさらされることで振動し、データの読み書きの障害となる。LESによりHDD内部の流れの概要を理解するとともに振動の原因を提言する方策について考える。話題提供の後半には、比較的単純な形状で複雑な乱流場を形成する半円オリフィス付き円管内乱流について実験データベースの紹介と乱流モデリングの難しさについて紹介する。

第41回LES研究会

日時 2016年7月8日(金) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室5 (As313)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「空間フィルタリング・リスケーリング手法によるWRF-LES解析結果への高周波風速変動成分の付加」
河合英徳(東京工業大学)
都市・建築の耐風性能,熱環境等の予測において,より広域の影響を考慮するために,気象モデルとLESのハイブリッド解析が試みられている。しかしながら,気象モデルで得られた解析結果は空間解像度が相対的に粗いことから,LESにより流速の詳細な時間変動を得るためには,気象モデルの解に高周波の風速変動成分を適切なスケールで付加することが課題となる。本研究では気象モデルの解のように比較的粗い空間解像度で解かれ,低い周波数で変動する風速の変動を空間フィルタリングによって粗視化された流れ場ととらえ,空間フィルタリングとリスケーリングを用いて風速の高周波変動成分を付加する方法を提案した。本発表では空間フィルタリングされた乱流境界層を流入風に用いた解析によるa Priori testとWRF-LESへの高周波風速変動成分の付加の検討について報告する。

「埋め込み境界法に基づく壁法則併用型LES壁面モデル」
鵜沢 憲(東京大学)
複雑形状周りの高レイノルズ数流れを現実的な時間内に解析可能とする簡便なLES壁面モデルの開発を進めている。本発表では、大規模並列計算に適した埋め込み境界法と壁法則を併用するモデルを紹介するとともに、カノニカルな流れを対象としたいくつかの検証結果について報告する。

第40回LES研究会

日時 2016年5月10日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「キャビティ空間における汚染物質濃度変動に関する高解像度LES」
菊本英紀(東京大学)
都市や建物内において多く見出されるキャビティ状の空間は、一般に低い換気性能をもつ。そのような空間内で環境汚染物質が放出された場合には、濃度プルームが高い濃度を維持したまま長期にわたって滞留する。特に危険性物質の発生時には、平均濃度のみならず瞬時的な高濃度現象の評価が重要となる。LESは、乱流場の非定常性を含めた高精度予測を実現する有用な手法であるが、汚染物質の発生源近傍では一般に流れ場よりも濃度場の空間スケールが小さく、必ずしも汚染物質の拡散現象を十分な解像度で捉えることが容易でない。そこで本発表では、キャビティ空間におけるトレーサーガスの拡散実験とともに、高い空間解像度をもつ解析格子を用いたLESを実施し、汚染物質濃度の変動強度や頻度分布、パワースペクトルなどの観点からLESの解析精度とその課題を検討した結果を報告する。

「ポンプ吸込み水槽の吸込渦の起源および発生メカニズム」
山出吉伸(みずほ情報総研)
ポンプ吸込水槽に発生する吸込渦はポンプシステムの騒音・振動や損傷の原因となる。したがって、ポンプ吸込水槽の設計の段階で吸込渦発生の条件を把握しておく必要があり、このためにはその発生メカニズムを理解する必要がある。本研究の目的は、吸込み水槽に発生する吸込渦の起源および発生メカニズムの解明であり、このため、直径100mmのポンプ配管を有するポンプ吸込水槽の内部流れに対し、最大20億グリッドの計算格子を用いたLES解析を実施し、吸込渦の非定常挙動を分析した。本講演では、吸込渦の起源について定性的に解説するとともに、渦中心の力学バランスに関する定量的な分析結果を示し、これらの分析結果より得られた吸込渦の発生メカニズムの仮説について解説する。


2015年度

第39回LES研究会

日時 2016年1月12日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「台風全域LES」
伊藤純至(気象研究所)
台風の地面付近(台風境界層)において、突風をもたらすサブkmスケールのロール構造の存在が、観測によって示唆されている。1000kmスケールに及ぶ台風の大規模循環を再現する気象モデルによるシミュレーションでは、台風境界層内の微細構造の解像はこれまで困難であったが、本研究では「京」コンピューターの活用により、台風全域を含む計算領域において、気象モデルの水平解像度をLESとみなせる100mまで高めたシミュレーションを実現した。再現された台風境界層には2種類のロール構造がみられ、それらの特徴を調べた。

「重合移動格子による複雑物体周りの計算と高速化について」
大橋訓英(海上技術安全研究所)
複雑形状周りの流場計算には主に非構造格子と重合格子の二つの手法が考えられる。重合格子手法では複数の格子を組み合わせ、格子間の補間情報を生成し、補間情報に基づき流場の計算を行う。始めに重合情報の生成法と構造格子に基づく流場計算手法の概要を述べ、その後、船舶周り流れへの適用例、重合格子へのフルマルチグリッド手法適用による高速化、運動を伴う物体周り流れへの適用例をRANSの乱流モデルによる違いとともに紹介する。

第38回LES研究会

日時 2015年11月13日(金) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「WRF-LESによる中立大気接地層の乱流構造解析」
服部康男(電力中央研究所)
中立条件下での接地層を含む地表面近傍における大気境界層の乱流構造の検討は,数値気象モデルの表現力向上や高Re数条件への壁乱流構造への普遍性への言及などを視野に進められている(Marusic et al. 2010).主流方向に伸張した等運動量流体塊による大規模流体運動(Very Large-Scale Motion, VLSM)の乱流生成への寄与を暴いている(Hutchins, Marusic 2007).一方で,VLSMの発生起源については,大気接地層上空の擾乱(detached eddies)の地表面近傍への侵入によるtop-down運動(e.g. Hogstrom et al. 2002)と地表面近傍に発達した縦渦の重畳構造の発達によるbottom-up運動(e.g. Kunkel, Marusic 2006)といった鉛直構造に相反する解釈を抱えている.本報告は,VLSMの発生起源の解明に資するべく,高解像度を付与した数値気象モデルWRFによるLES(WRF-LES)を用いた実気象場の再現を通じて,中立条件下での大気境界層内鉛直構造と地表面近傍での大規模流体運動・乱流生成機構との関連を論ずる.

