酵素を用いるバイオセンサー

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 酵素の持つ優れた物質認識機能を利用するのが、一般の、酵素を用いるバイオセンサーの特徴です。

 当研究室では、少し違った観点からバイオセンサーの研究を行っています。なお、以下の各トピックスは相互に関連しており、独立しているとは限りません。

- 多重情報取得型バイオセンサー
 通常のバイオセンサーは、「電流の変化」または「電位の変化」といった、一つの応答しか得ることができません。したがって、「物質Aの濃度」という一つの情報しか得ることができません。しかし、複数の応答が得られるセンサーを作れば、複数の情報を得ることができます。二つの応答を得ることができれば、「物質Aの濃度」と「物質Bの濃度」、あるいは「その物質の濃度」と「その物質の分子量」といった二つの情報を同時に得ることができます。複数の応答を選るには、以下のようないくつかの方法を採用しています。

 ・「電極」と「圧電素子」といった複数のトランスデューサーを用いる方法(Tatsuma and Buttry, Anal. Chem., 1997)
 ・複数の酵素を用いる方法(Notsu and Tatsuma, J. Electroanal. Chem., 2004)
 ・相転移ゲルを用いて、物質透過性を変化させる方法(Tatsuma, Mori, and Fujishima, Chem. Commun., 1999)
 ・測定対象を光異性化させる方法(Tatsuma, Okamura, Komori, and Fujishima, Anal. Chem., 2002)

- 活性阻害型バイオセンサー
 食品中、体内、大気中に含まれる有害物質の測定を目的としています。酵素の活性は特定の物質によって阻害を受けます。したがって、この作用に基づいて活性阻害物質(その多くは毒性を持つ)の検出・測定ができます。これまで、シアンや、食用植物(青ウメ、桃やアンズの種、キャッサバなど)中に含まれるシアン配糖体を検出するセンサーを開発してきました (Anal. Chem., 1991; 1992; 1996; 1997; 2002ほか)。

- 酵素ペルオキシダーゼやチロシナーゼを用いるバイオセンサー
 食品や空気中に含まれる有害物質や、河川の水に含まれる環境ホルモンなどの測定を目的としています (Anal. Chem., 1989; 1992; 1995; 1996; 2000ほか)。

- 電気化学活性ポリマーを用いるバイオセンサー
 酵素と電極との間の電子のやり取りをポリマーに行わせることにより、優れたバイオセンサーを作ることを目的としています。
 最近では特に、酵素自身にポリマーを合成させ、効率の良い電子授受をめざす「セルフワイヤリング法」も開発しました。

- 酵素モデル物質を利用したバイオセンサー
 天然の酵素にはない特性、機能の発現を目指しています。
 次のような特徴があります。
 ・酵素より小さいので、電極と直接電子授受が容易。
 ・酵素より構造が単純なので、安定性が高い。
 ・酵素より活性は低いが、多く固定化することによって解決できる場合もある。
 ・酵素より選択性が低いが、逆に多重情報取得型バイオセンサーに利用すれば、複数の基質の同時定量なども可能になる。
 ・活性制御など、酵素にはない機能を持たせることが可能である。


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