- 生体機能の医療及び環境評価への利用
酒井康行・迫田章義・鈴木基之
近年,細胞などの生体組織の新たな利用が模索されている.本稿では,医療福祉分野においては,バイオ人工臓器のうちブタ肝細胞細胞利用型のバイオ人工肝臓について,また環境影響評価への利用においては,ヒト細胞を利用した新たな手法について,筆者らの研究を踏まえて,今後の研究の方向性について議論する.
- 円管の楕円管への再成形過程に関する数値解析
木内学・新谷賢・モスレミ ナイニ ハッサン
丸素管から異形管への再成形過程のシミュレーションを行う汎用3次元弾塑性解析法を開発した.本解析法では,スタンド間における素管の3次元的曲面を特別に定義した形状関数を用いて関数表示し,周方向の力の釣り合い,長手方向の力の釣り合い,対称面における境界条件を導入し,この変形曲面に沿って移動する各要素の変形について解析を行う.スタンド間で素管の全変形仕事率が最小化となるよう形状関数を最適化しつつ、素管の断面寸法、コーナー部曲げ半径、成形中の周方向縮み率、長手方向伸び率、肉厚増加率に与える各成形条件の影響を明らかにする。
- コンクリート運搬用ケーブルクレーンの自動運転システムに関する研究
(第2報、運搬時の振れ止め制御とリバウンド抑制制御)
藤田隆史・井上肇博・稲葉金正・栗本雅裕・石井敏之・大塚義一 コンクリートダムの建設工事おけるコンクリート運搬・打設作業は典型的な繰り返し作業でありながら熟練されたオペレータを必要とする作業であり,その自動化による合理化・省力化施工の実現が求められている.本研究では,コンクリート運搬用ケーブルクレーンを対象として,その自動運転システムを研究した.本報告では,振れ止め制御のためのオープンループ制御則とリバウンド制御のためのフィードバック制御則を提案しており,その有効性を実験とシミュレーションにより検証している.
- 三主応力試験装置を用いた堆積軟岩の変形特性に関する基礎的研究
早野公敏・佐藤剛司・古関潤一・龍岡文夫
堆積軟岩を対象とする土木工事が増加し,特に地盤の変形問題が重要視されている.そこで均質な堆積軟岩の変形特性を明らかにするために,新たに中間主応力を制御できる三主応力試験装置を開発し,角柱供試体の三方向の主ひずみを局所的に測定し,三主応力の自動制御等において,目標とした性能が得られた.また,ヤング率とポアソン比の初期構造の異方性が小さい一方で,直応力が増加する方向のヤング率は増加し,直応力が変化しない方向のヤング率はほとんど変化しないという応力状態誘導異方性を示すことを明らかにした.
- P-ベンゾキノン類とジアゾメタン類との成環付加反応およびその成環付加体と塩基の反応
務川高志・伏見邦彦・工藤一秋・白石振作
P-ベンゾキノン類とジアゾメタン類の1,3−双極成環付加反応について検討したところ,ジフェニルジアゾメタンからは脱窒素したシクロプロパン誘導体が得られた.トリメチルシリルジアゾメタンを用いると1,3−双極成環付加体のトリメチルシリル基の付け根の水素が窒素上に移動した生成物が得られた.2,5−ジ−tert−ブチル−p−ベンゾキノンとトリメチルシリルジアゾメタンとの成環付加体に水酸化ナトリウムを加えると橋頭位のtert−ブチル基が隣のカルボニル炭素に転位した異性体が得られた.
- 一般曲線座標系における非圧縮性乱流数値解析に適した差分スキーム
(第5報,修正コロケート格子系差分スキームの一般座標系への拡張と一般座標系差分スキームの保存特性の検証)
小垣哲也・小林敏雄・谷口伸行
本報では,最近,森西により提案された等間隔正規直交座標系における修正コロケート格子系差分スキームが一般座標系に拡張できることを示す.また,運動量と運動エネルギーの総量が時間的に保存されるべき2次元周期的非粘性流の数値実験を行い,これまで構成してきた一般座標系差分スキームの数値的保存特性を調査した.その結果,本報で構成した一般座標系における修正コロケート格子系差分スキームが,任意の非直交不等間隔計算格子においても,運動量および運動エネルギーの保存特性に関して十分であることがわかった.また,計算格子が直交不等間隔の場合は,従来のスタガード格子系における一般座標系差分スキームも運動量および運動エネルギーの保存特性が適切であることがわかった.