「LES/RANSハイブリッド法を用いたロケットフェアリング遷音速流れの解析」
堤 誠司(JAXA)
ロケットはリフトオフから衛星切り離しまでの間に様々な振動,衝撃,音響振動に晒される.これらの中で主に流体変動が引き金となって発生するのは音響振動であり,リフトオフ時と遷音速飛行時の2回大きな音響振動レベルが現れることがフライトデータから分かっている.前者はエンジン排気噴流に起因した空力騒音が機体を音響加振することによって発生する.一方,後者は遷音速バフェットが原因であり,衝撃波やその背後の剥離流れ,また乱流境界層の変動や突起物からの剥離流れが機体を加振する.ロケット設計時には音響振動レベルを事前に予測し,かつ低減化することが求められる.後者の遷音速バフェットに着目すると,現状では半経験的な予測式,風洞試験,また過去のフライトデータを利用するしか設計解析の手段がないことから,我々はCFDによる第一原理に基づいた定性的,かつ定量的な設計解析手法の構築を目指した研究開発を進めている.コーン/シリンダ形状をした一般的なロケットフェアリング形状の遷音速流れを対象とし,LES/RANSハイブリッドモデルの1つであるImproved Delayed Detached Eddy Simulation(IDDES)の適用を進めている.そして,JAXAの2m×2m遷音速風洞にて取得した時系列PIVや非定常PSPの結果を利用してValidation&Verificationを行っている.対象とする流れ場は膨張扇による加速層流化や薄い剥離泡を伴う衝撃波/乱流境界層干渉が生じる複雑な流れ構造をしており,本発表では現状の計算結果とそこから得られた課題を紹介する.

第37回LES研究会

日時 2015年9月8日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「LBMを用いた中立都市大気境界層の相似性の検討」
稲垣厚至(東京工業大学)
本研究はLBMに基づくLES数値計算を用いて,自由発達する都市乱流境界層内の乱流統計量及び瞬間構造の特性について検討するものである.十分な厚みを持った境界層高度を発達させるため,19.2km x 4.8km x 1kmの計算領域を確保した.地表面には実際の東京都臨海部の建物形状を与え,これを空間格子2mで解像した.結果として,最大500mまで中立乱流境界層が発達した.乱流境界層内の乱流統計量は,地表面付近ではバルクな建物分布特性に依存したプロファイルが形成されるが,都市のような非常に大きな粗度要素を用いても,0.6δより上では粗度要素に依存しない,境界層高度と外層風速のみで規格化される層が形成されることが示された.境界層内では筋状の乱流組織構造が発達し,その代表幅が境界層高度及び局所的なシアの強さに依って規定されることを示した.

「マイクロデバイスを用いた輸送機器・流体機器の流体制御に関するLES」
佐藤 允(JAXA宇宙科学研究所)
我々のグループでは,「形状工夫による流体機器設計」を超えた「マイクロデバイスによる流体制御を利用した流体機器設計」という新たな概念を提案することを目標とし,輸送機器・流体機器に対する実証研究を行っている.本講演では,マイクロデバイスとしてDBDプラズマアクチュエータを用いた剥離流れ制御の数値解析結果について紹介する.はじめに,幅広いスケールにおける翼周り剥離制御の流体制御メカニズムと,空力性能に対するアクチュエータ設計条件の影響について示す.加えて,実用問題への適用例として,風車等の回転機器周りの流れや,一般形状を対象とした流体制御について紹介する.

第36回LES研究会

日時 2015年7月10日(金) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「乱流の階層構造に基づく格子幅自己認識型SGSモデル」
福島直哉(東京大学)
高レイノルズ数乱流の直接数値計算結果から乱流の階層構造とスケール間のエネルギー輸送機構を明らかにするとともに,局所平衡の仮定に基づき格子幅自己認識型SGSモデル(Scale Self-Recognition Mixed SGS Model)を構築し,各種乱流場を対象として静的・動的評価を行い,格子幅自己認識型SGSモデルの有効性を示す。

「Explicit-MPS法を用いた固気液三相流計算手法の開発」
高橋亮平(東京理科大学)
界面の取り扱いに特化したExplicit-MPS法に基づく固気液三相流計算手法の開発および検証を行った。本計算手法では固・気・液相を独立にカップリングすることが可能であり、液相をベースとする固液二相・気液二相・固気液三相流計算について、実験値との妥当な一致が確認された。

第35回LES研究会

日時 2015年5月12日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「楕円形バーガーズ渦周りのSGSエネルギー輸送」
小林宏充(慶応義塾大学)
乱流中の渦の断面は楕円形のバーガーズ渦に近いことが知られている。そのような渦の解析解を用いて,渦周りのSGSエネルギー輸送を検討した。Leonard, cross, Reynolds項,Germanoによるそれらの修正版,Bardinaモデルなど,渦周りでどのようなエネルギー輸送をしているか,解析的に検討した結果を紹介する。

「鉛直加熱平板に沿って発達する自然対流境界層の特性」
中尾圭佑(電力中央研究所)
鉛直加熱平板に沿って発達する自然対流境界層は代表的な浮力流動場の一つであり、その熱伝達特性が火災シミュレーションの境界モデルにも適用されている。本境界層を取り扱う数値計算は多くなされているものの、未解明な部分が残されている。本日は、LESによる本境界層の再現結果と、流れの諸特性について紹介をする。


2014年度

第34回LES研究会

日時 2015年1月13日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「LESデータベースを用いた都市キャニオン内外におけるRANSの予測精度評価」
中島慶悟(東大生研)
本研究では、都市空間に適用可能な乱流モデルの開発を目的として都市キャニオン内外を対象としたLESデータベースの作成を行っている。本発表では、作成したLESデータベースを用いて都市キャニオン内外におけるRANSの予測精度評価を行った結果について紹介する。

「非線形構成方程式を用いた三次元壁面乱流噴流の数値解析」
石向桂一(JAXA)
三次元壁面乱流噴流は,基礎的乱流場でありながら壁面近傍でレイノルズ応力の強い非等方性が生じるため,汎用的に用いられている既存の乱流モデルでは,流れ場の再現が困難である.そこで,三次元壁面乱流噴流に特化したレイノルズ応力の非線形構成方程式を導入し,三次元壁面乱流噴流を含む様々な流れ場で検証した結果を紹介する.

