生産研究 1999年4月号

第51巻第4号
(生産研究は、生産技術研究所の研究紹介誌として、毎月1回発行する)

目次

研究速報

車両感知器データを用いたOD交通量の日変動分析
村上康紀・吉井稔雄・桑原雅夫

動力学的非ホロノミックシステム ― 自由関節マニピュレータ ―
鈴木高宏

Properties of Shotcrete(10)
Nozzlings versus Rebound Loss in Shotcrete(英文)

Umesh Chandra PURI・魚本健人

Properties of Shotcrete(11)
A Proposal to Characterize the DEM Parameters for Fresh Concrete Modeling(英文)

Umesh Chandra PURI・魚本健人

Properties of Shotcrete(12)
Summarized Research Report on the Numerical Modeling of Shotcrete(英文)

Umesh Chandra PURI・魚本健人

Two-Dimensional Computer Simulation of Cement Hydration(1)
The Effect of Size Distribution and Water-Cement Ratio(英文)

Umesh Chandra PURI・魚本健人

Numerical Simulation of Fresh Concrete(1)
Three-Dimensional Discrete Element Model for Fresh Concrete(英文)

Umesh Chandra PURI・魚本健人

PIVの標準化、実用化に関する研究
―第1報標準画像による濃度相関法の評価

小林敏雄・佐賀徹雄・胡 暉

PIVの標準化、実用化に関する研究
―第2報標準実験によるPIVの評価

小林敏雄・佐賀徹雄・瀬川茂樹・胡 暉・名越正穂

調査報告

アメリカ合衆国における準結晶研究の最近の進展
枝川圭一

米国におけるマイクロマシンの産業応用
年吉 洋


車両感知器データを用いたOD交通量の日変動分析
村上康紀・吉井稔雄・桑原雅夫

 OD交通量は交通計画における最も基礎的な資料であるにも関わらず、時系列のデータを得ることが困難なことから、その変動について明らかにされていない。そこで本研究では、車両感知器から得られた時系列のランプ流入出データと、特定の1日のODパターンを用いて作成した時系列の平日OD交通量データを用いて、ODの変動を起終点の特性、曜日などと関連づけて考察を行った。その結果、(1) 平日ODの標準偏差はその平均に対して3%の範囲に約9割のペアが含まれること、(2) 環状線や放射線途中のランプを起点に持つODの変動量に対して、放射線の端を起点に持つODの変動量が大きいこと、(3)放射線途中を終点に持つODの変動が、環状線や放射線の端部を終点とするODの変動に比べて大きいこと、(4) 月曜日と金曜日の変動が週の半ばの変動に比べて大きいといった特徴が明らかになった。

動力学的非ホロノミックシステム ― 自由関節マニピュレータ ―
鈴木高宏

 加速度までを含む拘束が不可積分な2階非ホロノミック系は、一つのモータのみで多くの関節を制御できる可能性を持つ。2階非ホロノミック系の一つである2R自由関節マニピュレータについて、自由関節における摩擦を考慮したモデル化を行い、平均化法によってその挙動を解析する。またその制御法として、無摩擦系における楕円状安定多様体へのフィードバック制御と、摩擦による直線状安定多様体へのフィードバック制御を提案し、実験によりその有効性を検証する。

Properties of Shotcrete(10)
Nozzlings versus Rebound Loss in Shotcrete

Umesh Chandra PURI・魚本健人

 適切な吹付けコンクリートのノズリングは、ノズルマンの技術に依存するところが大きい。それはノズリングに際してノズルが前後に動いたり、ノズル角度が上下に動きうるからである。ノズルの置き方は水平な場合と垂直な場合があるが、これらのノズリングの中で、ノズルが前後に動いてしまうものは最悪である。吹付けの角度は、吹付けコンクリートの品質に大きな悪影響を与える。もし、吹付け角度がたまたま10o以上あれば、リバウンドロスや品質の確かさといった現象がまるで異なるだろう。しかし、コンシステンシーの等しいコンクリートを吹付ける場合、ノズルの置き方は吹付けコンクリートの品質に影響を及ぼさない。このことは、重力加速度は吹付けコンクリートにほとんど作用しないということを示唆している。

Properties of Shotcrete(11)
A Proposal to Characterize the DEM Parameters for Fresh Concrete Modeling

Umesh Chandra PURI・魚本健人

 近年、コンクリート業界において熟練した技術者の数は減少しており、このことは建設作業の行程や品質に影響を与えている。そこで、合理的な配合と作業行程を規定する必要がある。著者らはフレッシュコンクリートを二相系の材料と仮定して、DEM(個別要素法)により拡張モデルを作製した。DEM解析において大切なのは、DEMに用いる定数をどのように決めるかということである。これを決定するために、解析とフレッシュコンクリートのレオロジーを結びつける試みがなされた。そして、フレッシュコンクリートのレオロジー特性から、DEMの定数を求めることが可能であると分かった。ここで、(フレッシュコンクリートの)降伏値はDEMにおける剛性と粘着力に関係しており、粘性は減衰定数と関係している。

Properties of Shotcrete(12)
Summarized Research Report on the Numerical Modeling of Shotcrete

Umesh Chandra PURI・魚本健人

 吹付けコンクリートにおいては、高い圧力のためフレッシュコンクリート粒子の運動が非常に大きくなるということを考慮して、著者らは個別要素法(DEM)を用いた吹付けコンクリートの数値解析を新たに提案した。はじめに、DEMに用いる定数を適当に決めて、この解析の使用可能性を判断し、多くの吹付けコンクリートの動きを定性的に検証した。その後、定量的解析を試みた。DEMの定数を定めるときに生じる主要な問題の一つは、レオロジーを用いることで解決できた。このモデルを加速する物体として適用することにより、吹付けコンクリートの定量的解析を提案した。コンシステンシー試験(スランプ試験とフロー試験)から吹付けコンクリートに至るまでのコンピュータープログラミングが吹付けコンクリートの解析に発展した。


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