第53巻・第9・10号(2001年) 

目次

特集1 材料界面マイクロ工学


巻頭言

材料界面マイクロエ学研究センターの新たなチャレンジ
香川 豊



研究解説

スーパーキャパシタ正極を目指した酸化バナジウムゲルとカーボン粒子の複合化
日比野光宏・池田雄次・工藤徹一

バナジウム酸化物ゾルの光によるキャラクタリゼーション
−新型リチウム電池の開発を目指して−

渡邊 崇・池田雄次・日比野光宏・工藤徹一・細田真妃子・酒井啓司・宮山 勝

リプロンスペクトロスコピーによる液体表面単分子膜の構造評価
酒井啓司・坂本直人・細田真妃子・高木堅志郎


研究速報

ナノメートルオーダーの表面化学組成制御を行ったSiC系繊維を用いたマイクロ・ミリ波帯域の電磁波シールド材料
射場久善・今橋祐輔・香川 豊


研究解説

ビスマス層状構造酸化物の格子歪みと強誘電物性
野口祐二・宮山 勝



研究速報

SiC繊維強化SiC複合材料の酸化損傷の誘電特性を用いた評価
本田紘一・香川 豊・朱 世杰



研究解説

Evaluation of Creep Behavior in SiC/SiC Ceramic Matrix Composites(英文)
Shijie ZHU and Yutaka KAGAWA


Fatigue Fracture in SiC Fiber Reinforced SiC Composites(英文)
Shijie ZHU and Yutaka KAGAWA




特集2 生研公開


生研公開講演

相分離とパターン形成:サラダドレッシングから宇宙まで
田中 肇


海底ケーブルの建設保守と水中ロボット
浅川賢一


ナノからマクロヘ−新世代の有機超分子材料
荒木孝二


国際災害軽減学にパラダイムはあるか?
須藤 研




一般投稿



研究解説

道路橋における鉄筋コンクリート床版の防水工に関する研究(その4)
−アスファルト舗装の締固めおよび輪荷重載荷が床版防水工に与える損傷の観察−
野村謙二・魚本健人



研究速報

ズームイン方式による材料破壊問題のマルチスケール解析システムの開発
(その1:システムと理論の概要)
都井 裕・李 廷権・李 帝明・渡辺隆之・酒井新吉・顧 文偉・源 聡


ズームイン方式による材料破壊問題のマルチスケール解析システムの開発
都井 裕・李 廷権・李 帝明・渡辺隆之・酒井新吉・顧 文偉・源 聡

鉄道用レールの疲労損傷問題に対する計算力学的アプローチ
都井 裕・李 帝明・姜 成洙・岩渕研吾・森本文子・森 久史


白律型水中ロボットの能動型レーザー距離計測システムの開発
柳 善鉄・浦 環




アブストラクト

特集1 材料界面マイクロ工学


巻頭言

材料界面マイクロ工学研究センターの新たなチャレンジ
香川 豊



研究解説

スーパーキャパシタ正極を目指した酸化バナジウムゲルとカーボン粒子の複合化

日比野光宏・池田雄次・工藤徹一

 高速放電の可能な電極としてV2O5と炭素の複合電極を作成し,評価を行った.目標値はハイブリッド電気自動車での使用を想定して,3 kW / kgの出力密度,20 Wh / kgのエネルギー密度とした.本研究で使用した酸化バナジウムゾルはバナジウムと過酸化水素との反応を利用して合成した.酸化バナジウムゾルと炭素を電極化する際にアセトンを界面活性剤として用いることで良好な複合化が可能となった.複合電極に適する炭素の種類と量及び混合方法を検討した結果,アセチレンブラックが使用され,その付加比率はV2O5に対し140wt%とした.こうして作成した複合電極は,出力密度22 kW / kg-V2O5の作動で,1500回の充放電サイクルの後でさえエネルギー密度120 Wh / kg-V2O5であった.これらの値はV2O5の重量に対して計算されていたため実際には数分の1の程度になることを考慮しても目標値を達成できたと結論した.


バナジウム酸化物ゾルの光によるキャラクタリゼーション
−新型リチウム電池の開発を目指して−

渡邊 崇・池田雄次・日比野光宏・工藤徹一・細田真妃子・酒井啓司・宮山 勝

 高速充放電可能な新型電池に搭載するV2O5/カーボン複合正極を作製するためのカーボンとバナジウム酸化物ゾルを用いた溶液プロセスが開発された.さらに,光を用いた手法により正極作製プロセスに用いた様々な濃度におけるV2O5ゾルのコロイド粒子のサイズ,密度,粒子形状といった項目についてキャラクタリゼーションが行われた.ゾルの状態が正極の電気化学的な性能に寄与することがわかった.この研究解説では正極作製プロセス,正極の電気化学的性能,電気化学的性能とゾルのコロイド的特徴との関係が示される.