第33回LES研究会

日時 2014年11月14日(金) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「建物群上で発達するダストデビルのLES数値解析」
居石貴史(東京工業大学)
地表面加熱により発生するダストデビルについて、地表面幾何の影響をLESを用いて検討する。地表面が平面および建物群である場合について比較をする。

「有限要素法による周波数領域での音響解析」
Yang GUO(東大生研)
有限要素法による周波数領域での音響解析について紹介します。支配方程式、音源項、メッシュ解像度、境界条件、マトリックスソルバー等話題を提供します。また、適用事例として、遠心ファンから発生する騒音および自動車車内騒音に対する解析結果を紹介します。

第32回LES研究会

日時 2014年9月30日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「LESによる高層建築物の変動風圧評価」
吉川 優(大成建設)
現在、建築物の耐風設計にCFDの適用が期待されている。設計用風荷重の評価にあたっては、建築物に作用する変動風圧力を精度よく求める必要があり、LESが合理的である。ここでは、高層建築物の変動風圧力を対象とし、特に非構造格子を用いたLES計算結果、また実験値との比較に基づく精度検証結果を報告する。

「実在複雑地形周りの風の流れのLES」
丸山勇祐(前田建設)
風力発電装置をはじめ風の影響を受けやすい構造物が複雑地形上に建設されるようになってきている。これらの耐風設計を考える上では、地形による平均風速の割増だけでなく、疲労等の設計に重要となってくる乱れの評価も重要である。乱れまで正しく評価するためにはLESによる非定常解析が必要となってくる。ここでは、複数点で観測が行われている実在複雑地形を対象としてLESを実施し、複雑地形周りのCFDを行う際の課題(流入変動風、地表面の被覆状態の再現等)について検討した事例を紹介する。

第31回LES研究会

日時 2014年7月11日(金) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「乱流の準直接計算手法の産業応用」
山出吉伸(みずほ情報総研)
乱流の準直接計算の産業応用を目的として開発された流体解析コード(FrontFlow/blue、以下FFB)の特長およびこれを用いた計算事例を紹介します。FFBはLarge Eddy Simulationをベースとする有限要素法流体解析コードで、最大1000億規模の大規模解析に対応可能であり、これまでに、300億点の計算格子を用いた実用計算を「京」において実施した実績を有します。実用問題における比較的高いレイノルズ数(現時点で準直接計算が可能なレイノルズ数は10の6乗オーダー)の流れに対する準直接計算を実行するためには、精度の高い計算手法を適用することに加え、大規模なデータを容易にハンドリングする技術が求められます。講演では、1000億規模の計算を実現するための要素技術について紹介するとともに、FFBを用いた最新の計算事例および産業応用を広めていく上での今後の課題を示します。

「建設会社におけるLESによる煙流動の解析事例の紹介」
中濱慎司(大成建設)
従来,建設分野での煙流動解析は二層ゾーンモデルが中心であったが,NIST(National Institute of Standard and Technology:米国国立標準技術研究所)が開発したFDS(Fire Dynamics Simulator)によって,LESによる煙流動解析が増えてきている。今回の研究会では,長大トンネルでの煙流動解析,エスカレータ斜坑での鋼材温度予測,戸建て住宅での避難安全性能評価といった,建設会社としてのLESによる煙流動の解析事例を紹介する。

第30回LES研究会

日時 2014年5月13日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「長さスケールを含まない1方程式型サブグリッドスケールモデル」
小山省司(東大生研)
長さスケールを含まない1方程式型サブグリッドスケールモデルを紹介する。本研究で提案したモデルは、フィルター幅や壁面からの距離を含まない。従来のモデルとともに、チャネル流とレイリー・ベナール対流に適用した計算結果を提示する。

「航空流体工学分野へのデータ同化技術の応用」
加藤博司(JAXA)
データ同化は、実験・観測、数値モデルを統合し、複雑な実現象を表現する道具である。データ同化は、複雑な実現象を扱う気象海洋分野で発展を続け、近年では、様々な分野での応用展開が進んでいる。一方、流体工学分野では、実験、数値モデルの比較検証による相補的アプローチが主流であり、実験・数値モデルの統合化アプローチであるデータ同化の応用はあまり多くない。発表者は、現在、航空流体工学分野でデータ同化手法を利用した「適応型シミュレーション」の開発を進めている。実際のものづくりに貢献することが求められる流体工学分野で、データ同化はどう活用できるのか?発表者がこれまで行ってきた研究事例を紹介し、今後の課題も示す。


2013年度

第29回LES研究会

日時 2014年1月14日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「圧縮性乱流に対するDNSとSGSモデル開発」
岡本正芳(静岡大学)
圧縮性壁乱流の直接数値計算およびサブグリッドモデル開発についてお話しします。特に前者では壁面温度条件をいろいろ変化させた圧縮性正方形ダクト内乱流における計算結果を中心に提示する、後者は2年ほど前の状況から大きな進展はないですがコヒーレント構造型の1方程式型サブグリッドモデルについて説明していく。

「LESによる煙突からの排ガス上昇過程の再現」
瀧本浩史(電力中央研究所)
発電所からの排ガス拡散予測は,LESの導入により徐々に精度が高まりつつあるが,計算領域に対して,煙突など煙源近傍の構造物のスケールは非常に小さく,適切な取り扱いが困難である。本研究では特に,濃度予測に対する煙突周囲の格子設定の影響について検討を行う。

第28回LES研究会

日時 2013年11月8日(金) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「植生を有する流れ場のLESモデルの検討」
平岡久司(京都大学)
植生を有する流れ場のLESモデルの作成を試みた。以前のモデルは基礎式から作成したものではないため、基礎式からgrid scaleの非圧縮性の式、運動量保存式とsubgrid scaleの乱流エネルギー式を導きだした。これらの式に現れる未知量をモデル化した。乱流拡散項は統一したモデル化で表した。wake production項は解析的に導出された。wake dissipation項は、Yoshizawa, Okamotoが導きだした代表長さと粘性散逸の関係式からモデル化された。このモデルは植生のある開水路実験データと比較された。また、time stepのensemble乱流エネルギーに与える影響についても考察した。

「噴霧燃焼場のlarge-eddy simulation」
渡邊裕章(電力中央研究所)
噴霧燃焼場を対象とするLESを実現するため、著者らの研究グループで行ってきた混相燃焼流のための燃焼モデルの開発、すす・NOxの生成モデルに関する検討、および、ハーフスケールガスタービン燃焼器を対象としたLESによる、これらのモデルの検証状況について紹介する。

第27回LES研究会

日時 2013年9月17日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「気象モデルのTerra Incognitaのための乱流パラメタリゼーションの開発とテスト」
伊藤純至(東京大学)
従来、数値気象モデルは一般的に、鉛直格子間隔を数10mとする一方で、水平格子間隔は数kmより粗く設定し、サブグリッドスケールの乱流は鉛直1次元カラムでのレイノルズ平均によるパラメタリゼーションが利用された。近年、水平格子間隔が向上し、乱流渦のスケールと同程度に設定することが可能になった。このとき、グリッド上で乱流渦の一部が解像されるため、従来の鉛直1次元のパラメタリゼーションの利用は適切でない。しかし水平格子間隔はLESとみなせるほど細かくない。このような解像度は気象モデルのTerra Incognita(未知の領域)と呼ばれ、乱流をどのようにパラメタライズするべきかよくわかっていない。
そのためTerra Incognitaとなる水平格子間隔で利用できるパラメタリゼーションを、より高解像度のLES結果をもとに検討している。検討したパラメタリゼーションを、3次元数値モデルに組み込み、時間積分を行うテストをしたところ、LES結果を粗視化したレファレンスに整合する結果が得られた。

