- コンクリート運搬用ケーブルクレーンの自動運転システムに関する研究
（第１報、ケーブルクレーンの大型実験モデルとシミュレーションモデル）
藤田隆史・井上肇博・稲葉金正・栗本雅裕・石井敏之・大塚義一
コンクリートダムの建設工事おけるコンクリート運搬・打設作業は典型的な繰り返し作業でありながら熟練されたオペレータを必要とする作業であり，その自動化による合理化・省力化施工の実現が求められている．本研究では、コンクリート運搬用ケーブルクレーンを対象として，その自動運転システムを研究している．本報告では，ケーブルクレーンの静的／動的挙動をシミュレートできる解析モデルを構築し，大型実験モデルによってその妥当性を検証している．
- 鉄塔用山形鋼のめっき時の損傷解析
都井裕・李帝明
鉄塔用山形鋼のめっき時におけるボルト接合用孔縁部の割れ発生問題の解析のため，損傷力学手法に基づいた有限要素解析プログラムを開発した．局所解析法における三つの連成解析を行って，局所連成解析が本問題に対しては必要十分であることを確認した．本研究によって，通常の有限要素解析コードによるひずみ履歴のポスト処理を用いることで，損傷の発生・進展の予測が可能であることを確認した．
- 乾燥収縮ひび割れ発生に及ぼす拘束の形態の影響
大野俊夫・魚本健人
実構造物に近い状態における乾燥収縮ひび割れ発生性状を検討するため，拘束の形態を一軸拘束，底版拘束，4周囲を囲んだ拘束とした試験体による実験を行った．その結果，?ひび割れ発生材齢は拘束の形態によって異なる，?拘束の形態によりひび割れ発生に影響する範囲が異なる，?拘束の形態が異なっても，ひび割れ発生に影響を及ぼす範囲より求めた引張伸び能力や収縮応力比によりひび割れ発生時期を予測できる，ことなどを明らかにした．
- パーコレーション法によるコンクリート透気性の検討
木下勝也・魚本健人
コンクリート中の空隙構造を表わす指標の一つとして，拡散係数や透気・透水係数などの物質移動係数が上げられるが，これらの物質移動係数はある一定以上の径と関係が深いとされているが，未解明な部分が多い．また，これらの数nmから数mmと幅の広い空隙構造をどのように取り扱うべきか十分な検討は為されていない．そこで本研究では，マルチスケールネットワークを用いてコンクリートの空隙構造を取り扱い，その空隙構造が移動係数にどのような影響を及ぼすか，酸素拡散試験により得られる透気係数との比較による検討を行った．
- 骨材界面組織が物質拡散に及ぼす影響
出口知史・舘石和雄・魚本健人
コンクリート中の物質拡散現象の正確な把握を目的とし，既往の研究で活発に行われている炭酸ガスなどの化学反応を伴う物質拡散についてではなく，実験では扱いにくい酸素という非反応性物質を想定した物質拡散現象について解析を行った．また，その際に特異点である遷移帯の持つ特性に着目した．その影響を考慮するため骨材配置のモンテカルロシュミレーションを適用し，有限要素法による二次元拡散解析プログラムを用いた．その結果遷移帯の影響によってセメントペーストの拡散係数の１５％にも相当するばらつきが生ずると判断できた．
生産研究 1998年7月号