- 雷
石井 勝 東京大学生産技術研究所で行っている雷に関する研究の範囲は、電力系統や通信系統の雷害、落雷の地域分布や電流の大きさなどの雷パラメータ、さらには普通は工学の範囲では扱わない雷雲中の電荷や放電路の分布の研究に及んでいる。その理由は、まだ十分に解明の進んでいない冬季の雷の研究に力を入れているためである。冬季雷には夏季雷とはかなり異なる面があり、数十mの構造物からも容易に上向き雷が生じる。これが雷放電が少ない割に冬の日本海沿岸で雷の被害が多い原因となっている節がある。冬には雷雲の高度が低いので、その中の電荷分布が冬季雷の特性に大きく影響する。
- 光合成と地球環境
渡辺 正 植物の光合成と地球環境のかかわりについて紹介した。光合成はマクロな側面で食糧とエネルギーの主要供給源になるほか、地球上の炭素循環の恒常性を維持する。ミクロに見ると超高速・高効率・超高集積度のエネルギー変換分子システムとして興味深い。次に、光合成の太陽エネルギー変換効率が論上の最大値で8%、日本のような中緯度地域では約1%レベルとなる事実を光合成の内部メカニズムに基づいて解説し、フィールドデータ(米の年収量など)と一致することを示した。最後に、二酸化炭素問題や地球温暖化問題をめぐる世の議論・風潮についてやや批判的な私見を述べた。
- コンクリート用FRP緊調材の特性と耐久性
魚本 健人 近年、コンクリート構造物の劣化は大きな社会問題になっている。特に、塩害による補強鋼材の腐食に関しては、通常の鉄筋に関してはエポキシ樹脂塗装鉄筋で対処する 方法があるが、プレストレストコンクリート用緊張材に関しては有効な手法が確立さ れていない。そこで、本講演ではこの問題に対処するために、塩化物イオンでは腐食を生じないF RP緊張材の特性とその利用に関する諸問題について説明した。
- き裂あれこれ ――壊さないために――
渡邊 勝彦 き裂と人との付き合いには長いものがあるが、その間、ほぼ一貫してき裂は強さを 損なう厄介者とされ、現在に至るもそれに起因する事故が繰り返されている。現在で はき裂の強さ・挙動の評価は主に破壊力学と呼ばれる手法によって行われるが、まだ まだ解決さるべき様々な問題が残されている。本稿では、き裂取り扱いの困難さがど こにあるのか、あったのかを通常の材料・構造物の強度評価手法としての材料力学と 対比させて明らかにしつつ、これまでの破壊力学体系に内在する各種不合理、限界を 打破するCEDと呼ぶ概念を中心とした新たな破壊力学体系の展開について紹介し、 今後の展望を述べる。
- エネルギー・環境問題とガスタービン
吉識晴夫 現在,エネルギー消費の抑制と地球環境の保全の重要性が益々増大している.しかしながら,人類が生存してゆくためには,エネルギーの消費を避けることはできない.ここでは,地球環境問題のうち特に地球温暖化の要因と考えられる二酸化炭素の排出と日本におけるエネルギー事情の特質を説明する.さらに,日本におけるガスタービン開発の現状を説明することにより,それらの問題に対処するためガスタービンが果たす役割を述べる.