「LESによる建築物の風荷重評価 ―三次元角柱側面に発生するピーク負圧について―」
小野佳之(大林組)
近年、建築分野において、流体計算(LES)による建築物の風荷重評価の実用化が急速に進められており、建物に作用する変動風力やピーク風圧に関して、解析結果と風洞実験結果との比較・検証が行われている。本発表では、その中でも基本的な三次元角柱を取り上げ、側面に発生するピーク負圧の発生要因や、関連する接近乱流の特性についてLES解析により考察した結果について紹介する。

第26回LES研究会

日時 2013年7月12日(金) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「オープンソースCFDの現状と乱流解析ベンチマーク」
北風慎吾(アライドエンジニアリング)
学術研究のみならずメーカーの設計開発の現場でCFDが広く活用されるようになって久しいが、従来の市販コードや内製コードのみならず、近年では汎用的に使用することを目的としたオープンソースのコードが欧州を中心にして、急速に台頭してきている。本発表では国内でも適用例が増えつつあるOpenFOAMを題材に著者のこれまでの取り組みと、オープンソースCFDの現状について紹介する。

「コヒーレント構造モデルの概要とその応用例」
小林宏充(慶応義塾大学)
LESにおけるサブグリッドモデルとして,ダイナミックモデルのように一様な方向に平均を取ることなく,局所的な情報のみでモデル係数を得る試みがなされてきた。その一例として乱流中の渦構造に着目し,その渦の周りでグリッドスケールからサブグリッドスケールへのエネルギー輸送が起こることに着目したコヒーレント構造モデルについて概説し,その応用例を紹介したい。

第25回LES研究会

日時 2013年5月14日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「横風を受ける鉄道車両周りの流れのLES」
中出孝次(鉄道総合技術研究所)
強風時の鉄道車両の安全・安定輸送を実現するためには、横風に対する車両空力特性を解明することが重要である。通常、空力特性は静止車両模型を用いた風洞実験によって評価しているが、地面に対する列車の走行が空力特性に与える影響についての知見は多くはない。本研究では、横風空力特性への車両走行の影響を調べるための基礎検討として、平地上の乱流境界層の中を走行する単純形状車両周りの流れのLESを実施した。計算方法、走行車両模型を用いた風洞実験との比較、さらに走行車両と静止車両の計算結果の比較について紹介する。

「コヒーレント構造スマゴリンスキーモデルを用いた格子ボルツマン法による大規模乱流計算」
小野寺直幸(東京工業大学)
東京都心部などは、高層ビルが立ち並ぶ複雑な形状をしており、詳細な気流を解析するためには高解像度格子による大規模気流計算が必要となる。本研究では格子ボルツマン法に対して、コヒーレント構造スマゴリンスキーモデルを適用することで、高いレイノルズ数の乱流解析を可能とした。本発表では大規模計算の例を紹介すると共に、格子ボルツマン法による乱流計算の問題点について議論したい。


2012年度

第24回LES研究会

日時 2013年1月8日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「風力発電における複雑地形乱流風のLES」
神尾武史(東京大学)
本発表では,風力発電を目的とした複雑地形上のLES風況シミュレーションについて,発表者の現在までの研究の成果や課題などを紹介する.複雑地形による強い乱流は,発電量の減少や発電機の故障など,風力発電にとって重大な問題を引き起こす.しかし,計測による評価にも限界があることから,LESをはじめとする数値流体解析による評価への期待は大きい.また,そのほかの風力発電関連の数値流体解析研究の話題や,より一般的な風力発電の最近の話題についても紹介したい.

「LESにおけるsubgrid-scaleでの濃度分散評価手法の検討」
菊本英紀(東大生研)
LESを用いた化学反応を伴う大気汚染物質拡散の数値予測モデルを開発している。その中でも、汚染物質間の二次反応速度を求める際には、反応物質の混合度の尺度としてsubgrid-scale (SGS)での濃度共分散を評価しなくてはならない。本発表では、都市ストリートキャニオンを模擬したチャンバー内での不活性ガスの拡散実験とそれに対応したLESの解析結果を報告し、SGSでの濃度分散を輸送方程式により評価する手法について議論を行いたい。

第23回LES研究会

日時 2012年11月9日(金) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「LES技術を活用した数値気象モデルの開発 - terra incognitaへの挑戦 -」
服部康男(電力中央研究所)
本発表では,数値気象モデルにLESを導入する際のハードルとなっている,GS成分が乱流生成を十分に捉えられない地表面近傍へのSGSモデルの構築(terra incognita)に関する検討結果を紹介する.大気接地層を風洞実験で模擬し,その乱流構造をPIVにより同定することで,モデル構築に必要な知見を蓄積している.この知見は,高Re数乱流を対象としたLESにも有益な知見を与えるものである.

「レイノルズ相似則の再訪(乱流スカラー束の予測と制御)」
長谷川洋介(東大生研)
レイノルズ(1874)は,せん断乱流中における運動量輸送とスカラー輸送の相似性に初めて言及した.このレイノルズ相似則は,現在の工学乱流における熱・物質輸送の予測の最も重要な概念となっている.実際,RANSやLESで不可欠であるサブグリッドの乱流スカラー束のモデリングでは,レイノルズ相似則に基づき,乱流プラントル数(もしくは乱流シュミット数)を一定とするモデルが広く用いられている.しかし,レイノルズ相似則は,混合長モデルに基づき提案されたもので,その理論的根拠は乏しい.本発表では,発表者の過去の研究事例より,壁乱流熱伝達において乱流プラントル数が1から大きく変化するケースを取り上げ,そのモデリングの試みを紹介する.次に,流れ場を積極的に制御することで,乱流プラントル数を自在に変化させる試みを紹介する.これらを通じて,ベクトル量とスカラー量の本質的な違いを示すと共に,現代社会が直面するエネルギー・環境問題との接点を考察したい.

第22回LES研究会

日時 2012年10月2日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「LESにおけるダイナミック壁面モデル」
河合宗司(ISAS/JAXA)
本発表では,LESの壁面応力モデルをベースとし,経験的なパラメータの導入やチューニングを用いること無しに高レイノルズ数乱流境界層を正確に予測する,シンプルかつ物理的な考察に基づく新しいLESのダイナミック壁面モデルを提案する.本壁面モデルの構築では,まずlog-layerにおける乱流の長さスケールがどう変化するかに基づき,壁面モデルに含まれる2つの大きなエラー要因(LES壁面近傍の格子点での数値エラー,壁面モデルそのもののエラー) を特定し,それらのエラー要因を排除するシンプルかつ物理ベースなアプローチを提案する.

