- ニューラルネットによるアールワン・ロボットの海面上での運動制御
浦 環・石井和男 近年開発を進めているアールワン・ロボットは、潜航することが目的であるために、海面での運動に関して考慮していない。例えば、海面に浮上した状態では、ロボットの垂直安定板がほとんど機能せず直進運動の安定性が減少ため、横運動の制御が必要となる。本論では、ニューラルネットワークの特徴である学習機能を利用し、海面航行実験で得られた航行データからロボットの動特性を表現する運動モデルを構築をする。さらに、運動モデルのシミュレーション機能を利用したコントローラ生成法「Imaginary Trainnig」によりコントローラを調整し、横運動の制御を行なう。
- ASI法を用いた退化型チモシェンコ梁要素による免震鋼棒ダンパーの弾塑性解析
宮村倫司・都井 裕・土師利昭 骨組構造の弾塑性解析では塑性ヒンジの位置を正確に評価することが重要である。ところが、有限要素法では要素内で数値積分を行うことが一般的であるため、塑性ヒンジの位置は積分点の位置に限定される。著者のひとりである都井が提案した順応型Shifted Integration法(ASI法)によれば、梁要素の任意の位置に塑性ヒンジを設定することができる。本論文ではASI法を一般的な連続体退化型線形チモシェンコ梁要素へ適用した。開発した要素は大型免震構造に用いられる免震鋼棒ダンパーの弾塑性解析に応用し、その有効性を確認した。
- 配位窒素分子のプロトン化により生成するタングステンヒドラジド(2-)錯体のX線構造
溝部裕司・干鯛眞信 タングステンの窒素錯体cis-[W(N2)2(PMe2Ph)4]をメタノール 中で臭化水素酸と反応させて得られるヒドラジド(2-)型錯体 mer-[WBr2(NNH2)(PMe2Ph)3]について、今回単結晶の調製が 行えたので、X線解析によりその構造の詳細を明らかにした。すなわち、本錯体は、meridional配位した3つのPMe2Ph、cis 配位した2つのBr、および一方のBrのtrans位に位置するヒドラジド(2-)配位子によるややひずんだ6配位八面体構造をもち、ほぼ直線のW-N-N結合においては、W-N結合距離はこれまでに知られている他のWやMoのヒドラジド(2-)型錯体の場合とほぼ同様であるのに対し、N-N結合はかなり長いことが判明した。
- 音響インテンシティ法による新幹線車両の音響放射特性の検討
橘 秀樹・日高新人・矢野博夫・朱 鎭洙 鉄道騒音の低減や伝搬予測などを考える場合、基本的な条件として、実際の列車の走行状態における音響放射特性を知ることが重要である。そこで環境騒音大きな騒音源である新幹線について、音響パワーフローを直接測定することができる音響インテンシティ法を用いて音源探査を試みた。測定では、列車中心から5mの位置の高さ方向8点に2次元インテンシティプローブを配置し、列車走行時のレールに直行する断面内の音響インテンシティベクトルを測定した。その結果、列車の騒音源は、転動音、モータ音など列車下部騒音が主音源であることが確認できた。
- ステージ音響に関する研究
−シミュレーション音場におけるバイオリニストによる評価実験−
橘 秀樹・上野佳奈子 コンサートホールでは、ステージ上の演奏者が演奏しやすいということが基本的かつ重要な条件である。この条件は、ステージ近傍の反射面からの反射音やホール全体の残響などの音響特性と密接な関係にある。これらの要因以外に演奏者に大きな影響を与えるものとして、比較的大きな遅れ時間をもった客席後部からの反射音が挙げられる。一般に、この種の反射音は有害エコーと考えられ、発生をできるだけ防ぐ方向で音響設計が行われてきた。しかし最近になって、この種の反射音は、演奏者がホールの応答を感じるためにある程度は必要であることが分ってきた。筆者らは、この点を明らかにするために無響室内に設置した電気的音響シミュレーションシステムを用いて実験的検討を行っている。本報では、プロのバイオリン奏者を対象として行った主観評価実験の概要を報告するが、今回の実験の結果、客席後部からのこの種の反射音は,その強さと遅れ時間が適当であれば、演奏者にとって好ましい条件であることが示唆された。
- プレストレストコンクリート用FRP緊張材の特性(14)
− 繊維の損傷確立理論によるFRPロッドのクリープ特性のモデル化 −
山口明伸・西村次男・加藤佳孝・魚本健人 著者らはこれまでに各種ロッドのクリープ特性ついて実験的な検討を行っている。しかし、FRPロッドの破壊メカニズムにはまだ不明な点が多い。そこで、ワイブルの確率理論に基づくロッド内部の繊維の損傷度を考慮した時間依存型のクリープモデルの適用を試み、実験結果との比較を行った。その結果、変形性状については実際の変形性状を定性的に表現できることが分かった。今後さらに、ロッドのクリープ破壊の諸要因を考慮することにより、クリープ強度および破壊時間等を推定できると考えられる。
- 吹付けコンクリートの特性に関する基礎的研究(1)
− ペースト−骨材間の付着挙動に関する数値的考察 −
牧 剛史・魚本健人 吹付けコンクリートは近年、トンネルのライニング材として重要な地位を占めているが、その品質は材料のみならず施工の良否によって著しく影響を受ける。その原因について様々な経験的事実が述べられているが、理論的なメカニズムについては未解明であるのが現状である。
本研究は吹付けコンクリートの特性を明らかにし、理論的シミュレーションを行うための基礎研究として実施しているもので、本報告ではこのうち、ペースト面に骨材が付着する現象を理論解析し、ペーストの付着力や骨材径が及ぼす影響について数値的に考察している。