有機化学5(有機立体化学)7/13 Quizの解答

出題時に化合物の立体構造は上記のようなものであるとことわってある。1H-NMRにおけるこの化合物のH1のプロトンの分裂様式を推定する。

H1とH2は両方ともエクアトリアルのプロトンであり,その2面角は60°である。また,H1とH3ないしH4はエクアトリアルとアキシャルの関係であるから,これもその2面角は60°である。講義で述べたメントールでこのような関係にあるプロトン間のJ値が4 Hzであったことから,この値をそのまま用いると,H1はH2〜H4の3つのプロトンによりそれぞれ4 Hzずつに分裂し,そのピークは下記図(1)に示したようなカップリング定数4 Hzのカルテットになる。



ちなみに,もしも下のようにOHがエクアトリアルでイソプロピル基がアキシャルに配置されたならば,H1はアキシャル位を占めるため,H2ならびにH4とは2面角60°のアキシャル―エクアトリアルの関係,H3とは2面角は180°のアキシャル―アキシャルの関係にある。その結果,J値は4, 4, 10 Hzとなり,ピークの概形は上記の図(2)のようなものになる。


[なお,ここでは簡略化してJax-eq = Jeq-eqとしたが,現実には置換基の存在によってシクロヘキサンの いす型が少しゆがんだりして,この関係はかならずしも保証されない。そうなるとピークの分裂はもっと複雑になる。]
 
正答率20%。『OHがアキシャル』とことわってはいたが,OHをエクアトリアルにして図(2)のような解答を書いてきたものも正解にしている。