「均質媒体モデルを用いたキャビテーション解析の問題」
鈴木貴之(東大生研)
キャビテーション流れの解析手法として, 密度変化によって相の状態を表す均質媒体モデルに基づく手法が提案されており, 流れ場と密度変化を表すボイド率の変化の関係の表し方によって多くの種類のキャビテーションモデルが提案されているが, どのモデルも単独翼のキャビテーション性能を正しく予測できない. 計算において多くの過去の研究で, キャビテーションが発生すると同時に揚力が低下する傾向がみられる. 本研究では, 本質的に単独翼のキャビテーション性能を予測することは困難であることを, 理論的な考察と均質媒体モデルを用いたキャビテーション解析において現れる翼周りの運動量分布と機械的エネルギーの変化から示した.

第21回LES研究会

日時 2012年7月13日(金) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「空気清浄機吸排気による室内気流及び花粉挙動のシミュレーション」
橋本明憲(群馬大学)
空気清浄機の吸排気による室内気流をLESで解き,その流れ場に於ける花粉挙動をLagrange粒子追跡した.その手法と結果について紹介する.

「矩形貯水槽内スロッシングに対する乱流モデルの適用性評価」
鵜沢 憲(日本原子力研究開発機構)
貯水槽の水深と比較してスロッシングの振幅が大きくなると、非線形性が強くなり流体内部や水面近傍で乱れが発生する。既往研究では、乱れによるエネルギー散逸を、貯水槽形状等に依存する実験的な経験値(減衰定数)で置き換えている。本研究では、RANS や LES といった乱流モデルによりエネルギー散逸を定量的に評価し減衰定数を代替する試みについて述べる。

第20回LES研究会

日時 2012年5月8日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「ヘリシティを通して構造を組み入れたサブグリッド・スケール・モデルの可能性」
横井喜充(東大生研)
ヘリシティはエネルギーと並んで流体運動の保存量である.擬スカラー量であり,軸性ベクトルである渦度・回転に関しての対称性の破れを表現する.流れ方向の渦は代表的な乱流構造で輸送に影響を与えると考えられている.まず,ヘリシティに関するいくつかの研究を紹介する.その後,ヘリシティ密度をサブグリッド・スケールのモデルに組み込む準備的な試みについて述べる.

「強旋回を有する微粉炭燃焼場のLES」
丹野賢二(電力中央研究所)
石炭火力発電所においては、石炭は細かく粉砕された後、その反応性の低さを補うため、極めて強い旋回乱流場中で燃焼させる。当所では、このような強い旋回流を有する燃焼場にLarge-eddy simulationを適用し、微粉炭燃焼場の現象解明を進めている。本発表では、実験値との比較により、バーナ近傍の非定常流れとそれに起因する着火特性や粒子挙動について検討した結果を紹介する。


2011年度

第19回LES研究会

日時 2012年1月10日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「臨界レイノルズ数における負のマグヌス力」
武藤昌也(電力中央研究所)
LESを用いて臨界レイノルズ数近傍での回転球周りの流れ場を解析し,境界層の乱流遷移に伴う負のマグヌス揚力が捉えられた事例を紹介します.

「サブグリッドスケールモデリング:基本的概念」
吉澤 徴(東京大学名誉教授)
モデリングの基本的考え方をフィルタリングに伴う時間スケールの視点で述べる:1. 目的 2. フィルタリングの導入 3. SGSモデリングとガリレイ不変性 4. クロス項のモデリング 5. Germanoの分解 6. SGSモデリングに際しての補足事項 7. SGSモデリングの基本事項 8. スマゴリンスキーモデル 9. SGSモデリングにおける留意点 10. 時間スケールと構造関数モデル  11. RANS/LESハイブリッドモデリング

第18回LES研究会

日時 2011年11月11日(金) 14:00-17:00 (17:00より懇親会)
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「剥離を伴う平板乱流境界層のDNSおよび乱流モデルの検証」
阿部浩幸(宇宙航空研究開発機構)
我々のグループで進めている剥離を伴う平板乱流境界層のDNSの代表的な結果とそのDNSデータを用いた乱流モデル(k-εモデル)の検証結果について紹介する.

「乱流モデリング:レイノルズ平均モデリングの基本概念」
吉澤 徴(東京大学名誉教授)
レイノルズ平均モデリングを時間スケールの視点から概観する。内容は以下の通りである: 1. 目的  2. 基礎方程式  3. 平均量方程式  4. 乱流方程式  5. 陽的代数モデリング:乱流粘性型モデリング  6. 2次(乱流フラックス)モデリング  7. 高次陽的代数モデリングへの回帰  8. 陽的代数および2次各モデリングの中間型モデリング:第3のモデリング法

第17回LES研究会

日時 2011年9月27日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「低マッハ数のファンから発生する流体音の数値計算」
高山 糧(みずほ情報総研)
流体音は流速の6〜8乗に比例して増大する性質をもち、ファンの高速化において大きな障害となっている。流体音の数値計算手法としては、流れが低マッハ数の場合Lighthillアナロジに基づく流れと音の分離解法が一般に用いられるが、ファンのようなアプリケーションの分野では実験値と定量的に一致させることは容易ではない。本発表では、ファン騒音を主な題材としながら、(乱流を含む)渦変動と流体音全般の関連性についても紹介する。

「航空エンジン用低NOx燃焼器の開発」
藤原仁志(宇宙航空研究開発機構)
近年の環境問題への関心の高まりを受けて,航空機分野でも年々環境規制が厳しくなってきている.今回の発表では,航空エンジン低NOx化の流れや,弊所での開発の概要,その中でのLESを含むCFDの活用に対する期待についてお伝えしたいと思います.

第16回LES研究会

日時 2011年7月8日(金) 14:00-17:00 (17:00より懇親会)
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「圧縮性乱流に対するサブグリッドスケールモデル開発」
岡本正芳(静岡大学)
圧縮性乱流に適用するSGSエネルギー方程式を利用するタイプのSGSモデル開発に関した研究内容です。等温壁のみ、等温壁と断熱壁を有する圧縮性チャネル乱流の直接数値計算のデータを利用して、アプリオリテストとアポステリオリテスト結果を中心に話題提供する。

「積層円盤間乱流のLES」
小尾晋之介、鷲津智哉(慶応義塾大学)
円筒容器内で高速回転する積層円盤によって駆動される乱流は、ハードディスクドライブの容器内で発生する流れとヘッドやディスクなどの振動の関係を理解するための基礎的な系として過去に多くの研究者に取り上げられてきた。ハブ周辺の剛体回転領域、シュラウド内壁に発生する乱流境界層、その間に存在する大規模渦領域、二次流れ、ディスク端とシュラウドの間の狭隘部流れなど、特徴的な領域同士が相互に影響しあう複雑な流れはLESの課題として興味深い。今回の話題提供では、一枚のディスクの表面と裏面に形成される変動圧力場とディスク端を行き来する流れがシュラウドの形状変更に大きな影響を受ける様子をシミュレーションした結果を報告する。

第15回LES研究会

日時 2011年5月10日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「空間発展する種々の乱流境界層熱伝達のDNSとLES」
服部博文(名古屋工業大学)
リサイクル乱流生成法を用い,空間発展する種々の乱流境界層熱伝達場のDNSとLESを行った.DNSでは,温度成層を伴う乱流境界層や,壁面形状により誘起されるはく離・再付着を伴う乱流境界層熱伝達現象を解析し,装置実験で測定し難い詳細な壁面近くの乱流熱伝達データを取得し,それらの現象理解を深めることが出来た.本発表では,DNSによる強い安定成層を伴う乱流境界層や,はく離・再付着現象を伴う前向きステップや2次元ブロック乱流境界層の熱伝達特性の紹介や,同じ場をLESで解析した時の結果を予測精度評価として示す.

