分子軌道

複素波動関数

シュレーディンガー方程式

\hat{H}\Psi(r,t)=i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\Psi(r,t)

において、解の波動関数を変数分離する。

\Psi(r,t)=\psi(r)\phi(t)

これを方程式に代入すれば、Eを固有値として、

\hat{H}\psi(r)=E\psi(r)
\phi(t)=\exp\(-i\frac{E}{\hbar}t\)

という関係が得られる。つまり波動関数は、空間部分の軌道関数と時間に依存する位相因子の積で表される。

\Psi(r,t)=\psi(r)\exp\(-i\frac{E}{\hbar}t\)

以下の図は波動関数の実部、

Re[\Psi(r,t)]=Re[\psi(r)\exp\(-i\frac{E}{\hbar}t\)]

を等値面で描いたものである。軌道関数が実数なら波動関数は定在波となり、複素数ならば回転するように見える。なお軌道エネルギーが高いほど振動の周期が短くなるが、下図では簡単のためすべて同一の振動数にしてある。

エチレン

ethylene1_anim.gif ethylene2_anim.gif

アリル

allyl1_anim.gif allyl2_anim.gif allyl3_anim.gif

シクロプロペニル

blob0_anim.gif cycpro1_anim.gif blob2_anim.gif

ベンゼン

benzene0.gif benzene1.gif benzene5.gif benzene2.gif benzene4.gif benzene3.gif

波動関数の実数化

形が同一で互いに逆回転している波動関数は、共役複素数の関係にある。縮退した軌道関数はどんな線形接合をとってもシュレーディンガー方程式を満たすので、複素軌道関数を足したり引いたりすることによって実関数にすることができる。たとえば、a(r), b(r)を実関数として

\psi_1(r)=a(r)+ib(r)
\psi_2(r)=a(r)-ib(r)

と表されるならば、

\psi_+=\frac1{\sqrt2}(\psi_1(r)+\psi_2(r))\\=\sqrt2a(r)
\psi_-=-i\frac1{\sqrt2}(\psi_1(r)-\psi_2(r))\\=\sqrt2b(r)

という新しい軌道関数を作ることができる。以下の図はシクロプロペニルとベンゼンのπ分子軌道をすべて実数化したものである。

シクロプロペニル

blob0_anim.gif cycpro3_anim.gif cycpro4_anim.gif

ベンゼン

benzene0.gif benzene1+5.gif benzene1-5.gif benzene2+4.gif benzene2-4.gif benzene3.gif

※図の著作権は北條博彦に属します。教育目的で使用を希望される場合はメールでご一報いただければ幸いです(ポップアップがブロックされる場合はCtlを押しながらクリック)。

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