リプロンスペクトロスコピーによる液体表面単分子膜の構造評価
酒井啓司・坂本直人・細田真妃子・高木堅志郎



研究速報

ナノメートルオーダーの表面化学組成制御を行ったSiC系繊維を用いたマイクロ・ミリ波帯域の電磁波シールド材料
射場久善・今橋祐輔・香川 豊



研究解説

ビスマス層状構造酸化物の格子歪みと強誘電物性
野口祐二・宮山 勝

 鉛を含まない強誘電体メモリー材料として期待されているSrBi2Ta2O9(SBT)の強誘電性と結晶構造との関連を調査した.SBT系における大きな構造歪みは,TaO6八面体全体のa軸方向(分極方向)へのシフト,a-b面内における八面体の回転,c軸からの八面体のチルトに大別される.八面体のチルト角は,a軸方向よりもb軸方向で大きいことから,自発分極にはほとんど寄与しない.また,八面体がa-b面内で回転するだけでは,面内のイオン変位が相殺されるため,自発分極に変化はない.SBTにおける自発分極の向上には,八面体回転角およびペロブスカイトブロック全体のシフト量の増大が必要であることが明らかになった.


研究速報


SiC繊維強化SiC複合材料の酸化損傷の誘電特性を用いた評価
本田紘一・香川 豊・朱 世杰

 BNコーティングされたHi-NicalonTM SiC繊維強化SiCマトリックス複合材料の長時間酸化にともなう誘電率の変化を1 MHz〜1.8 GHzの周波数範囲で測定した.複合材料は大気中およびArガス中で熱暴露を行なった.酸化による誘電率変化を相対誘電率差(Re’)を用いて評価した.ここで,Re’=(e’Ar- e’air)/e’Arで表わされ, e’Arと e’airはそれぞれAr中および大気中で熱暴露した複合材料の誘電率である.Re’は複合材料中の酸化物含有量で表わされる酸化損傷と良い相関性を示した.


研究解説

Evaluation of Creep Behavior in SiC/SiC Ceramic Matrix Composites(英文)
Shijie ZHU and Yutaka KAGAWA



Fatigue Fracture in SiC Fiber Reinforced SiC Composites(英文)
Shijie ZHU and Yutaka KAGAWA





特集2 生研公開


生研公開講演


相分離とパターン形成:サラダドレッシングから宇宙まで
田中 肇



海底ケーブルの建設保守と水中ロボット
浅川賢一



ナノからマクロヘ−新世代の有機超分子材料
荒木孝二



国際災害軽減学にパラダイムはあるか?

須藤 研




一般投稿



研究解説

道路橋における鉄筋コンクリート床版の防水工に関する研究(その4)
−アスファルト舗装の締固めおよび輪荷重載荷が床版防水工に与える損傷の観察−

野村謙二・魚本健人

 床版防水工は鉄筋コンクリート床版とアスファルト舗装の間に敷設されているため,損傷状況の確認が困難である.そこで,アスファルト混合物の代わりに加熱した骨材を用い,締固め後および輪荷重載荷後に骨材を除去することによって床版防水工の損傷状況を確認することとした.その結果,シート系防水工は,シート系防水工の中のアスファルトと骨材の付着で防水機能を発揮することが分かったが,損傷状況は確認困難であった.塗膜系防水工は輪荷重載荷後に損傷を生じる場合があることを確認できた.



研究速報

ズームイン方式による材料破壊問題のマルチスケール解析システムの開発
(その1:システムと理論の概要)

都井 裕・李 廷権・李 帝明・渡辺隆之・酒井新吉・顧 文偉・源 聡

 本研究では,連続体損傷力学によるマクロスケール解析,メソ力学モデルによるメソスケール解析,分子動力学によるミクロスケール解析を,インターフェース部を介して有機的に結合した,ズームイン方式のマルチスケール材料破壊解析システムを開発した.(その1)では,開発システムと解析法の概要を述べた.続く(その2)では計算例を紹介する.


ズームイン方式による材料破壊問題のマルチスケール解析システムの開発
(その2:数値計算例)

都井 裕・李 廷権・李 帝明・渡辺隆之・酒井新吉・顧 文偉・源 聡

 (その1)で概要を説明した,ズームイン方式のマルチスケール材料破壊解析システムを脆性固体および延性固体の破壊解析に適用した.すなわち,セラミックスを想定した脆性固体のノッチ付き試験片の引張り問題を,マクロ,メソ,ミクロスケールの順に着目個所をズーミングしながら解析した.延性材料として金属を想定した4点曲げ試験片に対しても,同様にズームイン的な手法によるマルチスケール解析を行い,弾塑性材料に対する適用可能性を実証した.


鉄道用レールの疲労損傷問題に対する計算力学的アプローチ
都井 裕・李 帝明・姜 成洙・岩渕研吾・森本文子・森 久史

 鉄道車両,鉄道軌道(レール)などにおいても適切な維持管理のために,繰返し荷重下において材料損傷・劣化を受ける構造要素の寿命評価法の確立が求められている.本稿では,鉄道軌道面におけるシェリング損傷などの疲労損傷問題への局所的破壊解析法の適用について考察し,その計算手順を提示するとともに簡単な試計算を行う.


白律型水中ロボットの能動型レーザー距離計測システムの開発
柳 善鉄・浦 環

 最近,水中構造物の安全検査やダムや湖など浅水の自律型水中ロボットによる調査が要求されている.自律型水中ロボットの距離計測に最も多く使われている超音波センサーは水中構造物や浅水付近で多重反射や水面反射などの問題を生じていて新しいセンサーの開発が求められている.本論では自体電源を持つ小型ダイバー用のLaser Pointerと水中ロボットの内部の汎用CCDカメラを利用したLaser距離計測システムを提案する.このシステムは1m前後の距離で誤差が1cm以下の精度を持ち,前述の調査任務に適している.



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