「LESによる都市キャニオン内からの汚染物質放出挙動の解明」
道岡武信(電力中央研究所)
地表面付近の汚染源から排出される大気汚染物質の都市キャニオン上空への放出メカニズムを解明することは,居住空間周辺における大気質改善策を検討する上で非常に重要である.本研究では、2次元のストリートキャニオン内外の気流・拡散場を対象としたLarge-eddy simulationにより、キャノピー内の汚染物質の上空への放出挙動について検討した。本発表では、汚染物質がキャニオンから間欠的に放出されることに着目し、汚染物質の放出と上空に発達する組織的な乱流構造との関連性などについて考察した結果を紹介する。


2010年度

第14回LES研究会

日時 2011年1月11日(火) 13:00-16:00
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「数値トルネードシミュレーターを用いて発生させた竜巻状の渦の性質について」
丸山 敬(京都大学)
数値的に竜巻状の渦を作り出すことのできるトルネードシミュレーターを用いて、種々の特徴をもつ渦を発生させた。本発表では、用いたトルネードシミュレーターの紹介と、作り出された渦がもつ特徴を示しつつ、実際の竜巻内の気流性状を考察する。

「非構造FVMにおける各種メッシュ形状が数値精度に及ぼす影響の検討」
大岡龍三(東大生研)
都市空間など複雑な流れ場を解析する場合、格子の複雑幾何形状への適合性の高さから非構造格子を用いた有限体積法(Finite Volume Method、以下、FVM)を用いる場合が多い。本研究では、複数の格子形状に対して、非構造FVMの解析精度の評価を、有限差分法(Finite Difference Method、以下、FDM)と比較することにより行い、特に勾配の界面値の補間に用いられるMuzaferijaとGosmanのDefer Correction Formulaの適用可能性についての検討を行う。本発表では、複数の格子形状に対して、非構造FVMの打ち切り誤差が明らかとするとともに、MuzaferijaとGosmanのDefer Correction Formulaを利用する上での注意事項が示す。

第13回LES研究会

日時 2010年11月12日(金) 14:00-17:00 (17:00より懇親会)
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「船体周り流れへのDESの適用」
大橋訓英(海上技術安全研究所)
船体周り流れでは、特に船体後半部において剥離を伴い、かつ、高レイノルズ数(10^6〜10^9)のため、RANSと乱流モデルによる推定手法が主となっている。一方で、斜航時等への数値シミュレーションの適用も広がり、非定常・大規模剥離を伴う流れの推定手法が必要とされていることから、船体周り流れ等にDESを適用し、計測結果との比較による精度検証を行ってきた。現状でのDESの各種モデルによる計算例を紹介するとともに、問題点について議論したい。

「LESによる二分子化学反応を伴う大気汚染物質拡散の数値解析」
菊本英紀(東大生研)
高密度化が進む現代都市において、大気汚染物質の化学反応性は大気汚染現象の予測精度に無視しえない影響を与えることが予想される。本研究では、複雑な都市街区形状を再現し、かつ一般的な大気環境下にある汚染物質の移流拡散及び化学反応の効果を取り入れた統合的な大気汚染予測システムの開発に向けて、LESにより都市街区モデルにおける汚染物質の拡散現象に乱流構造とともに二分子化学反応が与える影響を検討する。

第12回LES研究会

日時 2010年9月14日(火) 14:00-17:00
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「物体周りはく離流に対するLESの予測精度」
高木洋平(大阪大学)
鈍い物体周りに発生するはく離流の非定常挙動を数値的に予測することは工学的に重要であり、従来のRANSに代わってLESの活用が期待されている。本発表では、回転楕円体周り流れでのLES計算例と、被覆形状を変形した低風圧型電線におけるはく離挙動と抵抗の関係について報告する。

「圧縮性流体における陰的LESの活用」
石向桂一(宇宙航空研究開発機構)
衝撃波と乱流の混在した場において,中心差分系のスキームによるLESでは,流れの不連続面で計算が不安定となる.本発表では,衝撃波を捉えつつ高次精度を達成できるWCNSを用いてロケットノズル内壁に形成された後ろ向き段差を過ぎる超音速流れの陰的LESを行った結果について示す.また,拡散火炎を伴う平板境界層に対する陰的LESの活用例も紹介する.

第11回LES研究会

日時 2010年7月9日(金) 14:00-17:00 (17:00より懇親会)
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室4 (As311)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「植物/都市キャノピー乱流場における1方程式LESモデルの考察」
平岡久司(京都大学)
植物/都市キャノピー乱流場におけるバーストによる運動量交換は乱流拡散による運動量交換と同じオーダーである。RANS型の乱流モデルではバースト現象を再現できない。植物/都市キャノピー乱流場におけるsubgrid-scaleの乱流エネルギー式を連続の式、Navier-Stokesの式から導出し、1方程式LESモデルを考察する。また、LES大気境界層モデルとの接続についても考察する。

「高次精度計算手法を用いたLESの検討とGPUによる高速化」
小野寺直幸(東京工業大学)
乱流のLESを行う場合、4次精度中心差分とSGSモデルを組み合わせて計算を行う事が多い。本発表では、マルチモーメント計算手法である保存型IDO法とコンパクト差分を用いてより高次精度の離散化を行い、LESと陰的LESによるチャネル乱流の結果を比較する。またGPUを用いたLESの高速計算も行い、高次精度化や大規模計算に適したSGSモデルについて議論したい。

第10回LES研究会

日時 2010年5月11日(火) 14:00〜17:00
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「Dust Devil(塵旋風)のLES」
伊藤純至(東大大気海洋研)
LESを用いて、対流混合層とDust Devil(塵旋風)を再現し、その特性を調べた。昨年のLES研究会では、LESの計算結果を利用し、特に、Dust Devil内の物質面に着目したDust Devilの生成メカニズムの解析について発表したが、その解析をさらに発展させ、物質面の可視化と解析の高精度化を行う。またDust Devilのもつ渦度のスケーリングを試みた結果についても発表する。

