5a. 光触媒リソグラフィー

酸化チタン光触媒は、光励起により生じる還元力と酸化力により活性酸素種を生成します。そしてこの活性酸素種は、ほとんどの有機物や一部の無機物と反応し、これらを分解します。最近の私たちの研究により、この活性酸素種が空気中に拡散し、光触媒と接触していない物質をも酸化・分解することがわかりました (非接触酸化反応)(J Phys Chem B 1999, J Phys Chem B 2001, J Am Chem Soc 2006)。


光触媒による非接触酸化反応の原理(模式図)

この反応により、芳香族および脂肪族炭化水素の酸化・分解、シリコンやダイヤモンド表面の酸化、銅、銀、金表面の酸化などが可能です。また、フォトマスクと組み合わせて特定の部位にのみ光照射を行えば、数μm程度の解像度で、2分程度でパターニングを行うことができます (親水/疎水パターンの場合)。従来の深紫外光による方法と比べ、ずっと安全な近紫外光で、しかもより短い時間でパターニングすることが可能です (Langmuir 2002, J Phys Chem B 2004)。


パターニングした基板表面。左から20、15、10、5 μmの幅の線


光触媒リソグラフィー法による超撥水/親水パターニング


光触媒リソグラフィー法による藻類細胞(左)と酵素(右)のパターニング (蛍光顕微鏡像)

バイオセンサ、バイオチップ、ラボオンチップ、インクジェットパターニングの前処理などに適用することができます。


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