マルチカラーフォトクロミック材料

 私たちは、光触媒として用いられるナノポーラス酸化チタン膜に銀イオンを付着させ、これに紫外線を照射して銀をナノ粒子にすると、フルカラーフォトクロミックデバイスになることを明らかにしました (Nature Mater., 2003)。

 上記の状態では褐色を呈していますが、ある色の光を照射すると、その部分がその色に変化します。こうして、青、緑、黄、橙、赤、白などさまざまな色を表示させることができ、一度書き込めば、その色は通常の蛍光灯のもとでも数時間以上維持されます。また、再び紫外線を照射すれば、褐色に戻すこともできます。

 つまり、フルカラーで繰り返し、書き込み・消去ができるわけです。

 なお、光により色が変化する材料をフォトクロミック材料と呼びますが、これまではある特定の二つの色(白と黒や、青と黄、など)の間で変化するものがほとんどでした。

 この材料では、酸化チタン膜のナノポア(ナノメートルサイズの細孔)が鋳型となり、さまざまな大きさ・形状の銀ナノ粒子が生成すると考えられます (J. Am. Chem. Soc., 2004)。各粒子はそれぞれ異なる波長の光を吸収します。例えば緑色の強い光を照射すると、緑色の光を吸収する粒子のみの電子が励起され、酸素に奪われて、無色の銀イオンに酸化されます。すると、緑色の光は吸収されなくなり、反射または透過されるようになるため、膜は緑色に見えるようになります。

 発色させた後、白色光下では徐々に退色しますが、退色を遅延し、色彩を数日間保持する方法も開発しました。


応用の可能性:
 マルチカラー表示材料(マルチカラーリライタブルペーパーなどの「持ち歩きに便利なフレキシブル表示媒体」)
 模様を任意に変えられる壁紙・装飾材料(防汚・抗菌性もある)
 複数の波長で書き込みのできる光学メモリー
 など



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