「車体まわり流れ場のLES」
鬼頭幸三(東大生研)
標準スマゴリンスキーモデルによるLESと標準k-epsilonモデルを用い、平坦床下形状、準複雑床下形状をもつ車体まわり流れ場の数値解析を行ない、それぞれ解の格子依存性を評価するとともに、車両の空気力学特性の開発におけるLES計算の有用性を明らかにした。


2009年度

第9回LES研究会

日時 2010年1月12日(火) 14:00〜17:00
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「RANS/LESハイブリッド乱流計算についての最近の話題」
半場藤弘(東京大学)
高レイノルズ数の壁乱流のLESを行うために壁面近くでRANSモデルを用いるRANS/LESハイブリッド計算が提案され開発されている。DES(detached eddy simulation)はその代表例である。今回はハイブリッド乱流計算の最近の話題として、RANS/LESハイブリッドフィルターに関する研究(Germano 2004)と、RANSとLESのモデルをつなげるPITM(partially-integrated transport model)の方法(Chaouat and Schiestel 2005)について紹介する。

「自乗量保存形移流項差分スキームの最近の進展」
森西洋平(名古屋工業大学)
LESやDNSによる乱流の数値計算では,できれば非物理的な数値粘性や操作を加えずに,流れの非定常数値計算を長時間安定に実施したい.それを実現する差分スキームとして,非圧縮性流れに対しては自乗量保存形の移流項差分スキームがしばしば使用されている(Morinishi et al.(JCP,1998)).最近講演者は,圧縮性流れ(Morinishi(JCP,2010))および移動格子に対しても自乗量保存形の移流項差分スキームが拡張できる事を示した.これらを含め,講演者のLESに関する最近の研究例を紹介する.

第8回LES研究会

日時 2009年11月13日(金) 14:00〜17:00 (17:00より懇親会)
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「最近のSGSモデルの進展
― dynamic modelを超えたglobal dynamic modelとは」
小林宏充(慶大)
LESにおけるSGSモデリングは,流れ場に関してGermanoによるdynamic Smagorinsky modelの提案,パッシブスカラに関してMoinらによるdynamic modelが標準化している。この手法では,モデル係数が時間と空間の関数になっており,その空間プロファイルを決めるには,一様方向に平均をして最小自乗法を用いるなど複雑物体流れには不向きであった。近年,経験的なモデル定数を1つ有するが,SGS応力のモデル化時点で空間プロファイルまでモデル化を行う局所SGSモデルがVremanによって提案された。チャネル乱流や混合層など非一様な流れ場では,Smagorinskyが仮定した局所平衡は成立しないが,流れ場全体では生成と散逸の平衡が成立するとするglobal dynamic modelがParkらによって提案された。Youらよって,パッシブスカラにも適用され,従来のdynamic modelよりも性能が良いことが示されている。流れ場全体で1つの定数のみ決めればよい,本モデリングは,複雑物体流れにおいて絶大な威力を発揮すると期待されている。今回は,このモデルの紹介および発表者が最近取り組んでいる安定で簡便な空間相関の高いSGSモデルの紹介など,最近のSGSモデルの動向も含めて話をしたい。

「風波シミュレーションにおける気液界面近傍の乱流輸送機構
 ― 陰的LESによる解析 ―」
山下 晋(東京工業大学)
風波乱流場による気液界面を通じての物理量輸送は,大気海洋及び産業分野に密接に関わっており非常に重要な役割をなしている.しかし,風波は様々なスケールの現象及び物理課程を有する非常に複雑な現象故に今だ十分にその物理量輸送機構が解明されているとはいえない.当該現象では実験または大気海洋規模のCFDの実施にはLESのような乱流モデルは必須であるといえるが,水と空気の密度差1000倍にもなる界面では従来のLESでは数値的不安定性により解析は不可能だった.そこで本研究では,CIP有限体積法が有する固有の数値粘性による陰的LESにより風波気液界面近傍の乱流輸送機構を調べた.発表では,その有効性と陰的LESによる風波計算結果について議論する予定である.

第7回LES研究会

日時 2009年9月8日(火) 14:00〜17:00
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「逆転層を有する対流境界層の乱流構造とその中での拡散挙動の解明
 〜LES解析も用いて〜」
安部 諭 (東大) 田村哲郎 (東工大)
上空に逆転層を有する対流境界層(Convective Boundary Layer)について、数値計算では解析領域の中間部に温度勾配が存在するために安定的な逆転層を再現することが困難で、境界層全体に渡る乱流構造の正確な把握は困難である。また、対流境界層での拡散では、混合層内の不安定度、逆転層の強さの影響を大きく受けるために、拡散場の系統的な把握が容易ではない。そこで、本研究では順周期境界条件を用いたLESモデルを用いて、上空の逆転層を再現し、その乱流構造を解明する。拡散場については、平均濃度、濃度変動に加え、濃度フラックスを用いて乱流構造と拡散物質の輸送特性の関連性を考察する。また、確率分布を用いて濃度変動の出現特性を明らかにすると共に、ピーク濃度を予測する上での数値解析上の課題を明らかにする。

「新幹線車両車間部から発生する空力騒音のLES解析」
水島文夫(JR東日本研究開発センター)
新幹線高速化の最大の課題は、空力騒音の低減である。乱流が計算可能なLESは、空力騒音の発生メカニズム解明に有望な手法である。新幹線の主要な音源部位の一つである車間部を対象に、1億5000万点規模のLES解析を行い、微細な渦から発生する高周波広帯域音の空力騒音の解析を実現した。本件では、FrontFlow/Blueを用いた非圧縮流のLES解析と流体音源を用いた音響解析の事例紹介を通して、LESによる空力音解析の課題と産業応用の展望を考えたい。

第6回LES研究会

日時 2009年7月10日(金) 14:00〜17:00 (17:00より懇親会)
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

話題提供

「LESによるDust Devilの再現と鉛直渦度の起源の解析」
伊藤純至 (東京大学海洋研)
日中、大気が地表面によって熱せられ、対流混合層が生成される場合、Dust Devil(塵旋風)とよばれる、鉛直軸周りの小スケールの渦が地表面付近にしばしば発生する。このような鉛直渦の成因については、いくつかのメカニズムが提案されているが、現在も解明されていない。本研究ではLESを用いて数値実験を行い、数kmスケールの計算領域内に、対流混合層を再現し、その地表面付近に形成されるDust Devilの特性を調べた。一般風と地表面熱フラックスを変え、Dust Devilの生成しやすい環境について、観測と整合的な結果を得た。またDust Devilの鉛直渦度がどのようにスケーリングされるかを考察した。次に、数値実験で形成されたDust Devil内の空気塊の逆トラジェクトリー解析により、鉛直渦度の成因を解析した。一方、LESで再現されるDust Devilが観測と比較して弱いものしかできないという問題点がある。この問題点を改善するよう、いくつかの試みを行った結果を紹介する予定である。

「CFD風況解析による風車性能評価 〜数値サイトキャリブレーション〜」
神尾武史(東京大学工学系研究科 荒川研究室)
現在,風力エネルギー分野において,発電量予測や風車の最適配置などを検討する際にCFD風況解析ソフトウェアが利用されることも多くなってきている.今回は,CFD風況解析の応用であり,新たな風車性能評価手法として期待される数値サイトキャリブレーションの紹介とその課題,LESが果たす役割について議論したい.

第5回LES研究会

日時 2009年5月12日(火) 14:00〜17:00
場所 東京大学生産技術研究所 D棟6階 大セミナー室 (Dw601)

話題提供

「いくつかのSGSモデルの概要と比較検討の提案」
半場藤弘 (東京大学)
Smagorinskyモデルを改良するために、モデル係数を動的に求めるDynamicモデルの他にも、固定係数のまま壁近くを扱うコヒーレント構造モデルなどが提案されているが、いくつかの典型的なSGSモデルについて概略を説明する。また研究会の活動の試みとして、参加者がそれぞれの研究の範囲内でモデルの比較ができないかどうか提案したい。

「非定常噴霧のLESに関する相談」
木村 真(日本自動車研究所)
第2回のLES研究会では固定係数のSmagorinskyモデルを用いたディーゼル燃料噴霧のLES解析について報告した。その後改良の試みとしてDynamic Smagorinskyモデルを導入したが機能していないように思える。しかし、十分な判断ができずにいる。計算結果としては噴霧の先端到達距離の実測値との比較,可視化結果を調べている。非定常性の強い複雑な流れ場でDynamic Smagorinskyモデルをどのように適用させるのが望ましいのかという一般の課題としても議論できればうれしい。

「噴霧と火炎のLESモデル」
大島伸行 (北海道大学) 伊藤裕一 (木更津高専)
多くのエネルギー機器において燃焼反応や混合への乱流による促進効果が利用されており、その予測モデルには工学的なニーズが高い。たとえば、エンジンや燃焼器を例にとると「噴霧」と「火炎」が特に重要な要素といえるが、それらの前者は「粒子−流体の混相」、後者は「流体−流体の界面」の問題に一般化される。このような複雑乱流の問題への汎用的なアプローチとしてLESの可能性が期待されている。ここでは、「噴霧」を例として「粒子−流体の混相」を「ラグランジュ−オイラー連成モデル」として扱う方法(DDM:Discrete Droplet Model)について、その概要を紹介しLESモデル(サブグリッド空間平均)の適用について議論したい。


2008年度

第4回LES研究会

日時 2009年3月13日(金) 14:00〜17:00 (17:00より懇親会)
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「自動車に作用する非定常空気力について」
坪倉 誠 (北海道大学)
自動車の空力性能は,一般には,ドラッグ,リフト,ピッチングモーメントといった定常空気力を風洞実験で計測し,評価される.しかし近年,こういった定常空力評価の限界と,非定常特性の重要性が指摘されつつある.本発表では,LESを基盤技術として我々が最近開発を進めている非定常空力シミュレータの開発状況を紹介すると共に,このシミュレータを用いた解析実例を示す.

「風工学におけるLESの応用 ―都市型乱流境界層と物体まわりの剥離乱流」
田村哲郎(東京工業大学) 小野佳之(大林組)
風工学分野での乱流シミュレーションは、実用上大いに期待されているが、なかなかその応用範囲が広がっていかない。理由としては、予測する必要がある流体現象が非定常として取り扱わなければならず、精度の確保が容易ではないためである。都市域を想定した場合の風作用に関するLESと、建築物など、非流線形物体の空力問題に関するLESについて講演する。特にこの分野での課題として、接近する流れが非定常乱流として取り扱わなければならないこと(変動流入)が上げられる。

第3回LES研究会

日時 2009年1月13日(火) 14:00〜17:00
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室1 (An401)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「有限要素法によるLES/DESの計算例と問題点」
GUO Yang (東大生研)
有限要素法によるLESとDESのいくつかの解析を行い、これに関する問題点を紹介する。本計算は例として一様等方性乱流、チャンネル乱流、円柱周りの流れ、翼周りの乱流などを挙げられる。移流項の定式化、圧力方程式のアルゴリズム、SGSモデルとDESモデルを議論する。

「JAXAにおけるLES適用の現状と新たな取り組みの幾つか」
松尾裕一 (JAXA)
JAXAにおいて行われているロケットエンジンや航空音響問題などの実問題へのLESの適用の現状と課題を紹介するとともに,AMRやILESなどの最近の取り組みについて触れる.

第2回LES研究会

日時 2008年11月7日(金) 14:00〜17:00 (17:00より懇親会)
場所 東京大学生産技術研究所 As棟3階 中セミナー室2(As301)

1. 自己紹介 新しい参加者 一人3分程度
2. 話題提供

「差分法によるLESの問題点」
小山省司 (東大生研)
差分法によるLESにおいて、補間の仕方によって解が異なることをチャネル乱流の平均速度分布を例に示す。著者は、坪倉によるダイナミックSGSモデル(2001)を試しているなかで、自前のコードでは報告されている結果を再現できないことに気がついた。その原因が補間の違いにあったことを紹介する。

「ディーゼルエンジンのLES: ディーゼル燃料噴霧の乱流混合過程のLES解析」
木村 真 (日本自動車研究所)
ディーゼルエンジンから排出されるすすや窒素酸化物などの有害な燃焼生成物はエンジン内部で形成される温度や燃料の濃度の不均一分布に起因する.この不均一分布に大きな役割を果たしているディーゼル噴霧はその噴霧内部にも不均一な燃料液滴の分布を形成していることが実験的にも知られている.本研究では燃料液滴の不均一分布形成に乱れの運動が影響していると考え,乱れの非定常な運動が計算可能なLESを使用し,噴霧中に見られる不均一な燃料の分布が乱流の大規模組織運動によるものであることを示した.また,実測値との比較を行いディーゼル噴霧におけるLESの定量的解析の有効性も検討した.この他,現在行っているディーゼル燃焼過程のLES解析の期待と課題について簡単に紹介する.

第1回LES研究会

日時 2008年9月16日(火) 13:30〜16:30
場所 東京大学生産技術研究所 An棟4階 中セミナー室(An401)

1. 趣旨説明 半場藤弘(東大生研)
2. 自己紹介 参加者全員 一人3分程度
3. 話題提供
「乱流構造とSGSモデリング」小林宏充(慶應大日吉)
4. 意見交換 (今後の研究会の進め方など)